昏睡・一過性意識障害

 認識し、思考する心の働き(広辞苑)
 外的・内的刺激に応じていろいろな心的現
象が生じている過程(医学的)
 睡眠は外的な刺激で容易に覚醒するので意
識障害とは言わない。刺激に応じて外界を
認識できない状況を狭義の意識障害という
 意識の内容が異常であるせん妄も広義には
意識障害に入る
 広範な大脳機能障害あるいは脳幹障害による
Coma
Scale(GCS)とJapan coma Scale (JCS)がある
 呼吸パターンが変化することは重篤な病変で
あることを示唆する。
 局在徴候を伴う昏睡は圧倒的に脳血管障害が
多い
 局在徴候を伴わない昏睡は代謝性脳症(低血
糖、肝性昏睡など)、ウィルス性脳炎、中毒
(有機リンなど)を示唆する
 昏睡のスケールとしてGlasgow
開眼機能(Eye opening)「E」
4点:自発的に、またはふつうの呼びかけで開眼
3点:強く呼びかけると開眼
2点:痛み刺激で開眼
1点:痛み刺激でも開眼しない
言語機能(Verbal response)「V」
5点:見当識が保たれている
4点:会話は成立するが見当識が混乱
3点:発語はみられるが会話は成立しない
2点:意味のない発声
1点:発語みられず
*T(挿管されている場合)
*A(失語がある場合)
運動機能(Motor response)「M」
6点:命令に従って四肢を動かす
5点:痛み刺激に対して手で払いのける
4点:指への痛み刺激に対して四肢を引っ込める
3点:痛み刺激に対して緩徐な屈曲運動
2点:痛み刺激に対して緩徐な伸展運動
1点:運動みられず
記述は、「E 点、V 点、M 点、合計 点」と表現される。
正常は15点満点で深昏睡は3点。点数は小さいほど重症である。
I.覚醒している(1桁の点数で表現)
0 意識清明
1(I-1) 見当識は保たれているが意識清明ではない
2(I-2) 見当識障害がある
3(I-3) 自分の名前・生年月日が言えない
II.刺激に応じて一時的に覚醒する(2桁の点数で表現)
10(II-1) 普通の呼びかけで開眼する
20(II-2) 大声で呼びかけたり、強く揺するなどで開眼する
30(II-3) 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼する
III.刺激しても覚醒しない(3桁の点数で表現)
100(III-1) 痛みに対して払いのけるなどの動作をする
200(III-2) 痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめたりする
300(III-3) 痛み刺激に対し全く反応しない
*この他、R(不穏)・I(糞便失禁)・A(自発性喪失)などの付加情報をつけて、
JCS200-Iなどと表す。
1) Cheyne-Stokes呼吸:小さい呼吸から
一回換気量が漸増し大きな呼吸となった後
呼吸停止(10‐20秒程度の無呼吸)がおこり、
その後再び同様の周期を繰り返す呼吸。過
呼吸と無呼吸が規則的に交代する呼吸中枢
感受性低下で生じる。
2) 持続性吸息呼吸:いっぱいに空気を吸
い込んでは止まる呼吸。橋病変。
3) 失調性呼吸:不規則な呼吸。延髄障害
で起こり、呼吸停止が迫っている。
1) 片麻痺:Arm dropping test(患者の両上肢を持ち上げて
同時に離すと、麻痺側が早く落ちる。麻痺側でBabinski徴
候が陽性であれば錐体路障害としてよい。疼痛刺激に対す
る左右差をみる方法もあるがクモ膜下出血、脳内出血では
再出血を誘発する危険があるためはじめには行わない。)
2) 眼位:共同偏視(大脳病変では患側、脳幹病変では健側
を向く。眼球運動の起始である皮質第8野から交差して対側
のPPRFに至る経路を想像すれば思い出せる)
3) 瞳孔:瞳孔不同があり、散大した瞳孔の対光反応が消失
していれば脳ヘルニアに留意。
4) 髄膜刺激徴候:項部硬直があればクモ膜下出血、髄膜炎。
 急速にあるいは突発性に意識障害に陥るが、
おおむね短時間で意識が正常に復する病態
 大脳の一過性で全般的な脳血液灌流低下
(失神)、あるいはてんかん発作のいずれ
かを示唆する
syncope):原
因として最も多い。精神的ショックや疼痛
などにより反射性に迷走神経活動が亢進し
て徐脈となる。
 起立性低血圧症による失神発作(syncope
due to orthostatic hypotension):立位に伴っ
て全身血圧が低下することによる
 心原性失神(cardiogenic syncope):不整脈
 排尿失神(micturition syncope):男性
 血管迷走神経性失神(vasovagal
16歳女性。アイドルのコンサートに行
き、非常に興奮した様子だったが、突然意
識を失った。救急車が依頼されたが、救急
隊到着時には意識は回復していた。救急病
院に搬送され、血圧・脈拍・体温など異常
なく、脳MRI検査・心電図・一般採血にも
異常を認めなかった。後日施行された脳波
検査・ホルター心電図にも異常がなかった
。
80歳男性。最近立ちくらみ(目の前が
暗くなる)を自覚することが多かった。8
月の暑い日、床から起き上がった瞬間に失
神、転倒した。転倒直後には意識は完全に
回復していた。20年来の糖尿病があり、
ヘモグロビンA1cは7.0前後で推移してい
る。Tilt試験では臥位(血圧135/82、脈拍
80)⇒立位(血圧78/62、脈拍82)と血圧
変動が確認された
72歳女性。最近安静時に短時間の意識消
失を繰り返している。糖尿病の既往はない
が脈の不整を自覚している。心電図検査で
は脈拍25回/分であり洞不全症候群の診断
がなされペースメーカーの埋め込み手術を
受けた。以後失神発作は見られていない。
21歳男性。試験勉強のため寝不足が続
いていた。試験の打ち上げで大量に飲酒を
してトイレに行き、立位で排尿している最
中に目の前が暗くなって転倒した。転倒直
後に意識は回復した。
mal):意識消失と硬直・痙攣
が数十秒から数分続く。大脳の神経細胞の
電気的疲労により、発作後に寝込んでしま
ったり、意識回復後ももうろうとした状態
が続く。短時間に発作を繰り返すと低酸素
脳障害などを来すことがある(重積状態)
 複雑部分発作(complex partial seizure):意
識消失に伴って口なめずりや舌打ち、ボタ
ンや衣服をいじり回すなどの常動的行動が
みられる
 大発作(grand
「意識がなく静かに横たわっている」とい
うような意識レベルの低下だけでなく、異
常な言動や行動が見られたり大騒ぎしたり
著しい興奮状態を示すことがある。
例:せん妄、もうろう状態
 軽度ないし中等度の意識レベルの低下があ
って外界の刺激に注意を向けることができ
ず、錯覚、幻覚、妄想などが次々に出現し
ては消え、睡眠・覚醒のリズムが障害され
ている。興奮、多動、攻撃的行為、大声を
上げるなど精神運動活動性の亢進を伴うこ
とが多いが、低下することある。
 アルコール中毒症に見られる振戦せん妄、
認知症患者に見られる夜間せん妄など
 意識野が狭くなり、狭い範囲内では比較的
まとまった行動を示すが、外界を広く適切
に認知して全体的な判断を下す能力が低下
している状態で、多くはその間のことを後
から想起できない
 てんかん、急性アルコール中毒、慢性コカ
イン中毒などで見られる