NIRS HIMAC RIビームの応用による治療精度の向上 放射線医学総合研究所 北川 敦志 NIRS Contents HIMAC 1. 重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 2. 放射性炭素ビームの医学応用の目的 3. 技術的手法 4. 検証実験の結果 商用PET診断装置を用いた3次元画像データの測定 1次元の精密レンジ測定 生体内での臓器毎の代謝の研究 NIRS 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 重粒子線の特長 HIMAC 放射線治療 1. 物理学的特長 • 物質中での荷電粒子のBragg peakより、深さ方向の線量 集中性が良い. • 物質中での散乱が小さく、横方向の線量集中性が良い. 2. 生物学的特長 • 高LET(Linear Energy Transfer)のため、生物学的効果が 高い. • 低酸素細胞にも効果が高い • 細胞の増殖周期によらず効果が高い 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 NIRS 部位別治療患者登録数 (1994年6月 - 2006年8月) HIMAC Total: 2,867 中枢神経 眼 涙腺 総合 涙腺 頭頚部 骨・軟部 疾患部位 食道 肺 536 12 頭蓋底 44 消化管 44 眼 67 すい臓 71 直腸 76 中枢神経 92 婦人科 肝臓 肝臓 すい臓 直腸 111 前立腺 子宮 209 骨・軟部 316 頭頚部 375 肺 451 前立腺 463 0 100 200 300 400 治療患者数 500 600 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 NIRS 臨床試験まとめ HIMAC 1. 1994年より2800人以上の患者に対して治療を行った. 2. 物理学的/生物学的優位性を証明し、本治療法の有効性、安全性が確 かめられた. 3. 治療期間の短縮に成功した. • 肺がんの臨床試験結果 照射回数 18 fractions in 6 weeks 9 fractions in 3 weeks 4 fractions in 1 week 1 fraction in 1 day 線量 59.4~95.4GyE 72.0GyE 52.8~60.0GyE 28.0GyE 局所制御率(3年) 65% 98% 93% (in progress) 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 NIRS 重粒子線がん治療装置の仕様 HIMAC - - イオン種: 高LET (100keV/mm)荷電粒子線 レンジ: 30cm in soft tissue 最大照射野: 22cm radius 線量率: 5Gy/min ビーム照射方向: 水平, 垂直 炭素 430MeV/n 2×109pps 面積: 7200 m2 (60 x 120 m) 建設費: 326億円 146億円(建屋) 180億円(装置) HIMAC(Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba) 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 NIRS 次世代治療施設 HIMAC 線形加速器 イオン源 シンクロトロン 加速空洞 電磁石 照射システム 電磁石電源 面積 及び 建設費 1/3 1.重粒子線がん治療の特長と臨床試験の結果 NIRS 普及への取り組み HIMAC 次世代治療施設のための研究開発 • 400 MeV/u 炭素線シンクロトロン. • 面積及び建設費はHIMACの1/3が目標. 治療費の推定 • 年間治療患者数 = 800人 / 年 – 3 室 x 250 日 x 6 時間 = 4500 時間 / 年 – 0.5 時間 x 11.2 照射回数 = 5.6 時間 / 人 • 治療費 = 約200万円 / 人 – – – – – 減価償却費 人件費 光熱費 保守費 消耗品費 4.5 (億円 / 年) 4.7 2.7 3.7 1.4 (粒子線がん治療普及に向けた勉強会報告書による) 施設建設計画 • 群馬大学の治療施設建設 (2006 - 2008). • 全国に20ヶ所程度の建設計画が進行中(新聞報道等より). 2.放射性炭素ビームの医学応用の目的 NIRS 放射性炭素ビームの利用目的 HIMAC 重粒子線がん治療の特長 = 良好な線量集中性. マージンの要因: - 治療計画の誤差, - 患者位置決めの誤差, - 体内での臓器位置の変動. 正常な マージンを減少させるには? 重要臓器 照射領域の検出システムが がん患部 必要. 陽子線 重粒子線 2.放射性炭素ビームの医学応用の目的 NIRS 治療計画中でのレンジ計算 HIMAC CTdensHIMAC 10:54:12 00/02/18 X線CT画像よりがん患部の決定 1.4 ビーム経路にそった水等価厚(WEL: water equivalent length )換算のレンジの算出 1.2 Electron density 1 CTS-new XForceS5 XforceS2 XForceM5 XForceM2 XForceL5 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -1000 -500 0 CT(HU) 500 1000 NIRS 2.放射性炭素ビームの医学応用の目的 治療への応用: シナリオ1 HIMAC 中枢神経、頭頚部がん治療の課題 腫瘍が眼球や視神経、脳幹部など重要臓器に とりかこまれていてマージンがとりづらい。 要求 = highest Tumor Control Probability (TCP) = least Normal Tissue Complication Probability (NTCP). したがって、 ・より複雑な形状の照射野の作成 ・照射位置の検出によるマージンの低減 (三次元の照射野分布の測定) が必要。 Squamus Cell Ca. of Ethmoid Sinus. NIRS 2.放射性炭素ビームの医学応用の目的 治療への応用: シナリオ2 HIMAC 肺がん治療の課題 ビーム軌道にそって、骨や 空気層といった密度が大き く異なる物質が入り混じって いる。 このため、レンジの計算が 複雑になり誤差が大きくな る。 真のビーム停止位置の検出が 誤差の低減に有効 (一次元の分布の測定) 3.技術的手法 NIRS 照射位置の測定原理 HIMAC b+ 放射性核 (炭素) 15O 12C 13N 1. In-vivo activation: 通常の安定ビームが 体内の原子核をb+放射性核に 変える. 11C 核崩壊 11C 12C 2. Autoactivation: 通常の安定ビームが 体内の原子核に衝突して自身 がb+放射性核に変わる. (ホウ素) ポジトロン 対消滅ガンマ線の 放出 11C, 10C ... 3. Radioactive beam 放射性炭素ビームを直接照射す る(S/Nが高い). 2 C.A. Tobias et al.., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 3, 35 (1977). 2 G.W. Bennett et al.., Science 200, 1151 (1978). 3 A. Chatterjee et al.., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 7 (1981) 503. 3.技術的手法 NIRS 対消滅ガンマ線の検出器 HIMAC 11C beam X Y Z γ-ray NaI 1) 商用のPET診断装置 = 3次元画像の測定 2) ポジトロンカメラ = 1次元レンジの精密測定 PMT 3.技術的手法 NIRS 放射性炭素ビームの生成 HIMAC Projectile Target Target Fragments F0 1st Analyzer Magnet 7Li, 12C 8B Energy Degrader F1 slit 2nd Analyzer Magnet TOF1 counter 7 Be F2 slit TOF2 counter dE counter 11C Maximum magnetic rigitity Radius of bending magnet Maximum beam energy (for 20Ne) Momentum acceptance Angular acceptance (h, v) Momentum dispersion at F1 8.13Tm 5.0(1st), 5.6(2nd)m 600MeV/n 5%(full width) 26mrad(full) 2.0m M. Kanazawa et al.., Nucl. Phys. A 701 (2002) 244c 3.技術的手法 NIRS 一般的な11Cの運動量分布 HIMAC 11 治療もしくは生物実験のためには、十 分広い運動量分布が必要となる. C Production rate 生成条件: ビームエネルギー = 400 MeV/u ターゲット厚 = 51 mm (Be) 角度アクセプタンス = 26 mrad 運動量アクセプタンス = 5% 生成率 = 1% 純度 > 90% 運動量幅 = 4% P roduction R ate 1 0.8 0.6 0.4 0.2 Momentum slit 0 8 60 8 70 8 80 8 90 M omentum [(M eV /c)/n] 9 00 9 10 3.技術的手法 NIRS 11Cの運動量選択的使用法 HIMAC 11 レンジの精密測定のためには、運動 量を狭く選択したビームを用いる. C Production rate 生成条件: ビームエネルギー = 400 MeV/u ターゲット厚 = 51 mm (Be) 角度アクセプタンス = 26 mrad 運動量アクセプタンス = 0.2% 生成率 = 2 x 10-4 P roduction R ate 1 0.8 0.6 0.4 0.2 Momentum slit 0 8 60 8 70 8 80 8 90 M omentum [(M eV /c)/n] 9 00 9 10 3.技術的手法 NIRS スポットスキャニングによる3次元照射システム HIMAC 最大照射領域 10 x 10 x 18 cm (水等価厚) スキャニング速度 (x, y) 2 ms/cm 加速器からの ビームエネルギーは 固定 X-、Y-の電磁石による 横方向のスキャニング multi-leaf collimator ridge filter pencil beam collimater PSD monitor positron camera position monitor Q Magnet scatterer scanning magnets (h. & v.) dose monitor range shifter patient chair (main/sub) 5430mm レンジシフターによる 深さ方向のスキャニング E. Urakabe et al.., Jpn. J. Appl. Phys. 40 (2001) 2540. 3.技術的手法 NIRS 患者位置決めシステムと治療いす HIMAC ポジトロン カメラ X線管 ビーム 多葉 コリメーター レンジ シフター X線撮影板 回転治療いす 4.検証実験の結果 NIRS PET画像として測定した3次元スポットスキャニング照射 HIMAC Pattern Test 63x63 mm, 20 mm apart, 3 mm step 4.検証実験の結果 NIRS 商用PET診断装置による測定 HIMAC 放射性炭素11Cビーム(a) と Autoactivation (b) 2mm以下のレンジの違 いを検出可能. 照射線量: 1 Gy, 照射領域: 35x35x50 mm WE 4.検証実験の結果 NIRS 1次元レンジ測定精度の検証実験 HIMAC 0.95*diameter レンジシフター spherical PMMA (150, 180 diam.) 10C プラスチック シンチレーター ビームエネルギー : 運動量幅 : ビームサイズ: 照射粒子数: 照射時間: 346 MeV/u - range in PMMA : 156.9 mm 0.8 % FW - range width : 3.6 mm 7 mm in FWHM (3 -5)×105 - 最大線量 (simulated) : 110-180 mGyE 2 sec (1 spill) 2-axis, 2-rotational stage 4.検証実験の結果 NIRS 1次元レンジ測定の精度 HIMAC 100 = 0.1 GyE = 3 x 105 particles ビーム停止位置重心の測定精度 = 0.6 mm 10 mm FWHM 70 Count 生物学的線量 90 80 60 50 40 30 20 10 0 -40 -20 0 20 40 z (mm) Y. Iseki et al..,Phys. Med. Biol. 49 (2004) 1 4.検証実験の結果 NIRS PETイメージのWashout効果 HIMAC 重粒子線の 線量分布(計画) Autoactivation+Attenuation PET Image 本来、一様であるべき分布に 代謝による濃淡が生じている. 4.検証実験の結果 NIRS ウサギを用いた体内代謝の測定実験 HIMAC 放射性炭素10Cと11Cビームを、生きたウサギおよび死んだウサ ギに照射し、生物学的半減期を測定する 15cm 10C, 11C with 350MeV/u Beam Duct 20cm Beam 脳に照射する前のX線 によるウサギの位置決 め画像 12cmφ Absorber Plastic (PMMA) Scintillator Beam condition 10C & 11C beam energy : Momentum width : Beam size : Intensity : 350 MeV/u 0.4% (FW) 3 - 7 mm (FWHM) 24k (10C) / 300k (11C) pps 4.検証実験の結果 NIRS 10Cと11Cの分布 HIMAC 生きたうさぎ及び死んだウサギの脳に照射した10Cと11Cの 2次元測定画像及び射影画像 10C 11C 10C 11C T1/2(10C)=19.3sec, T1/2(11C)=20.3min 4.検証実験の結果 NIRS ウサギ中の10C, 11C 生物学的半減期 HIMAC 100 live dead Muscles Counts/5s Brain Counts/5s 100 10C 10 1 10 1 0 20 40 60 80 100 0 20 t [s] 40 60 80 100 t [s] 1000 11C live dead Counts/30s 11C Counts/30s live dead 10C live dead 100 100 0 500 1000 t [s] 1500 2000 10 0 500 1000 t [s] 1500 2000 4.検証実験の結果 NIRS 臓器による代謝の違い(脳と筋肉) HIMAC 速い成分 tC-10 or C-11 and tbiof ・・・ componet1 血流 中間の成分 tC-10 or C-11 and tbiom ・・・ 2 遅い成分 細胞 tC-10 or C-11 and tbios・・・ 3 Muscle Brain Component-3 τ~10191±2200s (35±1 %) Component-1 τ~2.0±1.8s (35±3 %) Component-3 τ~3175±378s (52±2 %) Component-1 τ~10±8s (30±4 %) Component-2 Component-2 τ~140±18s (30±3 %) τ~195±52s (19±3 %) H. Mizuno et al.., Phys. Med. Biol. 48 (2003) 2269. 4.検証実験の結果 NIRS 医学応用のための検証実験結果 HIMAC 1. 商用PET診断装置を用いた3次元画像の測定. • ビーム経路上の2mm以下のレンジの違いを検証可能. 2. ポジトロンカメラを用いた1次元レンジ精密測定. • ビーム停止位置を重心として0.6mmの精度にて検出可能. 3. 臓器による代謝の違いの研究 • 生きたウサギ中の生物学的半減期には、少なくとも3つの成分が存在する. • Washout効果は、臓器によって異なり、脳の方が筋肉に比べて速い.
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