第4章 貨幣数量説は正しいか リカードからクルーグマンまで A班 天野、菊地、寺内、 宇野澤、晒名、青木 2013.11.20 1 ~4章で述べたいこと~ デフレ脱却の根拠として (物価下落) 貨幣数量説が挙げられる。 (物価は貨幣数量に比例) しかし「ゼロ金利の時は VS 貨幣数量説は不成立」 と、反対する学者もいる 4章の問い “貨幣数量説は正しいか?” 答え ・・・正しくない それはなぜか?を説明するために・・・ 1節 貨幣数量説について(概要と批判) 2節 「ゼロ金利でも貨幣数量説は成立」の裏付けとなった クルーグマン・モデルについて 3節 クルーグマンモデルの問題点・批判 2 1節 貨幣数量説について 貨幣数量説って何? 「貨幣数量方程式」 byフィッシャー MV=PQ ・・・① 「貨幣の需給均衡式」 byマーシャル M=kPY ・・・② M:名目貨幣数量 P:一般物価水準 V:貨幣の流通速度 Q:実質的な取引量 Y:実質所得(GDP) k:貨幣の流通速度(マーシャルのk) 3 1節 貨幣数量説について ①にとき… Vは一定,Qも完全雇用水準で与えられると仮定 ②のとき… Kは一定,Yも所与と仮定 ⇒いずれの場合もPはMに比例する! =「ある国の物価水準は、その国に流通している貨幣 の量に比例して決まる」ということ。 (ex; 貨幣が2倍になれば物価も2倍になる。) 4 1節 貨幣数量説について っということは、 学者「デフレだからマネーサプライを増やせばデフ レ→インフレになるんじゃ?。。。」 But!!!!! 長期的にみて取引量(Q)が一定で貨幣の流通速 度(V,k)も一定という仮説は× Because ①日本の最近の経済成長率こそゼロに近いが、依 然として成長を続けている ②貨幣の流通速度は長期的には低下(マーシャル のkは上昇)を続けている。 5 1節 貨幣数量説について 相対価格:財Aで測った財Bの相対価格とは、財 単位と交換される財Aの量である。 絶対価格:貨幣価格ともいう(=物価) サービスの価値を貨幣額で表示したもの。 ・デフレ=貨幣的現象だからマネーサプライな どの金融政策によって決まる。 ⇒相対価格と絶対価格を区別することが重要 6 1節 貨幣数量説について ポールの積み上げ批判論 • 需要が増えれば「相対価格」は上昇する • マネーサプライが増加すれば「絶対価格」が上昇する ⇒ある財の相対価格が上昇するためには ①ある財の絶対価格が上がる ②他のすべての財の価格が下がる Ex:野球選手の年俸 But 常識的に考えて普通の人は②のことなんて考えて いない! ⇒①でなければ価格のもつ情報価値はなくなってしまう。 7 1節 貨幣数量説について 外生的貨幣数量説は正しくない 外生的な貨幣数量説は、デフレの解決の説明に は不完全である。 <外生的貨幣数量説> M(マネーサプライ)×V(貨幣の流通速度)=P(一般物 価水準)×Q(取引数量)・・・貨幣数量方程式 →「物価はマネーサプライに比例する」ことが、 外生的貨幣数量説の命題(意味) つまり、マネーサプライを増やせば物価が上がる、 という意見 8 1節 貨幣数量説について 内生的貨幣数量説とは 筆者は内生的貨幣数量説を支持している。 ◆内生的貨幣数量説とは、外生的貨幣数量説 の逆パターンであり、季節的背景や世界情勢 など何らかの影響で物価P、取引数量Qが先 に決まったとする。このときMV=PQが満た されるように、貨幣数量Mが決まる。 9 1節 貨幣数量説について 両者の比較 外生的貨幣数量説 ①マネーサプライを中央銀行 が増やしたり減らしたりする ことで、物価が決まる。 →M(貨幣数量)を先に決 める 内生的貨幣数量説 ①何らかの事情(季節etc)で 物価や取引量が決まる。そ れに応じて、貨幣数量が定 まる。→P(物価)・Q(取引 数量)が先に決まる *現実の世界では貨幣供給を増や しても、日銀が直接関与できるの は民間銀行の預金準備に留まり、 あまり機能しない。 10 1節 貨幣数量説について 内生的なマネーサプライという考え方 フィッシャー・ブラックもまた、内生的貨幣数量 説を支持している。 「アメリカのような経済では金融政策は完全に受動的だ、と私は 考えている。価格あるいは所得が上昇したときに貨幣は増え る。なぜならそうした時には貨幣に対する重要が増えるから だ。」(p111 一部抜粋) ここにあるように、ブラックは物価の動きは期待に よって決まるという部分は筆者とは異なるものの、 貨幣数量は受動的に決まる、ことに関しては筆 者と同意見である。 11 1節 貨幣数量説について フィリップス・カーブ ・価格の動きをマネーから離れた所か ら導くロジックの補強案として筆者 が挙げたグラフ。 ・ケインジアンが手にしたマネーから切 り離された価格決定ロジック。 ・縦軸:インフレ率(物価上昇率) 横軸:失業率 ・短期において「失業率を低下させよう とすればインフレーションが発生」 し、「インフレーションを抑制しようと すれば失業率が高くなる」というこ とを表した曲線である。 12 1節 貨幣数量説について マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間 日本以外の先進国では、テーラー・ルールに基づく金融政策によって 物価の安定と順調な経済成長(1990-2000) 日本では、バブル崩壊後 経済が低迷(唯一例外) ⇒1999年2月、コールレートがゼロの「ゼロ金利」 景気が過熱すれば、金利を上げる 不況の時には金利を下げる ゼロ金利が奪う ゼロ金利の下での金融を「緩和」 =マネーサプライを増やす=量的緩和 デフレを止める・・・マネーサプライを増やす テーラー・ルールのように金利を下げる 名目金利はゼロ以下に下がらない 13 1節 貨幣数量説について マネーは効かない 日銀が直接的に関与=ハイパワード・マネー (民間銀行の預金準備) 小宮 先行き資金需要の増大が予想される際 ⇒超過準備を持つのは 合理的 ※短期金利がプラス&変動が大きい ゼロ金利下では、短期債権の流動資産を日銀当座預金に換えられる ⇒「資本損失」「売却損」は考えなくてよい ⇒超過準備は基本的に必要ない ・・・資産運用対象なし コストもゼロ MB供給変化なし 14 1節 貨幣数量説について マネーサプライを増やせば、デフレが止まるという考え ⇒データによる裏付けを欠いている 2008年9月5日 リーマン・ブラザーズが破綻 ⇒先進各国の中央銀行は「非伝統的な政策」を行う バランスシート拡大 ① 金融機関に超過準備を大量供給する「金融緩和」 ② 金融市場の機能・安定性維持を目的とし、 リスク資産を購入する「信用緩和」 の組み合わせ ⇒中央銀行のバランスシートの動向は、「金融緩和」と直結しない マネーの対GDP比は、欧米よりもはるかに高い ゼロ金利での下での金融政策運営の難しさ、広がっている 量的緩和の限界への認識、広がっている QE3=「金融緩和」と「信用緩和」の合わせ技 ⇒量的緩和の限界を示すもの 15 ~4章で述べたいこと~ デフレ脱却の根拠として (物価下落) 貨幣数量説が挙げられる。 (物価は貨幣数量に比例) しかし「ゼロ金利の時は VS 貨幣数量説は不成立」 と、反対する学者もいる 4章の問い “貨幣数量説は正しいか?” 答え ・・・正しくない それはなぜか?を説明するために・・・ 1節 貨幣数量説について(概要と批判) 2節 「ゼロ金利でも貨幣数量説は成立」の裏付けとなった クルーグマン・モデルについて 3節 クルーグマンモデルの問題点・批判 16 2節 クルーグマン・モデル 2.クルーグマン・モデル 著名な経済学者たちは 「①金利がゼロでも②マネーサプライを増やせば③デフレは止まる」と主張 正しくない! なぜ?? その裏付けが、クルーグマンの「流動性のわな」に関する論文にあった 問題あり! ~クルーグマンの提案~ ①名目金利がゼロ(流動性のわな)になっても、 ②期待インフレを高めれば 実質金利が低下し、 3節で説明 ③景気は回復する なので、 クルーグマンの「流動性のわな」に関する論文の内容を説明します! 17 2節 クルーグマン・モデル ■クルーグマンの「流動性のわな」に関する論文 まず、「流動性のわな」とは?? 金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、 貨幣需要が無限大となり、 通常の金融政策が効力を失うこと。 資産を持つ形態:国債or貨幣 ◎利子率が通常の場合・・・ 利子収入が得られる国債を保有 ◎利子率が十分に低い時・・・ 国債保有による便益(利子収入)と 貨幣保有による便益(いつでもどこでも買いたい時に買える) に差がない。 人々は国債ではなく貨幣を保有 18 2節 クルーグマン・モデル 「流動性のわな」を脱出(=景気回復、デフレ脱却)のためにどうするか・・・? (i)金利政策 無効 <理由> 流動性のわな = 名目金利がゼロ 利子率が操作できない →金利はゼロ以下に下げられない ↳ではどうするか? →金利を下げることに代わるのは「量的緩和」(マネーサプライの増大) (ii)量的緩和 困難 <理由>利子率が正の時 → 利子を生まない「貨幣」の保有は節約される ⇒貨幣数量説(MV=PQ) 成立 ゼロの時→ 「貨幣」と「債権」に区別がない ⇒貨幣数量説 不成立 「流動性のわな」の下で「金融政策」は困難 19 2節 クルーグマン・モデル しかし・・・ (iii)将来を考える クルーグマン・モデルでは 「現在」流動性のわなに陥っていても、 「将来」は陥っていないと仮定 よって、 将来のマネーサプライ増大への期待 → インフレ率上昇 → 実質利子率低下 → 貨幣需要が刺激され、「流動性のわな」から脱出 ~クルーグマンの提案~ ①名目金利がゼロ(流動性のわな)になっても、 ②期待インフレを高めれば 実質金利が低下し、 ③景気は回復する これが、経済学者たちの 「①金利がゼロでも②マネーサプライを増やせば③デフレは止まる」 という主張を裏付けた。 20 2節 クルーグマン・モデル C:各期の消費量 D:割引因子 ρの逆数:異時点間の消費 の「代替弾力性」 21 2節 クルーグマン・モデル このモデルの式より言えるのは ・(4.11)式より、 物価上昇率Π(右辺の値)が低下すると、 名目利子率i(左辺の値)が低下する。 ・(4.12)式より、 マネーサプライMが増えても、 実質利子率rは変わらない。 22 ①②のような考えがベースとなっている。 2節 クルーグマン・モデル ■伸縮価格経済 物価Pが伸縮的で名目利子率iが0の場合、 ◆p134(4.13)式=成立 →価格と貨幣数量は無関係 ◆p135(4.14)式=Yは「完全雇用」状態にある ◆「伸縮物価経済」では実質利子率は正常な経済 と変わらない!また、実質利子率が負になったとしても 「完全雇用」は維持される! 23 2節 クルーグマン・モデル ■不完全雇用均衡 物価Pが非伸縮的でYが変数である場合、 ◆p136(4.16)式=名目利子率iが正のとき、「完全雇用」 p137(4.17)式=名目利子率iが0のとき、「不完全雇用」 →物価が下方に硬直的経済のとき、「わな」に陥る! ◆流動性の「わな」から抜ける政策は? ・「将来」の物価水準Pを上昇させる! =期待インフレを創出する 24 ~4章で述べたいこと~ デフレ脱却の根拠として (物価下落) 貨幣数量説が挙げられる。 (物価は貨幣数量に比例) しかし「ゼロ金利の時は VS 貨幣数量説は不成立」 と、反対する学者もいる 4章の問い “貨幣数量説は正しいか?” 答え ・・・正しくない それはなぜか?を説明するために・・・ 1節 貨幣数量説について(概要と批判) 2節 「ゼロ金利でも貨幣数量説は成立」の裏付けとなった クルーグマン・モデルについて 3節 クルーグマンモデルの問題点・批判 25 3節 クルーグマン提案の問題点 3.クルーグマン提案の問題点 しかし… 3節 クルーグマン提案の問題点 ②利子弾力性の問題 ・ 期待インフレが1%上昇すると、消費需要は異時点間の 消費の代替の弾力性1/ρに等しい%だけ増大 ・ 実質利子率が低下すれば、消費など需要が速やかに増大する しかし… ・ 投資の利子弾力性=異時点間の消費の代替の弾力性 になるという保証はない ・ 日本のコールレートは大幅に低下したにも関わらず、 投資や消費は力強い回復を示さなかった ・ 「不確実性」の高まりが投資の利子弾力性を小さくする ・ 弾力性は、利子率が変わったとき日本経済という「マクロの系」が どう反応するか、という問題に関わる概念であり、 ミクロの分析ではとらえることができない ◎ クルーグマンモデルに代表される「代表的消費者」を前提にする 「マクロモデルのミクロ的基礎づけ」は理論的根拠を欠いたものである →こうした状況は「流動性のわな」「不確実性のわな」と呼ばれる まとめ~4章で述べたいこと~ デフレ脱却の根拠として (物価下落) 貨幣数量説が挙げられる。 (物価は貨幣数量に比例) しかし「ゼロ金利の時は VS 貨幣数量説は不成立」 と、反対する学者もいる 4章の問い “貨幣数量説は正しいか?” 答え ・・・正しくない それはなぜか?を説明するために・・・ 1節 貨幣数量説について ゼロ金利では不成立 2節 「ゼロ金利でも貨幣数量説は成立」の裏付けとなった クルーグマン・モデルについて 3節 クルーグマンモデルの問題点・批判 28
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