輻射輸送問題三題噺 ~最近の進展~ 1 輻射場の非等方性について(復習) 2 速度依存変動エディントン因子を用い た 球対称一般相対論的輻射流 3 有限の厚みをもつ平行平板における 非相対論的輻射輸送の厳密解 1 輻射場の非等方性について(復 習) 0 準備 輻射輸送方程式 1 静的平行平板大気 周縁減光効果とピーキング効果 2 静的球対称大気 膨張大気で先鋭化するピーキング 3 球対称風 高速流における希薄化 Kayo Seminar 06/10/10 2 0.準備 輻射の流れ 平均自由行程進むと、物質粒子によって吸収 や散乱を受ける。 j κ σ Kayo Seminar 06/10/10 3 0.準備 輻射輸送方程式 原理的には、輻射輸送方程式を解けば、輻射輸送 の問題はまぎれなく解ける。 ただし、7つの独立変数(r、l、t、ν)をもった微分積分 方程式である。こんなの解きたくない! 相対論:(座標)静止系/実験室系と(流体)静止系 /共動系を区別しなければならない。 Kayo Seminar 06/10/10 4 0.準備 モーメント定式化 輻射の“非等方性”はあまり強くないと仮定し、光線 の角度依存性は弱いとして、輻射輸送方程式を角 度方向に展開し、角度について積分して、0次の モーメント、1次のモーメント、などと呼ばれる一群の 方程式セットを得ることができる。 方程式系を閉じるために別の関係式が必要。 Kayo Seminar 06/10/10 5 0.準備 エディントン近似 輻射場が等方的な場合に成り立つ関係: P=E/3 (一般にはPij=δijE/3) このエディントン近似でモーメント式を閉じる。 この関係は常に成り立つとは限らない。 1. 天体の表面近傍など輻射場が光学的に薄くなる 領域では、輻射場の非等方性が無視できなくな る。(ピーキング効果) 2. 亜光速に加速される流れで速度勾配が非常に 大きい領域でも、共動系でさえ輻射場が非等方 的になる。 Kayo Seminar 06/10/10 6 1 静的平行平板大気 状況:無限半平面 Kayo Seminar 06/10/10 7 1 静的平行平板大気 基礎方程式(z) 輻射輸送 0次モーメント 1次モーメント Eddington近似 輻射平衡(R.E.):j – cκabsE=0 Kayo Seminar 06/10/10 8 1 静的平行平板大気 基礎方程式(τ) 光学的深さτ導入 輻射輸送 0次モーメント 1次モーメント Eddington近似 Kayo Seminar 06/10/10 9 1 静的平行平板大気 Milne-Eddington解 境界条件 モーメント 輻射強度 表面での強度: 周縁減光効果 Kayo Seminar 06/10/10 10 1 静的平行平板大気 Milne-Eddington解 表面での強度: 周縁減光効果 ここでは、赤い点線 のみに注目 Kayo Seminar 06/10/10 edge 11 pole 1 静的平行平板大気 Milne-Eddington解 表面での強度: 周縁減光効果 Kayo Seminar 06/10/10 12 1 静的平行平板大気 Eddington近似の精度 得られた輻射強度を、 表面で再度積分 Kayo Seminar 06/10/10 13 2 静的球対称大気 状況:希薄大気 Kayo Seminar 06/10/10 14 2 静的球対称大気 基礎方程式(r) 輻射輸送 0次モーメント 1次モーメント Eddington近似 輻射平衡:J=S Kayo Seminar 06/10/10 15 2 静的球対称大気 Milne-Eddington解 境界条件 モーメント r=a で H=H0 源泉関数=一定 S=J=一定 Kayo Seminar 06/10/10 16 2 静的球対称大気 Milne-Eddington解 Kayo Seminar 06/10/10 17 2 静的球対称大気 Milne-Eddington解 輻射輸送方程式 視線s方向 輻射強度 表面での強度 Kayo Seminar 06/10/10 18 2 静的球対称大気 状況:膨張希薄大気 表面での強度: 周縁減光効果 τ0=(κ+σ)ρR edge Kayo Seminar 06/10/10 pole 19 2 静的球対称大気 ピーキング効果はより強い Kayo Seminar 06/10/10 20 2 静的球対称大気 過去の研究 Transfer (Analytical) Kosirev 1934 Chandrasekhar 1934 Chandrasekhar 1945 Chapman 1966 Transfer (Numerical) Hummer & Rybicki 1971 Schmid-Burgk 1975 Hundt et al. 1975 Unno & Kondo 1976, 1977 Masaki & Unno 1978 Unno 1989 Kayo Seminar 06/10/10 21 3 球対称風 状況:膨張希薄大気 Kayo Seminar 06/10/10 22 3 球対称風 基礎方程式 球対称流 速度一定 τはだらだらと減少 ρ Kayo Seminar 06/10/10 23 3 球対称風 過去の研究 (Relativistic) Radiation Hydrodynamics Lindquist 1966 Castor 1972 Ruggles & Bath 1979 Mihalas 1980 Quinn & Paczynski 1985 Paczynski & Proszynski 1986 Turolla et al. 1986 Paczynski 1990 Nobili et al. 1993 Nobili et al. 1994 King & Pound 2003 低速近似(v/cの1次まで) 速度一定を仮定していて、 ダイナミックスを解いていな い 共動系で拡散近似を使って いるが、拡散近似は静的大 気でもE近似より適用範囲 が狭い:低速で光学的に厚 い領域しか使えないので、 亜光速流ではまずい Kayo Seminar 06/10/10 24 1 輻射場の非等方性について (まとめ) 1. 2. 3. 静的平行平板大気では、 周縁減光効果(ピーキン グ効果)が起こる 静的球対称大気では、球 対称性によって、ピーキン グ効果がもっと顕著にな る 動的球対称大気(球対称 風)では、希薄化によって、 ピーキング効果がさらに 重要になる 降着円盤(静的平行平板大 気)の光学的厚みが有限の 場合、周縁減光効果はどう なるだろうか (亜光速)降着円盤風(平行 平板近似)の場合、周縁減 光効果はどうなるだろうか 亜光速降着円盤風(平行平 板近似)の場合、輻射輸送 はどうなるだろうか 亜光速球対称風の場合、 輻射輸送はどうなるだろう か Kayo Seminar 06/10/10 25 2 速度依存変動エディントン因子を 用いた球対称相対論的輻射流 0 1 2 3 4 現象:宇宙ジェット 準備:相対論的輻射流体力学 動機:モーメント定式化の病的特異性 物理:速度依存変動エディントン因子 修正と結果 1. 2. 3. 4. 平行平板:重力なし 平行平板:重力あり 球対称:重力なし 球対称:重力あり 5 影響 Kayo Seminar 06/10/10 26 0 宇宙ジェット現象 Astrophysical Jets 相対論的ジェット 中心の天体から双方 向に吹き出す細く絞ら れたプラズマの流れ 「宇宙ジェット」 (YSO) (CVs, SSXSs) Crab pulsar SS 433 microquasar AGN quasar gamma-ray burst Kayo Seminar 06/10/10 28 系内ジェット&系外ジェット 系内ジェット(microquasar) SS433 >LE ep cont/blob 1E1740 ee? GRS1915 ~LE ee? bloby GROJ1655 ee? bloby 系外ジェット 3C 273 >LE ? ? M87 <<LE ? ? ガンマ線バースト Kayo Seminar 06/10/10 0.26c 0.26c 0.92c 0.92c 0.99c? ? 29 放射圧加速ジェット 光度 L>LE 成分 ep通常プラズマ vs ee対プラズマ 形態 continuous / periodic / intermittent 速度 mildly relativistic β=0.26、γ=1.04 highly relativistic β=0.92、γ=2.55 ultra relativistic β=0.99、γ=10 extremely relativistic β=0.9999、γ=100 Kayo Seminar 06/10/10 30 宇宙ジェットの加速機構 輻射力加速にせよ磁気力加速にせ よ、光速の9割ぐらまでなら可能だが、 γが10とか100の超相対論的ジェット はまだ実現できていない。 Kayo Seminar 06/10/10 31 1 準備 相対論的輻射流体力学 Relativistic Radiation Hydrodynamics 1.準備 相対論的輻射輸送方程式 Kayo Seminar 06/10/10 33 1.準備 モーメント方程式 Kayo Seminar 06/10/10 34 1.準備 エディントン近似at共動系 Kayo Seminar 06/10/10 35 1.準備 質量保存の法則 Kayo Seminar 06/10/10 36 1.準備 運動方程式 輻射力 輻射抵抗 Kayo Seminar 06/10/10 37 1.準備 エネルギー式 Kayo Seminar 06/10/10 38 2 動機 モーメント定式化の病的特異性 Motivation 2.動機 従来の定式化の下で相対論的 輻射流を調べた(Fukue 2005) Kayo Seminar 06/10/10 40 2.動機 v=c/√3で特異性が出現 u2=1/2 or β2=1/3 で分母=0! 平行平板(1次元定常輻射流)で、τは表面からの光学 的厚み u=γβ=γv/c: 流れの4元速度、β=v/c F:輻射流束、P:輻射ストレス、J:質量流束 Kayo Seminar 06/10/10 41 先行研究 Moment Formalismの欠陥 Turolla and Nobili 1988; Turolla et al. 1995; Dullemond 1999 らが、特性速度など、数理的 な解析をしている。 ただし、回避法などについて は未研究 Relativistic Wind/Accretion Flammang 1982 Paczynski 1990 Nobili et al. 1993 拡散近似をしているので、特 異性は出ない 光学的にすごく厚い WindとAccretionの違い Kayo Seminar 06/10/10 42 3 物理 速度依存変動エディントン因子 Physics 3.物理 問題はclosure relationの妥当性 特異性の原因を辿ると エディントン近似に行き着く。 従来の定式化では、 P0:流体共動系での輻射ストレス(テンソル) E0:流体共動系での輻射エネルギー密度 P0= f E0: f =1/3 と置くが、これは v~c (β~1)で成り立つのか? 大きな速度勾配によって等方性近似が悪くなる Kayo Seminar 06/10/10 44 4.修正 変動エディントン因子 光学的に厚い-薄いを遷 移する輻射流(球対称) 低速(静止)-亜光速へ 加速される輻射流 Tamazawa et al. 1975 Fukue 2006 τ大:diffusion limit→ f ~1/3 β小:diffusion limit→ f ~1/3 (光子の平均自由行程が短く、光子 拡散が等方) (光子の平均自由行程が短く、光子 拡散が等方) τ小:streaming limit→ f ~1 β大:relativistic limit→ f ~1 (光子の平均自由行程が長くなり、 光子拡散が非等方になる) (加速が光速のオーダーになり、平 均自由行程が伸びて、光子拡散 が非等方になる) 例えば Kayo Seminar 06/10/10 45 4.修正 速度依存変動エディントン因子 f (β)の条件 f(0)=1/3、f(1)=1 単調増加 f(β)-β2>0 (特異点はβ=1のみ) du/dτ|c<0 (加速解が特異点までつながる) もっとも単純な形が→ Kayo Seminar 06/10/10 46 4 修正と結果 Modification and Results 4.1 平行平板:重力なし Plane-Parallel without Gravity Fukue 2006, PASJ, 58, 461 4.2 平行平板:重力あり Plane-Parallel with Gravity Fukue and Akizuki 2006, submitted 4.3 球対称:重力なし Spherical Symmetry without Gravity Akizuki and Fukue 2006, submitted 4.4 球対称:重力あり Spherical Symmetry with Gravity Akizuki and Fukue 2006, in prep. 本研究のポイント Outflowの方向は、 より平均自由行程が長い ℓ 輻射速度が亜光速になる時、輻射場の 非等方性を補う変動エディントン因子に着目し エディントン近似 : P0 f ( ) E0 球対称 : Akizuki & Fukue (2006) を使って、モーメント方程式を閉じる。 特異点を避けることができる! Kayo Seminar 06/10/10 52 本研究のポイント Outflowの方向は、 より平均自由行程が長い ℓ 2 •SR:(v/c) Yin and Miller 1995 •GR:g00 M.-Gu Park 2006 •VEF:P/E=f (τ,β) Kayo Seminar 06/10/10 53 輻射場の方程式(Moment Formalism) 定常一次元球対称, M.-Gu Park 2006 GR:シュバルツシルト時空, SR:v/cの2次まで, Gray, 輻射平衡 Continuity: Eq. of motion: Energy eq.: 0th moment: 1st moment: Closure relation: ※ ※ ※ ※ Kayo Seminar 06/10/10 ※ 54 境界条件 ■静的な平行平板 ∞にいる観測者 Icke(1989)など ∞から測って τ=0 ■動的な平行平板 : 相対論的ビーミング Fukue(2005) →0 ; cP/F=2/3, →1 ; cP/F=1 中心付近 τ=τ。 Calculationした解と比較 ⇒ M の決定 Kayo Seminar 06/10/10 55 結果 半径 光学的深さ 全エネルギー massloss 初期条件 : LE / c 2 半径 LE LE outflow disk outer envelope V:速度 Q:輻射圧(全圧) r:中心からの距離 L:光度 Kayo Seminar 06/10/10 56 議論 インプット:τ0,r0,v0=0,L0(F0),Q0(P0) 固有値:mass loss rate dot{M} 期待:L0を大きくすれば、v∞は大きくなる いまのところ0.5cぐらいまで 球状に拡がるための希薄化のせい? Kayo Seminar 06/10/10 57 議論 dr/dτ=-2r2γβ/dM ↑希薄化因子 1/r-1/r∞=2γβ/dM τ 1/r0-1/r∞ =2γβ/dM τ0 1/r0> =2γβ/dM τ0 τ0 <(dM/ 2γβ )/r0 dMとL0を共に大きくする必要がありそう Kayo Seminar 06/10/10 58 5 影響 Influence 5.影響 関連する天体現象 輻射場が重要な相対論的天体現象全般 ブラックホール降着流:光子捕捉 相対論的天体風:超相対論的ジェット ガンマ線バースト:ファイアボール ニュートリノ円盤:ニュートリノトーラス 初期宇宙:最初の降着円盤、最初のジェット Kayo Seminar 06/10/10 60 5.影響 今後の課題 f (τ,β)のより適切な形? 平行平板→球対称の場合 重力場の効果 ガス圧、磁気圧の効果 非定常流の場合 降着流の場合 いろいろな天体現象への応用 数値シミュレーション→誰か他の人(笑) Kayo Seminar 06/10/10 61 3 有限の厚みをもつ平行平板にお ける非相対論的輻射輸送の厳密解 Radiative Transfer and Limb Darkening of Accretion Disks by Fukue J. and Akizuki C. 2006, PASJ in press 3 有限厚平行平板の厳密解 問題設定 Kayo Seminar 06/10/10 63 3 有限厚平行平板の厳密解 光源/熱源の分布 1 Kayo Seminar 06/10/10 64 3 有限厚平行平板の厳密解 光源/熱源の分布 2 Kayo Seminar 06/10/10 65 3 有限厚平行平板の厳密解 基礎方程式1 輻射輸送方程式 0次のモーメント 1次のモーメント 静水圧平衡 (不使用) エネルギー式 (輻射平衡) Kayo Seminar 06/10/10 66 3 有限厚平行平板の厳密解 基礎方程式2 光学的厚み 輻射輸送方程式 0次のモーメント 1次のモーメント エディントン近似 Kayo Seminar 06/10/10 67 3 有限厚平行平板の厳密解 境界条件と熱源(光源) 表面境界条件 1. 熱源 熱源なし 2. 熱源あり Kayo Seminar 06/10/10 68 降着円盤の輻射輸送 先行研究 Meyer & Meyer-Hofmeister 1982 Cannizzo & Wheeler 1984 Kriz & Hubeny 1986 Shaviv & Wehrse 1986 Adam et al. 1988 Hubeny 1990 Mineshige & Wood 1990 Ross et al. 1992 Shimura & Takahara 1993 Artemova et al. 1996 Hubeny & Hubeny 1997, 1998 Hubeny et al. 2000, 2001 Davis et al. 2005 Hui et al. 2005 適用範囲の広いエディントン近似 ではなく、拡散近似を使っている 有限の光学的厚みではなくて、 無限半平面を仮定している 降着円盤の内部構造に注目して いて、表面から放射される放射 強度のとくに角度依存性(周縁減 光効果)はほとんど調べていない 静止大気を仮定している Kayo Seminar 06/10/10 69 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源なし) Kayo Seminar 06/10/10 ふつうにMilneEddington解 70 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源なし) 赤道での境界条件 Kayo Seminar 06/10/10 71 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源なし) 表面からの放射 τ0→∞で通常のMilne-Eddington解 Kayo Seminar 06/10/10 72 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源なし) τ大 通常の周縁減光 効果 τ小 一様光源的 Kayo Seminar 06/10/10 73 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源あり) Momentの解析解までは、 e.g., Laor & Netzer 1989 Kayo Seminar 06/10/10 74 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源あり) 赤道での境界条件 Kayo Seminar 06/10/10 75 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源あり) 表面からの放射 τ0→∞で通常のMilne-Eddington解 Kayo Seminar 06/10/10 76 3 有限厚平行平板の厳密解 解析解(熱源あり) τ大 通常の周縁減光 効果 τ小 周縁増光効果 源泉関数~一定 Kayo Seminar 06/10/10 77 今後の予定 有限の光学的厚みをもった 降着円盤(静的平行平板大 気)の周縁減光効果 Fukue & Akizuki (2006) (亜光速)降着円盤風(平行 平板近似)の場合、輻射輸 送や周縁減光効果はどうな るだろうか (v/c)1 の近似>in progress (v/c)2 の近似>in progress 亜光速鉛直輻射流 Fukue (2006) 亜光速球対称輻射流 Akizuki & Fukue (2006) 輻射流→輻射流体風 – 亜光速降着円盤風 – 亜光速球対称風 回転の効果 ガス圧の効果 Kayo Seminar 06/10/10 78 亜光速降着円盤風 予備的結果 Kayo Seminar 06/10/10 79
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