人材育成と企業成長

日本経済学会 2011年度秋季大会
2011年10月29日
人材育成と企業成長
宮川 努(学習院大学・経済産業研究所)
西岡 由美(立正大学)
川上 淳之(学習院大学)
枝村 一磨(東北大学)
目次
1.人材育成と企業パフォーマンス:問題意識と先行研究
2.本論文の目的と主要な結論
3.インタビュー調査、人事部アンケートの特徴
4.生産関数推計による経営スコア(人的資源管理)と企
業パフォーマンスとの関係
5.人的資源管理の個別スコアと企業パフォーマンスとの
関係
6.結論、政策的含意と今後の課題
2
1.人材育成と企業パフォーマンス:問題意識と先行研究
• 人材:企業成長にとって重要なファクター
• 人材の捉え方
(1)就業前:教育による人的資本形成(Shultz (1960), Becker
(1964))→Jorgenson and Griliches (1967)によって成長会計に
取り入れられる。
(2)就業後:Off the Job TrainingやOn the Job Training, そして自
己啓発活動
・(2)は、最近労働経済学の分野だけでなく、無形資産研究の
分野でもCorrado, Hulten, and Sichel (2009)らによって計測と
成長会計への導入が試みられている。→ただし既存の統計
では信頼性の確保や国際的な比較に問題が残されている。
3
→企業レベルでの研究
1.人材育成と企業パフォーマンス:問題意識と先行研究
• 日本の労働経済学
小池教授の業績を中心に労働者の技能形成に関しては多
数の蓄積がある。ただし、この企業内の技能形成と企業パ
フォーマンスとを直接に結び付けた業績は最近になってから。
→黒澤・大竹・有賀(2007)、Ariga, Kurosawa, Ohtake, Sasaki,
and Yamane (2010)の分析。黒澤(2010)によるサーベイ。
• 黒澤・大竹・有賀(2007)
Off the Job Trainingや小規模集団活動は、工場の生産性を
高めているが、 On the Job Trainingと生産性向上との有意な
関係は見出せない。
4
1.人材育成と企業パフォーマンス:問題意識と先行研究
• 欧米の研究:1990年代よりミクロデータを利用して、人材育
成システムと企業パフォーマンスとの関係を調べる研究が増
える。
• Black and Lynch (2003)、 Bloom and Van Reenen (2007)
人材育成や人的資源管理に関する独自のインタビュー調査
を利用して、企業パフォーマンスとの関係を分析している。
→人的資源管理を企業組織全般の管理にまで広げて解釈し、
企業パフォーマンスとの関係を調べる研究は、労働経済学
の新しい分野として定着しつつある。
•
→Bloom and Van Reenen (2010)
5
2.本論文の目的と主要な結論
• 本論文の目的:Miyagawa et, al. (2010, RIETI
DP 10-e-013)で使用した日本企業の人的資源
管理に関するインタビューデータに加え、同
時に実施した人事部へのアンケート調査を
使って、人材形成及び人的資源管理と企業
パフォーマンスとの関係を調べる。
• アンケートの調査票は、配付資料の最終ペー
ジに掲載しています。
6
2.本論文の目的と主要な結論
• 主要な結論
(1)経営スコアと人事部アンケートの調査項目の関係
①中高年比率の高い企業では、人的資源管理の経営スコ
アが低い
②経営スコア(人的資源管理)と一人当たりのOff-JT受講
日数は正相関
7
2.本論文の目的と主要な結論
(2)生産関数の推計において、人事部アンケートから得ら
れた労働時間数を考慮すると、経営スコアと企業パ
フォーマンスの向上は連関している。
(3)成果主義は、目標管理制度が合わせて導入された場
合、企業パフォーマンスの向上に有効。
(4)高度に標準化された研修制度の導入も企業パフォー
マンスの向上と関係がある。
(5)政策的含意
①自社での研修制度が難しい場合、規模の経済性を有す
る高度に標準化された人材の育成機関が有効。
②経営開示度の低い非営利機関に適用。
8
3.無形資産測定のためのインタビュー調査
• 調査対象
– 経済産業研究所が保有する企業リストから1086社
• 製造4業種(電気機械、情報通信機械器具、自動車・同部品、精密
機械製造業)
• サービス業3業種(映像・音声情報制作業、情報サービス業、小売
業)
– 各インタビュー項目ごとに3つ質問を用意
• PPT資料後のインタビュー項目を参照。
• 1問目にNo → 0点
1問目にYes → 1点
3問目にYes → 3点
• インタビュー項目ごとのスコアを作成した。
9
3.経営スコアの作成
• 各スコアを統合して、経営スコアを作成する
– インタビュー項目は組織に関するものと、人的資
本に関するものに分かれている。
• ここでは、人的資本に関する項目を採用。
– スコアの統合方法
• スコアの平均値を統合スコアとして使用する。
• 主成分分析を行い、第1主成分を使用する。
– スコアを個別に評価、スコアの個別の質問の評価
も行う
10
3.人事部アンケートの特徴
• 人事部アンケートの概要:論文補論
• 人事部アンケートの回答企業:391社(回答率36%、
インタビュー調査回答企業は、573社)
• アンケート回答企業の業種別分布、規模別分布は、
インタビュー回答企業とほぼ同じ。→生産関数を推
計したとしても、Miyagawa, et,al (2010)と同じ分布の
もとでの推計と考えることができる。
11
表1 業種別企業分布
製造業
情報関連サービス業
小売業
産業
電気機械器具製造業
情報通信機械器具製造業
精密機械器具製造業
自動車・同付属品製造業
映像・音声情報制作・放送・通信業
情報サービス業
小売業
合計
企業数
29
(7.42%)
48
(12.28%)
15
(3.84%)
32
(8.18%)
8
(2.05%)
98
(25.06%)
161
(41.18%)
391
表2 従業員規模別企業分布
50人以上 100人以上
100人未満 300人未満
製造業
18
41
情報関連サービス業
32
41
小売業
16
46
66
128
合計
産業
従業員数
300人以上 500人以上 1000人以上
合計
500人未満 1000人未満
20
22
23 124
10
12
11 106
29
26
44 161
59
60
78 391
12
3.人事部アンケートの特徴
• 人事部アンケート項目と経営スコア
(人的資源管理)との相関性
(1)ほとんどの項目で、人事部アンケート項目と経営スコアとの
直接的相関性は見られない。(表3)
(2)ただし、中高年比率の高い企業では、経営スコアが低い。
(表3)
(3)また、経営スコアと一人当たりのOff-JT受講日数は正相関
(表5)
(4) Off-JTのうち、他社で通用する能力は63%。(表6)→Fukao
et, al. (2009)の想定と同じ。
13
表3 労務構成とインタビュー項目スコアとの相関
全体
非正規雇用者比率
相関係数
N
四年制大学卒以上比率
相関係数
N
MBA取得者比率
相関係数
N
管理職(課長相当以上)比率 相関係数
N
中高年者(45歳以上)比率
相関係数
N
注:***は1%水準、**は5%水準で有意
MS-HM
-.019
379
.052
367
.089
337
-.020
379
-.163 ***
369
MS-PC
-.035
379
.047
367
.091
337
-.026
379
-.162 ***
369
表5 教育訓練投資とインタビュー項目スコアとの相関
全体
従業員一人当たり教育訓練費
MS-HM
相関係数 .065
N
332
従業員一人当たりOff-JT受講日数 相関係数 .115 **
N
323
MS-PC
.064
332
.120 **
323
注:***は1%水準、**は5%水準で有意
14
表6 他社で通用する能力
業種別
製造業
情報サービス業
小売業
従業員規 300人未満
模別
300人以上
合計
度数
%
度数
%
度数
%
度数
%
度数
%
度数
%
ほとんど 四分の三 半分程度 四分の一 他社では わからな
すべて他 程度は他 は他社で 程度は他 全く通用
い
社で通用 社で通用 通用する 社で通用 しない
する
する
する
15
22
41
14
0
26
12.7%
18.6%
34.7%
11.9%
0.0%
22.0%
23
26
24
2
0
25
23.0%
26.0%
24.0%
2.0%
0.0%
25.0%
18
30
44
24
1
35
11.8%
19.7%
28.9%
15.8%
0.7%
23.0%
34
37
53
19
0
41
18.5%
20.1%
28.8%
10.3%
0.0%
22.3%
22
41
56
21
1
45
11.8%
22.0%
30.1%
11.3%
0.5%
24.2%
56
78
109
40
1
86
15.1%
21.1%
29.5%
10.8%
0.3%
23.2%
合計
118
100.0%
100
100.0%
152
100.0%
184
100.0%
186
100.0%
370
100.0%
他社で通
用する能
力
60.3%
73.3%
58.5%
65.0%
61.0%
63.0%
15
4.生産関数推計による経営スコア(人的資源
管理)と企業パフォーマンスとの関係
• Miyagawa et al (2010)と同様の生産関数を推計し、経営スコ
アと企業パフォーマンスとの関係を調べる。
ln Yi  const.  b1MSi  b2 ln K i  b3 ln Li  b4 X i  i
• 生産関数の特徴
(1)労働投入量において、人事部アンケートで得られた労働時
間数を考慮
(2)人事部アンケートから得られた大卒比率、非正規雇用比率
をコントロール変数として含める。
(3) 「情報処理実態調査」から得られた一人当たりIT支出を含
める。
• 推定方法
– 最小二乗法と(表9、表10)、操作変数法(表11)
16
4.生産関数推計による経営スコア(人的資源
管理)と企業パフォーマンスとの関係
• Miyagawa et, al (2010)では有意でなかった人的資源管理に
関する経営スコア(MS)が、すべて有意である。
– 人的資源管理の質の向上が、企業パフォーマンスの向上につながっ
ていることが確認できる。
• 従業員1人当りのIT支出も、企業パフォーマンスを向上させる
が、経営スコアとの交差項は有意ではなかった。(表9)
• 大卒比率の高さは、企業パフォーマンスの高さと連関してい
る。(表9)
• 外資系企業の方が企業パフォーマンスが高い。(表9)
• 過去3年または5年の企業データをプールした結果も単年度
の結果とほぼ同じ。この推計では非正規雇用比率は、企業
17
パフォーマンスの下落と連関している。(表10)
2006年のデータを用いた生産関数の推計
[1]
異常値処理をした変数
異常値処理方法
推計方法
被説明変数
分析期間
lnK
lnL
MS-HM
[2]
Y, K, L,
所定内外労働時間
Y, K, L,
所定内外労働時間
3σ
OLS
lnY
2006年
0.265***
(0.045)
0.565***
(0.082)
0.162**
(0.068)
3σ
OLS
lnY
2006年
0.265***
(0.044)
0.565***
(0.081)
MS-PC
0.772**
(0.332)
univ
0.010***
(0.002)
no-reg
-0.002
(0.002)
ln(age)
-0.075
(0.093)
Constant
-1.785*
(1.014)
Industry Dummy
Yes
サンプルサイズ
320
0.808
自由度修正済み決定係数
注:***は1%水準、**は5%水準、*は10%で有意
0.779**
(0.328)
0.010***
(0.002)
-0.002
(0.002)
-0.073
(0.093)
-1.371
(1.038)
Yes
320
0.808
[4]
Y, K, L,
Y, K, L,
所定内外労働時間 所定内外労働時間
3σ
OLS
lnY
2006年
0.300***
(0.058)
0.480***
(0.106)
0.185*
(0.105)
0.061**
(0.025)
IT
FO
[3]
0.033***
(0.006)
0.65
(0.398)
0.013***
(0.004)
-0.003
(0.002)
0.159
(0.138)
-1.843
(1.355)
Yes
140
0.822
3σ
OLS
lnY
2006年
0.300***
(0.057)
0.481***
(0.105)
0.069*
(0.038)
0.033***
(0.006)
0.660*
(0.395)
0.013***
(0.004)
-0.003
(0.002)
0.155
(0.138)
-1.356
(1.443)
Yes
140
0.822
18
2004-06年の企業データを用いた生産関数の推計
[5]
異常値処理をした変数
異常値処理方法
推計方法
被説明変数
分析期間
lnK
lnL
MS-HM
[6]
[7]
[8]
Y, K, L,
所定内外労働時間
Y, K, L,
所定内外労働時間
Y, K, L,
所定内外労働時間
Y, K, L,
所定内外労働時間
3σ
OLS
lnY
2004-2006年
0.258***
(0.027)
0.571***
(0.048)
0.159***
(0.040)
3σ
OLS
lnY
2004-2006年
0.257***
(0.027)
0.572***
(0.048)
3σ
OLS
lnY
2004-2006年
0.273***
(0.031)
0.532***
(0.056)
0.197***
(0.051)
3σ
OLS
lnY
2004-2006年
0.273***
(0.031)
0.533***
(0.056)
MS-PC
0.059***
(0.015
IT
FO
univ
no-reg
ln(age)
Constant
Industry Dummy
Year Dummy
サンプルサイズ
自由度修正済み決定係数
0.625***
(0.135)
0.009***
(0.001)
-0.003**
(0.001)
-0.031
(0.049)
-1.815***
(0.491)
Yes
Yes
993
0.807
0.628***
(0.135)
0.009***
(0.001)
-0.0024**
(0.001)
-0.030
(0.049)
-1.415***
(0.519)
Yes
Yes
993
0.807
0.0001
(0.0001)
0.774***
(0.154)
0.010***
(0.002)
-0.002*
(0.001)
-0.051
(0.068)
-1.402**
(0.582)
Yes
Yes
658
0.812
0.071***
(0.019)
0.0001
(0.0001)
0.779***
(0.152)
0.010***
(0.002)
-0.002
(0.001)
-0.051
(0.068)
-0.911
(0.624)
Yes
Yes
658
0.812 19
IVを用いた推計結果
異常値処理をした変数
異常値処理方法
推計方法
被説明変数
分析期間
ln(K)
ln(L)
MS-HM
[13]
[14]
Y, K, L,
所定内外労働時間
Y, K, L,
所定内外労働時間
3σ
IV
lnY
2006年
0.2229***
(0.0296)
0.6208***
(0.0480)
0.4435*
(0.2636)
3σ
IV
lnY
2006年
0.2223***
(0.0297)
0.6243***
(0.0472)
MS-PC
FO
1.2278**
(0.4914)
Constant
-2.7582***
(0.6782)
Industry Dummy
Yes
サンプルサイズ
275
0.743
自由度修正済み決定係数
注:***は1%水準、**は5%水準、*は10%で有意
0.1598*
(0.0961)
1.2757**
(0.4995)
-1.6509**
(0.6547)
Yes
275
0.7437
・ 操作変数
『企業活動基本調査』よ
り、以下の変数を使用。
「3年前の従業員数」
「大卒比率」
「MBA取得比率」
「管理職比率」
「中高年比率」
「非正規比率」
「本社従業者数」
「従業者数ハーフィン
ダール指数」
「外資系比率」
「資本金額」
「企業年齢」
20
5.人的資源管理の個別スコアと企業パフォーマンスとの関係
• 個々の人的資源管理と企業パフォーマンスとの関
係を調べるために、説明変数を個別の人的資源管
理のスコアまたは各スコアのダミー変数に置き換え
る。
• 昇進制度と報酬制度、モチベーション向上のための
工夫、研修による人材育成は、企業パフォーマンス
の向上と関係性がある。(表12)
• 企業データを3年プールして推計すると、上記の項
目の他に管理者の人的マネージメント評価が、企業
パフォーマンスの向上と関わりがあることがわかる。
21
表11 個別の人的資源管理スコアと企業生産性(2006年)
被説明変数:lnY
昇進制度と
モチベーション
報酬制度
向上の工夫
MS
0.051 *
0.073 **
(1.72)
(2.07)
lnK
0.268 ***
0.270 ***
(9.83)
(9.91)
lnL
0.567 ***
0.564 ***
(14.51)
(14.43)
univ
0.010 ***
0.010 ***
(5.31)
(5.27)
no-reg
-0.002
-0.002
(-1.18)
(-1.12)
ln(age)
-0.087
-0.076
(-1.07)
(-0.93)
FO
0.709 **
0.852 **
(2.12)
(2.53)
Constant
-1.536 ***
-1.594 ***
(-2.70)
(-2.80)
Yes
Yes
Industry Dummy
Yes
Yes
Year Dummy
サンプルサイズ
320
320
R2乗値
0.814
0.815
自由度修正済み決定係数
0.807
0.807
F値
103.295
103.833
0.000
0.000
Prob>F
低パフォーマンス 高パフォーマンス
0.004
(0.13)
0.270 ***
(9.80)
0.579 ***
(14.95)
0.010 ***
(5.24)
-0.002
(-1.33)
-0.101
(-1.23)
0.755 **
(2.25)
-1.493 ***
(-2.60)
Yes
Yes
320
0.813
0.805
102.082
0.000
0.034
(1.16)
0.269 ***
(9.85)
0.577 ***
(14.96)
0.010 ***
(5.27)
-0.002
(-1.23)
-0.091
(-1.11)
0.750 **
(2.24)
-1.594 ***
(-2.76)
Yes
Yes
320
0.813
0.806
102.632
0.000
優秀な人材
0.010
(0.24)
0.270 ***
(9.87)
0.579 ***
(15.00)
0.010 ***
(5.25)
-0.002
(-1.34)
-0.103
(-1.27)
0.746 **
(2.22)
-1.517 **
(-2.59)
Yes
Yes
320
0.813
0.805
102.100
0.000
22
MS
lnK
lnL
univ
no-reg
ln(age)
FO
Constant
Industry Dummy
Year Dummy
サンプルサイズ
R2乗値
自由度修正済み決定係数
F値
Prob>F
管理者の人的
マネジメント評価
0.048
(1.36)
0.270 ***
(9.88)
0.573 ***
(14.78)
0.010 ***
(5.38)
-0.002
(-1.26)
-0.097
(-1.19)
0.699 **
(2.08)
-1.521 ***
(-2.67)
Yes
Yes
320
0.814
0.806
102.830
0.000
研修人材育成
0.097 ***
(2.83)
0.264 ***
(9.71)
0.575 ***
(15.08)
0.010 ***
(5.35)
-0.002
(-1.05)
-0.092
(-1.14)
0.847 **
(2.55)
-1.656 ***
(-2.92)
Yes
Yes
320
0.817
0.810
105.370
0.000
OJT人材育成
-0.011
(-0.28)
0.271 ***
(9.83)
0.579 ***
(14.97)
0.010 ***
(5.24)
-0.002
(-1.31)
-0.103
(-1.27)
0.749 **
(2.23)
-1.453 **
(-2.50)
Yes
Yes
320
0.813
0.805
102.108
0.000
職員専門性
0.020
(0.55)
0.271 ***
(9.89)
0.577 ***
(14.86)
0.010 ***
(5.26)
-0.002
(-1.36)
-0.106
(-1.30)
0.765 **
(2.28)
-1.481 ***
(-2.60)
Yes
Yes
320
0.813
0.805
102.201
0.000
注:***は1%水準、**は5%水準、*は10%で有意
23
5.人的資源管理の個別スコアと企業パフォーマンスとの関係
• 個々のスコアをダミー変数とした場合の推計では、昇進制度と報
酬制度においては、単に成果主義の導入だけでは、企業パフォー
マンスの向上につながらず、目標管理制度も合わせて導入して、
企業パフォーマンスの向上へとつながることが確認できる。(表
12)
• 研修制度も、単に導入しているだけでは、企業パフォーマンスの向
上にはつながらず、企業業績との関連を意識し、会社間をまたが
る高度な内容の研修が企業パフォーマンスの向上と連関性を持
つことがわかる。(表12)
• 上記の2点は、企業データを複数期間プールしても同じ(有意性は
向上する)。
• OJTは、有意ではないが、企業パフォーマンスの向上につながらな
い。これは、黒澤・大竹・有賀(2007)でも同じ。おそらく一時点では、
OJTの増加は、短期的な企業の生産を減らす方向に働くためでは
24
ないか。
表 13 個 別 の 人 的 資 源 管 理 ス コ ア ダ ミ ー と 企 業 生 産 性 ( 2006年 )
被説明変数:lnY
昇進制度と
モチベーション
低パフォーマンス
報酬制度
向上の工夫
S2
-0.077
-0.120
-0.087
(-0.68)
(-0.75)
(-0.84)
S3
0.200 *
0.214 *
-0.074
(1.75)
(1.88)
(-0.70)
S4
0.122
0.188 *
0.011
(1.36)
(1.69)
(0.11)
lnK
0.266 ***
0.268 ***
0.267 ***
(9.73)
(9.85)
(9.63)
lnL
0.567 ***
0.561 ***
0.581 ***
(14.53)
(14.41)
(14.97)
univ
0.010 ***
0.009 ***
0.010 ***
(5.26)
(5.16)
(5.17)
no-reg
-0.002
-0.002
-0.002
(-1.26)
(-1.19)
(-1.40)
ln(age)
-0.089
-0.074
-0.095
(-1.09)
(-0.91)
(-1.16)
FO
0.726 **
0.848 **
0.773 **
(2.17)
(2.53)
(2.30)
Constant
-1.431 **
-1.451 **
-1.503 ***
(-2.50)
(-2.53)
(-2.61)
Yes
Yes
Yes
Industry Dummy
Yes
Yes
Yes
Year Dummy
サンプルサイズ
320
320
320
R2乗値
0.816
0.818
0.814
自由度修正済み決定係数
0.807
0.809
0.804
F値
90.066
90.797
88.379
0.000
0.000
0.000
Prob>F
注:***は1%水準、**は5%水準、*は10%で有意
高パフォーマンス
0.217 *
(1.84)
0.155
(1.08)
0.155 *
(1.66)
0.268 ***
(9.80)
0.580 ***
(15.03)
0.010 ***
(5.29)
-0.002
(-1.22)
-0.088
(-1.08)
0.761 **
(2.27)
-1.668 ***
(-2.89)
Yes
Yes
320
0.815
0.806
89.298
0.000
優秀な人材
-0.112
(-0.62)
-0.209
(-1.20)
-0.072
(-0.42)
0.267 ***
(9.75)
0.581 ***
(15.05)
0.010 ***
(5.26)
-0.002
(-1.19)
-0.087
(-1.07)
0.768 **
(2.29)
-1.428 **
(-2.39)
Yes
Yes
320
0.815
0.806
89.089
0.000
25
管理者の人的
マネジメント評価
S2
S3
S4
lnK
lnL
univ
no-reg
ln(age)
FO
Constant
Industry Dummy
Year Dummy
サンプルサイズ
R2乗値
自由度修正済み決定係数
F値
Prob>F
0.106
(1.30)
0.208
(0.90)
0.126
(1.16)
0.268 ***
(9.72)
0.571 ***
(14.66)
0.010 ***
(5.35)
-0.002
(-1.19)
-0.099
(-1.22)
0.754 **
(2.20)
-1.460 **
(-2.56)
Yes
Yes
320
0.814
0.805
88.842
0.000
研修人材育成
0.164
(1.14)
0.407 **
(2.46)
0.336 **
(2.34)
0.262 ***
(9.60)
0.570 ***
(14.91)
0.009 ***
(5.22)
-0.002
(-1.10)
-0.078
(-0.97)
0.901 ***
(2.70)
-1.558 ***
(-2.73)
Yes
Yes
320
0.819
0.810
91.683
0.000
OJT人材育成
-0.087
(-0.62)
0.014
(0.10)
-0.090
(-0.66)
0.271 ***
(9.83)
0.585 ***
(15.00)
0.010 ***
(5.19)
-0.002
(-1.36)
-0.113
(-1.38)
0.758 **
(2.25)
-1.493 **
(-2.58)
Yes
Yes
320
0.814
0.805
88.551
0.000
職員専門性
-0.050
(-0.16)
0.009
(0.08)
0.091
(0.67)
0.270 ***
(9.81)
0.577 ***
(14.81)
0.010 ***
(5.25)
-0.002
(-1.31)
-0.105
(-1.29)
0.765 **
(2.27)
-1.455 **
(-2.53)
Yes
Yes
320
0.813
0.804
88.062
0.000
注:***は1%水準、**は5%水準、*は10%で有意
26
6.結論、政策的含意と今後の課題
• 日本企業は、1998年の金融危機以降、リストラの過
程で人材育成にかえる費用も減らしている。→長期
的には企業成長及び経済成長にとってマイナス。
• 一方で日本企業は、人材を企業成長の第1の要素
として重視。
• Miyagawa, et al. (2010)で利用したインタビュー調査
と人事部アンケートから企業レベルでの、人材育成、
人的資源管理と企業パフォーマンスとの関係を実証
的に検討。
27
6.結論、政策的含意と今後の課題
• 経営スコア(人的資源管理)と人事部アンケート項目
との関係
①中高年比率の高い企業では、人的資源管理の経営
スコアが低い
②経営スコア(人的資源管理)と一人当たりのOff-JT受
講日数は正相関
・生産関数の推計において、人事部アンケートから得
られた労働時間数を考慮すると、経営スコアと企業
パフォーマンスの向上は連関している。
28
6.結論、政策的含意と今後の課題
• 個別の人材育成、人的資源管理項目と企業パ
フォーマンスとの関係
①成果主義は、目標管理制度が合わせて導入された
場合、企業パフォーマンスの向上に有効。
②企業業績と関連性があり、企業間でも通用する高
度に標準化された研修制度の導入も企業パフォー
マンスの向上と関係がある。
29
6.結論、政策的含意と今後の課題
• 政策的含意
①自社での研修制度が難しい場合、規模の経済性を
有する高度に標準化された人材の育成機関が有効。
②経営開示度の低い非営利機関に適用。
30
6.結論、政策的含意と今後の課題
• 分析の課題
(1)因果性が未解明:最新の「企業活動基本調査」の
データを使って再度検証する必要がある。
(2)ただし、企業業績が良い場合のみ、良好な人事管
理制度や人材制度を採用しているとすると、長期的
な人的資源開発は難しい。
(3)グローバル化に伴い、海外の人材をどのように生
かしていくかが日本企業にとっても課題となっている。
→新しいインタビュー調査に取り入れる。
31