企業の安全活動 ~ なぜ、安全が必要なのか ~ ~ 企業は今、何を行うべきか ~ ~ なぜ、安全が必要なのか ~ ある話し ある大きな企業の総務部長が、労働災害で死亡した社員の家 にお悔やみに行き帰ろうとした時に、2人の幼い子供を膝に抱 えて悲しみに暮れていた奥さんが、 「今、会社には何人の方が働いていますか」 と問いかけてきました。 「グループ全体で約8千人です」 と答えると、 「主人が死んで会社は8千人のうちの1人を無くしたわけですね。 しかし、私どもは全てを失いました」 小さく、細い声で、そう言われたそうです。 労働災害の推移① 50万人 10万人 7千人 1千人 注)死傷者数は、昭和47年までは休業8日以上。48年以降は休業4日以上 (資料出所:死亡者数は厚生労働省安全課調べ。死傷者数は、昭和47年ま では労働者死傷病報告、48年以降は労災保険給付データ) 労働災害の推移② • 異常期(戦後~昭和40年代) – 経済優先(高度成長期) – 法規制の未発達 • 減少期(昭和後期) – 法整備の効果 – 企業の安全への投資(労災による損失の認識) • 停滞期(平成初期) – 事後対策中心 • 現在 – 事後対策⇒予知対策(マネジメントシステム化) 労働災害による企業の損失 企業の損失の前に生命の損失があることを忘れない。 • 災害コスト – 法定内外補償、人的損失、物的損失、生産損失 など • 刑事的責任 – 労安法、刑法(業務上過失) • 民事賠償 • 社会的責任(信頼)の失墜 – 人材確保困難、取引継続困難など 労働災害コストの例 輸送用機械製造/300~999人/組立ロボットへの挟まれ/死亡 災害コスト区分 a.労災補償(医療費、休業補償・・・) コスト 17,662,957円 法定補償 b.会社支出(会社独自の規定、弔慰金・・・) c.被災者以外の人的経費(救援・調査・対策者の工数・・・) d.物的損害及び復旧費(建物・設備の損害、復旧・・・) e.生産損失(生産減少分、作業手待ち工数・・・) f.安全対策費(設備の安全対策、保護具、安全教育・・・) 合計 36,770630円 8,400,448円 0円 29,409,280円 5,574,080円 97,817,395円 安全の費用対効果 1.0 (費用) 安全対策として直接的 に投じた「安全対策の 費用」 : 2.7 (効果) 発生した労災事故に よって生じる「災害発 生に係る諸費用」 (平成11年 中災防 「安全衛生対策の費用対効果に関する調査研究」) (デルファイ法による分析) 安全費用の投資先 【これまで】 安全費用 (保険) 災害発生 手当 安全費用 (保険) 災害発生 手当 安全費用 (投資) 手当 災害発生 【これから】 法的な責務 【「危険」という用語で労働安全衛生法を検索すると】 – 第10条(総括安全衛生管理者)の第1項第1号 • (職務として)労働者の危険又は健康障害を防止するための措置 に関すること – 第17条(安全委員会)の第1項第1号 • 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること – 第20条及び第21条(事業者の講ずべき措置) • 機械等、爆発性の物等、エネルギー等、作業方法、作業場所等に よる「危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」 「災害の防止」ではなく 「危険の防止」 ~ 企業は今、何を行うべきか ~ デュポン社の例① 【我々は安全と環境確保が確保できないならば、製品を製造し たり、取り扱ったり、使用したり、販売したり、輸送したり、破棄 したりしない。 】 • • • • • • • • • • すべてのけがと職業病は防止できる けがと職業病を防止することは、ラインの各階層の管理の責任である 安全は雇用の条件である 雇用者が安全に働けるよう、訓練を行わなければならない 安全と職業病予防のために監査を行わなければならない 欠陥は速やかに修正しなければならない けがそのもののみならず、その可能性のある事象についても対応すること 仕事を離れたときの安全も、仕事中の安全と同様に重要である けがと職業病を予防することはよい仕事である 人こそが安全や職業病防止の計画における最も重要な要素である デュポン社の例② 【「違反」には厳しく、「エラー」にはやさしく】 人は、当たり前に「エラー」をする生き物です。 会社は、その「エラー」を災害につなげない環境作りの責任があります。 その環境は、ルールによって成り立っています。 もしかしたら、 製造者(提供者)にも? 人は、容易にルールを守ることができます。 ルールに「違反」すると、その環境が損なわれ災害につながります。 だから、「違反」は絶対に許しません。 ルール違反は見て見ぬふり、 ミスをすると怒る。 目の向け所① 【自然災害】 【 災 害 】 【人為災害】 ・労働災害のほとんどは人為災害 ・人為的に作られた危険 ・だから全て人為的に防ぐことが可能 目の向け所② 【事故とは、当面する事象の正常な進行を阻止または妨害す る出来事である。】 フォークリフトの通行帯に時々パレットが はみ出している。 事故 フォークリフトのつめがそのパレットに引っ 掛かり、積んでいた鋼材が崩れた。 崩れた鋼材が運転者に当り負傷した。 人為災害 目の向け所③ 1 死亡、重症、 廃失 10 軽傷 30 600 災害から学ぶ時代 物損 危険を 見つける時代 ヒヤリハット 見つかった危険 バードの法則 「1+10」の対策ではなく 「30+600」を対策する。 予知の重要性① 危険源 「傷害又は疾病、財産の損害、職場環境の損害、又はそれ らの組合せの面からの危害をもたらす潜在的な源や状況」 危険(危険源)の無い会社(職場)は有り得ない 大事なことは、「見つける」こと、「わかっている」こと 予知の重要性② レベル1 災害が起きたら 再発防止 十数年前 レベル2 ヒヤリハットを抽出 ~改善 現状 レベル3 自ら見つけて ~改善 これから 予知の重要性③ 危 険 源 人 危 険 な 状 態 ( リ ス ク 発 生 ) 安 の全 徹 底管 理 安 全 管 ・ 不理 徹の 底不 ・ 故足 障・ 不 適 切 発 生 事 象 ( 危 険 な 現 象 の 発 生 ) 回 避 成 功 回 避 失 敗 ヒ ニヤ アリ ミハ スッ ト 健 災 康( 障害 被害発 害・生 ) 予知の重要性④ 危 険 源 危険源そのものを無くすことは一般的に難しい ・フォークリフトを使用せざるを得ない ・高所へ上がらざるを得ない 接 触 接触を絶つ(接触しずらくする)ことは一般的に容易 ・保護具(ヘルメット、安全帯など) ・立ち入り規制 ・保護カバー 対 人 象 ・ 物 危険源を認識させることも安全対策の一つ ・危険源(物、箇所、状況)の表示 ・警報音 ・軽度な接触の誘発 リスクアセスメントの事例① 危険な状況 重篤度 可能性 リスク フォークリフトでトラックに荷積み 中、トラックの運転者が勘違いし、 トラックを発進させ、フォークリフト が横転する。 × ひどい災害 △ 起き得る Ⅲ 要対策 対策 重篤度 可能性 リスク ①フォークリフト作業中はトラック × ○ への搭乗を禁止する。 ひどい災害 起き得ない ②トラックのタイヤ留めを設置する。 Ⅱ 周知 リスクアセスメントの事例② 危険な状況 重篤度 可能性 リスク フォークリフトでH型鋼(2t)をト ラックへ積み込んでいたところ、ト ラックの荷台上で位置決めの合図 をしていた作業者に気づかず、 フォークリフトでH型鋼ごと作業者 を押してしまい、荷台から転落さ せる。 △ 通常災害 △ 起き得る Ⅲ 要対策 対策 重篤度 可能性 リスク 位置決め合図は荷台上ではなく、 トラックの横に別途、作業台を設 けて行う。 △ 通常災害 ○ 起き得ない Ⅱ 周知 リスクアセスメントの事例③ 【リスク低減のための階層】 個人防御 保護具の着用(最終手段) リスク低減 運用管理(手順やルール作り) 作業者に適切な能力を持たせる 工程技術による管理(最新技術の導入) リスク除去 危険源からの人の遮断隔離(立入り制限) 除去不可能ならリスクを削減(低電圧器具の採用) 危険源の完全な除去(危険物質の使用を中止し代替物へ) マネジメントシステムの活用 P A 職場の現状調査 ~「危険(危険源)」を知る~ ~「どれだけの危険」かを知る~ 次の安全対策を 決める 安全対策の計画 D 安全対策の実施 C 安全対策の確認 世の中のマネジメントシステム 【OHSAS18001(準ISO)】 – 環境ISOと80%類似のシステム – ISO同様の認証制度あり 【厚生労働省マネジメントシステム】 – 労動者の安全衛生管理についての行政指針 【国内業界団体規格】 – 業界団体が固有の安全衛生についてまとめたもの 【自社のマネジメントシステム】 – 会社に合った(必要な)安全衛生活動のルール
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