経済原論IA 第5回 西村「ミクロ経済学入門」 第5章 消費者需要理論の応用と拡張 京都大学経済学部 依田高典 1 需要理論の応用 序数的効用・無差別曲線 → それ自体の測的が困難 実際に測定し、使うことが可能な道具 ・顕示選好理論 ・消費者余剰など 2 1. 顕示選好理論 価格(P10,P20)の下で、需要A0=(X10,X20) 価格(P11,P21)の下で、需要A1=(X11,X21) A0はA1よりも顕示選好される: P10X11+P20X21≦ P10X10+P20X20 顕示選好の弱公理: 上のとき、次式が成立すること P11X11+P21X21< P11X10+P21X20 3 X2 もしもA0がA1よりも顕示選好されるの ならば、その逆は成り立たない (P11,P21) A1 O A0 (P10,P20) X1 4 2. 指数の理論 数量指数: ラスパレイス: パーシェ: P Q 価格指数: ラスパレイス: パーシェ: P P LQ P10 X11 P2 0 X 21 0 0 0 0 P1 X1 P2 X 2 P11 X11 P21 X 21 1 0 1 0 P1 X1 P2 X 2 P11 X10 P21 X 2 0 LP 0 0 0 0 P1 X1 P2 X 2 P11 X11 P21 X 21 0 1 0 1 P1 X1 P2 X 2 5 3. 指数の分類 方式 比較対象 ウェイト ラスパレイス 分子:比較年数量 分母:基準年数量 基準年価格 パーシェ 分子:比較年数量 分母:基準年数量 比較年価格 ラスパレイス 分子:比較年価格 分母:基準年価格 基準年数量 パーシェ 分子:比較年価格 分母:基準年価格 比較年数量 数量指数 価格指数 6 4. 指数と生活水準 比較年の基準年に対する名目所得の比率: P11 X11 P21 X 21 E 0 0 0 0 P1 X1 P2 X 2 顕示選好の弱公理: PQ≧1 → E≧LP & E>PP パーシェ数量指数が1より大きければ、いずれの方式の物価上昇よりも名 目所得の上昇が大きい(実質所得の上昇) LQ≦1 → E≦PP & E<LP ラスパレイス数量指数が1より小さければ、いずれの方式の物価上昇より も名目所得の上昇が小さい(実質所得の下落) 7 5. 補償変分、等価変分 価格・所得が変化した後の効用変化の評価 補償変分:変化後の価格の下で、変化前と同じ 効用を与える最低支出額で評価 C=(P11X11+P21X21)ー (P11X1C+P21X2C) 等価変分:変化前の価格の下で、変化後と同じ 効用を与える最低支出額で評価 E=(P10X1E+P20X2E)ー (P10X10+P20X20) 8 X2 補償変分:変化後の価格の下で、変化 前と同じ効用を与える最低支出額で評 価 (P10,P20) C| O A0 AI AC (P11,P21) X1 9 X2 E | (P10,P20) 等価変分:変化前の価格の下で、変化 後と同じ効用を与える最低支出額で評 価 AE A0 AI O (P11,P21) X1 10 6. 消費者余剰 消費者余剰 S = □OGBDー □OGBP =消費者が支払っても良い金額ー実際の支出額 貨幣の限界効用一定の時: S=C=E 消費者余剰=補償変分=等価変分 11 P D B P 消費者余剰 DD O G X1 12 7. オファー曲線 価格(P10,P20)の下で財の初期保有量A0=(X10,X20) 価格(P11,P21)の下での最適需要A1=(X11,X21) 予算制約式: P11X11+P21X21= P10X10+P20X20 オファー曲線:価格(P11,P21)が変化(初期保有量A0 を中心に予算制約線が回転)するとき、効用が最 大化される点の軌跡 13 X2 オファー曲線:予算制約線が回転 するとき、効用が最大化される点の 軌跡 A1 A0 O X1 14 8. 後方屈曲供給曲線 L0:利用可能時間、L1:余暇、L2:労働時間 ( L0 = L1 + L2 )、I:所得、w:賃金 所得制約式:I=wL2からwL1+I=wL0 賃金wの上昇に関するオファー曲線: 賃金が十分高いとき、労働時間が減少し、余暇が増える ∵賃金の上昇 → 代替効果により、余暇よりも労働が増える。 → しかし、労働は下級財で、余暇は上級財なので、所得効果に より、次第に余暇が増加し、労働は減少する → 所得効果が代 替効果を上回り、逆転する 15 賃金 後方屈伸労働供給曲線 w* O 労働 16 9. 市場需要曲線 ある価格に対する、家計全体の需要量 (1)個々の家計の需要曲線が右下がりならば、市場の需 要曲線も右下がり (2)個々の家計の消費者余剰の集計が、市場の消費者 余剰になる (3)全ての財の価格と所得が同じ比率で変化しても、市 場の需要曲線は変化しない 17 P 市場の需要曲線は、各家計の 需要曲線の水平和 O X ΔX1 +ΔX2 +ΔX3 +・・・ 18 山本「演習」(時間に余裕がある場合) 選択問題15. C=(p11x11+p21x21)-(p11x10+p21x20) =(1*4+1*4)-(1*2+1*2) =4 選択問題16. E=(p10x1e+p20x2e)-(p10x10+p20x20) = (4*2+1*8)-(4*1+1*4) =8 19
© Copyright 2024 ExpyDoc