医療制度改革の主要な論点 混合診療、株式会社、医療特区について 2002年11月26日 日本経済研究センター 八代尚宏 1 医療の質向上と整合的な医療改革 経済社会環境の変化への対応 人口高齢化・疾病構造変化で医療費拡大 感染症・急性症から慢性症主体へ 2. 国民皆保険体制の維持 公的保険で基礎的医療の保障 私的保険で利用者の多様なニーズ対応 3. 供給者本位から利用者本位システムへ転換 画一的保障から選択可能なサービスへ 医療機関の競争を通じた質の向上 1. 2 混合診療の意味 ・保険財政の制約を前提とすれば 医療技術進歩を保険財政で制約しないこと 保険給付外での多様な治療方法の選択肢 ・患者負担の「公平性」とは 公的保険の対象外となる医療の受益者拡大 ・混合診療の対象可能性 医療材料・薬剤・介護サービス 特定の医療分野:選定医療・遺伝子治療 質の高い民間医療機関の資本コスト 3 株式会社の参入問題とは 1. 患者の利益を守るための手段として ・経営主体の規制:医療法人の善意・倫理性に依存 ・医療機関の競争を通じて劣悪な医療機関の淘汰 2. 配当禁止は利益追求よりも資金調達方法の規制 ・解散時に資産分配可能な医療法人は非営利組織か ・銀行借入と比べて医療法人の株式発行のみ禁止 ・経営主体の規制のみで医療行為への規制なし 3. 医療の「非営利性」とは精神規定のみ ・医師の応召(サービス供給)義務の不明確さ ・慈善医療比率で認定される米国の非営利病院との差 4 医療サービス利用者の選択肢拡大 • 医療の情報公開・第三者評価の拡充 治療実績に関する広報の規制緩和 医療評価機構の積極的な活用 • 医療機関の多様な競争促進 公的・民間病院間の役割分担 多様な経営主体間の競争条件確保 • 医療事務のIT化・外部委託推進 カルテ・レセプトの電子化・個人への開示 医療の標準化・「根拠に基く医療」の確立 5 構造改革特区の意義 • • • • • • • 画一的な規制を全国適用することの弊害 全国的意思決定では少数意見の反映なし 特区は多様な制度の社会的実験の手段 地域における「制度間競争」の必要性 生命・身体に関わる規制は特区の対象外か? 新薬認可時の有益性と有害性のバランス .新しい制度導入のスピードアップを図ること 6 医療特区の効用 • 先端医療特区の要望を全国的に適用。 • 製薬企業でなく医療機関主体の臨床研究 が治験に位置付けられ特定療養費の対象。 • 現在の医療保険で提供できない医療サービ スを特定地域で提供し、健康水準の向上。 • テレメディシンを利用した地域ベースでの喘 息、高血圧症、糖尿病の治療 • 特定の待機的手術(内視鏡手術センター 等)を専門とする高度先進医療病院。 7 規制改革は選択肢の拡大 • • • • • • • 医療は公益性を持つ「サービス産業」 人々の健康維持への需要は限界なし 高度技術・研究開発が必要な成長分野 官僚統制・社会主義的制度が発展抑制 基礎的医療と選択的医療との組み合わせ 医療機関の自由な競争が質向上の前提 地域からの改革を促す特区制度の活用を 8
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