会社の仕組み

『企業の仕組み』
(2013年度秋学期)
第4回 株式について
担当: 樋口徹 ([email protected])
※ 配布資料は「 http://www.thiguch.net/ 」に掲載
代金
協力者
資源調達
(取引先/
家計/市 (人材・材料等)
場)
代金
会社
顧客
販売網を整備)
(消費者や
利用者)
財やサー
(加工し、流通 ビス提供
会社に必要なものは
資源(人、モノ、金、情報)+仕組み
出資(出資者)⇒株式発行(株主募集)
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株式とは:株式会社の社員(株主)の地位を形にしたもの
ある会社を創業するのに、10億円の出資が必要だとする。
Aケース: 5人が2億円づつ出資することを決定
(複数の人からの出資なので出した金額によって持分比率を
区分けする必要がある。会社の発行株式総数を1000株とす
ると、各自が保有する株は
200
株となる。)
Bケース:あるお金持ちが一人で10億円出資を決定
(100%所有状態。会社の発行株式総数を1000株とすると、こ
の人が保有する株は 1000 株となる。 )
※発行株式総数は自由に決定できる。細かい方が、沢山の出
資者を募りやすいが、株主総会の案内が事務手続きが大変
になる。
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会社法で認められている株主の権利
第百五条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その
他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金 の配当を受ける権利
二 残余財産の 分配 を受ける権利
三 株主総会における 議決権
2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えな
い旨の定款の定めは、その効力を有しない。
※株主総会での議決権を与えない旨を定款に記してあれば、
議決権の無い株式を発行できる。
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会社法上の株式の内容についての特別の定め
第百七条 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として
次に掲げる事項を定めることができる。
一 譲渡による当該株式の取得について 当該株式会社 の
承認を要すること。
二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得
を 請求 することができること。
三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたこ
とを条件としてこれを 取得 することができること。
2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事
項を定めるときは、当該各号に定める事項を 定款 で定め
なければならない。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認
を要すること 次に掲げる事項 (以下省略)
※中小企業の多くは譲渡制限株を発行することが多い
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会社法上の異なる種類の株式の発行について
第百八条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内
容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。(中略)
一 剰余金の配当
二 残余財産 の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の
承認を要すること。
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその
取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じ
たことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議
によってその 全部 を取得すること。(中略)
2 株式会社は、(中略)当該各号に定める事項及び発行可能種類
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株式総数を 定款 で定めなければならない。
会社法上では、株主は平等な権利を持つ
第百九条 株式会社は、株主を、その有する株式の 内容
(種類) 及び 数 (保有株式数)に応じて、平等に取り
扱わなければならない。
※余剰金配当(請求権)、議決権、残余財産分配(請求権)
などを平等に取り扱わなければならない。
平等原則の例外
非公開会社(譲渡制限が定められた株式を発行する会社)の
定款 の中で、社長を兼ねている株主を優遇する旨の記載
がある場合。
⇒同じ内容(種類)の株でも、保有する数に応じて、平等に
取り扱わなくてもよくなる。
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株主の平等な権利に関する例外の例
• 東洋大株式会社が1000株の株式を発行し、平成25年度は
300万円の剰余金を稼ぎました。
• 東洋大株式会社にはH氏とT氏の2人の株主がいます。
• H氏が東洋大株式会社の80%保有し、残り20%をT氏が保有し
ています。
• H氏は社長を兼任し、T氏よりも長時間会社のために働き続け
ています(会社への貢献の度合いが違う)。
• 平成26年6月の株主総会で、H氏が剰余金の90%(270万円)、
T氏が残りの10%(30万円)を受け取る案が承認されました。
• これは違法?
両者が同じ種類の株式を持っていたら⇒平等ではない(違反)
H氏の保有株式は剰余金を優先的に配当を受ける権利がある
株式(=剰余金配当優先種類株式)⇒定款記載済み⇒合法
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株式会社における株主と株式
• 株式会社の大前提: 所有と経営の分離 (気軽に出資可能)
• 株主の数は1人~
(株式が細分化されれば、購入しやすい)
株式の主な特徴
• 社員の地位(会社の所有者となり、剰余金の配分を受けられる)
• 株式の 細分化 によって出資者が募りやすく(少額出資可能)
• 同じ株式は所有者に関わらず 均一 (管理しやすい)
• 割合的単位 が重要視される(所有と経営の分離⇒株主の個
性より、保有株式の割合が重要)
※株式会社の形態を通じて、多数の人が出資しやすくなった。こ
れによって、 遊休資産 (箪笥預金等)の有効活用が進んだ。
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株式会社の発行する株式(普通株式と種類株式)
1種類の株式発行
普通
株式
譲渡
制限付
株式
取得請
求権付
株式
取得
条項付
株式
特別の定め
なし
当該株式会
社の承認必
要
株主が会社
に取得請求
会社が特定
の事由で株
主から取得
複数種類の株式発行
優先・劣後配当種類株式
配当の優先順位
残余財産優先・劣後分配
種類株式
分配の優先順位
議決権制限種類株式
完全無議決株式なら剰余金
の配当は優先
譲渡制限種類株式
当該株式会社の承認必要
取得請求権付種類株式
株主が会社に取得請求
取得条項付種類株式
会社が特定の事由によって
株主から株式取得(一部)
全部取得条項付種類株
式
会社が特定事由でその種類
の株式を取得(全部)
拒否権付種類株式
株主総会の決議に加えて、
種類株主総会の決議必要
選解任種類株式
種類株主総会によって取締
役・監査役の解任が可能
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全部取得条項付種類株式の発行と取得手続き
背景:100%減資(=経営破たん・再生)が会社法施行前は困難で
あった。なぜなら株主全員からの 同意 を得るのは困難で
あったからである。
会社法施行: 全部取得条項 付種類株式の発行可能
取得手続き:株主総会の特別決議(承認)が必要となる。
※特別決議とは、 ➀議決権の過半数を有する株主が出席し、
②出席者の議決権の2/3以上の株主の
承認が必要(通常は議決権の過半数)
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全部取得条項付種類株式による100%減資手続き
発行済み全部取得条項が無い株式(普通株式など)
⇓
「全部取得条項が無い種類株式に全部取得条件項を付与する」旨
を明記するように 定款 変更必要
⇓
株主総会で定款変更の 特別決議 後、全部取得条項が付与さ
れる種類株式の株主による種類株主総会での 特別決議
※特別決議(対価に関して)に反対する全部取得条項付種類株式保有者は、
社員であることを辞めるために、株式買取請求権(会社側に公正な価格で
買い取らせる権利)を行使し、その価格の決定は裁判所に申し立てを行える。
⇓
全部取得条項付種類株式の取得実行(株主総会の特別決議)
⇓ ※買取価格に不満がある株主は裁判所で価格決定の申し立てを行える。
取得(100%減資後、再生へ)
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株券の電子化 (非上場会社は対象外)
「社債、株式等の振替に関する法律(2001年制定)」 (金融庁)
上場会社の株式を ペーパーレス化 し、証券会社などの金融
機関に開設された口座の株主の権利(発生、移転、消滅)を証券保
管振替機構(通称「 ほふり 」)が集中的に管理するようになった。
※2009年には上場会社の株式は電子化された。
電子化の理由:盗難、紛失、偽造が発生することに加え、株券の発
行や 名義の書き換え には時間と費用がかかる。
(仲介業者)
(実質的な取引)
投資家A
支
譲
払
渡
投資家B
株式会社
売り注文
証券会社C
取引
成立
買い注文
証券会社D
連携
上場
証券保管
振替機構
(ほふり)
振替実施
(権利管理)