株式・資金調達に関する改正(1)

株式・資金調達に関する改正(1)
「平成13年の改正」
1:額面株式の廃止
2:単元株制度
3:金庫株解禁
4:新株予約権
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額面株式の廃止(1)
• 従来のルールの根拠
:あまりに小さい金額の株式を認めると、管理コストが増
大し、極めて少額の出資者を株主として扱うことには弊
害もある。
→昭和56年改正により出資単位引き上げの方向での改
正が終了(単位株制度)
• 株式の券面額が廃止→株式の大きさが自由化
• 一株当たり発行価額、純資産額の5万円の制限が
撤廃(202等の削除、218Ⅱ後段、284ノ2Ⅱ改正な
ど)
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• 会社設立時の株式の発行価額に関する制限撤廃
額面株式の廃止(2)
:株式の大きさ自由化の利点
• 株式分割がより自由にできる
– 分割後の一株あたり純資産額が5万円以上と
いう制限が撤廃
– 株主総会による定款変更決議が不要に(取
締役会決議で定款変更可能に)
– 同時に授権資本の枠を拡大する定款変更も
取締役会決議で可能。ただし、2種類以上の
株式を発行している会社は株主総会における
定款変更の決議が必要(218Ⅱ)
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額面株式の廃止(3)
:株式の大きさ自由化の利点
• 株式の併合がより自由にできる
・併合後の一株あたりの純資産額規制が廃
止
・2株を1株にする場合、3株保有していた株
主にとって、1株と0.5株という端株を保有
することとなるため、株主総会の特別決議
は必要。
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単元株制度(1)
• 単位株制度(暫定的制度として導入された)
・昭和56年改正で株式の単位が引き上げられた
→一株5万円(一株50円の会社が多かったので、
暫定的に1000株を1単位とみなすような単位株制
度が導入された)
• 問題点:
・一単位株の価値が大きすぎて流動化しにくくなる。
・一単位の大きさを小さくすると多数の小口株主を
管理しなければならない(コストの増大)
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単元株制度(2)
• H13改正:単位株制度を廃止→単元株制度
を導入
・一単元の株式数を会社の実力に応じて自由に定
めることができる(流動性の確保)と同時に、一
単元ごとに一個の議決権を与えることで管理コ
スト節減の要請に応えることができる制度(恒久
的制度)
• 各会社ごとに一個の議決権を行使できる株
式の大きさが異なる(1単元を100株とすること
も500株とすることもできる)
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単元株制度(3)
• 各会社は、定款で一定数の株式を一単元の株式と
する旨を定めることができる。
• 株主は一単元について一個の議決権を有すること
となる(一株一議決権から一単元一議決権)。
• ただし、一単元の株式数は1000個を超えてはなら
ず、発行済株式総数の200分の1=(5%)に相当
する数も超えることができない。
• 数種の株式を発行する会社は、種類ごとに一単元
の株式数を定めなければならない。
• 一株に満たない端数は金銭処理される→端株制
度と併用はできない
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単元株制度(4)
• 一単元の株式数の変更
◎一単元の引き下げ・定めの廃止
→株主にとって有利(単元未満株が減少)であるた
め取締役会決議だけで定款変更可能
◎一単元の引き上げ
→株主総会の特別決議による定款変更が必要
平成14年改正により、単元未満株式を有する者は、会社
に買取を請求することができることとされた。また、端株
同様買増制度が導入され、市場価格または裁判手続に
よる価格で売買されることとなる。
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金庫株解禁(1)
• いわゆる「金庫株」とは?
会社が消却目的でなく取得し、保有している自己
株式のことをいう(商法上の用語ではない)。
• 従来、自己株式の取得は原則として禁止されてい
たため、日本では金庫株という使い方は認められ
ていなかった。
• 欧米では既に認められている国もあり、またおおむ
ね規制緩和の傾向にある。
• わが国も取得・保有が徐々に規制緩和されたてき
た。(消却目的、ストックオプションなど)
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金庫株解禁(2)
:自己株式取得の原則禁止の根拠
1. 資本充実・維持の原則を害する:資本の空洞化
2. 株主平等原則に反する:特定の株主からのみ取
得する場合
3. 株価操作・インサイダー取引の懸念
4. 会社支配権の不当な維持に利用されるおそれが
ある
個々の弊害に対する規制を行うのではなく、一般予防
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的に取得を禁止していた(旧商法210条)
金庫株解禁(3):解禁の背景
• 株式持合いの解消に伴う需給バランスの調整
「株式市場の安定化」目的(バブル崩壊と時価会計)
• 機動的な企業再編:合併・株式交換・会社分割へ
の活用(新株発行に代えて自己株式を交付:代用自己
株)
• 企業年金の拠出・運用における制度上の障害除
去:自社株による401kプランの運用
• (敵対的企業買収からの防衛策)
消却義務・処分義務のない「金庫株」としての保有が
認められた(210)
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金庫株解禁(4):規制緩和の内容
•
•
•
•
目的規制の廃止
取得財源の拡大
数量規制の撤廃:財源規制による資本充実
取得方法の拡充:取得手続の整備
弊害の防止策
•定時株主総会による授権に基づく取得
•取締役会決議による取得:子会社の保有する親会社株式の取得(211ノ3)
•その他定時株主総会によらない取得(株式買取請求への対応、営業の全部承
継による吸収分割、合併、他の会社の営業全部譲受)
•特定の者から買い受ける場合は特別決議が必要、ない場合は市場取引か
公開買付の方法による(株主平等原則への配慮)
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金庫株解禁(5)
:金庫株の消却と処分
• 従来の消却・処分の義務はなくなり、会社が経営
判断で消却・処分すべきこととなった。
• 自社株消却の機能
1発行済株式総数を減らし株価を適正に調整
2株式を減らすことでROE等財務指標を向上
3持合崩れによる需給バランスを調整
• 処分:原則として新株発行の手続に準じた扱いが
なされる。
• 消却:取締役会の決議で消却する株式の種類と数
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を決める→株式失効の手続
金庫株解禁(6):代用自己株式
• 新株予約権制度に伴い、新株予約権の行使
があった場合に、新株発行に変えて金庫株を
それに充てることができる:代用自己株式と
いう。
• ストック・オプション、吸収合併、株式交換、吸
収分割の際に発行されるべき新株の代わり
に活用することもできる。
新株が発行されないため、配当負担の増加、株式価値の希釈化
を心配する必要がない、新株発行事務が省略でき機動的な企業
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再編が可能というメリットがある。
新株予約権(1):意義
• 新株予約権者が会社に対して権利行使すれ
ば新株を取得できる権利
• 会社は権利行使がなされた段階で、新株予
約権者に対して新株を発行するか、これに代
えて自社株を移転する義務を負う
• 新株予約権は○個の新株予約権と個数で表
され、1個の新株予約権について複数の株式
を割り当てることができる
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新株予約権(2):予約権の発行
• 発行には有償発行と無償発行がある
• 有償発行の場合、予約権を発行する時点と予約
権を行使する時点で払込がなされる
• (新株予約権の発行価額+権利行使に際して払
い込まれる金額)÷割り当てられる株式の個数=
新株1株当たりの発行価額
• 無償発行の場合は、予約権の発行時に払い込む
必要がない
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新株予約権(3):発行手続
新株予約権発行事項を取締役会で決定
株主以外の者に特に有利な条件で発行する場
合(ストックオプション)は総会の特別決議が必
要
III. 新株予約権証券の発行と新株予約権の登記:
予約権は原則として譲渡可能
IV. 譲渡制限(例)取締役会の承認を要する
V. 株式譲渡制限会社の株主には新株予約権の引
受権が認められる
I.
II.
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新株予約権(4):ストック・オプション①
改正前
付与するもの
新株引受権
株式取得の態様 新株発行
自己株式
権利行使期間
改正後
新株予約権
新株発行または代
用自己株式
総会の付与決議 期間制限なし
から10年以内
付与株式限度数 発行済株式総数 上限・下限なし
の10分の1
(数量規制の廃止)
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新株予約権(5):ストック・オプション②
改正前
株主総会決議 新株引受権方式は
特別決議、自己株
式方式は普通決議
付与対象者
取締役と使用人に
限定
対象者氏名等 株主総会で必要
の開示
定款の定め
新株引受権方式の
場合は必要
改正後
特別決議
制限なし(割当先の
自由化)
不要
不要
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新株予約権(6):ストック・オプション③
改正前
改正後
付与理由
正当な理由の開示 必要とする理由の開
が必要
示
譲渡
不可
原則可能(発行決議
で譲渡制限が可能)
消却
不可
発行決議で消却事
由等を定めておけば
可能
ストック・オプションは新株予約権に整理され、大幅に規制緩和
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された