平成17年度卒業論文 青果物の物流管理に関する研究 課程名:流通情報工学課程 学籍番号:2002735 氏名:藤木貴之 指導教官:鶴田三郎 教授 黒川久幸 助教授 1 研究背景 青果物の価値は品質が鍵となる ↓ 今までに様々な品質維持のための研究が されてきたが様々な問題点が残っている ↓ 青果物物流の現状を整理し、どのような問 題点があるかを明確にする必要がある 2 研究目的 • 「物流管理」の定義、「青果物の品質」を定 義し、青果物物流の現状を整理する • 青果物の品質を維持し、良い状態で届け るために必要なことの明確化 • 品質維持の視点から見た青果物物流の問 題点の解決策の提言 3 「物流管理」の定義 「管理」とは、本研究では「ある一定の水準 を保つための維持作業と、より良い水準に 引き上げるための改善作業」とする 青果物を取り扱うので 「物流管理」とは、本研究では「ある一定の 青果物の品質を保つための維持作業と、 より良い水準に引き上げるための改善作 業」と定義する 4 品質の定義 本研究での品質の定義(品質の評価項目) 腐敗の度合 青果の糖度 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 青果中の水分 凍結の有無 損傷の有無 変色、糖度硬度減少や悪臭、有害物質の発生 青果の甘味が減少し、味が悪くなる 青果の硬さが減少し、食感が悪くなり、外力に弱くな る 褐変や黒変等、新鮮とは思えない色に変色する 様々なカビが発生 青果のみずみずしさが減少し、食感が悪くなる 凍結により内部組織の損傷 果皮や果肉に裂傷、打撲、陥没、破壊が生じる 5 評価項目と因子の関係 腐敗の度合 青果の糖度 青果の硬度 変色の度合 カビの有無 青果中の水分 凍結の有無 損傷の有無 エチレンガス 湿度 温度 振動 衝撃 6 維持作業 ・エチレンガス → エチレンガスの分解、感受性抑制 ・温度・湿度 → 低温保管、低温輸送 ・振動・衝撃 → 包装・梱包 改善作業 ・追熟 → 青果物を未熟なまま収穫し、卸売場で商 品価値が出る熟度まで進行させる作業 7 品目のグループ分け エチレングループ ・感受性が低く、生 成量が少ない ・感受性が高く、生 成量が多い エ チ レ ン 温度・湿度グループ ・低温障害が発生しやすい ・低温障害が発生しにくい ・感受性が高く、生 成量が少ない 温度・湿度 振動のグループ ・振動に弱い(マイナス方向) ・振動に強い(プラス方向) 8 トマト(完熟) バナナ(未・完熟) (グループ③) エ チ レ ン 苺、梨、葡萄 (グループ⑥) 桃(グループ⑤) 梅(グループ④) トマト(未熟) (グループ①) 温度・湿度 レタス、西瓜(グループ②) 9 各グループの特徴 グルー プ グループの特徴 設備、施設 エチレンの感受性が高い、エチレンの生成量が少な い エアーサスペンション、低温保管 庫、冷蔵車、追熟施設、予冷庫 エアーサスペンション、追熟施 設、冷蔵車、低温保管庫 ③ エチレンの感受性が高い、エチレンの生成量が少な い エチレンの感受性が高い、エチレンの生成量が多い 低温障害が発生しやすい、振動に強い ④ エチレンの感受性が高い、エチレンの生成量が多い 低温障害が発生しにくい、振動に強い エアーサスペンション、冷蔵車、 低温保管庫、予冷庫 ⑤ エチレンの感受性が高い、エチレンの生成量が多い 低温障害が発生しにくい、振動に弱い エアーサスペンション、冷蔵車、 低温保管庫 ⑥ エチレンの感受性が低い、エチレンの生成量が少な い 低温障害が発生しにくい、振動に弱い エアーサスペンション、冷蔵車、 低温保管庫 ① ② エアーサスペンション、低温保管 庫、冷蔵車、予冷庫 10 必要な維持・改善作業 すべき作業 トマト (未熟) ① 包装、梱包、振動対策、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 トマト (完熟) ③ 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 バナナ (未熟) ③ 包装、梱包、振動対策、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 バナナ (完熟) ③ 包装、梱包、振動対策、低温保管 レタス② 予冷、包装、梱包、低温輸送、低温保管、振動対策 西瓜② 予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 桃⑤ 予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 梅④ 予冷、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 イチゴ⑥ 予冷低温保管、低温輸送、振動対策 梨⑥ 予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 葡萄⑥ 予冷、包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 11 実態調査 各品目ごとに行われている作業の実態を調査 するために、食品の低温物流ハンドブック等 の文献以外に、東京青果(株)にヒアリング調 査を行った。 東京青果内の 卸売り場 12 維持・改善作業の実態 すべき作業 トマト (未熟) 梱包、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 ① トマト (完熟) 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 ③ バナナ (未熟) 梱包、追熟、低温輸送、低温保管、予冷 ③ バナナ (完熟) 梱包、低温輸送、低温保管 ③ 予冷、包装、梱包、低温輸送、低温保管、振 レタス② 動対策 西瓜② 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 桃⑤ 予冷、梱包、低温輸送、低温保管 梅④ 予冷。梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 イチゴ⑥ 予冷低温保管、低温輸送、振動対策 梨⑥ 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 葡萄⑥ 包装、梱包、振動対策、低温輸送、低温保管 13 品目ごとに必要な作業と実態 品目 トマト(未熟)① トマト(完熟)③ バナナ(未熟)③ バナナ(完熟)③ 西瓜② 梅④ 梨⑥ 葡萄⑥ 作業 必要 実態 必要 実態 必要 実態 必要 実態 必要 実態 必要 実態 必要 実態 必要 実態 包装 梱包 振動対策 追熟 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 予冷 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 14 必要なのに行われていない作業 • • • • • • • 未熟トマトの包装による振動対策 未熟バナナの包装による振動対策 完熟バナナの包装による振動対策 梅の包装による振動対策 西瓜の予冷 梨の予冷 葡萄の予冷 15 青果物の物流管理上の問題点 • 予冷→産地で確実に行われていない、予 冷温度が不明確かつ不統一、品温が予冷 温度まで下がっているか不明 • 包装→産地で確実に行われていない • 振動の影響→輸送中の振動が与える品温 上昇や衝撃等による破損、腐敗 • 温度→物流中の品温上昇 16 解決策 • 予冷→予冷の重要性を生産者に啓蒙し、実施を確 実なものにする、予冷温度の統一、データロガーに よる記録、予冷後は品温の確認 • 包装→品目に適した包装、梱包と重要性を提示し、 確実に行う • 振動の影響→包装、梱包、輸送機器(エアーサス ペンション等)の点から確実に対策を行う • 温度→輸送時、保管時の温度を統一し、温度変化 を極力少なくすること 17 結論 • 青果物の物流に関して現状を調査、整理し、 様々な品目をグループに分け、各グループの 特徴を明らかにした 例)苺に代表されるグループは、エチレンの感受性が低く生成 量が少なく、低温障害が発生しにくく、振動に弱い、という特 徴がある • 各品目に対して必要な作業を整理し、行われ ていない作業があれば何故行われていない かと、解決策を提言した 例)振動の対策は、包装、梱包、エアーサスペンションという3つ の視点から確実に行うべきである 18
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