トーラス構築法による銀河系 力学構造の 決定

銀河系力学構造の
構築方法について
JASMINEワークショップ
2010年2月23日 国立天文台
上田晴彦(秋田大学), 郷田直輝, 矢野太平
(国立天文台), 小山博子 (名古屋大学),
阪上雅昭 (京都大学)
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本日の内容
1. 力学構造と位相分布関数
銀河系の力学構造を決めるに際しての困難さとは?
2. Torus Fitting
トーラス構築に関する新しい手法の提案
3. 力学構造構築の全体像
銀河系の力学構造をどのように決めるか?
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1 力学構造と位相分布関数
位置天文学は新時代に突入
Nano-JASMINE
GAIA
http://www.jasmine-galaxy.org/nano/nano-ja.html
http://sci.esa.int/science-e/www/area/index.cfm?fareaid=26
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高精度位置天文データが入手可能に
⇒ 新たなサイエンスの誕生
銀河系の力学構造の決定が可能になるのでは?
位相分布関数は力学構造を記述する基本量
⇒ しかしながら位相分布関数は観測データからは
直接は求まらない。
なぜ求まらない?
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欲しい情報
我々の銀河の全ての構成要素(重力物質)を表現
する位相分布関数 fmatter(x,v)
アストロメトリ・データが持つ情報
観測された星の位相分布関数 fobs(x,v)
アストロメトリ・データから、重力物質全体の位相分布関
数をどのように構築していくか、という理論的な研究の
必要性(サイエンスWGの研究課題)
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註)星の軌道とトーラス構造
3次元ポテンシャル(Three-dimensional
Triaxial Potential) のもとでの星の軌道は、
かなり複雑
コア内部では box orbit
コア外部では box orbit + tube orbit
⇒ 位相空間内では単純
(3次元トーラス上を動く)
配位空間 ⇒ 軌道はbox型 または tube型
位相空間 ⇒ 3次元トーラス構造

2
x2 
1 2
p E
2
2 Torus Fitting
銀河系の位相分布関数を決定することを考える。
⇒ 銀河系の力学的時間尺度は宇宙年齢に比べ
十分に短いことを考慮する
基本的仮定:銀河系の構造は定常状態
f(x,v)
f(x,v,t)
ただし現実的には銀河は非定常であるかもしれない。
⇒ ずれが小さいと期待できるので、定常状態からの
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摂動として計算可能
銀河系の構造が定常であると?
⇒ ほぼすべての星の軌道は規則的
強いジーンズの定理
位相分布関数は3つの孤立積分(作用変数)の関数
⇒ f(J1,J2,J3 )
J
1
vdx

2
J は位相分布関数をコンパクトに表現する際に有用
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位相分布関数のコンパクトな表現はモデル作りに有用
しかし、弱点も存在する
fmodel はJの関数 ⇒ fmodel(J)
fobs は (x,v) の関数 ⇒ fobs(x,v)
もし我々がJ ⇔ x,v の変換を知らなければ、モデルと
観測の結果を比べることが出来ない。
よって、これらの変換を求めることは、とても重要!!
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変換 J ⇔ x,v に関する注意
変換 J ⇔ x,v が解析的に実行可能なのは、ポテンシャ
ルの形が理想的な場合のみ。
2つの例外 (Ideal Potential)
A)Harmonic-Oscillator Type
B)Isochrone Type

1
1
1
   x2 x 2   y2 y 2   z2 z 2
2
2
2
k
b  b2  r 2
一般のポテンシャルものとでの J ⇔ x,v の変換を数値的
に求めることは、とても重要。
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このプロセスはトーラス構築と呼ばれる。
もっとも洗練されたトーラス構築の1つとして、Binney と
その協力者たちによって提案された方法が有名。
変換の母関数Sを用いる
一般のポテンシャルのもとでの作用変数 J’
⇔ 理想的なポテンシャルのもとでの作用変数 J
我々は J と x, v の関係は知っているので、最終的に J’ と
x, v の座標変換が得られる。
⇒ J’ = J’ (J) = J’ (x、v)
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系のエネルギーが保存する
⇒ J’⇔J の変換を引き起こす母関数を、洗練された
方法で求める。
この手法は優れているが、トーラス構造が複雑になって
くると、J’⇔J の変換を求めることが難しくなってくる。
よって我々はこの手法を採用しない
⇒ 不変トーラスの幾何学的情報を用いる
(Torus fitting)
複雑な系のもとで、J’ ⇔ J の変換を求める際に力を
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発揮する
アルゴリズム
1) 与えられたポテンシャルのもとで、星の軌道を計算
⇒ いくつかの位相空間上の位置を保持 (xi,vi)
(x2,v2)
(x3,v3)
(x4,v4)
(x1,v1)
(x5,v5)
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2) Ideal potential の型を決定
A)Harmonic-Oscillator
保持している位置
(xi、vi)
B)Isochrone
作用・角変数
⇒
⇒
(J i、θ i)
(J、θ)
補間
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3) 以下の関係式を満たすように(J、θ) を修正
J  J '2 nSn cos(n )
Sn
n 0
: 実数
母関数
J
J  J'
J'
最終的に変換 J’ ⇔ J が求まる
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3 次元ポテンシャルにおけるデモンストレーション
1) Logarithmic potential
2
2
1
y
z
  log(x 2  2  2  Rc2 )
2
q1 q2
Rc=0.14, q1=0.9
q2 =0.8
2) Ferrers potential
a1a2 a3

n 1


0

x 
1  

2 
 i 1   ai 
3
2
i
n 1
n=1
d
   a 
3
i 1
2
i
a2=0.9a1
a3=0.8a1
与えられた J’ の値をもとに、関係 J’⇔(x,v) を探す
⇒ 与えられた J’ のもとで、不変トーラスを再構築
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Logarithmic potential
y=z=0
J’1=0.4
px
J’1=0.06
x
18
Ferrers potential
y=z=0
J’1=0.28
px
J’1=0.04
x
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3 力学構造構築の全体像
先に述べた方法で、数値的に J’=J’(x,v) が得られる。
⇒ しかしこれは、銀河系の力学構造構築のための
第一歩に過ぎない。
位相分布関数を決める必要がある。
力学構造構築のためのアルゴリズムは、以下の通り
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1)銀河系の重力ポテンシャルを仮定
A) Logarithmic potential (Disk部分)
2
2
1
y
z
  log(x 2  2  2  Rc2 )
2
q1 q2
B) Ferrers potential (Bulge部分)
a1a2 a3

n 1


0

x 
1  

2 
 i 1   ai 
3
2
i
n 1
d
   a 
3
i 1
2
i
どのようなものがよいのか、現在考察中
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2)J ⇔ x,v の評価
仮定したポテンシャルのもとで、作用変数とx、vとの
変換を求める
⇒ Torus fitting (サイエンスWG)
Torus construction (Binneyグループ)
その他の手法
位相分布関数をJの関数として求める準備完了
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3)重力物質の位相分布関数の作成
仮定したポテンシャルのもとで、初期条件を変えた
テスト粒子の軌道を多数計算。
ポアソン方程式   4Gを通して、密度分布を計算
各々の軌道をある重みで足し上げる
⇒ 密度分布を再現できるような重みを求める
⇒ 位相分布関数f(J)およびf(x、v)を推定
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4)観測データから重力物質の位相分布関数を
推定
観測データは、明るさや色で選択された特定の星のみ
の情報を含む
⇒ 選択効果が働いている!!
・選択効果を取り除く手法の確立
・観測にかからない星+ダークマター等を加える
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5)両者の比較
一般に食い違うので、より近くなるようポテンシャルの
パラメータを変更
⇒ かなりの試行錯誤が必要?
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Φ(x)を仮定
J ⇔ x,v を評価
全ての重力物質
の DFを推測
(2章の内容)
改良!
made-to-measure法で
f(J)の形を決定
比較
Syer & Tremaine (1996)
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ご清聴ありがとう
ございました
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