大学のサービス向上とその使命 ~大学生の意識調査からみた満足度と課題~ 植木ゼミ 楠本 良太 小杉 智彦 杉崎 満里恵 松尾 美央 森 坂田 萩本 吉田 千裕 大樹 匡俊 賢史 2 •研究目的 • 現在、私達は大学生であり、毎日通っている愛 着のある大学が一番身近の題材である。 • 最近では赤字経営に陥っている大学の割合が増 えてきている。まず私達の通っている京都産業 大学のサービスや経営の現状と課題を明らかに したい。 3 このような問題意識に基づき、これから学 生にとって大学とはどのような役割と使 命を持つのか、学生のニーズに対応し、 持続可能な健全な経営を行うべき大学の 将来像を検討していく。 4 京都産業大学の入学者数の推移 年度 入学定員 入学者 2006 2,530 3,030 2007 2,560 3,212 2008 2,662 3,019 2009 2,702 2,990 2010 2,760 3,241 5 志望大学ランキング n=809 <全国> 順位 <西日本エリア> 401 順位 学校名 n= 学校名 人数 1 明治大学 92 1 関西大学 40 2 早稲田大学 73 2 立命館大学 30 3 立教大学 55 3 名古屋大学 26 4 法政大学 54 4 同志社大学 24 5 日本大学 53 5 関西学院大学 23 6 中央大学 53 6 近畿大学 22 7 東洋大学 44 7 岡山大学 22 8 関西大学 42 8 山口大学 21 9 慶応義塾大学 39 9 南山大学 20 10 青山学院大学 37 10 龍谷大学 19 『日本経済新聞』2010年11月29日号、朝刊。 人数 6 志望大学を選んだ理由は 学びたい内容の学部・学科がある。 16.8 教員・スタッフが魅力的 4.3 カリキュラム・教育制度が充実して いる。 10.0 就職・進路支援などのサポートが 整っている。 4.2 希望の資格が取れる。 7.8 偏差値が合っている。 3.3 充実した学生生活を送れる。 6.6 学費・奨学金制度がある。 3.0 立地・アクセスが良い。 6.2 クラブ・サークル活動が盛ん。 2.4 就職状況や就職実績が良い。 6.2 有名な卒業生・在校生がいる。 2.0 入試方法・科目が合っている。 6.1 留学制度や研修制度が充実している。 1.6 校風・学生の雰囲気が合っている。 6.0 インターンシップ制度がある。 1.1 キャンパスの施設・設備 4.7 他校との交流が盛ん。 0.9 出所: 『日本経済新聞』2010年11月29日号、朝刊。 7 アンケート回答者数: 318人 調査時点: 2010年9月末~10月初旬実施 8 アンケートの実施 大学サービスに対する満足度についてのアン ケート調査票を独自に作成し、大学に対する 満足度、学生のマナー、他大学との差別化など の観点から、京都産業大学の学生を対象にア ンケート調査を実施した 9 アンケート質問項目 問1. あなたの性別 問2. あなたの学部・回生 ( 男性 ・ 女性 )学部 ( )回生 問3. この大学は第一志望でしたか はい・いいえ 問4. 大学の満足度は 5.満足 4.ほぼ満足 3.普通 2.やや不満足 1不満足 問5. 授業の充実さ 5.満足 4.ほぼ満足 3.普通 2.やや不満足 1不満足 問6. キャリア科目を知っていますか はい・いいえ 問7. キャリアデザインを取っていますか はい・いいえ 問8. 大学のマナー 5.満足 4.ほぼ満足 3.普通 2.やや不満足 1不満足 10 問9. 通学のしやすさ 5.満足 4.ほぼ満足 3.普通 2.やや不満足 1不満足 問10. OCに参加しましたか はい・いいえ 問11. 他の大学のOCと違いは感じられましたか はい・いいえ 問12. 「はい」と答えた方にお聞きします。どのような点 が違うと感じましたか ( ) 問13. 入学するとき何を基準にして大学を選びましたか ( ) 問14. この大学のウリは何だと思いますか ( ) 問15.これからこの大学に必要とされることは何だと思い ますか ( ) 11 大学満足度 大学サービスに対する満足度を「5:満足」、「4:ほぼ満足」、 「3:普通」、「2:やや不満足」、「1:不満足」の5段階尺度で アンケートを実施。 • 「満足」・「ほぼ満足」、「不満足」・「やや 不満足」と答えた学生の割合はほぼ同数 • 「普通」と答えた学生が最も多い。 大学への理想像と現実との違いが少ない 12 アンケートの分析結果(男女別) 授業充実度 3.15 全体平均 3.39 大学満足度 3.20 女(N=133) 3.55 3.12 男(N=185) 3.27 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 13 大学満足度と授業充実度(学年別) 3.00 3.00 5回生(N=1) 授業充実度 大学満足度 3.72 3.56 4回生(N=18) 3回生(N=29) 3.21 3.31 2回生(N=162) 3.08 3.37 1回生(N=95) 3.18 3.43 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 14 その他のアンケートの分析結果 学生の満足度 • 第一希望の学生(127人) :満足度 3.56 • 第一希望でなかった学生(190人):満足度 3.28 • 学生の満足度と授業充実度は正の相関がある。 相関係数:0.64(1%水準で統計的に有意) ↓ ★大学の入学時点での希望大学かそうでないかは、入 学後の満足度に大きな影響を与えていないことがわ かる。つまり、入学後の教育サービスの向上の取り 組みが重要な役割を果たす。 15 授業の充実さ • 自由回答の質問項目では、「満足」と答える学生は 少なく、不満を感じている学生が圧倒的多い 学生の意見 学びたい講義、興味のある講義が少ない 授業環境として履修人数に教室が対応していない 教員免許取得のための授業やキャリア科目は充実し ている 16 大学生のマナー • 悪いと答える生徒が圧倒的に多い (タバコのマナー、授業中の私語 etc…) 17 タバコのマナーについての意見 • 禁煙の場所での喫煙 • 歩きタバコ • 学生団体による「マナーUPキャンペーン週間」 しかし全学禁煙などの対策を採るべきであると考 える。 18 通学の利便性 • 以前よりも改善された。 • 交通アクセスが不便で通学しにくい。 バスの本数を増やすなど、バス会社との交渉をす べき。 19 オープンキャンパス • 京都産業大学はオープン・キャンパスに力を入 れている。 • オープン・キャンパスに来場した学生は全体の 2割程度。 他大学のオープン・キャンパスとの違いを感じた 学生の意見 • 個々の相談に丁寧に乗ってくれた。 • 学生に元気がある 20 京都産業大学に入学する時の基準 • • • • • 自分の偏差値に合った大学 四年生総合大学であること ある程度の知名度 就職率の良さ 取得できる資格 そして京都にあるといういわゆる京都ブランドが 大きな決定要因である。 21 京都産業大学のウリ • • • • • 四年生総合大学である 融合科目がある キャリア科目がある 就職サポートが充実している ノーベル賞受賞者である益川教授がいる 総合大学であることは学生の中でも認識が 高い 22 志望大学を選んだ理由は 16.8 教員・スタッフが魅力的 4.3 カリキュラム・教育制度が充実してい る。 10.0 就職・進路支援などのサポートが整っ ている。 4.2 希望の資格が取れる。 7.8 偏差値が合っている。 3.3 充実した学生生活を送れる。 6.6 学費・奨学金制度がある。 3.0 × 立地・アクセスが良い。 6.2 クラブ・サークル活動が盛ん。 2.4 ● 就職状況や就職実績が良い。 6.2 有名な卒業生・在校生がいる。 2.0 入試方法・科目が合っている。 6.1 留学制度や研修制度が充実している。 1.6 校風・学生の雰囲気が合っている。 6.0 インターンシップ制度がある。 1.1 キャンパスの施設・設備 4.7 他校との交流が盛ん。 0.9 出所: 『日本経済新聞』2010年11月29日号、朝刊。 ● ▲ 学びたい内容の学部・学科がある。 23 M.E.ポーターの5つの競争要因 新設大学 進路先の 企業や組織 既存の 競合大学 代替する教育機関・ 各種専門学校 顧客=学生 24 P.F.ドラッカーによる『マネジメント』 の教えから大学のサービス向上を考える • 企業の目的は、顧客の創造である。 • 組織存続には、顧客が起点に立つことが必要で ある。 • 顧客の創造は、顧客が望むものを提供すること で、それには顧客満足が原点となる。 • 顧客の創造には、マーケティングとイノベー ションが成果をもたらす。 25 ドラッカーの「マーケティング」とは 顧客の欲求からスタートする • これまでのマーケティングは、販売活動が主で あり、製品からスタートしていた。 • これからのマーケティングは、顧客からスター トしなくてはならない。 • すなわち、われわれは何を売りたいかではなく、 顧客が何を買いたいかを問うべきである。 26 ドラッカーの「イノベーション」とは 新しい満足を生み出す • 成長と変化のための機関 • イノベーションによる新しい満足の創出 • 組織は、既存の価値提供に留まるだけではなく、 よりよい価値を生み出すことが重要である。 キャリア形成支援 • キャンパス内でのフォローの充実 1. インターンシップで最大の効果を得る ための教学体制が充実。 2. システム思考やコミュニケーション能 力の育成 3. 現場で得た「気づき」を学習をいかす 方法や社会で必要なスキルを育てる学 び方をカウンセリング http://www.kyoto-su.ac.jp/path/career/keiseishien/ 2010年11月25日閲覧 コーオプ教育 ■企業等が主体で管理運営する→インターン・ シップ型 ■大学が主導で管理運営する →コーオプ型 • インターンシップをさらに進化させ、本学の専 任教員と職員の連携のもとに編成した独自の大 学主導型のキャリア教育。 コーオプ教育の一環として取り組んで いる各プログラム • O/OCF(オン/オフ・キャンパ ス・フュージョン) 平成16年度「現代的教育ニーズ取組支援プロ グラム」(現代GP)に採択されました • 自己発見レポート O/OCFの説明 (オン/オフ・キャンパス・フュージョン) • キャンパスでの学習と就業体験を「サンドイッチ方式」で交 互に繰り返す • 4年制の自己開発能力コース • 1クラスは25名の少人数制、キャリアに関する授業を週1 回受講し、毎年必ずインターンシップに参加。 • 社会の現場で実際に実務を体験するなか、学生は職業観を育 み、現場に求められる能力を知り、自らの興味や関心を明確 にし、学問の重要性を再確認するためのもの。 • 「気づき」をもたらすインターンシップ、その発見を大学で 掘り下げるキャンパスでの学び、学習効果をスパイラル的に 高め、理想的な進路の実現につなげていくプログラム 32 出所:http://www.kyoto-su.ac.jp/path/career/ce/oocf.html(2010年11月25日閲覧) 33 発展的見直しとコーオフ教育効果の スパイラル的強化 出所: http://www.kyoto-su.ac.jp/path/career/ce/gendai_gp.html (2010年11月25日閲覧) 自己発見レポート • 学習スタイルのみならず、漠然としている職業 への関心度や自身の基本的な性格などから、自 分自身を発見するレポート • 将来に対する明確なビジョンを描くことができ る 35 学生が考えるこれからこの大学に必要 とされること • もっと授業を充実させてほしい • エスカレーターの設置などの要望 • タバコなどのマナー 36 充実した授業とは… たとえば、経営学部でいえばバーチャルな 会社を設立し、シミュレーション形式で そのマネジメント・プロセスを学んでい くような授業があれば、より実践的な人 材育成を行うことができるのではないか 37 私たちの抱く大学の理想像 • 活気に満ち溢れている • 全国各地から学生が集まっている • 学部の壁にとらわれずに様々な科目を履修する ことができる 38 さらに・・・ 海外の大学とも提携し、様々な国の学生と交流す る機会を設けることにより、多様な外国の文化 や価値観を知り、自らの可能性を広げることの できる制度を拡充することも重要である 39 アンケート結果を受けて… 学生の求めること • 授業の充実度 • 大学でのマナー • 立地条件などの環境要因 早急に授業カリキュラムの見直し、学びや すい環境を作ることが必要。 40 喫煙所以外での喫煙、歩きタバコ、授業中の私語 など厳しく指導強化していくべき そのことにより・・・ 学生のマナーが改善され社会人となった後でも大 いに役立つであろう 41 エスカレーターの設置やお昼時に混雑していた食 堂の増設を行ったことは評価できる。 しかしながら! 過度に学生の要望に答えすぎるのはよくないので はないか! 42 なぜならば・・・ • 大学は学ぶべき場所であり、中学、高校のよう な「学び」を第一目的とした「学校」という原 点の形を軽視してはならない。 43 まとめ… 学生の要望に適度に答えることにより学生のモチ ベーションが上がり、大学全体が活気づいてい くことは、大学の入学者を増やすことにもなる。 これは、大学が少子高齢化社会の中で入学者数 を確保していく対策にもつながる。 44 参考文献資料 • ジェームズ・M. クーゼス、バリー・Z. ポズナー『大学経営起死回生の リーダーシップ』東洋経済新報社、2010年。 • ドラッカーP.F. 『マネジメント : 基本と原則』ダイヤモンド社、2001年。 • 福島一政『大学経営論:実務家の視点と経験知の理論化』日本エディター スクール出版部、 2010年。 • ポーターM.E. 『競争の戦略』ダイヤモンド社、1982年。 • 『日本経済新聞』 2010年6月28日号、朝刊。 • 『日本経済新聞』 2010年11月29日号、朝刊。 • 京都産業大学ホームページ (2010年11月25日閲覧) http://www.kyoto-su.ac.jp/path/career/ce/ 45 ご清聴ありがとうございました。
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