甲南大学 経済学部 講座 本日お話しをする内容 Part1 電気事業の現状 Part2 電気事業の規制緩和 Part3 海外の規制緩和 日本の一般電気事業者 ①北海道電力 ②東北電力 ⑨ 九 州 電 力 ⑤北陸電力 ⑦中国電力 ⑧四国電力 ⑩沖縄電力 ⑥関西電力 ④中部電力 ③東京電力 主な一般電気事業者の規模 項目/会社名 東京電力㈱ 関西電力㈱ 資本金 6,764億円 4,893億円 総資産 14兆2,498億円 7兆1,668億円 2,742億kWh 1,404億kWh 4兆219億円 1兆9,594億円 需要家数 2,633万口 1,263万口 従業員数 41,859人 26,244人 販売電力量 売上高 H11年度現在またはH12年3月末現在 日本における 電気事業の形態 形態 一般電気 ・一定の供給区域をもってその区域内の一般の需 事業 要に応じて電気の供給を行う 卸電気 事業 ・供給区域をもたず一般電気事業者に電気の卸売りを行う ・発電用の電気工作物の出力合計が200万kWを超える 特定電気 ・特定の供給地点における需要に応じ電気の供給 事業 を行う 特定規模 ・接続供給を介して特定規模需要に応ずる電気の 電気事業 供給を行う 法規制 法電 気 事 業 電気事業の比較 事業者数 発電所数 最大出力 (千kW) 一般電気 事業 卸電気 事業 特定電気 事業 特定規模 電気事業 10 56 2 9 1,365 193,418 439 2 (21) 30,858 16 (1,070) 備 考 北海道・東北・東京・ 中部・北陸・関西・中国 ・四国・九州・沖縄 電源開発・日本原子力 発電・公営34・その他20 諏訪エネルギーサービス 尼崎ユーティリティサービス 供給力として用いる発 電機の設置場所数及び 最大出力 出所「電気事業便覧(平成12年版)」「(財)日本エネルギー経済研究所資料」 日本の電力供給体制 一般電気 事業者 卸電気 事業者 発電 特定規模電気 特定電気 事業者 事業者 発電 発電 発電 送電 託送 直接 供給 配電 需要 特別高圧 需要家 発電のしくみ コイル(導線を巻い たもの)とコイルの 間で、磁石を回すと 電気が生まれます。 これが発電機で、自 転車のライトも同じ しくみの発電機を使 っています。 電流・電力・電圧とは 電力(W)= 電流(A)×電圧(V) 【 kW】と【 kWh 】とは kWとは水道菅 にたとえれば 「径の太さ」に相当 kWhとは水道 菅から出た 「水の量」に相当 日本の発電設備の割合 原子力 水力 石炭 LNG 石油 その他 年度 1990 17,212万kW 18.3 21.1 7.1 22.3 31.1 22,411万kW 1999 20 19.8 11.1 25.3 23.5 26,658万kW 2010 23.2 0% 19 20% 16.5 40% 25.1 60% 15.9 80% 100% 2010年は基準ケース 出所 「今後のエネルギー政策について」総合資源エネルギー調査会 日本の発電電力量の割合 原子力 水力 石炭 LNG 石油 その他 7,376億kWh 年度 27.3 1990 11.9 9.7 22.2 28.6 9,176億kWh 1999 34.5 9.7 16.7 26.2 12.3 10,292億kWh 2010 40.7 0% 20% 9.4 40% 22.8 60% 22.7 80% 3.7 100% 2010年は基準ケース 出所 「今後のエネルギー政策について」総合資源エネルギー調査会 販売電力量の推移と見通し 年度 2010 2005 1999 見通し 1995 1985 億kWh 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 出所 平成13年度電力供給計画の概要 夏期の1日の電気の使われ方 月別の電気の使われ方 一人あたりの電力消費量比較 ド イ ツ イ タ リ ア 韓 国 イ ギ リ ス 日 本 ア メ リ カ オー スト ラリ ア フ ラ ン ス カ ナ ダ 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 MWh/人 1998年 出所 2001 エネルギー・経済統計要覧 EDMC編 年間停電時間の比較/需要家 年 84 48 1998 アメリカ フランス イギリス 日本 61 20 89 224 1990 202 19 0 分 50 100 150 200 250 規制緩和に至った経緯 1980年代 規制緩和が世界的潮流 1990年代 (日本)急激な円高の進展 産業活動の中間財・サービスの内外価格差 国内産業の空洞化に伴う雇用への影響 電気・ガス料金低廉化の要望 電気料金の国際比較(家庭用) 100 日本を100とした場合 80 90 60 78 80 77 イギリス ドイツ フランス 40 20 0 日 本 アメリカ ○為替レートは、98年3月平均を適用 ○280kWh/月のモデルを基に、1kWhあたり単価を算出 電気料金の国際比較(産業用) 100 日本を100とした場合 80 83 60 90 79 66 40 20 0 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス ○為替レートは、98年3月平均を適用 ○契約電力4,000kW、年間稼働時間4,000時間のモデルを 基に、1kWhあたり単価を算出 どのような規制があったのか ~ 95 年以前~ 例えば 発電者 電 力 供給者 需要家 参入規制 通産大臣の許可 料金規制 通産大臣の認可 電気事業法(S39年成立)にて規制 95年の改正電気事業法 ○発電部門への新規参入 ○特定電気事業の創設 ○託送制度の導入 etc. 発電部門への新規参入 入札制度の導入 電力を売り たい事業者 電力を売り たい事業者 電力を売り たい事業者 ①短期的に足りない 電源を募集(入札) ②採算性を考慮し て申込み(応札) ②安い価格を提示し た者に決定(落札) 電 力 会 社 IPP(Independent Power Producer) IPPの落札状況(万kW) 年度/項目 募集 応札 落札 96年度 265.5 1,081.3 304.69 97年度 285.5 1,425.4 311.83 98年度 15 76.4 21.5 99年度 100 251 100.43 計 738.45 天然ガスによるIPP落札状況 H8年度分のIPP落札状況 ○荏原製作所 → 東京電力(6.4万kW) ○中山共同火力 → 関西電力(13.4万kW) ○大阪ガス → 関西電力(14.0万kW) H8年度分のIPP落札状況 ○川崎製鉄所 → 東京電力(39.26万kW) コージェネレーションとは ガスコージェネの省エネ性 【 コ ージ ェ ネレ ーシ ョ ン シ ス テ ム】 ガス ホルダー L NG タ ンク パイ プ ラ イ ン 1 次エ ネルギー1 0 0 % 熱エ ネルギー 排気 エン ジン ( タ ービ ン ) 発電機 電気エ ネルギー 電気エ ネルギー 2 5 ~3 8 % 有効利用可能排熱 4 0 ~5 0 % 総合エネルギー効率 7 0 ~8 0 % 利用困難な 排熱 2 0 ~3 0 % 【 従来方式によ る 発電シ ス テ ム】 発電効率4 2 % 火力発電 送電線 電気エネルギー 38% 1 次エ ネルギー 100% 所内消費 2 % 送電ロ ス 2 % ( 効率: 低位発熱量基準) 利用し て いな い排熱 5 8 % 特定電気事業の創設 都市再開発地域 他者への電力販 売が可能になる 電気 熱 CGS 電気 熱 特定電気事業の実績 事業者名 開始時期 規模 燃料 尼崎ユーティリティ H10年8月 12,600kW サービス㈱ 都市ガス 諏訪エネルギー H10年10月 3,122kW サービス㈱ LPG 託送制度の導入 自己託送 A社 自家発電設備 C 電力会社が購入 卸託送 B電力会社 の送電線 小売託送 A社 工場 D社 工場 政府による規制緩和の検討経緯 ●1996.12. 「経済構造の変革と創造のためのプログラム」 閣議決定 1997.5.都市ガス事業構造改革研究会」発足 ●1997.5. 「経済構造の変革と創造のための行動計画」閣議決 定 1997.7.「電気事業審議会 基本政策部会」スタート ●1998.3. 「新たな規制緩和推進3ヶ年計画」閣議決定 1998.10. 「総合エネルギー調査会 都市熱エネルギー部会」発足 2000年の改正電気事業法 ○小売部門への新規参入 ○小売託送制度の義務化 ○発電部門の新規参入拡大 etc. 小売部門への新規参入 A電力会社の供給エリア A電力会社 発電所 A電力会社 の送電 ネットワーク 新規参入者 需 要 家 B電力会社 特定規模 電気事業者 使用規模2千kW &2万V受電以上 小売託送制度の義務化 電力会社 ●特別高圧の送電ネットワークを開放 ●小売託送の約款を作成、通産省に届け出 新規参入者 ●約款に基づき、託送料金の支払い ●約款に定められたルールを遵守 自由化対象需要家数 業務用 産業用 東京 合計 電力量比 1,161 2,154 3,315 29.0% 中部 164 関西 647 1,252 1,899 31.8% 10社計 2,276 6,049 8,325 27.7% 910 1,074 30.4% 発電部門の新規参入の拡大 新規参入者の 火力発電設備 短 開発期間 期 が概ね 入 札 10年未満 電力会社の 火力発電設備 長 開発期間 期 入 が概ね 札 10年以上 火力以外 の発電設備 電 力 会 社 の 送 電 線 需 要 家 特定規模電気事業者の概況<届出順> (1)ダイヤモンドパワー ①届出日 2000年6月19日 ②供給電源 鹿島北共同発電 :35,000kW、NKK/京浜製鉄所:20,000kW 日鉱金属/柿の沢:4,800kW ③販売先等 三菱商事の子会社。昨年8月から三菱地所保有ビル等の計 9ビルに供給。同月、通産省向け入札で落札に成功。11月か らは日産、NKK、高島屋、ダイエーにも供給。その後、三菱 化学/四日市工場の余剰電力を確保し、本年5月から中部地 区のジャスコ2店舗等に販売を開始。 (2)丸紅 ①届出日 2000年8月4日 ②供給電源 三峰川電力 第1・第2発電所 :32,200kW ③販売先等 昭和電工から昨年8月、三峰川電力を買い取り自社電源にす る。当面、余剰ベースで中部電力に買電し、本年4月以降の開 始に向け、小売事業を準備中。 (3)旭硝子 ①届出日 2000年9月20日 ②供給電源 北九州発電所(北九州工場) :40,900kW ③販売先等 北九州工場の自家発電設備を対象に特定規模電気事業者と しての届出を行う。自家発電設備の余剰(17,000kW)を当面、新 日本製鐵に卸供給。 (4)イーレックス ①届出日 2001年1月22日 ②供給電源 旭化成工業 延岡支社 第1火力発電所:33,000kW ③販売先等 日本短資グループや三井物産等による電力小売事業者。旭化成/ 延岡の余剰電力(7,000kW)を調達し、電力小売事業に進出。鹿児 島県庁向け入札で落札に成功し本年4月から供給開始。 (5)新日本製鐵 ①届出日 2001年1月26日 ②供給電源 旭硝子/北九州工場:17,000kW、東邦レーヨン/ 三島工場:8,000kW、旭化成工業/富士支社:4,000kW ③販売先等 福岡市役所向け、九州大学向け入札で落札に成功し本年4月から 供給を開始。また関東地区では、トヨタ自動車の本社ビルなどトヨ タ関連2ビル、その他2ビル(新大手町ビル・富士ビル)、計4ビルを 対象に本年4月から小売りをスタート (6)エネット ①届出日 2001年1月30日 ②供給電源 旭カーボン/新潟工場 :10,000kW、東京ガス/幕張:3,920kW 旭化成工業/川崎支社:35,800kW、日本製紙/旧都島:21,400kW ③販売先等 NTTファシティーズ・東京ガス・大阪ガスの3社による事業会社。 本年4月から大阪府庁、グループ企業等に小売を開始。上記電 源の内、エネット販売可能出力は、合計で24,000kWになる。 (7)サミットエナジー ①届出日 2001年2月9日 ②供給電源 住友共同電力新居浜西火力発電所他 :50,000kW ③販売先等 住友商事70%、住友共同電力30%の共同出資会社。住友共同の 余剰電源を確保し、本年4月以降、大阪の住商本社に供給。尼崎 ユーティリティサービスの余剰電力3,000~4,000kWも確保。 (8)大王製紙 ①届出日 2001年3月22日 ②供給電源 三島工場(愛媛県伊予三島市) :506,110kW ③販売先等 本年4月以降に、三島工場の自家発余剰電力を関連会社に、 販売開始予定。販売可能量は最大10,000kW。 (9)サニックス ①届出日 2001年4月9日 ②供給電源 サニックス/苫小牧発電所 :74,000kW ③販売先等 トータル・サニテーション企業のサニックスは、苫小牧市東部工 業地帯に建設する廃プラ焚き発電所(小売可能量= 62,900kW)にて、事業に参入予定。今後、関東圏・中国・関東地 区にも進出を計画。 米国の電力規制緩和 連邦レベル 州際卸売市場に関する権限をもつが、小売市場に関する 規制・制度設計の権限は州レベルにある 主要な各州の電力規制緩和状況 カリフォルニア 1998.3から一斉に実施 マサチューセッツ 1998.3から一斉に実施 会社毎に計画策定 ペンシルベニア 開始前にパイロットプログラム 1999.1から一部自由化、2000.1 から全面自由化。会社毎に計画策定 ※:2001.9現在、ワシントンDCを含む25の州で電気事業再編が決まっている 欧州電力規制緩和に関するEU指令 系統アクセス •第三者への系統開放の義務付け –Regulated Third Party Access –Negotiated Third Party Access –Single Buyer System アンバンドリング •系統を所有する垂直統合型の電気事業者にアンバンドリ ングを義務付け –送電系統運用者の経営分離 –送電部門及び配電部門と他の部門との間で会計分離 –送電系統運用者の情報遮断 指令の規定を99.2までに国内法化するよう義務付け 欧州各国の電力規制緩和状況 全てのEU加盟国が国内法化を完了したものの、各加盟 国間に存在する制度の違いを是正する必要があるとし、 2001.3にEU指令の改正案を発表 主な欧州各国の電力規制緩和状況 国 名 自由化の状況(2000.4現在) フランス オランダ ドイツ 30%(1,600万kWh/年 以上) 33%(契約電力2,000万kW 以上) 100%(全需要家) 英 100%(全需要家) 国 なぜ加州の電力危機は起きたのか? • 外部的環境要因 – – – – 需要の高い伸び 環境規制 天然ガス価格の高騰 水不足 加州の電力自由化の概要 •独立系運用機関(ISO)の設立 •強制プール •小売価格の凍結 • 電力システムの問題点 – 構造的供給力不足 – 電力会社のリスクヘッジ手段の未整備 – 需給の逼迫に対するシステムの脆弱性 • 混乱の背景となる事情 – 利益団体間の政治的妥協による改革 – 州政府と連邦政府の権限の二重構造 加州の電力危機からの教訓 • 今後の制度設計に向けての論点 – – – – – – – – – 設備投資が円滑に行われる仕組み 安易・硬直的な価格規制の危険性 リスク管理手段の制限と安定供給の阻害 環境規制が投資に与える影響 需要家の選択肢としての分散型電源 電力系統の安定性を確保する仕組み 需要を価格に弾力的に反応させる仕組み 電力市場における価格操作の問題 電力供給システムのガバナンス 今後の議論のポイント(電力) • 発電部門 – 市場化の可能性(プール制度の導入はあるか?) – 供給力確保の方法 – 原子力の位置付け • 送電部門 – アンバンドリングの必要性 – 建設ルール • 配電・供給部門 – 小売自由化の範囲(部分自由化範囲の拡大、完全自 由化?) ご静聴 ありがとう ございました
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