企業の仕組み 第7回 取締役について 1 会社の機関(復習) (会社として意思決定を行い、あるいは会社として業務を行う機関) • 会社の機関として、意思決定あるいは業務執行する主体は 自然人 (人)または 組織体 である。 • 主な会社の機関には、株主総会、取締役、代表取締役、取 締役会、監査役、監査役会などがある。 ※取締役や監査役は 自然人 であるが、取締役会や監査 役会は自然人の組織体(集合)である。 ※この中で、全ての株式会社にある機関は 株主総会 と 取締役である。 ※その他は、委員会設置会社、大会社(公開会社、非公開 会社)、その他(公開会社、非公開会社)などの株式会社 の分類によって、不要な(義務付けられていない)場合や 設置が禁止されているものがある。 2 株式会社の主な機関の関係(復習) • 株主総会 は、株式会社の組織、運営、管理などの会社の基本 的な重要事項について意思決定を行う機関である(株主総会の設 置と年一回以上の開催が義務付けられている)。 ※日常的な運営まで口出しすることは不適切 • 取締役会 あるいは 取締役 が日常的な業務執行の意思決 定を行う。取締役会を設置するには少なくても取締役が 3 人は 必要。 ※取締役会を設置していない会社は、重要業務の執行に関する意思 決定を行う場合、取締役の過半数の承認が必要となる。 • さらに、取締役会が設置されている会社は、 取締役 の中から 代表取締役 を選定し、会社の業務を代表して行えるようになっ ている。 ※取締役会を設置していない会社は、取締役各自が会社を代表する。 • 株主総会は、会社経営が健全に進めるために、監査機関(監査 役、監査役会、会計監査人、会計参与など)を選任し、取締役や 代表取締役を監督する。 3 株式会社の主な機関の関係図(復習) 株主総会(会社の所有者の集まりで、会社の所有者である 株主が、会社の基本に関する重大事項(組織、運営、 管理等)に関して意思決定を下す機関である。 ) 選任 ・ 解任 選任 ・ 解任 報 告 取締役 選定・解職 (取締役会) 報告 代表取締役 監 査 報 告 監査機関 日常業務の 監督と執行 従業員 (業務遂行) 4 取締役(業務執行に関する意思決定に加わり、業務を執行する) 取締役とは株主総会で選任・解任される株式会社の機関である。株 式会社と取締役は 委任 関係であり、雇用関係ではない。 ※取締役の人数と取締役の設置の有無によって、権限や手順が異なる。 (業務の執行) 第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、 株式会社(取締役会設置会社を除く)の業務を執行する。 2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に 別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。 3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を 各取締役に委任することができない(決議が必要; 単独 不可)。 一 支配人の選任及び解任 二 支店の設置、移転及び廃止 三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用す る場合を含む。)に掲げる事項 (以下、省略) 5 取締役の職務 1. 取締役会設置会社:取締役会に出席し、重要事項の意思決定 に参加し、そこでの決定事項を執行する。 2. 取締役が2人以上の非取締役会設置会社:取締役の過半数の 承認で業務を決定し、執行する。各自が会社を代表する。 3. 取締役が1人:業務執行に関して意思決定を行い、会社を代表 して業務を執行する) 取締役は株式会社に対して 善良な 管理者としての義務を負う; ① 他の取締役が定款や法令を順守しているかを 監視 する。 ② 注意義務 ;経営判断の間違いをしないように注意する ③ 忠実義務 ;株式会社の利益のために、働く。 競業取引 (その会社で 得た情報などを活用し、顧客を奪うなどの行為)や 利益相反取引 ※非取締役会設置会社では、取締役に対して (会社の利益を犠牲にして、自己あるいは第三者の利益につながる取引)が 原則として禁止されている。 6 取締役会とは • 取締役会は、株主総会で選出された 取締役 全員(3名以上) から構成される。 • 株主総会の決議事項以外の会社の業務の執行に関する意思決 定を行う。 • 主な業務は、①会社の業務(営利活動)執行、②取締役の職務 の監督、③代表取締役の選定・解職である。 ※取締役会は、代表取締役と監査役会からの報告に基づいて、代表取締役 の監査を行い、必要があれば、代表取締役を解職する(取締役に降格)。 • 取締役会の招集 招集権者(取締役と 監査役 )が原則として開催日の1週間 前までに招集通知を取締役と監査役に発送(取締役と監査役 が 全員 同意すれば、手続き不要) • 取締役会の決議(一人一票:全取締役が同等) 定足数 の要件は議決権のある 取締役 の過半数出席とな る。出席した取締役の過半数が承認することにより議決となる。 ※非取締役会設置会社は、株主総会の決議事項以外は、取締役が決定する (取締役の過半数の承認が必要)。 7 取締役会を設置しなく良い株式会社 種類 規模 取締役会 委員会設 置会社 無関係 大会社 公開 非公開 資本金5億円又は貸借対照 表の負債額200億円以上 設置必要 設置必要 不要(設置) それ以外の会社 公開 大会社の規模に満たないも の(委員会設置会社でない) 設置必要 設置不可 設置必要 不要(設置) 不要(設置) ⇅ ⇅ ⇅ ⇅ ⇅ ⇅ 監査役会 非公開 不要 不要(設置) ⇅ ⇅ ⇅ 監査役 設置不可 設置必要 設置必要 設置必要 不要(設置:設 置しない場合は 参与設置義務) ⇅ ⇅ ⇅ 会計監査 人 会計参与 設置必要 設置必要 設置必要 不要 不要 不要 不要 不要 不要 (設置) 不要(設置) 8 (会社法)第三百六十二条 取締役会の権限等 取締役会は、すべての 取締役 で組織する。 2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。 一 取締役会設置会社の 業務執行 の決定 二 取締役の職務の執行の 監督 三 代表取締役の 選定 及び 解職 3 取締役会は、取締役 の中から代表取締役を選定しなければ ならない。 4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定 を取締役に委任することができない(=取締役会で決定)。 一 重要な財産の処分及び譲受け 二 多額の借財 三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 (以下省略) 9 代表取締役へのステップ • 代表取締役は 取締役会 の決議に基づいて 取締役 の 中から選定される。 • 取締役会を設置するには、取締役が3人以上必要。 • 取締役は 株主総会 で選任されなければならない。 社内外の人材(財) 株主総会 選定・解任 取締役 (就任) 取締役 取締役 ・・・ 設置 代表取締役 ※代表取締役 はいつでも 選定・解職(委任関係) 取締役会 (委任を承諾) 辞任できる。 ※取締役会の決議で解任できる。 その場合、普通の取締役に戻る。 (取締役解任には株主総会の決議) ※株主が代表取締役を解任したければ、取締役を解任すれば、自動的に代表 取締役の資格を失う。代表取締役選定や解職の権限は取締役会にあるので、 直接代表取締役を選定・解職できない。 10 代表取締役の権限(営業行為に関して会社を代表) • 代表取締役は株主総会の下の取締役会の 下部 機関 • 代表取締役は、 株主総会 や 取締役会 (上部機関) で決定された事項を執行するのが職務となる。 • 代表取締役は取締役会で委任された範囲内で意思決定を行 い、職務を執行する権限がある。 • 代表取締役は対外的な活動(営業)を執行する権限を持つ。 同時に、説明責任もある(訴訟関係の行為を会社を代表して 行う)。 • 会社(株主総会や取締役会)は、代表取締役の権限に必要 に応じて 制限 を加えることができる。 ※代表取締役が制限を超えた契約を行った場合に、そのことを知らない 第三者( 善意の第三者 )には、無効や取り消しはできない。 ※代表取締役は、3か月に一度以上は業務の執行状況を取締役会 に報告する義務を負う。 11 表見代表取締役とは 代表取締役以外の 取締役 に代表権限を付与したと認められる 名称を付した場合、その取締役が 善意 の第三者(事情を知ら ない外部の人)に対して会社を代表する行為場合、会社が責任を 負わらなければならない。 ・代表取締役(会社法上の正式名称) ・社長・副社長(表見取締役と認められる 肩書き ) ※代表取締役以外の取締役に社長の肩書を付けることは可能 ・専務取締役、常務取締役、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執 行責任者)などは代表権を付与されたと判断されることが多い肩 書き ※CEO(Chief Executive Officer)は経営戦略や方針などの基本事項を決定する 責任者で、COO(Chief Operating Officer)はそれ実行する責任者 会社法第三百五十四条 株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代 表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がし た行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。 12
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