土壌汚染対策と静脈物流システム 平成14年7月5日 国土交通省 港湾局 環境整備計画室 総括課長補佐 菊地 身智雄 1.土壌汚染対策法 (1)制定の背景 ○土壌汚染判明事例の急増 ○土壌汚染対策のルール化の要請 ○都市再生などによる土地流動政策 -企業のリスク管理- 土壌汚染の環境基準超過事例 (件) 140 120 100 80 60 40 20 0 91 92 93 94 95 96 97 環境省資料より 98 99 00 (年度) 1.土壌汚染対策法 (2)法案の骨子 土壌汚染対策法案の概要 ◇趣 旨 土壌の汚染の状況の把握、土壌の汚染による人の健康被害の防止に関する 措置等の土壌汚染対策を実施することにより、国民の健康の保護を図る。 ◇対象物質 鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質であって、それが土壌に含まれることに 起因して人の健康被害を生ずるおそれがあるもの(特定有害物質) 土壌汚染の状況の調査 ①使用が廃止された「特定有害物質の製造、使用又は処理をする水質汚濁防止法の 特定施設」に係る工場・事業場の敷地であった土地 ※土地の利用方法からみて人の健康被害が生ずるおそれがないと都道府県知事が確認したときを除く。 ②都道府県知事が土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認める土地 ①又は②の土地の所有者等は、当該土地の土壌汚染の状況について、環境大臣の指 定を受けた機関(指定調査機関)に調査させて、その結果を都道府県知事に報告。 1.土壌汚染対策法 指定区域の指定等 土壌の汚染状態が基準に適合しない土地 ○都道府県知事が「指定区域」として指定・公示。また、台帳を調製し、閲覧に供する。 土壌汚染による健康被害の防止措置 【汚染の除去等の措置命令】 指定区域内の土壌汚染により人の健康被 害が生ずるおそれがある場合 【土地の形質の変更の制限】 ○指定区域内で土地の形質変更をしよう とする者は、都道府県知事に届出。 ○都道府県知事は、土地所有者等(※の 場合には、汚染原因者)に対し、汚染の 除去等の措置を命令。 ○都道府県知事は、施行方法が一定の 基準に適合しないと認めるときは、その 施行方法に関する計画の変更を命令。 (※)汚染原因者が明らかである場合であって、 汚染原因者が措置を講ずることにつき土地 所有者等に異議がないとき。 指定支援法人 命令を受けた土地所有者等は、 汚染原因者に費用を請求可能。 汚染の除去等の措置を講ずる者に対し助成を行う地方公共団体に 対する助成金の交付等の業務を実施。また、このための基金を設置。 1.土壌汚染対策法 (3)問題点 ①膨大な処理費用 ②費用負担 実施主体 土地所有者等と汚染原因 者が同じ 費用負担 備考 汚染原因者 汚染原因者 汚染原因者 汚染原因者 *汚染原因者の資力によっては実施が困難な 場合あり(この場合、土地所有者等が実施) 土地所有者等 汚染原因者 *汚染原因者の資力によっては求償が困難な 場合あり 土地所有者等 土地所有者等 土地所有者等 土地所有者等 *土地所有者等に資力がない場合は基金によ 【後に汚染原因 り支援 者が判明した場 合は求償可能】 土地所有者等と汚染原因 者が異なる 土地所有者等 汚染原因 に異議がない 者が存在 土地所有者等 する に異議あり 汚染原因者が存在しない 汚染原因者が不明 ③基金 2.土壌汚染対策事業 (1)市場規模 2001年度 500億円 2005年度 2000億円 潜在市場: 13兆円(?) (2)市場の特徴 ・急激な伸びが確実 ・リピートオーダーが少ない 3.土壌汚染対策工法 重金属等に係る恒久対策 <揮発性有機化合物に係る恒久対策> 原位置抽出 (対象地内/外) 原位置浄化 浄 化 恒 久 対 策 (土壌・地下水) (土壌の掘削を伴わな い) 処理 原位置分解 処理 掘削除去 (対象地内/外) (土壌の掘削を伴う) 原位置 封 じ 込 め 封じ込め 掘削除去後 (注)処理とは、掘削除去した 土壌や揚水・抽出された地下 水等から、さらに対象物質を 分離・分解することをいう。 封じ込め (対象地内/外) 資料:「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針および運用基準」環境省 4.汚染土壌の広域処理システム ~海運を活用した静脈物流システムとの連携~ ○発生地での処理施設整備の困難性 ○広域処理による需給バランスの平準化 ○処理施設の拠点化によるコスト低減 4.汚染土壌の広域処理システム ~海運を活用した静脈物流システムとの連携~ 【システムイメージ】 海上輸送の活用 ○CO2排出量の削減 ○輸送コストの削減 発生地 発生地 広域処理拠点 積出拠点 浄化土壌 汚染土壌 5.建設発生土の広域利用システム (スーパーフェニックス) 広域利用協定 引受協定 引渡側自治体 ㈱沿岸環境開発 資源利用セン ター 積出基地 業務委託等 引渡協定 引受側自治体 埋立工事 発注等 海上移送 業務委託 埠頭公社等 建設発生土積込 海上移送受託業者 埋立工事請負業者等 建設発生土海上移送 5.建設発生土の広域利用システム (スーパーフェニックス) ○積み込み ○海上輸送 石巻 ○引き渡し-埋立造成 広島 呉 三河 高知 宿毛 横浜川崎 東京 6.逼迫する廃棄物処分場問題 産業廃棄物処理施設の新規許可件数は年々 減少し、最終処分場の残余年数も減少。 最終処分場の新規許可件数の推移(産業廃棄物) リサイクルの推進により、最終処分量 そのものを減少させることが必要であり、 このために効率的なリサイクルシステム の確立が不可欠。 (件) 250 200 25 193 150 136 129 一 20 般 一 廃 般 棄 廃 物 棄 リ 15 物 サ イ ( ク % ル ) 率 10 ( % ) 100 50 31 26 0 平成8年度 全国 首都圏 近畿圏 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 産業廃棄物の最終処分場の残余年数 4.0 3.0 残余年数 3.0 3.1 3.7 3.2 3.3 3.1 3.3 2.8 2.0 1.0 1.0 50 産 産業 業廃 廃棄 物 45 物リ サ (イ %ク ル )率 40 ( % ) 棄 2.1 1.9 1.1 55 0.8 一般廃棄物 産業廃棄物 5 1.2 7 0.8 12 17 22 (平成7~10年度:実績、平成17・22年度:目標) 0.0 H7 環境省資料より H8 H9 H10 H11 年度 基本方針(廃棄物処理法)により作成 35 平成 (年度) 7.港湾を核とした総合的な 静脈物流システムの構築 【総合的な静脈物流拠点】 既存のストックを最大限に活用し、総 合的な静脈物流拠点を各ブロック毎 に配置。 【広域静脈物流ネットワーク】 環境に優しく安全で低コストな海上 輸送を活用した「広域静脈物流ネッ トワーク」を形成。 7.港湾を核とした総合的な 静脈物流システムの構築 苫小牧港 総合的な静脈物流拠点 (リサイクルポート) 指定港に対する支援策(案) ①地域の受け入れ体制整備によるリサイクル産 業の新規立地促進 ②国と港湾管理者による静脈物流システム事業 化調査の共同実施 ③民間事業者が行うリサイクル施設の整備に 対する特定民間都市開発事業としての支援 ④推進組織「リサイクルポート推進協議会(仮 称)」を設立し、協議会への参画による港湾 相互間及び港湾・企業間連携の促進 ⑤静脈物流基盤(岸壁等)の整備に対する支援 等 1次指定港 (H14.5.30) 北九州港 神戸港 室蘭港 東京港 7.港湾を核とした総合的な静脈物流システムの構築 (交通政策審議会港湾分科会中間報告(案)より抜粋) 循環型社会の構築など環境問題への対応 港湾を核とした総合的な静脈物流システムの構築 効率的で合理的なリサイクルシステムを構築し、循環型社会への転換を促進する ため、港湾における静脈物流拠点(リサイクルポート)と広域ネットワークによる 総合的な静脈物流システムを構築する。 (リサイクルポートの形成) 港湾においてリサイクル関連施設の拠点的な立地を推進するとともに、循環 資源の輸送インフラとなる係留施設、積替・保管ヤード、臨港道路等の施設 を有機的かつ一体的に整備したリサイクルポートを全国に拠点的に配置する。 施策 ・ リサイクルポートにおいては、特定の区域を設定し、循環資源の適正な管理の下 における取扱・処理のより一層の推進や静脈産業の立地支援が可能となる仕組み を実現 ・ 港湾において汚染土壌の処理施設の拠点的立地及びこれに係る静脈物流システム の構築に向けた準備や支援方策の検討を推進 ・ スラグ等の他の産業から発生する副産物について可能な範囲で建設資材としての 利用を促進するため、静脈物流システムの構築と連携を図りつつ、これらの副産 物に関する情報交換システムの開発を推進 8.今後の課題 ○廃棄物に係る諸規制の緩和 ○広域リサイクル拠点の形成支援 ○総合的な循環資源情報変換システムの構築 9.その他 (民活法を活用した廃棄物海面処分場の延命化対策) 廃棄物最終処分場の延命化及び埋立後の造成地の高度化利用を図るため、廃棄物海面処 分場で埋立に用いられる廃棄物等の減量化施設(廃棄物海面処分場延命化施設(仮称))を民 活法の特定施設として追加し、民間能力を活用した施設整備を推進する。 ■廃棄物の減量化施設の例 <廃棄物溶融施設の概要図> ■支援措置 ・事業所税の減免、NTT-C無利子貸付、 廃棄物 財投資金による融資 廃棄物を 溶融し、減 量化 溶融スラグ ■減量化施設を活用した廃棄物処理 廃 棄 物 海 面 処 分 場 で 埋 立 処 分 <建設発生土処理施設の概要図>
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