目で見てわかる 測定工具の使い方」 出版まで

大学技術職員が目指すべき
専門技術レベルと
専門技術研修の模索
平成24年度
高エネルギー加速器研究機構
技術職員シンポジウム
名古屋大学 全学技術センター
教育研究技術支援室
主席技師
装置開発技術系
河合利秀
大学技術職員が目指すべき
専門技術レベルと専門技術教育の模索
H24年度KEK技術職員問題シンポジウム
名古屋大学 河合利秀
1、どのような仕事をしてきたか
2、専門性獲得の道のり
3、大学技術職員が目ざすべき専門技術レベル
4、名古屋大学の技術研修
5、専門技術研修と技術検定制度
6、まとめ
今日の話のストーリー
大学技術の専門性と技術のイニシャティブ
国際研究プロジェクトにおけるイニシャティブ
名古屋大学の技術組織と技術研修
ミツトヨ計測カレッジと国家技能検定
専門技術研修と大学独自の技術検定
周辺大学との共同で専門技術研修と検定の
仕組みを作っていきませんか(提案)
1、どのような仕事をしてきたか
研究プロジェクトに育てられて
初めての大仕事(WA75)・・・初めての海外
原子核乾板用顕微鏡ステージ・・・失敗と成功
ファイバートラッカー・・・CERNの技術組織と競う
IRAS,ASTRO-F,IRSF,NANTEN-2
「作る」から「考えて作る」へ
技術の専門家として研究者と対等に向き合えるように
教育・研究への貢献:技術のイニシャティブを握れ
国際共同研究:技術のイニシャティブを握れる技術職員
素粒子・加速器実験
天文衛星・望遠鏡
4m電波
望遠鏡
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三鷹光器で研修
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置
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NANTEN
(チリ・ラスカ
ンパナス)
山の上
望遠鏡
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(ハワイ
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広島)
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受
信
機
関
連
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技
術
開
発
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IRSF,
SIRIUS
(南アフリカ)
NANTEN-2
(チリ・アタカマ)
新型望遠鏡
TRIP
OL
SIRIUS
-2
原子核乾板を使った加速器実験
WA75/CERN
E872/FNAL
E373/KEK
OPERA/CERN
WA-75 ターゲットムーバー
(三鷹光器との共同開発)
仕様:幅50mmの隙間で20Kgの原子核乾板を上下左右に複雑に
駆動し、原子核乾板の位置精度を10μm以内で読み取る
転機となった大仕事、周囲の反対を押し切り引き受ける
CERN技術陣の設計では
装置の幅も精度も実現せず
三鷹光器の基本設計で
河合が組立・調整
軸受ハウジングはすべて自作
主要部品は三鷹光器が支給
駆動試験での事故
強度計算の見落としを発見
交換可能な部分で壊れる設計に変更
三鷹光器のノウハウを学ぶ
結果:加速器のビーム強度に合わせた複雑な駆動で10μmを実現、以後数回の実験に使用
E872/FNAL シンチレーションファイバートラッカー
0.5mmのシンチレーションファイバーを
平行並べ、シート状にする
シートを層状に配置し、
荷電粒子の通過位置を検出する
CORUS実験/CERNと競争で
シンチレーションファイバートラッカーの実用化
ファイバー整列の機械化を実現、日本の勝ち
τニュートリノの直接検出に成功
OPERA(長基線ニュートリノ振動実験)
ECCモジュールを巨大な
壁状に配置し、交換できる
ようにしたGMは河合の
アイディアによるもの
実験の開始から技術の
イニシャティブを確保
終始技術の優位性を保ち
現在に至る
原子核乾板に記録された素粒子飛跡を
読み取るための「顕微鏡ステージ」開発
最初は生物顕微鏡を使って人の手と目で素粒子飛跡を追跡・・・1枚を数か月
コンピュータを使った自動飛跡認識のための顕微鏡ステージを開発・改良
(失敗もたくさんありましたが、そこから学ぶことも多かった・・・)
現在、100x125(mm)を1時間程度で解析可能、さらに100倍のものを開発中・・・
研究からの要求に即応した開発で三鷹光器もNikonも実現できない領域に・・・
CERNも同様の装置を開発しているが解析の成果を挙げているのはこちらです!
超高速ステージ(開発中)
10mmsで5mm動く
画像撮影時は0.2μm以内で静止してほしい
1/5の速度で試験運転、画像静止・・・CCD1ピクセル以内に収まっている
望遠鏡と観測装置
TRAISPEC
IRSFとSIRIUS
NANTENとNANTEN-2
ASTRO-F(あかり)
南アフリカ望遠鏡(IRSF)とSIRIUS
購入するといっていた望遠鏡を自分たちで作ろうと主張
基本設計:企業とコンペを行う
名大側の設計は研究室の学生の声を集めて河合が担当
制御も自分たちで開発・・・担当した学生を一から指導
計画通りに完成
観測成果も十分
技術者を育てる
THK,横河プレシジョン
新機構を採用し
小型化、高性能化
低価格化を実現、姉妹機12台
世界で最も詳しい赤外線星のデータベースを完成させる!!
銀河中心部とマゼラン星雲領域ではリファレンスとして用いられている
IRSF/SIRIUSの観測によってもたらされた論文多数・・・
10年以上経った現在も現役で活動する日本の海外観測拠点
広島大学の「かなた望遠鏡」の方位軸はIRSFの基本設計を踏襲している
IRSFの基本設計・機構、制御方法を踏襲した
小~中規模の天文観測用望遠鏡
2、「専門性」獲得のみちのり
「作る」から「考えて作る」へ
パートナーシップの獲得
「仕事の流儀:無理難題が面白い」
物理金工室の時代
職人気質そのままの工作室
高級な機械は学生・教員に使わせない
図面通りに作ることが生きがい
作ったものが翌日捨てられている!!
我々の技量が足りないか、設計ミスか?
「役に立つもの」を作りたい
どうしたら役に立つものが作れるか・・・・
自主的な勉強会、若手教員も一緒に
「作る」から「考えて作る」へ・・・
一生懸命作ったものが一夜で捨てられる
のは悲しい・・・・
どうしたら捨てられないものを作れるか
研究者の図面を疑う
・・・確固とした論拠が必要
材料力学のイロハから勉強を始める
・・・仲間とともに
工作技術・・・1μmの加工精度を目指す
自主的な研鑽、外注業者との腕比べ
その一方で・・・
若手研究者と悪戦苦闘の「ものづくり」
夜遅くまで僕の失敗に付き合ってくれた
「なぜ?」を徹底的に追求する姿勢を学ぶ
研究者の設計に「ミス」はない?
「専門家」の設計図に「ものを言う」ことの怖さ
単純な間違いでも恐る恐る聞く・・・
納得してもらえないと単純なことでも設計変更できない
良いものを作ろうという姿勢は同じ
勉強して、わからないことには食い下がる・・・
良いものを作ろうという姿勢が評価され、信頼を得る
機械加工のスキル獲得を目標に・・・
バイト(旋盤用の刃物)整形研削と刃付け
両頭グラインダーによるバイト・ドリル研摩
切削理論の勉強
工作機械の精度測定
フライス盤、旋盤の加工精度限界を知る
寸法測定技術の基礎
定盤(1mx1.5m)の活用
ブロックゲージの活用:トレーサビリティの確保
転機となった「ターゲットムーバー」
動く装置のノウハウを三鷹光器に学ぶ
三鷹光器:日本を代表する技術者集団
 ボスの反対を押し切り引き受ける・・・失敗なら辞職も覚悟
三鷹光器に精密組立
を教えてもらう(1977)
初期不良を乗り切って
成功させた
機械設計のノウハウを獲得
CERNの技術者との競争
専門性獲得のストーリー
まとめ
「作る」から「考えて作る」への転換
ボスの流儀に反し、仕事のスタイルを変える
自主的な勉強会
仲間を募って一つの技術テーマ習得する
若手教員にも協力を仰ぐ・・・真空技術、金属組成
無理難題こそ面白い!
転機となったターゲットムーバー:精密に動く装置
国際共同研究プロジェクトで認知される
だれもやったことのないことを実現する
3、大学技術職員が目ざすべき
専門技術レベル
技術の専門家として・・・・
教育・研究現場での技術のイニシャティブ
国際共同研究での技術のイニシャティブ
技術職員が目指すべき
「専門技術のレベル」
技術の専門家として自己を確立し、
教育・研究現場の技術を担当して新しい水平線をもたらす
1、あなたが関わったことで研究が飛躍的に進み、教員(研究者)が得をしたと本
心から思ってもらえるように
教育研究への貢献
2、研究者側の技術要求を企業側の技術者にわかりやすく伝え、仕様の決定や
価格などの交渉で有効な言動ができるように
研究者と企業技術者との橋渡し
3、国際プロジェクトにおいては日本の研究者がイニシャティブを握れるよう海外
の技術者集団と渡り合い、彼らからリスペクトされるように
研究機関の技術者との連携
 「専門性獲得」のパートナー
1、望遠鏡や顕微鏡に私のアイディアを盛り込んで性能を飛躍
的に向上させる・・・無理難題の方が面白い
世の中にないものを作る、誰も見たことのない現象見る
良き研究者と対等のコラボレ-タでありたい
2、CERNや海外天文台の技術者集団との競い合い
イニシャティブをとる
研良きライバルであり、コラボレ-タでもある
3、企業技術者や外注業者(職人)との相互互恵関係
研究側の意図を理解させる=適切な関係を構築する
良きライバルであり、良きコラボレ-タでもある
4、名古屋大学の
技術組織と研修制度
技術職員研修を紹介します
・試行から発足へ(2009年度から)
センター長:理事
技術部長
室長4名
技術業務調整、研修など
技術部長:教員
・室長、課長、課長補佐等
24名
人事権:
各学部にある
学部から推薦
学部間の壁を越えて
連携目指す
組織化の理念
基本的な考え方
大学の技術業務は技術職員が担当する
「よく似た技術内容」で集団を形成し、自主運営
6分野:環境安全、情報通信、装置開発、計測制御、物質分析、生物生体
全学一本の技術組織
技術職員の側から求めた
震災復興支援で100台以上のPCを送る
 現状:不完全!
学部の壁(教員)、技術職員自身の壁をなかなか破れない
名古屋大学の技術研修
名古屋大学技術研修(8月、グループ研修)
名古屋大学技術研修会(技術発表)
新規採用職員研修(法人化、技術は2日間)
プロジェクト・マネージメント研修(外部)
コーチング、図解説明力、リスクアセスメント
全国技術研究会(旅費支援)
東海・北陸地区合同技術研究会(旅費支援)
各部局の技術研修会等(工、理、医、STE、etc)
しかし
若手技術職員の伸び悩み
1年で辞めてしまう
高いスキルを生かせない(一種合格者多数)
教員と先輩技術職員による抑制、仕事の取り合い
歴史的に「運営」実績のある部局とそうでない
部局の「温度差」「文化の違い」が払拭できない
同じ技術系でも部局によって仕事のスタイルが違う
教員が求めるものは同じ?
技術職員への信頼度と要求するレベルの違い
専門技術研修の必要性
マネージメント研修のアンケートから
専門的な技術研修を実施してほしいとの回答
専門的な技術研修は部局の責任で実施
実施しにくい環境・・・小さい部局など
若手懇談会
専門的な技術の習得に不安
専門技術研修を実施してほしいとの要望多数
外部の技術講習会を調査
ミツトヨ計測カレッジなどを受講、有効と判断
5、専門技術研修と検定制度
専門技術研修の必要性
技術の専門性獲得の筋道として
国家技能検定を参考にした
検定制度を考える
専門技術研修と検定制度
専門技術研修は可能か?
ベテラン技術職員が講師となって技術を伝承する
外部技術講習会を調査
 ミツトヨ計測カレッジ「寸法測定技術の応用」を受講
 国家技能検定合格を目標にしていた
検定制度を考える
名大「技能アンケート」の取り組み
 大学で必要とする専門技術のリストアップ
国家技能検定(旋盤一級など)を参考に
専門技術研修と検定試験:専門技術者として認定
ミツトヨ計測カレッジ「寸法測定技術の応用」
日常業務で使う測定工具を正しく使う
2~3日の実習(グループ研修)を中心とした技術講習
技能検定の実技を想定した実習内容
複数の測定方法・測定工具を使ったクロスチェック
測定工具の校正と手入れ
受講者が講師に(ミツトヨが推奨)
受講した人は自社の「講師」となって技術を伝える
テキストが市販されている
将来は自前テキストで・・・・機械工作実習テキストの経験
自前で講習会を開催することは可能である
ミツトヨの計測カレッジ
動機は、「専門行政職俸給表見送り」
専門行政職俸給表見送り
大学技術職員の専門性を認めず
組織化を優先・・・事務組織より低い「専門性」
国家技能検定
専門技術の能力を示す指標、社会的認知
大学技術職員の技術の専門性を証明する
独自の検定制度と研修を結びつける
自前で専門技術研修を実施する
地域大学間協力で幅広い技術分野をカバー
6、まとめ
大学技術職員の存在意義:教育・研究への貢献
研究の意欲や創造性のきっかけを与える「技術」を提供できる
研究プロジェクトの命運を握る技術にどれだけ参画できるか
獲得すべき専門技術を明確に示す:専門技術研修と技術検定制度
大学技術職員の存在意義が問われている
教育・研究への貢献
研究の意欲や創造性のきっかけを与える「技術」を提
供できる
研究プロジェクトの命運を握る技術に参画
技術の専門家として認める仕組み
専門技術研修と技術検定制度を技術職員育成
の仕組みとして考える
獲得すべき技術とスキルを明確に示す
一大学だけでは実施不可能・・・・地域の共同で
昨日講演を聞き、実現できると思いました
ご静聴ありがとうございました
オプション
自己紹介・・・・
研究者と共同で進めた「ものづくり」
オープンショップ制の確立
「ものづくり」を教える「現場」・・・
フレンドリーな「金工室」を目指した改革
企業技術者との連携と共同
で、私の履歴は・・・・
県立工業高校電気科卒業(最終学歴)
名古屋大学 技術職員
理学部物理金工室で技術補佐員から始まる
きっかけは、原子核乾板駆動装置(1985年)
それ以後、多くの国際プロジェクトに参加
まさか、研究の最前線に立つ天体望遠鏡を
作るとは夢にもおもいませんでした!
IRSF、NANTEN-2・・・・・
TRISPEC(赤外線3色撮像・分光・偏光観測装置)
すばる望遠鏡に付けて観測しようと始めたが
複雑かつ大がかりな装置で、すばるには付けられず!
UKART(ハワイ)の試験観測後行き場をなくしたが・・・
TRISPECで赤外線観測装置
の基本的な技術のほとんどを
学び、SIRIUSに引き継ぐ
現在広島大学の「かなた望遠鏡」主観測装置になっている
NANTEN・・・NANTEN-2
ラス・カンパナス天文台(標高1700m)に設置したNANTENを解体・養生し
アタカマ高原(標高4200m)に移設、主鏡交換、制御装置交換をおこなう
クレーンの資格を取って、解体・養生・再組立て作業を行う
制御装置も手作り、このときPLCを使った「位相制御」を採用
ラス・カンパナスでの解体作業は組立作業の予行演習、経験を積む
NANTEN-2 再組立て作業
標高4200mのアタカマ高原にて約一か月の作業
組立精度は三菱電機の社内規定にも合格、
水準器だけでも十分な組立精度をえることができた
NANTENがみた銀河系(COの分布)
NANTENとIRSF/SIRIUSの観測成果
初めての人工衛星「IRTS」
サーマルシールドを担当する
赤外線天文衛星「あかり」のFIS
学生と一緒に基本設計から始めて、
EM~FMをすべて手作りで押し通す
FISの心臓部である駆動コイルのボビン
大手メーカーも作れない・・・
こういうときこそ私たちの出番!!
JAXAからも頼りにされています
国際プロジェクトで何ができるか
人格者として見られるように
日本の文化や伝統を意識する・・・折り鶴、清酒などお土産を用意
当該国の歴史や文化を予習しておき、敬意をはらう
リスペクトされる「何か」をもつ・・・スポーツ、芸術など何でも
地元技術者集団との信頼関係を構築する
現地で何が入手できるかを早く確認する
だらしなくなりがちな学生や若手教員の生活を取り仕切る
レンタカーなどの運転は必要になるので国際免許を準備する
(責任を伴う業務は積極的に担い、同行した教員の負担を減らす)
チリ・NANTEN-2組立作業
現地作業員との朝礼
南アフリカ・サザーランド天文台
IRSF開所式
時には歌も・・・・
ハワイ・TRISPEC試験観測にて
(銀河中心を写真に撮る)
チリ・ラスカンパナス天文台
技術スタッフの面々と卓球交流
誰も教えてくれない切削加工
見て盗め!・・・・?
教えて伝わるものではなく自分で会得するもの?
「経験」も必要だが「理屈」も必要だと気づく
正しい指導法方法がある・・・・機械工作実習の実践
失敗から学ぶもの
フライス加工の精度がでない・・・機械の温度影響
旋盤の同芯加工ができない・・・・・・・・・・加工手順
寸法測定ミス・・・・・・・・・測定工具の正しい使い方
3、汎用技術と専門技術
技術の本質
技術は時々刻々革新されている
技術そのものに内存する自発的革新性
技術者を育てるとは「技術革新の担い手」を育てること
では、「古い技術」は役に立たないのか
2001年外部評価から
「決して新しい技術ではないが古い技術を上手に
使いこなして世界第一線の研究をよく支えている」
 古い技術から新しい技術が生み出される
教育研究現場の技術に内存する自発的革新性に気づき
教育研究現場の技術革新を担う:技術職員の役割
汎用技術と基礎技術
 汎用技術とは:その分野なら誰でもどこでも実施可能
 どこでも実施できる技術・・・・基礎技術の集積
 誰でもできる技術?・・・・基礎技術がなければ実施不可能
 汎用性を確保するには応用力と柔軟性が必要
 基礎技術:その分野の基礎をなす技術や技能の集合
 基礎技術をつなぎあわせることで「技術として役に立つ」
 あらゆる「技術革新」は基礎技術から出発している
汎用技術と基礎技術の違いはどこにある?
汎用技術という言葉を勘違いしてはいないか?
汎用技術とは
実際にその場で使えなければ意味が無い
基礎技術を駆使してあらゆる局面で実施できる技術
能力であり、他分野へも広く応用される技術形態
決して幼稚な技術や能力ではありません!!
基礎技術を新しい局面で応用できたら
そこには「技術革新」が含まれている!!
大学技術職員の専門性とは
世界で私しかできない技術・・・だけでよいのか?
技術要求・・・ある?・・・・時間がたてば無くなる
教育研究の役に立っている?・・・時間がたてば・・・
技術は絶えず革新する
条件が変われば、役に立たなくなる
時間が経過すれば、次の技術が追い越していく
教育研究現場の新しい技術局面に適応し、
「役に立つ技術・技能」として提供できる総合的な能力
大学の技術業務は
常に汎用性と技術革新が同居する
技術職員は技術革新を担うことで
「技術の専門性」を獲得する
あらゆる技術業務には技術革新の萌芽が内存している
技術革新の萌芽を見いだすには、基礎技術の研鑽と広い視野が必要
教育研究に密着した技術業務には常に新しい視点が持ち込まれる
技術職員は日常の汎用性を確保する中で技術革新の機会を逃すな!
新しい局面で技術革新を担うとき、大学技術職員に「専門性」が宿る
装置開発室の技術の特徴
オープンショップ
工作機械の開放
加工技術の公開
在庫サービス
決して新しい技術ではないが、
うまく組み合わせて使うことで
機械工作実習
安全教育の徹底
工作機械の操作を覚える
設計・製作・開発
3D-CADによる機械設計
NC工作機械
独創的な実験・観測装置をつくる
装置開発室の技術とツール
実験・観測装置
機械加工技術
真空技術
メカトロニクス
機械設計
切削加工技術
工具研摩技術
精密組立技術
NC工作技術
溶接技術
リーク試験技術
低温技術
熱設計
電子回路技術
制御技術
通信技術
システム設計
材料力学
機械要素
機械構造設計
材料物性
Heリークディテクター
真空排気台
制御用PC、PLC
加速度計
オシロスコープ
3D-CAD、CAE
ストレンゲージ
硬度計
材料試験機など
工作機械・溶接機
基礎的測定工具
三次元測定器
セオドライト
オートコリメータ
装置開発を支えるツール・・・個々の技術を総合的に組み合わせて新しい装置を作る!
「汎用性と専門性」のまとめ
技術には汎用性と専門性の両面がある
技術の汎用性と専門性は表裏であり互いに関連しあっ
て高めあっている
技術の現場では
汎用技術と技術革新は常に同居する
技術革新を担ってこそ専門技術
「ジェネラリスト」と「スペシャリスト」論争
大学の技術職員は両面を担っているはず・・・
 ヒエラルキーを超える・・・専門性を獲得し・・・
技術者として自立し、研究者と対等に渡り合う
名古屋大学技術研修
毎年夏に、3日以上、専門技術分野の回り持
ちで開催、大テーマは事前に決まっている
グループ学習、小テーマを自分たちで決める
研修参加者は名古屋大学技術研修会で発表
する
自主研修から始まった「技術研修」
名古屋大学技術研修会
3年に一回は発表、他の技術分野の話も聞く
全技術職員が自分の技術業務を発表しあう
自分の仕事を人に話せるようにする
人の仕事の話を聞く
名古屋大学の技術業務は技術職員全員で
マネージメント研修プロジェクト
マネージメント研修
外部(インソース)から講師を呼んで実施
1日間30名、グループワーク、
3年間で全員何らかのコースを受講するように
コーチング、図解思考能力、説明力など
リスクアセスメント
労働災害防止協会、安全衛生協会が主催
各職場で受講者がいるように
最後に
大学の技術を担う技術職員
 「技術の専門家」集団をめざそう
 教育・研究に内存する「革新性」「創造性」に着目しよう
努力し続けることで成しえたこと
CERNやFNALの同業者からリスペクトされる存在に
若手技術職員に期待すること
高学歴&技術組織=スタートラインが違う
世界で活躍する技術職員がもっと出てきてほしい!
若手技術職員に残したい=技術の専門性を獲得する筋道