災害事例から見た安全管理のポイント さいたま労働基準監督署 安全衛生課 田中 3つの事例について 事例1: 改正、食品加工用機械 (食料品製造事業での災害) 事例2: マニュアルの落とし穴 (陸上貨物運送事業での災害) 事例3: 気付き (その他の土木工事業での災害) 事例1: 改正、食品加工用機械 食品混合作業において 被災者:Bさん:20代:女性 2槽式ミートミキサー 作業者A 作業者B 事例1: 改正、食品加工用機械 肉 肉 ミキサーを使用し肉の混合作業を2名で行う。 事例1: 改正、食品加工用機械 混合作業が終了し、ミキサー内の肉をミートト ロッコに排出する。 全部で4台のミートトロッコ分になる。 肉 ミートト ロッコ 事例1: 改正、食品加工用機械 最後の一台を排出する時ミキサーを停止し ミキサー内のヘリに残っている肉をまとめた 後、再度ミキサーを稼働させる作業手順の 中、排出口に手を入れて肉をとっている作 業者Bに気付かず、作業者Aがスタートボタ ンを押してしまった。 停 止 肉 事例1: 改正、食品加工用機械 ミキサー内のスクリューが回転し、腕を巻き 込まれる。 運 転 前腕を切断し障害等級5級の災害となる。 肉 ギャー 事例1: 改正、食品加工用機械 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 操作者と排出作業者とが容易に確認することが出来ない。 運 転 操作盤を前面に向け、双方が安全確認を行えるように作業動線の改善。 安全柵の下場から、容易に手が入る構造となっている。 従来の安全柵に、垂れガード等を設け、危険限界に身体の一部が入らないように施 す。 肉 機械の停止後、用具等を使用しないで排出作業を行った。 機械を停止させている理由について、停止表示を起動スイッチに掲げ、他者に注意 を促し、直接、回転体等に触れない方策が出来れば、それを守ること(用具の使用)。 操作者は声かけ(確認)もせずにスタートボタンを押してしまった。 排出口や投入口の扉が開放されている場合は、起動しないようにインターロック機 構等を設ける。始動時の安全確認は確実に行う。 事例1: 改正、食品加工用機械 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 操作者と排出作業者とが容易に確認することが出来ない。 運 転 安全柵の下場から、容易に手が入る構造となっている。 機械の停止後、用具等を使用しないで排出作業を行った。 操作者は声かけ(確認)もせずにスタートボタンを押してし まった。肉 労働安全衛生規則第130条の5~7における違反設備 労働安全衛生規則第107条における違反行為 改正、労働安全衛生規則第130条の2~9及び107条に追加されました。 (食品加工用機械の規定を追加)厚生労働省HPよりリーフレットを参照くだい! END 事例2: マニュアルの落とし穴 引っ越し運搬作業の昼食後(休憩中)において 天気、晴、気温32℃ 被災者:Bさん:30代:男性 引っ越し往復路の途中、12時も回ったので、 昼食を取るべく、飲食店の駐車場に、フェン ンスを前方に、2tトラックを輪止いっぱいに 止め、店舗内へ向かった。 フェンス 運転手A 助手B 助手C 事例2: マニュアルの落とし穴 昼食を済ませた3人は支払いを済ませた毎に トラックへと戻る。 初めに戻ってきたのは、Bさんで、朝買った 「おにぎり」が、かばんの中にあることを思い 出し、熱くなった車内ではなく、トラックの前 方が日陰になっていたので、そこに腰かけ 食べることにした。 事例2: マニュアルの落とし穴 次に戻ってきたのは、ドライバーのAさんで、ま だ誰もトラックに戻っていないようなので、少し でも涼しくしようと、エアコンをつけるために運転 席のドアを開け、始動キーを回した。 事例2: マニュアルの落とし穴 すると、トラックが輪止を乗り越え前方のフェ ンスに激突。 しまった。 ぶつけちまった! うー! 事例2: マニュアルの落とし穴 トラックの前を確認すべく覗いたAさんは、ト ラックとフェンスの間に挟まれているBさんを 発見し、あわててトラックをバックさせた。 戻ってきたCさんはその状況を見て、店舗内 に戻り救急車を呼んでもらう。 おーい 大丈夫か! うー! 救急搬送先の病院にて、胸部圧迫による死亡が確認された。 事例2: マニュアルの落とし穴 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! Bさんは、朝買った「おにぎり」が、かばんの中にあることを思い出し、熱く なった車内ではなく、トラックの前方が日陰になっていたので、そこに腰かけ 食べることにした。 車両の陰など、他者から容易に確認されない個所は、安全確認を確実に行 うこと。 車両の運転マニュアルに、駐車の場合はエンジンを止め、ギヤを1速に入れ、 サイドブレーキをかけてから降車し、始動の場合は座席に座り、ギヤを ニュートラルに入れてから始動させることとなっていたが、短絡行為が行わ れた。 短絡行為を行わないように、注意喚起表示を始動スイッチ箇所に設け、指差 呼称等により確認意識の向上を行う。 業務上過失致死としてAさんは警察に拘束された。 END 事例3: 気付き 建築工事に係る外構植栽工事において 被災者:Cさん:30代:男性 緑地 駐車場棟 緑 地 建築物5000㎡ 緑地 公園 事例3: 気付き 緑地 駐車場棟 緑 地 建築物5000㎡ 緑地 元請事業者による日常安全衛生管理活動 ①朝礼全体体操及び作業注意事項の伝達 「建物内の空調の効いた箇所での休憩を取 りましょう。」 ②新規入場者教育 「今日、入場した方は、必ず申し出て受講し てください。」 ③協力業者KYミーティング参画 ④安全行程打ち合わせ ⑤場内巡視 公園 ①安全衛生協議会を週1回開催 ②特別安全衛生協議会を月1回開催 ③安全施工サイクルの実施 事例3: 気付き 朝礼に参加、安全作業、熱中症防止の指示 緑地① 駐車場棟 KYミーティングを実施、熱中症注意を促す ③の植栽内容の変更指示による作業 ②の植栽する芝の運搬作業 ②③の芝・低木植栽作業 緑 地 ② 建築物5000㎡ 緑地③ ①の低木植栽作業 公園 事例3: 気付き 緑地① 駐車場棟 緑 地 ② 建築物5000㎡ 緑地③ 8:20③の植栽内容の変更指示により4名での 作業 9:50②の植栽する芝の運搬4名での作業中、 職長が水分補給と休憩を指示 公園 事例3: 気付き 緑地① 駐車場棟 10:30②③の芝・低木植栽3名での作業 11:00休憩指示 11:20職長が水分補給と休憩を指示するが、 Cさんは作業継続する。 11:45②作業終了昼休みに入る 緑 地 ② 建築物5000㎡ 緑地③ 公園 事例3: 気付き 公園の木陰で昼食・昼寝 13:00作業再開、Cさんは遅れて①作業場に 来る。5名にて作業。 緑地① Cさんは同僚に遅れた理由を話す。 駐車場棟 緑 地 ② 建築物5000㎡ 緑地③ 13:50休憩に入る。 公園 事例3: 気付き 緑地① 14:15作業管理者が明日の手配のため会社 に戻る。 14:30Cさんが、外部鉄骨階段にもたれかか るように座り込んでいたので、同僚が「気分 が悪いのか?公園で休んでいれば」と声か け、Cさんが「うん」と答え作業場から立ち去 る。 駐車場棟 15:00その他3名休憩に入る。 緑 地 ② 建築物5000㎡ 緑地③ 公園 事例3: 気付き Mは 公園で休 んでいる どうした? 緑地① 誰か倒れているぞ! 駐車場棟 15:20作業管理者が戻り、Cさんについて尋 ねる。「公園で休んでいる」と同僚が答えるが、 誰も確認していない。 15:30Cさんを除いて4名にて作業再開 再開後、すぐさま「誰か倒れているぞ!」と大 きな声が②から聞こえる。 Cさんが倒れているのを同僚たちが確認。 建築物5000㎡ 緑 地 ② 緑地③ 元請作業指揮者が建物内検査後②にさしか かりCさんを同時期に発見。 公園 声かけをしたが反応がないため救急車を要 請、病院先にて死亡が確認される。 元請事業者は、Cさんについて新規入場者名 簿にて確認したが、存在していなかった。 熱中症による死亡災害となる。 事例3: 気付き 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 11:20職長が水分補給と休憩を指示するが、 Cさんは作業継続する。 緑地① 駐車場棟 職長は、継続作業を黙認することなく、水分 補給と休憩を指示命令すべきであった。 遅れてきた訳を同僚に話す。 遅れてきた訳が体調不良でない限り、考えら れないことに気付くべきであった。 建築物5000㎡ 緑 地 ② 緑地③ 14:30Cさんが外部鉄骨階段にもたれかかる ように座り込んでいたので、同僚が「気分が 公園 悪いのか?公園で休んでいれば」と声かけ、 Cさんが「うん」と答え作業場から立ち去る。 何かにもたれかかるような状態であれば、自 立行動が困難であるにも関わらず、指示を 出しただけで、誰かが付き添い、空調の効い た建物内へ導き、元請事業者に報告すべき であった。 事例3: 気付き 緑地① 駐車場棟 建築物5000㎡ 緑 地 ② 緑地③ 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 15:20作業管理者が戻り、Cさんについて尋 ねる。「公園で休んでいる」と同僚が答えるが、 誰も確認していない。 作業管理者や職長は、回答に対し「確認した のか」と尋ね、未確認であれば早急に所在を 明らかにする行動を起こすべきであった。 体調不良者が出たことを、元請事業者に対し 報告を行わずに、早期における適切な措置 が行われなかった。 公園 事例3: 気付き 緑地① 駐車場棟 建築物5000㎡ 緑 地 ② 緑地③ 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 元請事業者は、Cさんについて新規入場者名 簿にて確認したが、存在していなかった。 Cさんは、前日の新規入場者教育時間以後 に入場し、元請事業者に対し何も報告しな かった。 Cさんは前日に入場していたので「自分は該 当しない」と判断し、諸手続きをしなかったも のと同僚の証言で明らかになった。 元請事業者は、中途入場者の有無を午後の 公園 打ち合わせ会等(職長会等)にて再度確認す べきであった。 事例3: 気付き 緑地① 駐車場棟 災害へ導いたリスクはどこにあったのか! 元請事業者が朝礼時に指示した「建物内の 空調の効いた箇所での休憩」を取らず、全て 屋外休憩であった。 Cさんの午後の水分補給が確認されていな い。 気温9:00の時点28.3℃から14:00の時 点34.7℃と気温の急激な上昇があった。 建築物5000㎡ 緑 地 ② 緑地③ 公園 経験が1カ月と浅く、猛暑に対して体が慣れ ていない者への熱中症防止対策が施されて いなかった。 END 安全管理のポイント 「声かけ」の重要性を再確認するための教育・ 訓練は、他の作業者への「お・も・い・や・り」を 身につける、教育・訓練であること。 確認につぐ確認は、安全作業の基本であり、 「真の確認」はヒューマンエラーの防止となる。 「気付き」とは、他人に対する「思いやり」と、 自分を写す「鏡」であり、「ほう、れん、そう」は 安全を「繋ぐ」第一歩となる。 著:田中 ご清聴ありがとうございました。 本日のパワーポイントデーターが必要な方は、大宮 地区労働基準協会ホームページにアップしますので、 ご覧ください。 また、内容の詳細についてのご質問は、さいたま労 働基準監督署 安全衛生課 田中までお願いします。 完
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