エイズ薬のコピー

エイズ薬のコピー
2004.11.24
エイズ
• 2001年現在、全世界のHIV感染者は3610万人
• エイズ治療に効果の高い三種の薬剤を混合した
治療薬は、特許の成立した国では、患者一人当
たり1年分で1万ドル
• 特許の成立していないインドでAurobindo社に
よって製造されているのは295ドル
• 南アフリカ共和国は、人口の10%以上に当たる
420万人がHIVに感染
– ★p.28-30『先端科学技術と知的財産権』発明協会
南アフリカ共和国
• 1997年に医薬品の特許権の効力を制限でき、医
薬品の並行輸入を認める「医薬及び関連物質管
理法」を制定
• 大手製薬企業39社が法律改正を求め提訴
• 2001年4月、複数のNGOの連携、25万人の署名、
国際圧力で訴訟は取り下げ
– 安価なエイズ治療薬の輸入加速が予想
– 製薬企業も途上国における販売価格の切り下げが見
込まれる
国家緊急事態宣言
• 南ア政府が国家緊急事態を宣言して、TRIPS協定
に基づく強制実施を行うかどうかが問題となってい
た
– TRIPS協定31条によると、加盟国は、国家緊急事態そ
の他の極度の緊急事態の場合には、ライセンス交渉が
合理的期間内に成功しなかった場合以外にも、特許権
者の許諾なしで特許権を使用することを認めることがで
きる
• 2001年3月14日大統領は宣言しないと発表
– 前年の南アへの海外からの投資額は50%減少、更なる
投資低下を懸念(途上国の経済が海外資本に大きく依
存)
– 医薬品では、国際的世論の圧力がある(企業イメージ)
薬
• 研究開発費が莫大
• 化学物質の合成は、(開発費を省けば)安
価にできる
• 合成は、ある程度容易
• コピー薬が許容されると、研究開発が行わ
れなくなる
ブラジル政府
• WTO協定
• 「国家的緊急事態」では、補償を前提にコ
ピー商品を認めている
– TRIPS協定第31条:特許権者の許諾なしに国
が第三者に実施件を付与することを認める
• ブラジルは、エイズ禍を国家の非常事態と
宣言(特許権侵害を正当化)
–
2001.8.31(読売新聞)
炭疽菌
• アメリカでも、9.11に続いて、炭疽菌感染問題
が大きくなった(ドイツ バイエル社が持つ特効薬
の特許)
• 「国家的緊急事態」として治療薬の大量調達のた
めにコピー薬を早く入手すべきだという声が浮上
(日経2001.10.22)
• コピー薬の価格は十数分の一
• 米国の特許保護のグローバル化と有事対応が
対立
特許とコピー
• ロシュ社とGSK社は、エイズ薬の商品化に
それぞれ20億ポンド(約3500億円)以上を
費やす
• それを回収して、利益を得るために、綿密
な販売戦略が必要
• 企業にとっての損失:途上国に売られる、
先進国に渡り、ヤミで取引される
その他の問題
• 何種類もの薬を服用する治療を途上国で
行うのは難しい
• 失敗すると、エイズウィルスが薬に対する
抵抗力を持つかもしれない
• 国が、製薬会社への対抗を国際的に明確
にすることにより、薬だけではできないエイ
ズ問題解決への期待を作り上げる
遺伝資源
• 途上国に存在する微生物や植物などの遺
伝資源を利用した医薬品などの開発
• 先進国の企業:医薬品の特許をとり、販売
で利益を得る
• 遺伝資源を提供した途上国にも還元すべ
きだ
TRIPS協定
• アメリカの80年代の2国間交渉
– 米国の貿易に不利益を与えている外国の不公正な慣
行の交渉で、経済制裁をする(通商法301条)
– 88年:包括貿易法⇒知的財産分野にはスペシャル301
条が導入
• GATTウルグアイ・ラウンド(80年代)
• 93年WTO協定の付属書「知的財産権の貿易関
連の側面に関する協定(TRIPS協定)
– 特許の保護対象の最低水準の引き上げ
– 化学物質や医薬品の特許による保護を義務づけ
– プログラムを著作権による保護の義務付け
途上国のコピー薬容認
• 2003年8月の合意、欧州の対応(2004年)
• 途上国が治療に必要だとしてWTOに届けている
薬品について、コピー薬を製造する際の特許使
用料を大幅に減額。安価なコピー薬品が域内に
逆輸入されないよう防止策もとる。
• 合意文書は、(1)輸出は商業目的でなく公衆衛
生目的に限る(2)目的外の輸出を発見した国は
WTOに提起し解決を迫ることができる(3)実施
状況をWTOで毎年検討する――ことを明記。例
外輸出を認めるコピー薬に特別な包装を施すな
ど、市場への流出を防ぐ措置を盛り込んでいる