第4日目第1時限の学習目標 3つ以上の平均値の差の検定(分散分析)の 概要を知る。 (1)分散分析の例を知る。 (2)分散分析の広がりと基本的デザインに つい て学ぶ。 (3)要因の効果の検定方法を学ぶ。 (4)分散分析の基本用語を学ぶ。 3つ以上の平均値の差の検定(1) 分散分析例(1) 睡眠遮断実験データ (Kirk, 1985) 要因ー睡眠遮断 要因数ー1 要因の水準ー4 12h, 24h, 36h, 48h の睡眠遮断条件 サンプル数ー各水準に8 名づつ無作為割付 従属変数ー手先の鈍感さ 完全無作為化デザイン ANOVA 1 2 3 4 5 6 7 8 12h 24h 36h 48h 3 4 7 7 6 5 8 8 7 9 3 4 3 3 6 8 1 2 5 10 2 3 6 10 2 4 5 9 2 3 6 11 3つ以上の平均値の差の検定(2) 分散分析例(2) 社会的スキルと父母への 甘えの関連データ(18 年度卒業生稲垣さんデー タ) 要因ー父・母への甘え 要因数ー2 要因の水準-各2 (甘えの有無) サンプル数ー男65名 従属変数ー社会的スキル の6因子のそれぞれ 完全無作為化2要因デザ イン ANOVA 母 父 父親へ 父親へ の甘え の甘え 有り 無し 母親へ の甘え 有り 母親へ の甘え 無し 3つ以上の平均値の差の検定(3) 分散分析例(3) ミラーリエル錯視実験 (18年度計量心理学演習 受講者データ) 要因ー斜線分の長さ 要因数ー1 要因の水準ー3 サンプル数ー12名 従属変数ー錯視量 (単位mm) 1要因反復測定デザイン ANOVA 15mm 条件 1 2 . . . 12 30mm 条件 45mm 条件 17.8 18.5 19.5 25.8 30.5 28.8 . . . . . . . . . 21.0 29.0 31.5 3つ以上の平均値の差の検定(4) 分散分析例(4) 反応時間実験データ (18年度修士2年 金田君デー 1 タ) 要因ー反応形態と刺激の 中立性 2 要因数ー2 要因の水準ー反応形態3、 刺激の中立性2 … サンプル数ー25名 従属変数ー反応時間 25 2要因反復測定デザイン ANOVA A1 B1 A1 B2 A2 B1 A2 B2 A3 B1 A3 B2 240 218 437 439 485 567 197 195 267 382 366 363 … … … … … … 256 301 411 416 407 480 3つ以上の平均値の差の検定(5) 分散分析の広がり(1) 3つ以上の平均値の差の検定の方法である分散分 析には、いろいろなものが知られている。 一般には、この種の方法は、研究者が関心を持つ 従属変数に対して影響を持つと考えられる多くの 独立変数、すなわち要因のうち、少数の要因に絞 り他はできる限り統制し、少数要因の効果の有無 を統計的に検討する方法の全体を実験計画法 (design of ex- periment 又は experimental design) と呼ぶが、狭義にはそれによる分析手続きを分散 分析 (analysis of variance, 略して ANOVA) と呼ぶ。 3つ以上の平均値の差の検定(6) 分散分析の広がり(2) 分散分析は、狭義には1変量分散分析を指すが、 広義にはそれのみでなく、共分散分析 (analysis of co- variance, 略して ANCOVA)、多変量分散分析 (multivariate analysis of variance, 略して MANOVA)、及び一般多変量分散分析 (general multivariate analysis of variance, 略して GMANOVA) が含まれる。 また、複数の条件(分散分析では、これを処理と か水準とかいうことがある)に対して、同一被験 者が反応させられるデザインとして、反復測定 (測度)分散分析(repeated measures ANOVA) が 3つ以上の平均値の差の検定(6) 分散分析の広がり(3) この授業では、それらのうち、要因数が2つま での基本的な4つの方法について、まず簡単に 紹介する。 それらは、完全無作為化デザイン (completely ran-domized design)、完全無作為化要因デザイ ン (completely randomized factorial design)、乱 塊法 (randomized block design)、分割区画デザ イン (split-plot design) である。 分散分析では、つぎに示すように、データを収 集する前に、研究目的に照らして、適切な要因 及び被験者を計画的に集める必要がある。 3つ以上の平均値の差の検定(7) 完全無作為化デザイン(CR-p) 当該実験での主要な1つの因子の各水準に対して、各被 験者を無作為に割り付ける方法。 CR-p デザインでは、Fisher の実験計画法の3原則のうち どれとどれを使うか? 水準 観測値 A1 ・・・ Ap 均質な被験者集団 3つ以上の平均値の差の検定(8) 完全無作為化2要因デザイン(CRF-pq) 当該実験での主要な2つの因子の各水準に対して、各被験 者を無作為に割り付ける方法。 CR-p デザインとどこが異なる? B1 … Bq A1 ׃ Ap 均質な被験者集団 3つ以上の平均値の差の検定(9) 乱塊法デザイン(RB-p) 当該実験での主要な1つの因子の各水準に対して、均質 でない被験者を1つの局外因子によりブロック化し、ブ ロックごと無作為に割り付ける方法。 RB-p デザインでは、Fisher の実験計画法の3原則のうち どれとどれを使うか? 均質でない被験者を 1つの局外因子で分ける BL1 ・・・ BLk A1 ・・・ ・・・ Ap BL1 BLK BL2 3つ以上の平均値の差の検定(10) 分割区画デザイン(SPF-p.q) 当該実験で重要度の異なる2つの因子の水準に対して、各被験者を2 つの局外因子によりブロック化し2段階の無作為割り付けにより被 験者を割り付ける方法。 RB-p デザインとどこが異なる? B1 … Bq 均質でない被験者を2つの 局外因子によりブロック化 A1 BL(1)1 … BL(1)2 ׃ ׃ Ap BL(2)1 ׃ ׃ BL(1)p … BL(2) 2 … BL(2)r 3つ以上の平均値の差の検定(11) 条件間での平均値の差の持つ意味 睡眠遮断データでは、12時間、24時間、36時 間、48時間の睡眠遮断を課す4グループ各8名の 手先の敏捷性(鈍感度)のデータの平均値は、睡眠 遮断時間が増すにつれて、増大している。 水準間での平均値の違いは、手先の敏捷性に対する 睡眠遮断という要因の効果の有無を表している、と 考えられる。 まず、睡眠遮断要因の効果の検定結果が分散分析で はどのように示されるのかを、統計ソフト SAS を用 いてみてみよう。 3つ以上の平均値の差の検定(12) SAS による分散分析の出力例 変動因 自由度 平方和 Model 3 194.5 Error 28 41.0 Correct 31 235.5 ed total 変動因 自由度 Anova 平方和 平均平方 F 値 Pr>F 63.83 44.28 .0001 1.46 level 63.83 3 194.5 平均 平方 F値 Pr>F 44.28 .0001 3つ以上の平均値の差の検定(13) SAS による分散分析の出力例 変動因 平方和 自由度 平均平方 要因名 SS_A I-1 SS_A / (I-1) 誤差 SS_E N-I SS_E /(N-I) 計 SS_T N-1 F値 p値 U_A / U_E p 3つ以上の平均値の差の検定(14) SAS による分散分析の出力例 構造模型ー分散分析では、どのデザインでも、 それにより得られるデータ y を実現値とする確 率変数 Y に対するモデル(構造模型)を仮定す る。例えば、CR-p デザインでは、 Yik i Eik , ここで、μは一般平均、αi は因子 A の第 i 水準の 主効果、Eik は誤差項である。 3つ以上の平均値の差の検定(15) 分散分析での3つの仮定 (1)正規性 (構造模型の)誤差項は正規分布に従う (2)等分散性 各セルの(母集団での)分散はすべて 等しい (3)独立性 従属変数の値は互いに独立である 3つ以上の平均値の差の検定(16) 基本用語1-平方和(1) 例えば、分散分析表の中の平方和の1つである SSAは、第 i 水準の Ni 人のサンプルの従属変数の 値の平均を実現値とする確率変数から全サンプ ルの平均を引いたものの二乗和(平方和)であ Ni I る: SSA (Yi Y ) 2 , i 1 k 1 は、第 i 水準の主効果 αi と、誤差に関わる項であ ることが、うえの構造模型を用いると証明できる。 3つ以上の平均値の差の検定(17) 基本用語1-平方和(2) 同じく分散分析表の中の平方和の1つである SS E は、第 i 水準の k 番目のサンプルの値 yik を実現 値とする確率変数 Yik から第 i 水準の Ni 人のサン プルの平均を引いたものの二乗和(平方和)であ Ni る: I SSE (Yik Yi ) 2 , i 1 k 1 は、誤差に関わる項のみから成ることが、先ほどと同 様、構造模型から証明できる。 3つ以上の平均値の差の検定(18) 平均平方 つぎに、分散分析表の中の平均平方の1つであ る UEは、誤差平方和 SSE を N – I で割ったもの である: U E SSE /( N I ) Ni I (Yik Yi ) 2 /( N I ) i 1 k 1 同様に、UA は、要因平方和を I -1 で割ったもので、 U A SS A /( I 1) I Ni (Y i Y ) 2 /( I 1) i 1 k 1 3つ以上の平均値の差の検定(19) CR-p デザインにおける F 値の意味(1) 結局、CR-p デザインにおける要因の効 果検定のための統計量 F は、要因の効 果と 誤差に関わる項の、誤差に関わる 項に対する比 F U A /UE として定義されることがわかる。 3つ以上の平均値の差の検定(20) CR-p デザインにおける F 値の意味(2) 結局、CR-p デザインに限らず、一般に 分散分析では、テキスト p.8 上方の枠内 にまとめたように、 分散分析ではデータの全変動を、組み込 んだ因子の変動と誤差変動に分解し、誤差 変動に比べて当該因子の変動がどれ程大 きいのかを検討する。
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