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河川工学
-河川の地形学-
昼間コース
選択一群 2単位
朝位
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1)河川の分類・流域
2)河川の作用と地形
3)日本の河川の特徴
1)河川の分類・流域
河川(river):地表面に落下した雨や雪などの水が集まり,湖や海
につながる流れの筋(河道)とそこを流れる水の総称
水が地表面に現れない(地下水として流れる)河川もある.
伏流,水無川
流域(drainage basin):地表に到達した降雨・雪がある河川に流出
する.降水の集水範囲を流域という.その面積を流域面積あるいは
集水面積(cached area)という.
流域界( divide, watershed ),:
隣り合う流域の境界.分水界ともいう
氾濫域( flood plane ),:
洪水は河川周辺の低地に氾
濫する.氾濫が及ぶ範囲を氾
濫域という.
本川・幹川(main strain, main river):流域内の河川で水理学的に主要な
河川(河道の断面積,流量,河川長さがなどが最も大きいもの)あるいは
政治的・経済的に重要な河川
支川(tributary):幹川に合流する河川
派川(branch river):幹川から分岐し直接海に注ぐか再び幹川に合流す
る河川
小支川:支川に合流する河川,小小支川:小支川に合流する河川
小派川:派川から分岐する河川
水系の流域
小支川
水系(river system):
流域内の河川は複数
の河川によって河川
網を構成する.これを
水系という.
支川
支川
支川
派川
小派川
海
小小支川
小支川
派川
幹川,本川
流域界
一級河川:国土保全上または国民経済上特に重要な水系に係わる河川
で国土交通大臣が指定する.管理者は国土交通大臣.
幹川部分は国土交通省が直接管理する(直轄区間).
幹川部分以外の一級河川は都道府県が一部の事項を除いて
通常の管理を委任されている(指定区間).
二級河川 一級河川が存する水系以外の水系で,公共の利害に重要な
関係があるものに係わる河川.
管理者は都道府県知事(都道府県が管理する)
準用河川 一級河川および二級河川以外の河川で市町村が
指定したもの.市町村が原則として二級河川に関する規定を
準用して管理する.
普通河川 河川法が適用されない公共の水路または水面.
地方公共団体が行政的な管理を行う場合が多い.
(地方自治法,固有財産法)
同一水系内に一級河川や二級河川が混在しないようにして,同一管理
者による一貫した管理が行えるようにしている.
水系
一級水系
河川の種類
管理者
大臣管理区間 国土交通大臣
一級河川
指定区間 都道府県知事
準用河川
市町村長
普通河川
二級水系
二級河川
準用河川
普通河川
都道府県知事
市町村長
単独水系
準用河川
普通河川
市町村長
河川長(Lm)(流路長):本川河道に沿った河川の最上流端から河口ま
での距離.
流域面積(A):流域界で囲まれた流域の平面積.水系内の各河川ごと
に定義されるが,水系の流域面積はそれらを足し合わせたもの.
流域平均幅(B=A/ Lm ):流域面積を本川河川長で除したもの.
形状係数(F=B/Lm=A/Lm2):流域平均幅を本川河川長で除したもの.
流域平均勾配(mean slope):流域の標高の最高値と最低値の差(標
高差)を本川河川長で除したもの.
河川密度(D=ΣL/A):流域内の本川および支川,派川の河川長の合計
(総河川長,総流路長)を流域面積で除したもの.
洪水ピーク流量(Qp):一洪水あたりの最大流量
出水期間(Tr):流量が増え始めてからもとの流量に戻るまでの期間
河況係数(河状係数)(FQ):最大流量を最小流量で除したもの
流域の形状
羽状流域(feather-like basin)
全体が細長い羽状をなすもの.
各支川の出水にずれがあるため本川の洪水は比較的小さい.
洪水の継続時間は長い.
紀ノ川,揖保川,由良川,北上川,多摩川,大井川
大井川
放射状流域(radial basin)
流域が円形または扇形をなし支川が本川に向かって放射状に流入する.
各支川の出水はほぼ同時に集中するため,合流後のピーク流量が大きい.
洪水の継続時間は短い.
円山川,大和川,江の川
平行状流域(parallel basin)
細長い独立した流域の本川と支川が互いに平行に流れ,やがて合流するもの.
合流するまでは羽状流域,合流後は放射状流域の特性に近い.
白川流域
複合流域(compound basin)
ほとんどの河川は羽状,放射状,平行状流域がいくつか組合わさった複合形.
羽状,放射状の複合形が多い.
太田川,富士川,馬淵川
2)河川の作用と地形
河川は流水の働きによって土砂や砂礫を川底や川岸からはぎ取り,下流へ
と運んでやがて土砂・砂礫を堆積させる.これは河川地形の変化をもたらす.
河川の作用は浸食作用・運搬作用・堆積作用に分類できる.
浸食作用(erosion):河川が河岸や河床を削り,その物質を下流へ運び去る作
用.洪水時には多量の土砂を発生させる(土砂生産).
浸食作用には化学的な溶食作用(corrosion)と機械的な研磨作用(corrasion)
がある.
縦浸食(vertical erosion):河床を浸食し河床低下をもたらす.下刻(deepening)
側岸浸食・横浸食(lateral erosion):側岸を削り取る.側刻
勾配の急な山地河川では浸食作用により谷が発達する.
長期間にわたる浸食作用をdegradationという.
運搬作用(transportation):浸食された土砂を水と一緒に下流に流送
する作用.洪水時には多量の土砂を輸送する.
土砂の輸送形態
溶流(solution):化学的運搬作用.土壌中の可溶性物質を溶解し運搬
する.
浮流(suspension):機械的運搬作用の一つ.土砂が流れの乱れに
よって水中に浮かんだまま下流へ運搬される.このときの土砂を浮遊
砂(suspended solid)という.
掃流(traction):機械的運搬作用の一つ.流水の力により土砂が底面
近くを転がったり(転動),滑ったり(滑動),跳躍しながら下流へ輸送さ
れる.
堆積作用(deposition):流速が減少し運搬能力が低下すると重たい土
砂から河床に堆積してゆく.
洪水が終了すると河口部などに多量の土砂が堆積する.河床形状が
大きく変化する場合がある.
河口砂州
谷(valley):地殻変動による隆起と流水の浸食作用によって河床が
周辺の地盤よりも著しく低下した地形.
幼年谷(yang valley, youthful valley):V字谷,U字谷,滝を有する.
黒部峡谷,天竜峡など.
壮年谷(mature valley):幼年谷の河川が平衡状態(河床の変化が
無くなる)に近づき縦浸食から横浸食が卓越する.谷底に平坦な平
野ができる.(谷底平野(こくていへいや))
四万十川,大井川など
老年谷(old valley):谷はますます浅くなり谷壁斜面は緩やかにな
る.広い谷底平野が開ける.日本にはあまり見られない.
滝(water fall):河床の一部が堅い岩石で覆われている場合,そこ
残して他の部分の河床が低下し極端な段差が生じる.これが滝で
ある.
幼年谷(幼年期の谷)
壮年谷(壮年期の谷)
老年谷(老年期の谷)
V字谷
黒部峡谷(富山県)
U字谷
氷河による浸食
スイスのラウターブルネン
河岸段丘(river terrace):地殻変動などにより河床が隆起して,再び
浸食作用により河床の一部が低下すると古い河床が小高い平地とし
て取り残される.これを河岸段丘(構造段丘)という.河岸段丘はもと
もと川底であったため浸透性がよくまた地下水面が低いところにある.
畑として利用される.現在の川の近くでは水田が多くなる.
浸食作用で広がる
河川
谷底平野
河川
隆起
河岸段丘
河川
沖積平野:
河川によって運ばれた土砂が堆積してできた平地.
氾濫によってできた平地なのでやはり氾濫被害の危険性が高い.
扇状地,三角州,自然堤防(氾濫平野)など
扇状地(alluvial fun):川が山間の谷からゆるやかな平地に出る地
点を起点として平地が扇状に広がった地形.透水性がよく地下水面
が低いところにあるため水田に適さない.桑畑や果樹園
三角州(delta):河川が海や湖に流れ込むところでも流速の低下に
より土砂が堆積して扇状地と同様の堆積地形が作られる.
自然堤防(natural levee):洪水のたびに土砂を含んだ水が河川か
らあふれ,河川近傍に土砂が堆積する.それが繰り返され,他と比
べて小高い土手が河川にそって形成される.
後背湿地帯(back marsh):洪水時にあふれた水は自然堤防の働
きで洪水終了後にも河川に戻れず,低地に土砂を堆積させ湿地帯
が形成される.水田に利用される.
富山平野の扇状地
後背湿地
自然堤防
旧河道
三日月湖
破堤跡
3)日本の河川の特徴
河川長(km )流域面積(m 2)流域平均幅(km )形状係数 河川密度(1/km )河状係数
利根川
322
16840
52.3
0.162
0.403
484
石狩川
268
14330
53.47
0.2
0.255
信濃川
367
11900
32.43
0.088
0.421
130
北上川
249
10150
40.76
0.164
0.267
172
木曽川
227
9100
40.09
0.177
0.327
125
十勝川
156
9010
57.76
0.37
0.266
淀川
75
8240
109.87
1.465
0.538
105
阿賀野川
210
7710
36.71
0.174
0.285
最上川
229
7040
30.74
0.134
0.352
天塩川
256
5590
21.84
0.085
0.242
アマゾン川
6300
7050000
ミシシッピ川
6210
3248000
119
ナイル川
6690
3007000
30
ライン川
1320
224000
18
淀川は流域に琵琶湖を有するため流域平均幅および形状係数が大きい。
大陸の河川と比較して日本の河川は流域面積は小さく河川長も短い。
また河状係数が大きい。
河状係数が大きい→最大流量と最小流量(渇水流量)の差が大きい。
治水と利水の両立が難しい→多目的ダムが必要
標
高
日本の河川
大陸の河川
河口からの距離
河川の縦断図の模式図
日本の河川
流
量
大陸の河川
日数
流量と時間の関係(ハイドログラフ)
日本の河川は急勾配で比流量が大きい(流域面積は小さいが流量は多い)。
比流量:流量を流域面積で除したもの。
日本の河川は天井川(水位がまわりの地盤高よりも高い)
外水氾濫では大きな被害
内水が河川に自然排水できない(ポンプ排水)。
外国の河川の模式図