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081015 神戸市巡回08
特別支援教育と
個別の支援計画
R-15
RITSUMEIKAN
立命館大学 応用人間科学研究科
望月 昭
ブログ:「対人援助学のすすめ:日々是新鮮」
従来の考え方
●障害別(インペアメント)中心のグルーピングと
対処
●個人的単独能力(アビリティ)をボトムアップし て、障
害の克服をはかる(障害のない状態に近づけ る)
1.親和性
●地域社会の中で他ならぬ一人として存在する個人へ
●学校・地域などを含めた環境設定との関係や、その環
境変更を伴う「行動」(できる:山本)を対象とする
「支援」の機能とは?
「援助つき行動成立」の実現
治療・教授
個人の行動(反応)形成
援助
行動成立のための
新たな環境設定
援護
援助設定の定着のため
の要請(言語行動)
「できる」とは?
• ほかならぬ一人の当事者と環境との関係の上に行動が
成立する(援助・援護が不可欠)
それには・・・・
• 「援護」:当事者の「できる」場合の条件を周囲に要請する
言語行動である。
「行動の増減自体は価値的な意味を持たない・・・・
関係者の行動の増減に関する言語行動の中に意味(つま
り成功や失敗)が存在するのである」
(出口光,1987.『行動修正のコンテクスト』)
言語行動としての当事者の行動の表現や評価が問題
「できる」を創るには?
• 「できない」は本人の属性ではない。
「できる」も本人の属性ではない。
• 問題行動も「できる」に変換
事例:
神戸市の「教員補助学生」による研究
●金山好美・望月昭(2005)
通常学級に通うADHD児のための選択機会を伴
う受容的環境の検討-逸脱行動に対する「行っ
てきますカード」手続きの効果-
日本行動分析学会第23回大会発表論文集
研究1
行動的アセスメントと教室環境での薬物療法ついて
【目的】
通常学級に所属するADHD児の実態・経過を
行動観察し、問題行動の機能分析を行うこと
を目的とした。
【方法】
週3回、3名が教員補助として観察を行った。
対象児
A児(7歳 男児)
入学時から多動な行動が見られた。
・教室から逸脱する。
・すぐに上半身裸になる。
・水道の水を体にかける。
逸脱時は「保健室」に行く。
行き先は告げていかない。
「国語」「算数」はできる。
10月に医療機関で「ADHD傾向の疑い」と受
診される。
16
9月 日
18
9月 日
19
9月 日
25
9月 日
26
9月 日
30
10 日
月
2
10 日
月
3
10 日
月
10 7日
月
1
1 0 0日
月
1
1 0 4日
月
1
1 0 6日
月
2
1 0 1日
月
2
1 0 3日
月
2
1 0 4日
月
2
1 0 8日
月
3
1 0 0日
月
3
1 1 1日
月
1
1 1 0日
月
1
1 1 1日
月
1
1 1 3日
月
1
1 1 4日
月
1
1 1 8日
月
2
1 1 0日
月
27
12 日
月
2日
9月
【結果】
薬投与期①
図1 教室在室率
薬投与期②
100
授
業 80
開
始
時 60
の
参
加 40
率
(
% 20
)
0
図2 時間帯による授業参加
薬
服
用
薬
服
用
9月16日
9月18日
9月19日
9月25日
9月26日
9月30日
10月2日
10月3日
10月7日
10月10日
10月14日
10月16日
10月21日
10月23日
10月24日
10月28日
10月30日
10月31日
11月11日
11月10日
11月13日
11月14日
11月18日
11月20日
11月27日
12月2日
朝の会 1時間目 2時間目 3時間目 4時間目
国語
体育
算数
国語
図書
国語
算数
生活
生活
体育
算数
国語
図書
国語
算数
生活
体育
国語
算数
国語
国語
体育
算数
国語
図書
国語
算数
国語
生活
国語
音楽
算数
自習
体育
算数
国語
国語
音楽
算数
生活
国語
体育
算数
国語
見学
見学
音楽
音楽
音楽
体育
算数
国語
音楽 学級会 算数
国語
国語
音楽
国語
算数
音楽
体育
算数
国語
音楽
算数
図書
体育
音楽
国語
算数
国語
国語
生活
生活
生活
算数
国語
体育
国語
図書
国語
算数
生活
生活
国語
算数
国語
国語
体育
生活
生活
図書
生活
自習
国語
図書
生活
生活
国語
国語
国語
体育
算数
給食
5時間目 終りの会
100
道徳
80
音楽
学級会
体育
参
加 60
率
(
% 40
)
20
学級会
0
国語
図書
算数
体育
音楽
図工
生活
生活
は、授業に15分以上参加
図3 教科別授業参加率
給食
研究2
逸脱行動に対しての「いってきますカード」導入の効果
【目的】
薬物療法で参加率を上げる事が難しくなった対象児に対して、
対象児に行動の選択機会をあたえ、教室での参加・行動変
容の検証を行った。
【方法】
リタリンの処方で授業参加が可能になっていたが、2年時2
学期から教室からの逸脱行動が頻繁になった。
そこで,教室を出る場合は,「行き先カード」を残し,タイマー
を持って出かける.定時に帰室し「記録」を書く.
レクチャー
【結果】
ベースライン期
100
介入期①
介入期②
教 80
室
滞 60
在
率
40
(
%
) 20
9
2
12
/1
3
5
12
/9
12
/1
0
4
12
/8
1
11 月
1
12
/7
12
/1
11
/3
0
11
/2
9
11
/2
6
11
/2
5
11
/2
4
11
/1
9
12
/6
28 29
12
/2
10 月
11
/1
8
11
/1
6
11
/1
5
11
/1
2
11
/1
1
11
/1
0
11
/9
11
/5
11
/4
11
/1
10
/2
9
10
/2
8
0
8
10 13
12 月
10 11 12 15 16 18 19 24 25 26 29 30
6
7
9
一方的に話す
爪を噛む
ス 着
ト席
レ
ス
と教
思 室
わ 内
れ
る
行 逸
動 脱
時
小物で遊ぶ
パ ル ル ル ル ル ル パ パ パ 電
刃物で遊ぶ
ボーとしている
体調の訴え
黒板に落書
裸になる
教室内立ち歩く
ケ ン カ ・ハ ゚ニ ッ ク
校内(1 階)
運動場
保健室
なかよしル ーム
校長室
校外に出る
友達と関わる
適
応
的
な
行
動
集団(学級)活動
音
音
音
体 朝
ゲ
挨
H先生の話を聞く
先生の約束・関り
先生の手伝い
先生に要求
給食を食べる
保 保
保 保
学習に取り組む
図5 教室滞在率と行動観察結果
掃
Ⅱ.個別の教育支援計画(IEP)
• 京都では「個別の包括支援プラン」
発行:京都市総合養護学校
2005.2.22
京
都
市
屠
区
別
支
援
学
校
「
個
別
の
包
括
支
援
プ
ラ
ン
」
流
れ
図
山中2008
評価の整理と
情報の保存
「現在の姿」
情報把握
現在の姿 記入
授業・支援の
評価妥当性判断
「短期目標と指導
場面」設定・記入
授業・支援の実施状況
及び効果の評価
「現在の姿」
短期目標と指導場面
妥当性判断
「三者の願い」
内容把握
三者の願い 記入
「長期目標」
設定・記入
長期目標
妥当性判断
授業・指導の実施(データ収
集・グラフ作成を含む)
「長期目標と短期目標の関連」確認・記入
実行プログラム
妥当性判断
実行プログラム作成
「年間指導計画(指導期間
設定)」作成・記入
「長期目標と短期目標の関連」
妥当性判断
指導方法選定とユニット編成
「指導方法選定とユニット編成」の妥当
性判断
問題点
• 研修から(個別学校研修・教職大学院GP)
①「能力」のボトムアップではなくなったが、
「長期-短期-実行プラン」が、適応的(パッシ
ブ)でトップダウンな抑圧的管理(??)
②環境設定こみの「できる」の条件ではなく、
生徒個人の「能力」が記され、
長期計画-現状能力=課題 になりがち
③ 行動分析学的表現(ABC)
『くどいもんですね』(受講者感想)
これまでの学校教育の問題
• 目標(ノルマ)があり、それに不足した部分を
「課題」として残す: ×から○
• 「何ができるか」は記録しても、どうやったらそ
れができるようになったか、という記録がない
• 「できやすくする」ように、自分で環境を変える
スキルを教えない
• 「生徒を伸ばす」ことが担任の個人的・職人的
技術に任された
• 情報を蓄積し、移項する方法がなかった
Ⅲ.IEPを活かす条件
書類を誰にみせるのか?
見て参考にする誰かがいるか?
• IEPという「言語行動」の機能化をはかる
• 「できない」ではなく、「できる」という言語行動
(個別の生徒の援助設定・教授方法の提案
「援護」行動である)を、どのように強化したら
いいのか?
(聞き手)言語行動として報告を受けなければ、
効率的な作業ができない別のセクターとの連
携作業: 学生補助員?
アセスメントと生徒の希望
Check
Plan
長期
長期プラン(P1)
長期プラン(P1)
支援結果
「できる」確認
Action
短期Plan
短期プラン(P2)
短期プラン(P2)
生徒の行動変化
Do
支援(援助・教授)
実行
実行Plan
実行プラン(P3)
実行プラン(P3)
支援プランの書き換え作業
• 支援プランの書き換え:
○学校でどれほど生徒の「できる」を丁寧に辿って
きたかの証明である。
○支援者自身、保護者、そして移行先の関係者が、
当該生徒に対して、
さらなるキャリア・アップのための行動を
勇気づけるものでなくてはならない。
FA宣言とキャリア・アップ
• 総合支援校の生徒は、FA宣言をした野球選手の
ようなものである。
• 総合支援とは、選手のキャリアアップをはかる作業
である
• 個別の包括支援プランとは、「選手」を高く売り込
むための、そして異動後のキャリア・アップを促進
する「売り込み書類」である