欧米の若年雇用政策 について 神戸大学大学院経済学研究科 三谷直紀 欧米の若年雇用政策 若年労働市場の実態 若年雇用政策の動向 若年雇用政策の分類 若年雇用政策の評価 日本への教訓 2 欧米の若年労働市場の実態 若年失業は、第二次石油危機後に急速に 悪化し、特に欧州で深刻な問題。 15~24歳の失業率:平均17%前後で推移。 20~24歳失業者に占める一年以上の長期失 業者の割合30~35%前後 20~24歳の無業者人口比率17%前後(日本よ りやや高い) 90年代後半以降主要国で徐々に改善。 3 欧米主要国の若年失業率(15~24歳) (%) 30 アメリカ 25 日本 20 フランス 15 ドイツ 10 イギリス 5 オランダ 20 01 19 99 19 97 19 95 19 93 19 91 19 89 19 87 19 85 19 83 19 81 0 スウェーデン 資料出所:OECD Labour Force Statistics 4 各国の経済成長率と若年失業率 (1982~91年、92~02年各平均) 30 若年失業率(15~24歳、%) 25 仏92-02 仏82-91 20 英国82-91 瑞典92-02 15 英国92-02 和蘭82-91 日本98-02 10 ドイツ92-02 米国82-91 米国92-02 和蘭92-02 日本82-91 日本92-02 5 0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 実質経済成長率(%) 資料出所:OECD, Main Economic Indicators. 5 欧米の若年雇用政策の動向 若年雇用対策の予算規模は、対GDP比で 0.10%弱(日本に当てはめれば、約5000億 円) 限られた予算を有効に使うために、就職困難 な若年にターゲットを絞って行う傾向 6 OECD諸国の若年雇用対策費 (%) (%) 若年失業率(目盛右) 若年雇用対策費の対GCP比(目盛左) 資料出所:OECD, Employment Outlook, 2002 7 欧米の若年雇用政策の分類 労働供給面への政策 若年の就業能力を高める政策 失業者及び失業の危険性の高い若年への 政策 労働需要面への政策 高齢者の早期引退制度 若年への労働需要を拡大する政策 8 若年の就業能力を高める政策 社会的に不利な立場の若年に対する早期の対策 貧困家庭等不利な立場の若年に対する早期の持続的対策 がより大きな成果を生む 訓練生制度(Apprenticeship) 学校教育と職場訓練の組み合せ ドイツ、オーストリア、デンマーク等のデュアルシステム等 学校教育改革 高校進学率の向上 職業高校の科目改革・卒業資格の二重資格化 フランスの職業バカロレア資格等 仕事経験を取り入れた学校教育 北米のWork-Based-Learning、Career Academy等 9 若年失業者・失業の危険性の高い若 年への対策 包括的雇用対策プログラム 若年求職者等への教育・職業訓練・就職支援 フランスの技能契約等 失業の危険性の高い若年等への対策 貧困家庭の子弟等への支援 アメリカのJob Corps(ジョブ・コア) 中途退学者等に対するセーフティネット政策 フランスのTRACE 10 高齢者の早期引退制度 高齢者の早期引退を促進することで若年雇 用の拡大を図る政策 若年労働者を雇用することを条件に高齢者の早 期引退・老齢年金受給を認める。 障害年金を受ける要件を弱めて高齢者が早期に 引退しやすくする。 一定の効果はあるものの、費用がかさみ、社 会保険財政を悪化させた。 11 若年への労働需要を拡大する政策 最低賃金・社会保険料政策 若年のみの特別最低賃金、若年雇用の社会保 険料事業主負担分軽減 雇用保護規制の緩和政策 有期雇用の条件緩和 フランス、ドイツ、スペイン等での有期雇用拡大 直接的雇用創出政策 公共部門等での失業対策事業 フランスの新サービス・若年雇用プログラム(NSEJ)等 12 評価 評価には、①死荷重(対策を講じなくても創出 された雇用・賃金の改善)、②代替効果(対象 外の労働者層と代替する形で対象労働者の 雇用・賃金が改善)等を勘案する必要。 北米では実験的方法、欧州では準実験的方 法による評価が多い。 概して、ドイツのデュアルシステム等の例外を 除き、評価は低い。 13 日本への教訓 就職困難な若年(中途退学者等)に対する対 策に資源を集中させることが必要 早期の持続的な対策が有効 労働市場の構造や制度・労使関係の違い・特 色を踏まえることが必要 韓国での訓練生制度導入の失敗 日本の「学校による職業紹介」 労働市場全体のあり方(中高年者や女性等) を考慮した政策が必要 14 参考文献 OECD(1999), Preparing Youth for the 21st Century. OECD(2000), From Initial Education to Working Life: Making Transitions Work. OECD(2002), Employment Outlook, Chap.1 Martin, J. and D. Grubb(2001), “What works and for whom: A review of OECD countries’ experiences with active labour market policies, Swedish Economic Policy Review, 8, pp. 9-56. (http://www.ekradet.konj.se/sepr/) 三谷直紀(2001)「若年労働市場の構造変化と雇用政策―欧米 の経験」『日本労働研究雑誌』、No.490、pp. 19-32. 労働政策研究・研修機構(2004)、『諸外国の若年就業支援政 策の展開ードイツとアメリカを中心にー』労働政策研究報告 書、No.1 15
© Copyright 2024 ExpyDoc