いよいよ本題:「偶然性」とは何か? -「故意」認定

第4講 保険事故論①
最判平成13年のインパクト
最判平成16年、18年判決との整合性?
「偶然性」の立証責任の意味は?
「危険普遍の原則」との関係
1) 危険普遍の原則とは?
旧商法665条
「火災によりて生じたる損害は、その火災の
原因の如何をとわず保険者これを填補する
責に任ず」
ところが…
「火災保険の担保範囲は実際には限定され
ている現状からして危険普遍の原則を任意
規定として残すことはミスリーディングである
…ため、改正試案は商法六六五条を削除す
ることとしている」(西島・248頁)
*旧規定但書
「但し第640条および第641条の場合はこの
限りにあらず」
だとしたら、危険普遍の原則とは、いったい
何なのだろうか? 「原則」である必然性がな
いではないか!
↑
せっかく「原因がなんでも填補する」と定めて
おきながら、誰もが「そんなはずはない」と考
えている。
2) 「保険事故」をどのように把握すべきか?
例えば「火災」
ガスコンロ内の火
燃焼炉の火
焦損
「火災」
ストーブ加熱による
周辺動産の変質
ロウソクの火
外郭的範囲:「適切な安全燃焼器具の外で発生した火、または安全燃焼器具内で発生した
のち器具外に逸出した火で、自力で延焼する力を持つものをいう」
旧商法642条
保険法17条
目的の性質瑕疵
自然の消耗に
よる火災
保険法改正過程
戦争その他の
変乱による火災
「火災」
実は、地震・噴火・
津波も免責案!
戦争変乱
による火災
「火災」
保険法17条
被保険者の故意・重過失による
火災
*もっとも、故意免責と偶然性が表裏の関係だとすると…
2条6号
「一定の偶然な事故」
「火災」
被保険者の故意・重過失による
火災
当初より(危険普遍の原則が適用された段階で)すでに故意免責は
削られていたと考える余地もあるか?
3) 例えば傷害保険の「偶然・外来・急激」要件
をどのように捉えるべきか?
①消去法(?)で残った部分
→消去された部分(「偶然でない」事故、「外
来でない」事故、「急激でない」事故を慎重に
吟味する必要がある。
②積極的に担保する範囲を限定した部分
→むしろ保険でもつ範囲を慎重に吟味しな
ければならない。
外来でない
人身傷害・死亡
急激でない
偶然でない
偶然・外来・急激な人身傷害・死亡
4) 「偶然性」をどのように捉えるべきか?
① 2条6号の文言
「一定の偶然な事故」により生じることのある
損害
少なくとも損害保険において、「偶然性」は本
質なのか?
*「免責」の問題ではないという意味で
② 故意免責との関係(表裏?)は必然か?
もし表裏だとすると…
本質的な偶然性 → 本質的な非偶然性
↓
故意免責
したがって、「免責」というテクニカルな担保
範囲の除外とは異質なものということになら
ないか?