明治大学情報科学センター編 インターネットコミュニケーション デジタルライフのおとし穴 1 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 目次 第1章 パーソナルコミュニケーション 1.「コミュニケーション」とは 2.コミュニケーションツールとしての インターネット ・コミュニケーションの一方向モデル ・コミュニケーションの双方向モデル ・インタラクティビティ(相互作用性) 3.電子メールコミュニケーションの特性 ・対話の場面の空間的・時間的拡大 ・文字によるコミュニケーション 4.情報共有 2 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 第1章 パーソナルコミュニケーション 3 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 「コミュニケーション」とは 「何かを伝える」こと 「一方向モデル」(線形モデル) コード体系: 送り手と受け手の両者に了解されている約束事 (言語における文法) コンテクスト(文脈)の関与 ・伝えるという好意の目的は何か ・なぜ伝えたいのか ・伝える結果、何が起こるのか ・相手に伝わるまでに何が起こっているのか ・うまく伝えるためにどうしたらよいか 4 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 双方向モデル 一方向モデル:メッセージ伝達の仕組み 相手がメッセージを理解する仕組み 伝達の効果の検討に適する コミュニケーションは一方向では完結しない →「双方向モデル」 ・単純な双方向モデル =二つの一方向モデルの組み合わせ ・ロジャースの螺旋収束モデル =双方向に情報を交換し合うことで、お互いに 影響を与えながら、相互理解を目指すもの 5 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. インタラクティビティ(相互作用性) メッセージ交換によってお互いに影響を与え合う度合い (インターネットのような道具を介したコミュニケーションに おいては重要視される) ・単に情報の流れが双方向であるというだけではない ・相互理解という目的に向けて効率よく影響を与え合う ・情報のやり取りが短時間で行われる必要 マスメディアとの対比 ・多くの人に同時にメッセージを送ることを可能にした ・流れは一方向で、個人は一方的な受け手になってしまう インターネットのような通信手段によるメディア ・多くの人に同時にメッセージを送ることは同様に可能 ・個人も選択・制御・送り手になることで積極的参画が可能 6 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. コミュニケーションツールとしての インターネット 日本のインターネット利用者: ・1998年2月時点で1000万人を超えた ・個人利用者の約6割が使い始めて1年以内 ・インターネットを利用している家庭が14%を越えた インターネットに接続しているホスト数 (2002年で1億6千万台) インターネットの急速な普及 ・「便利」「機能が優れている」理由だけでは普及しない ・相手の必要性=利用者が多くなれば価値が増す 新しい技術の導入=S字曲線を描く 10~25%の時点から急増 →インターネットはまさにこの離陸期にきている 7 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 電子メールコミュニケーション インターネットの利用 ・WWWブラウザの登場→Webページの閲覧 ・電子メール (利用者のもっとも多くが利用しているサービス) 8 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 電子メールコミュニケーションの特性(1) 対話の場面を空間的・時間的に拡大した ・地理的な制約を超えたコミュニケーションが可能 ・時間的な高速から開放される ・従来の人間関係が緊密になりうる ・常に同時に多くの人間関係の中に置かれる ・情報過多に陥りかねない 9 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 電子メールコミュニケーションの特性(2) 文字によるコミュニケーション お互いの姿は文字を通してしか見えない ・会話のような即時のフィードバックを欠く ・双方の社会的地位や身体的特徴などが見えない ・平等で創造的なコミュニケーションが行われる ・反面、対人的配慮を欠き極端な意見がでやすい ・匿名性ゆえ現実と異なる倫理観が生じてしまう 10 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (1)地理的制約を超える 会話=会って話をする→同じ場所に集まる →一定の地理的範囲に限定される 克服の二種類の技術 1.人やものの輸送技術(鉄道・自動車・航空機) ものの移動を伴い距離に応じて時間がかかる 2.放送・通信技術(テレビ・ラジオ・電話・電子) テレビやラジオ:個人の手段には]使えない 電話:距離が費用の問題に直結してしまう ★電子メール:距離が時間・費用の問題にならない 11 地球規模でのコミュニケーションを可能にする All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (2)コミュニティの広がり 電子メール:手紙を電子化したもの 一対一のやり取りに限定されない(cf.手紙) ・相手を複数並べれば多数の人々に送信可能 ・メーリングリストを利用 →一つのアドレスに送ることで参加者全員に送信 従来のコミュニティ成立の条件 (1)構成員相互に交流があること (2)目標や関心が共通していること (3)一定の地理的な範囲にいること 12 ★電子メールはこうした条件を除去ないし緩和する All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (3)自分の都合・相手の都合(非同期 性) 送信と受信が同時でなくてよい 所要時間は物理的距離ではなく相手の利用頻度 コミュニケーションの理想形態とは? 送信と同時に受信される(同期性) 相手に同時にコミュニケーションを強要する 同期性がコミュニケーションを妨げる危険性 (例:時差、相手の生活に割り込むのを配慮) ★コミュニケーション拡大には非同期性が不可欠 お互いに書きたいときに書き読みたいときに読む 13 時間的制約にとらわれず、柔軟性を確保 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (4)情報格差 電子メールのマナー:半日か一日程度で返事 インターネットの仕組み上、不到達の可能性 相手に心配をかけないよう受け取った報告 メッセージを放置=電子メールのやり取りから除外 他の手段で上の情報を伝達してもらえるか? 電子メールが簡便さから手段として支配的になる =情報の割合の大部分を占めるようになる ★当該手段を利用する者としない者とでの 「情報格差」が広がってしまう 14 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (5)人間関係の変化 空間的・時間的な制約が取り払われる ・好むと好まざるとに関わらず ・時と場所を選ばす ・さまざまな人間関係からのメールが届く ★実生活の人間関係がネットワークでは 時間的・空間的制約を越えて持続、強化される ★自分をとりまくあらゆる人間関係に常に同時に関 わらざるを得なくなる ★ネットワークで生じた人間関係が付加される ★積極的であろうとすれば多忙になってしまう 15 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 対話の場面の空間的・時間的拡大 (6)情報過多 新しい人間関係の発生+人間関係の持続 →情報量が膨大になり処理に忙殺される 消極的になってはインターネット利用の意味が半減 受け取る情報のフィルタリングの重要性 ・重要性による差異化 ・差出人・表題・メッセージの大きさによる振り分け ・自動的に返信する機能 機能の使いこなすことで優先度の高いものからの 16 効率的な処理が必要 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (1)言語とコンテクスト 言語を文字として書き記す 表現が忠実に相手に伝わり時間が経過しても残る 文字の並びが正確に伝わったからといって 言いたいことが正確に伝わるとは限らない ★コンテクスト(前後関係や場の状況)による ★非言語コミュニケーションに依拠 「目は口ほどにものを言い」 電子メールではコンテクストがわからない 非言語コミュニケーションができない 17 配慮の必要性/エモティコンの適切な利用 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (2)即時のフィードバックの欠如 相手が目の前にいない 目前にいれば自分の発言に対する反応がわかる 誤解を解くこともできる 見えない相手の反応を勝手に想像しながら書く 誤解が誤解を生み思わぬ方向へ発展の危険性 ・「フレームflame」:「炎」「火をつける」 不適切な表現から感情的に相手を傷つける ★「誤解」や「フレーム」が起きたら、原因となった 表現や理由を考える必要がある 18 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (3)相手が見えない ネットで知り合った見知らぬ人同士の場合 アドレスは所属する組織について若干の手がかり 容貌・職業・年齢・性別・社会的地位などは不明 思わぬ人だった、思わぬ被害あったなどの事例 ★社会的な制約から解放された情報伝達が可能 自由で思い切った創造的発言が可能 ★相手への配慮を欠き極端な発言が出やすい 差別・中傷などと受け取られかねない表現 ★どのようにして書かれたかもわからない 19 背後に様々な状況の人がいることの認識が必要 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (4)相手との共通基盤 「あなたの両親は何人ですか」? 共通基盤を期待することのできない場合 当然の常識と思い込んでいることを疑う必要 20 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (5)ネットワーク上の自己 自分も相手から見えない ・自分がそのような人間であるかを戦略的に示す ・日常の世界とは全く別人格を演出する 現実世界では一貫性 多様な人間関係の中で、IDごとに異なった人格とし て登場することか可能 21 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 文字によるコミュニケーション (6)匿名性 現実の自己が危険にさらされずにすむ ・発言や行動に対する責任感が欠落 ・現実の世界での倫理観とのズレが生じる危険 ・自己答責性の意識が欠如する 自分がやったと気づかれないから現実には危険 が及ばないだろうと誤信する 22 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo.
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