国際ロータリー2510地区第4,5グループ インターシティミーティング(合同研修会) 2012年3月31日 安全と安心の科学 東日本大震災と福島原発事故に学ぶ 札幌大通公園RC 霜 山 龍 志 2011年3月10日発行 丸善札幌 2011年5月20日発行 丸善札幌 安全と安心、危険と危害の定義 安全(safety)とは何か? リスクを最小化した状態 安心(security)とは何か 残存リスクが心理的に許 容できる状態 安全は技術によって保障 される客観的状態であるが、 安心はコミュニケーションによって 得られる主観的状態 危険(risk)とは何か? 危害を起こすような要因(ハ ザード)が潜在していること 危害(crisis)とは何か 危険が防止策を突破して顕 在化したもの リスクの確率(年間死亡確率) タバコ関連死 1/250 ガン 1/600 自殺 1/4000 心臓突然死 1/5000 交通事故 1/1万 地震 1/2万 火事 1/6万 原子力事故 食中毒 1/2500万 1/5000万 1/10億 落雷 隕石 Heinrichの法則 1 Severe Accidents 30 Incidents 300 “Hiyari” or “Hatto” Swiss Cheese 理論 事故は多重の予防策の穴を潜り抜けて起きる 安全と安心の違い 安全の輪 風 評 被 害 最小化=リテラシーの目標 情報の開示が最小化に寄与 安心の輪 安 全 ・ 安 心 勘 違 い の 安 心 危険情報の未知・秘匿 安全神話と安全文化 1.安全神話 例えば原発は、絶対安全であるということを根拠とし て立地してきた 想像力の貧困(大地震や大津波はいつか来る) コンコルドの誤り(一旦開始すると中止できない) 2.安全文化 ヒューマンエラー(human error)を最小限に システムの辺縁で事故がおきやすい 高名な木登りの話(「徒然草」109段) QCグループ リスクマネージメント Risk Management 1.標準作業手順書 SOP(Standard Operating Procedure) 2.インシデント・レポート(incident report) エラーの分析と対策 3.リスクマネージャー(risk manager)制度 4.監査 内部監査(peer review) 外部監査(surveillance) 因果関係の評価 事象Aと事象Bが同時発生した場合 A;海底地震 B:津波 ではA→B A:地球温暖化 B;二酸化炭素濃度上昇では A →B、B→A,A/Bのどれか? 同時発生は因果関係を保証しない 事象C→事象A、事象C→事象B、 つまり共通の原因があることもある まったく無関係で偶然の同時性の場合も多い 例)喫煙率の減少と肺がん罹患率の上昇 費用効果比/危険効用比 Cost Performance/Risk Benefit Cost Risk Benefit ポリオ生ワクチン (2000円) MMWワクチン (5000円) 100万人に1.5人 のポリオ発症 1000に1人の無 菌性髄膜炎 ポリオの自然発 生を抑止 おたふくかぜに よる髄膜炎防止 赤血球輸血400 10万人に1人の 出血死の防止 mL(2万円) TRALI死亡 自動車 年間5000人の 救急車、消防車、 交通事故死 田舎の通勤通学 (100-500万 円) リスクリテラシー Risk Literacy 1.リスクの大きさに関する正しい認識が前提 2.コストパフォーマンス(cost performance) たとえば交通事故は車道と歩道の完全分離でかな り減らせるが、費用が膨大 3.リスクベネフィット(risk benefit) 原発はリスクの確率は低いが一旦事故が起きるとそ の危害は大きい 異常に大きな危険はきわめて低い確率でも許容 できない 4.風評や感情に流されないこと 環境における予防原則 リオデジャネイロ会議 1992年 環境において重大な影響が予想されるものについて は、費用効果を度返しして、各国政府はその経済的 能力に応じて予防的な手段をとるべきである。 典型例:英国でのBSE発生を受けて、英国滞在1日で も献血不可。 世界的に経済不況が続く状況ではやや贅沢な原則と もいえる。 しかし、原発はどうか? 一旦事故がおきれば広大な区域が汚染され、数十 万人が故郷を追われる 事故の原因分類 A 法令、規則、倫理の無視 B 作業者の不健康、無知、手順無視、不注意 C 手順の誤りや手順書の不備 D リスクの予測、評価の誤り E 労働過重、作業密度の過多 F 機具の整備不良 G Risk communicationの不足 タイプAの実例 タイプA 三菱自工タイヤ外れ事故 ホテルニュージャパン火災 歌舞伎町雑居ビル火災 耐震偽装事件 イージス艦秘密漏洩事件 水俣病 サリドマイド薬害事件 ドイツ製硬膜CJD感染 ミートホープ牛肉偽装事件 A+D 六本木森ビル回転ドア事故 2002年 1982年 2001年 2005年 2007年 1953年- 1961年- 1973年- 2002年 2004年 タイプBの実例 タイプB 日航機羽田沖墜落事故 1982年 自衛艦なだしお衝突事故 1988年 B+D 信楽鉄道正面衝突事故 1991年 えひめ丸衝突事故 2001年 東武伊勢崎線踏切事故 2005年 自衛艦あたご衝突事故 2008年 雪印乳業集団食中毒 2000年 ゾリブジン薬害事件 1988年 タイプCの実例 タイプC もんじゅナトリウム漏れ事 故 北陸トンネル火災 1995年 1972年 東海村JCO臨界事故 1999年 横浜市大患者取違え事件 1999年 セラチア菌院内感染事件 2002年 C+D 作り置き点滴敗血症事件 2008年 C+F JR石勝線火災事故 2011年 C+E タイプDの実例 タイプD 洞爺丸沈没事故 1954年 道央自動車道玉突き事故 1992年 美浜原発冷却水漏れ事故 2004年 明石花火大会歩道橋事故 2001年 トムラウシ山遭難事故 2009年 スモン薬害事件 1967年- 予防注射によるHBV感染 1983年以前 宮崎県口蹄疫事件 2010年 タイプE,F,Gの実例 タイプE 雫石上空航空機衝突事故 1971年 JR福知山線脱線事故 タイプF 2005年 日航機御巣鷹山墜落事故 1985年 米軍ヘリ墜落事故 2004年 タイプG シンドラ-社エレベータ墜落事故 2006年 BSE問題 2001年 D+G エイズ薬害事件 1985年 タイプA+D 六本木森ビル回転扉事故 ①回転速度 3.2rpm(最大にセット) ④赤外線センサー 15cm ③光センサー 80cm→140cm ⑤接触センサー 潜時45cm相当 ②駆け込む タイプB 信楽高原鉄道正面衝突事故 JR草津線 小野谷信号所 出発信号 上り 信楽鉄道普通列車 下り 臨時快速 ③ 信楽駅 ② 正 面 衝 突 ① 下り信号が方向優先てこで青のままだった 上り信号が赤に固着していたが出発 貴 生 川 駅 タイプC 東海村JCO臨界事故 ろうと 臨界 沈殿槽 乾燥炉 バケツ ビーカー 沈殿槽 バケツ 原料 製品 たて型 沈殿槽 たて型 本来の手順 タイプD トムラウシ山遭難事故 旅行代理店のツアー (ガイド3、添乗員1、男性客5、女性客10) 7月15日 大雨の中,ひさご避難小屋到着 7月16日 昼過ぎから晴れの予報を信じて 5:30 ひさご小屋出発 11:30 ずぶぬれで北沼到着→ 低体温で9名死亡 タイプC+E横浜市大患者取違事件 手術室 窓口 搬入口 Aさん Bさん カ ル テ カ ル テ A B タイプF シンドラー社エレベーター落下事故 ブレーキシューの磨耗 タイプG BSE問題 英国で1980-1996年の加熱不十分の肉骨粉で飼 育された牛がBSEを発症(10万頭)するが、肉骨粉 は国内禁止/輸出黙認 英国人にも100例あまりのBSE感染 日本 第1例(2001年)以降35頭が感染原因は肉 骨粉由来の代用乳と推定 フランス旅行の日本人1人がBSE患者と認定 米国 2003年第1例BSE牛→日本が輸入禁止 その後月齢20月未満は特定危険部位(脳脊髄、 脊柱、脳、扁桃腺、小腸末端)を除いて可 さらに2012年から月齢30か月未満に緩和 タイプC+D 作り置き点滴敗血症事故 24H後 輸液 敗血症 セラチア菌増殖 酒精綿で拭く ノイロトロピン注入 タイプD+G 薬害エイズ事件 年代 日本 米国 AIDS集団発生 1981年 1983年 AIDS研究班 非加熱製剤回収 1984年 1984年 HIV抗体陽性者 発見 加熱製剤治験 加熱製剤認可 1986年 非加熱製剤回収 1993年 薬害裁判開始 1995年 和解 事故の法的責任 1.過失責任 業務上過失致死傷(公訴時効3年) 民事上の損害賠償義務(不法行為) 時効3年(不法行為から20年) 2.無過失責任 製造物責任法(1995年施行) 開発危険の抗弁 因果関係推定の法理は不採用 時効3年(流通または遅延損害から10年) 薬害エイズ事件の法的責任追及 血液製剤による感染者 約500人/1500人(血友病) A帝京大教授 殺人罪で告発→起訴→1審無罪→控訴審公判停止→死亡 過失の有無(予見可能性が争点) M厚生省生物製剤課長 不作為の業務上過失致死で起訴→1審有罪→控訴棄却 →上告棄却(権限の有無が争点) ミドリ十字3社長 薬事法違反、業務上過失致死で起訴→1審有罪→判決確定 (過失、未必の故意の有無が争点) 善きサマリア人の法理 (Good Samaritan Law) サマリア人だけが追いはぎに会った人を手当 してあげた話(ルカ福音書10章33節) 窮地にある人に無償で善意の行動をとった 場合、良識的で誠実な対応である限り、結果 が失敗に終わっても責任を問わない。 大震災のような緊急の場合にこそ当てはまる のではないか。 東日本大震災 日時 2011年3月11日14:46 マグニチュード(Mw) 実犠牲者数 死亡者(関連死亡者) 行方不明者 負傷者 避難者 建物全半壊 停電 断水 被害額 9.0 25,000名余 15,854名(1,407名) 3,155名 26,992名 34万人(ピーク時60万人) 38万戸 800万戸 180万戸 16-25兆円 県別犠牲者(2012.3.11現在) 県名 死亡者 行方不明者 合計 岩手県 4,671 1,299 5,970 宮城県 9,512 1,754 11,266 福島県 1,605 214 1,819 茨城県 24 24 千葉県 20 20 その他 23 4 27 合計 15,854 3,271 19,125 瓦礫量(2012年3月現在) 県名 瓦礫(トン) 処理済率 岩手県 476万 9% 宮城県 1,569万 6% 福島県 208万 5% 津波の高さと遡及高 明治三陸地震 大船渡市(綾里) 東日本大震災 宮古市 釜石市 大船渡市 南三陸町 石巻市 相馬市 海岸での高さ 海岸での高さ 9.3m 11.8m 15.9m 8.6m 9.3m 遡及高 38.2m 遡及高 38.9m 28.6m 浸水幅 海岸から40km 海岸から8km 余震発生状況(震度5以上62回) ※気象庁作成 三陸沖大地震の周期 名称 年代 弥生地震 400年ころ 貞観地震 869年 >8.3 慶長地震 1611年 8.1 明治三陸地震 1896年 8.3 昭和三陸地震 1933年 8.1 東日本大震災 2011年 9.0 M 東海・南海地震の周期 年代 東海 白鳳684 ○ 仁和887 ○ 東南海 南海 ○ 康和1099 ○ 正平1361 ○ ○ 明応1498 ○ ○ 慶長1605 ○ ○ 宝永1707 ○ ○ ○ 安政1854 ○ ○ ○ 3震災の比較 項目 日時 震源 マグニチュド 犠牲者 主な死因 被災者数 全半壊 復興予算 関東大震災 1923.9.1 海溝型 7.8(Mj) 10.5万人 火災旋風 100万人 425,000 4.6億円 阪神大震災 1995.1.17 直下型 7.3(Mj) 6,342人 建物倒壊 20万人 256,000 6.1兆円 東日本大震災 2011.3.11 海溝型 9.0(Mw) 2.5万人 津波 >50万人 270,000 >13兆円 次のスライドの前に 補助記号 P ペタ 10の15乗倍 T テラ 10の12乗倍 G ギカ 10の9乗倍 M メガ 10の6乗倍 K キロ 10の3乗倍 千兆倍 一兆倍 十億倍 百万倍 千倍 (使用例) 1pBqの放射能 1TBのDVDレコーダー 1GBのハードディスク 1MeVのエネルギー 1kmの距離 M ミリ 10の3乗分の1 千分の一 1mmの厚さ μ マイクロ10の6乗分の1 百万分の一 1μSvの線量 p ピコ 10の9乗分の1 十億分の一 pg、pmolの濃度 n ナノ 10の12乗分の1 一兆分の一 ナノテクノロジー f フェムト 10の15乗分の1 千兆分の一 原子力発電所事故の比較 項目 日時 INESレベル 原子炉 事故原因 放出放射能 放出期間 退避者数 対処 チェルノブイリ 1986.4.26 7 黒鉛BWR 制御不能 77PBq 10日間 120,000人 石棺 スリーマイル島 1979.3.28 5 PWR 弁過誤固着 0.5PBq 1か月 5,000人 1号再開 2号廃炉 福島第一 2011.3.11 7 BWR SBO 3.5/2.7PBq >6か月 156,000人 水棺 原子力事故のレベル(INES) レベル 外部放出 原子炉状態 事例 7 >10TBq 6 1TBq 原子炉壊滅 チェルノブイリ 福島第一 致命的影響 キシュテム 5 0.1TBq 重大損傷 スリーマイル島 4 少量 かなり損傷 東海村JCO 3 極少量 被曝で障害 動燃東海 2 なし 汚染被曝 美浜原発 1 なし 逸脱運行 もんじゅ他 ウインズケール 福島原発事故はどのタイプか? 1.事前予測の不備(タイプD) 確率計算における独立の法則の誤った適用 (例えば地震と津波は独立した事象でない) 2.全電源喪失(タイプB,F) スイスチーズ理論 3.ベントの遅延(タイプC) 4.事後処理(タイプE,G) リスクコミュニケーションの不備 5.過失責任は?(タイプA) と、すべての過誤要因が重畳している 福島原発事故の過誤 1.マーク1型原子炉の瑕疵を無視していた 水冷式、圧力容器小さい 2.原発推進と規制が同じ経産省にあった 放射能防備のないオフサイトセンターの不調 3.事前予測の不備(想定津波5.4m、想定地震600gal) 津波の高さ、警告を無視して原発安全神話を構築し、想定外で逃げた 4.全電源喪失 配電盤の浸水、非常用電源の低地立地、電源車との連結不備 5.ベント(排気)の遅延 暗闇での作業(非常用照明の不備) 6.事後処理 重要な悪い情報の隠匿(SPEEDI、グローバルホーク測定データ) 7.過失責任は? 東電(営利企業に原発を任せることの危うさ) 初期段階で撤収を企図、情報を政府にも秘匿 安全保安院、原子力委員会、政府 民間事故調報告書(2012.2.27) 危機管理一般に大きな教訓 東電不信と官邸介入のスパイラル 管理と実践の役割分担を理解せず、科学知 識に自信過剰の首相が、「生兵法は怪我の もと」を地で行った 内閣参与の乱造:権限と責任の拡散 現場に権限を与え、トップが責任を負うことの 重要性 BWR(沸騰水型軽水炉)の構造 福島原発事故の初期推移1 3.11 14:46 14:52 15:03 15:20 15:42 16:36 16:50 18:18 18:25 19:03 20:16 21:23 21:30 地震発生、1-3号機スクラム、配管断裂 1号機非常用復水器(IC)自動起動 同非常用復水器停止 津波到達 1-3号機SBO(全電源喪失)10条通報 1,2号機冷却不能 15条通報 炉心の燃料露出開始 1号機IC再起動、 3号機原子炉隔離冷却系(HPCI)起動 1号機IC手動停止(空焚懸念) 原子力緊急事態宣言 炉心完全露出 水位計誤表示 格納容器圧600kPa 3km圏内避難指示、10km圏内屋内退避 1号機IC再起動 福島原発事故初期推移2 3.12 1:09 1号機メルトダウン開始 2:10 同メルトスルー 5:44 10km圏内避難指示 5:46 1号機に真水注水 10:17 1号機ベント開始 11:36 3号機原子炉隔離冷却系(HPCI)停止、 12:35 3号機高圧注水系自動起動 15:36 1号機建屋水素爆発、 18:25 20km圏内避難指示 20:20 1号機海水注入開始 福島原発事故の初期推移3 3.13 3.14 3.15 3.17 3.20 3.21 2:42 5:10 8:41 9:25 13:12 11:01 HPCI手動停止 3号機高圧注水系手動停止 15条通報 3号機ベント開始 3号炉に真水注水 3号機海水注入開始 3号機建屋水素爆発・燃料棒プール臨界爆発 2号機圧力抑制室損壊、4号機建屋水素爆発 4号機燃料棒プールへ放水開始 1号機再溶融 3号機再溶融 SBO(全電源喪失)の原因 1.地震による送電柱の倒壊 2.津波による予備発電機の浸水 (予備発電機が低地にあった) 3.非常用復水器の停止 (マニュアルの誤った解釈施行) 4.電源車のケーブルが届かない、プラグが合わな かった 5.暗闇の作業が困難 6.放射性の瓦礫が飛散して作業を阻んだ 福島原発原子炉の状況 項目 1号炉 炉心 水素爆発 メルトダウン メルトダウン 容器 2号炉 3号炉(*) 4号炉 水素爆発 (水素爆 臨界爆発 発) 圧力容器 なし 破損 破壊飛散 損傷 566本 1,535本 (Mox25) 破壊 倒壊 圧力容器 破損 燃料棒 一時露出 プール 392本 圧力抑制 プール損傷 損傷 615本 建屋 倒壊 壁に孔 評価 危険 比較的安 危険 心 極めて危 険 放射能の単位 1.放射能(放射性物質の量) Bq(ベクレル)は1秒間の原子核崩壊の数(物質の単位重量当 で表示)、ラジウム1gは3.7x10e10Bq=1Curie 2.照射線量:放射線の強度を電離作用で計測したもの。1 C(クーロン)/kg=3,760R、1R(レントゲン)=0.88rad=8.77mG 3.吸収線量:放射線の電離作用で放出されるエネルギーを測定 したもの。1Gy(グレイ)は空気中で1Jの熱を発生。 1Gy=100rad 4.等価線量:生体への効果:吸収線量X係数(放射線の種類 で決まる。β線、γ線、X線1、陽子線5、α線20中性子線 5-100)1Sv=100rem 5.空間線量率(放射線の量):空間、あるいは物質表面での単 位時間当りの等価線量 Sv(シーベルト)/h 原子炉内の原子核反応 U-235+熱中性子→Sr-90+Cs-137+中性子+ 200MeV (Sr-90はさらにβ崩壊する) U-235+熱中性子→Y-95+I-139+2中性子 +200MeV、I-139→I-135→I-131 Cs-137 γ崩壊、半減期30年、生物学的半減期110 日 I-131 γ崩壊、半減期8日、生物学的半減期(甲状 腺)120日 (核種の同定は、β/γ線の測定後、ピークの分子量を 確定することによって行う) 放射線の種類と透過力 放射線の線量と影響 全身被曝で死亡 10,000 悪心・嘔吐 1,000 リンパ球減少 福島原発作業者臨時被曝限度 原発作業者緊急時被曝限度 100 放射線作業者年間被曝限度 胸部CT 10 自然放射線(年間) 宇宙旅行(1日) 胃バリウム 世界一周 単純XP 福島原発事故後の一般暫定被曝限度 除染基準(年) 1 一般人の年間被曝限度 0.1 ※単位:mSv 外部被曝と内部被曝 1.外部被曝 原発作業員:原子炉等から直接受けるα、β、γ線、中性子線 一般住民: 原発から飛散した放射性粒子から放出される放射 能(主にγ線) いずれも放射能源からの距離の2乗に逆比例して減衰する (10cmで1mSv/hなら1mで10μSv/h) μSv/h=Bq/kgx1/10,000(Cs-137の場合) 2.内部被曝 甲状腺(I-131) 肺(Pu-239、Cs-137) 肝臓(Cs-137、Co-60、Tr-232) 骨(Cs-137、St-90、Am-241、Tr-232) μSv=Bq/kgxkgx0.022(I-131,経口の場合) 放射線障害 確定的影響 急性被曝 確率的影響 (LNT仮説) 慢性被曝 NL 100 1,000 mSv 100 1,000 mSv 放射性物質放出の経過 TBq/h (logスケール) 1000 - 100 - 10 - 1 - 0.1 - 0.01 - 0.001 - 日付 土壌汚染地図 立ち入り規制値の比較(Bq/m2) 項目 チェルノブイリ 立ち入り禁止 >148万 永久管理 55.5万-148万 一時的管理 18.5万-55.5万 汚染指定 3.7万-18.5万 福島原発 >10万 (5,000Bq/kg) 避難地域 警戒区域(2011.4.22指定) 20km圏内(双葉町、大熊町、富岡町の全域。 浪江町、楢葉町、川内町、南相馬市の一部) 計画的避難地域(飯舘村全域。川俣町、葛尾村、 南相馬市の一部) 緊急時避難準備地域(2011.9.30解除) 南相馬市の一部、田村市、川内村、広野町、楢葉町 2012年4月指定 帰宅困難地域 年間50mSv以上の被曝 居住制限地域 年間20-50mSv 解除準備地域 年間20mSv未満 外国政府の立入制限・輸入制限 ・米国 80km以内→20km以内 福島茨城栃木のほうれん草、きのこを輸入停止。牛乳には 検査証明書、それ以外には検査サンプル要求 ・豪州 50km以内 ・ドイツ 50km以内 ・EU 11都県のすべての食品飼料に検査証明書か検査サン プルを要求 ・韓国 5県のほうれん草、福島茨城の原乳 4県の飼料輸入停止 ・クウェート、コンゴ、モロッコ:すべての日本産食品輸入停止 ・インド、ネパール、イラン:すべての日本産食品に 検査用サンプルを要求 原発作業員の被曝 被曝量 東電社員 協力企業 合計 >200mSv 7 2 9 100102 200mSv 10-100mSv 1,347 27 129 3,144 4,491 <10mSv 9,772 11,520 8.1mSv 10.4mSv 1,748 平均被曝量 19.6mSv 1品目当りの放射能汚染暫定規制値 (想定内部被曝5mSv/年) 生涯被曝限度100mSv(食品安全委員会) I-131 Cs-137 飲料水(乳児) 300(100)Bq/kg 乳製品 300 穀類、野菜、肉 魚 飲料水 2,000 乳製品 200(50) 穀類野菜肉魚 1,000(100) 乳児食 - (50) 200(10) 原子力発電所の稼働状況1 (2012.3.1現在) 北海道電力 築<30年 東北電力 築<30年 東京電力30-40 築<30年 <30年 泊1,2 泊3 東通1 女川1-3 福島第一1-4/5,6 福島第二1,2 柏崎刈羽 1,3,4,5,7 <30年 柏崎刈羽2 <30年 柏崎刈羽6 中部電力<30年 浜岡3-5 検査中 運転中 検査中 停止中 廃炉/10年停止 10年停止 検査中 停止中 運転中 停止中 原子力発電所の稼働状況2 北陸電力<30年 <30年 日本原子力 30-40年 関西電力>40年 30-40 30-40 <30 30-40 <30 志賀1 志賀2 東海2 停止中 検査中 検査中 美浜1 美浜 2、3 大飯1,2 大飯3,4 高浜1,2 高浜3,4 検査中 検査中 検査中 検査中 検査中 検査中 原子力発電所の稼働状況3 関西電力30-40 <30 四国電力30-40 <30 30-40 <30 島根1 島根2 伊方1 伊方2、3 玄海1、2 玄海3.4 検査中 検査中 検査中 検査中 検査中 検査中 <30 日本原子力>40 川内1、2 敦賀1 検査中 検査中 合計 <30 敦賀2 運転中2 検査中36 停止中 停止中15 各国の発電構成 イギリス フランス 石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 その他 ドイツ ロシア 中国 米国 日本 0% 20% 40% 60% 80% 100% 発電の単価(円/kwh) 50 45 40 35 30 政府 大島教授 米エネ庁 25 20 15 10 5 0 水力 火力 原子力 太陽光 エネルギー基本計画 (CO2温暖化仮説の再検証が前提) 2007年 2030年 2030年 (修正) 化石燃料 66% 26% 原子力 26% 53% 60% (新化石燃 料開発) 0%? 19% 40% 再生可能エ 8% ネルギー 原発の未来 吉本隆明 「原発を開発したのは人類の宿命であり、なく すことはできない。今回の教訓をもって完全 な安全対策をなすべきだ」 湯川秀樹 「科学が進歩するほど有害なものも増える。 われわれはそれをすべて統御することはでき ない」 「コンプライアンス重視」による復興阻害 (戦時に平時のルールを墨守する官僚政治) 1.日本での資格を持たない海外救援医師などを拒絶 2.線量計の供与を有効利用せず 3.安定ヨウ素剤配布せず(18/20市町村) 4.法的制約により瓦礫処理、住居建設が進まない 5.放射能汚染の基準が二転三転 6.予算執行の遅延、補助金の内容規制 7.義援金配分遅延(6ヶ月で2,136/3,245億円) 8.生活再建金遅延(6か月で1,300/3,600億円) 9.二重ローン問題(6ヶ月は猶予されたが) 10.原乳出荷停止解除問題 風評被害等 1.汚染がなくても福島県産は食べない(6割) 2.観光地の忌避(日光など) 3.福島県人のレストラン利用拒絶 4.大文字送り火に福島県のまきを使わない 5.福岡の福島支援店中止 6.愛知の支援花火に福島の花火を使わない 7.荒茶に規制値を設ける 8.大阪の橋げたに福島産を使わない 9.100Bq/kg以下の瓦礫さえ、56市町村しか受け入れない 10.南三陸町長に対する追及/幼稚園や自動車学校に生徒 死亡の責任を求める提訴 11.メディアに登場する学者の好加減な説明 残された課題 2011.12.16 野田首相が原発事故収束宣言?! 4号炉燃 料棒プールの脆弱性・地下水海洋汚染の防止 原発事故の原因究明 地震による打撃、臨界爆発?水素爆発の原因 原子炉の処理(16-28兆円の費用) 放射性瓦礫の最終処理、中程度放射性廃棄物処理施設 除染(移染)の必要性、時期と程度(10-30兆円の費用) 鉄道の復旧(三陸リアス線、常磐線など) 倒壊建造物のアスベストの処理 海洋汚染の防止とモニタリング(外国からの損害賠償請 求?)、グリーンピースの調査拒否の撤回 都市計画(高台あるいは移住)、汚染土地の買い上げ 被災者・救援者の心のケア 雇用(Cash for work) 二重ローン 復興特区の活用 放射線量測定 1.作業員 リアルタイム線量計 2.住民 積算線量計 年間被曝量=時間線量率X8,760時間X16/24 3.国 環境、食品の線量測定 国、東電が情報を隠したために、人々が個人で線量を 測定しないと安心しなくなった シーザーの言葉 「ガリア戦記」 Hot Spot を血眼になって探しても意味がない 災害関連法規 1.災害救助法 1947年 2.原子力災害対策基本法 1961年 3.災害対策基本法 1961年 4.激甚災害援助法 1962年 5.被災者生活再建援助法1998年 6.原子力災害対策法 1999年 7.原子力損害賠償支援機構法2011年 8.放射線汚染対策特措法2012年 復興の財源 1.無利子国債 2.日銀引き受け国債 3.資産税(1%で11兆円) 4.所得税・法人税増税 5.消費税増税(1%で2兆円) 6.政府所有株放出(JT,NTT,JP)(JTだけで1.4兆円) 7.特別会計積立取崩し(労働保険、外為)(10兆円) 8.地方補助金未執行分(2兆円) 9.放射性廃棄物最終処理基金(3兆円) 行政/NGO・ボランティアの活躍 自衛隊104,000人 米軍「Tomodachi」作戦18,000人 警察、消防、海上保安庁 日赤救護班706班/国立病院他DMAT440班 医療関係者15,000人(国境なき医師団ほか) 社会福祉団体(日本財団、MWB) 芸能人(氷室京介、SMAP,AKB,嵐,レディガガ,ジャッ キーチェン他) 一般ボランティア 380,000人 復興庁を東京ではなく、被害の中心地仙台に! ロータリーの活動 募金活動 6ヶ月間で10億円弱 福島南RC:福島県産の売れない無害の米を 毎月会員が一定額買い上げている 2510地区震災プロジェクト委員会 初年度1500万円、2、3年目各1000万円の計画 1)2530地区に放射能線量計を寄付 2)復興支援車両を寄付 3)1個1000円のストラップ(うち800円寄付) 4)福島キッズキャンプin北海道を計画 5)いわき海星高校復旧事業支援計画 まとめ 1.世界は危険に満ちているが、危険を適切なコストで最小化 し効用を最大化することが安全安心の本質である 2.ヒューマンエラーには不可避なものもあるが、適切な安全リ テラシーによって多くは克服可能である。 3.1000年に1度といわれた地震を予知することは不可能だっ たが、津波の教訓から学ぶことは可能だったはずである 4.原発の安全対策には明らかに手抜きがあり、想定外という いいわけは通用しない 5.一旦事故が起きたときにもっとも大事なことは全情報の公 開であり、これがなされなかったために国民は放射能を含め て過剰反応をおこした。 6.人口減少社会にあってエネルギーの使い方を反省し、低炭 素社会を実現すべきであろう。 すべての被災者に光を (主要3県以外にも被害) こころの中を見つめよう 博愛を広めるために 2011/12年度RIテーマ
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