1 『世界市民』 by 矢根 真二 ([email protected]) 資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/water/ <12> 巨大化する水市場ビジネス ⇒ Y <第6-8章> 本日の課題 ■ 拡大する世界の水ビジネス,取り残される日本企業 1 巨大化する世界の水市場 2 水バロンのビジネスモデル 3 世界の中の日本企業 例題 水ビジネスと水援助への立場 2 1. 日本企業が外国のライフラインである上下水道のビジネ スに進出するのに賛成・反対? (例: インフラ輸出) 2. 逆に,海外企業が日本の上下水道のビジネスに進出す るのは? (例: 2012年の松山市へのヴェオリア) 3. 欧米に比べアンタイド比率が極めて高い96%の日本(米国 28%・仏38%)のODA方針に賛成・反対? 1 巨大化する世界の水市場 3 110兆円市場 in 2025 ⇐ Y(09, p.130) 1. 施設管理・運営業務 (100兆:9割) 2. 資材調達・建設 (10兆:9%) 3. 膜等の単品の素材 (1兆:1%) 主要5分野 (上水&下水・工業用水&下水・海水淡水化) 経産省:$3600億(2007) ⇒ $8700億(2025) ⇒ 国交通省 「日本の水資源について」 世界の水市場が巨大化する理由 4 人口増加と都市化の産物 1. 2. 3. 4. 5. 上下水道等のインフラ需要↑ ボトルウォーター需要↑ 既存の上下水道設備の更新・効率化 水不足地域での雨水や排水の利用 水不足地域での海水淡水化 競争 (価格競争 + 技術競争) の激化 エネルギーや交通・通信のインフラ整備も同様 新規参入企業: IBM 5 水資源管理に参入 ⇐ Y(09, 6章) 1. センサー ⇒ データ収集 ⇒ 可視化 2. 脱塩膜技術のライセンス化 GIO水 ⇒ Global Innovation Outlook 水 1. 2. 3. 海洋等の水データの欠如 都市インフラ,食料・エネルギーと水 限られた水の効率的利用: 水の価値 ビッグデータ 新規参入国: シンガポール 6 1. 水輸入国シンガポール ⇐ Y(09, pp.122-4) 水需要の50%をマレーシアから輸入 2. 契約更改交渉で100倍の請求額(2000年) ∴安全保障問題 ⇒ 国家プロジェクト 3. 海水淡水化・雨水回収・下水再生 1. 2. 世界の専門家・企業を招聘 自国の水関連企業群の育成 4. 水技術の輸出国へ ハイフラックス Q1 巨大化する世界の水市場 7 【】の穴埋め: 2025年の水市場は, 1. 【 】兆円規模になると予測され, 2. その90%は【 】業務であり, 3. ポンプや膜の単品素材販売は【 】%にすぎない 4. 近年では水不足に悩んできた【 】も参入している 2 水バロンのビジネスモデル 8 世界3大水メジャー(バロン: 男爵) 1. 2. 3. 民営化水道(10%)の8割を寡占 ヴェオリア (フランス ⇒ 1.2億人) GDFスエズ (フランス ⇒ 1.1億人) テムズ・ウォーター( 英国 ⇒ 0.7億人) 資源管理 (施設管理・運営) 業務に強み 管理実績 + 複合企業 + 政府支援 ⇒ 対政府のインフラ整備交渉 cf. 2013年 安倍政権 ヴェオリア社 9 水道・廃棄物処理 ⇐ 創業1859年 水部門売上1.7兆円,従業員7.8万人 ⇒ 世界100カ国・1.2億人に供給 ヴェオリア・ウォーター・ジャパン 設立2002年,グループ従業員2970人 1. 対自治体: 維持管理・設備施工運営 2. 対企業: 純水製造・排水処理 スエズ社とテムズ社 10 GDFスエズ社: 水道・電力・ガス・廃棄 水部門(スエズエンバイロメント)売上 1.9兆円 ⇒ 世界130カ国・1.1億人に供給 テムズ・ウォーター社 ⇐ テムズ水道局 売上0.65兆円,従業員1.5万人 ⇒ 世界の0.7億人に供給 ∴仏の2大コングロマリットが7割 仏2大バロンの中国ビジネスモデル 11 1. 政府によるトップセールスの有効性 ∵ 水や電力等の公共サービスの特徴 2. 長期&総合的な巨額の契約 ∵ インフラの建設・運営・保守の特徴 1. 資源管理(施設管理・保守業務)の総合ビジネス 2. ニーズに合わせた多様な長期契約 Y(09, p.111) における対中国の例 O&M契約,コンセッション,BOT,TOT PFI 官民連携(PPP)のスペクトラム 12 PPP(官民連携:Public Private Partnership)のスペクトラム 1. 公営企業: 市町村直営・公社 2. 公共出資の株式会社・第3セクター方式 3. PFI (Private Financial Initiative) 民間資金を活用した公共サービスの提供 4. 完全民営企業 分類は異なる場合もある(例: コンセッション) 中村吉明(2010) 『日本の水ビジネス』4章 水道法制研究会 (2011)『水道法ハンドブック』 5章 PFIにおける民間活力活用の諸契約 13 A: 事業の管理・維持,運営,資金調達 1. O&M (Operation & Maintenance)契約 2. OM&M (Operation, Maintenance & Management)契約 3. リース(アフェルマージュ・公設民営) 契約 B: A + 設計・建設,所有 1. BOT (Build, Operation, Translate)コンセッション契約 2. BOO (Build, Own, Operation)契約 近年日本の特徴: 管理や運営を含めたPFI・コンセッション その他の中国参入企業の例 14 1. GE(米国) 電力 + 純水処理・再利用水 2. シーメンス(ドイツ) 交通通信・発送電 + 水処理 3. ハイフラックス(シンガポール) 再生水処理・海水淡水化 ∴ シナジー効果(1-3), 政府支援(3) Q2 水バロンのビジネスモデル 15 1. 世界三大水メジャーとは? 2. フランス系水バロンのビジネスモデルの特注は, 1. 【 】によるトップセールスを伴い, 2. インフラの【 】・【 】・【 】という長期・総合的なサービス を提供する 3. 特に【 】と呼ばれる民間資金を活用する多様な契約が 行われている 3 世界の中の日本企業 16 1%の素材市場での強み Y(09, p.129) 1. 海水淡水化の膜分野では,世界の7割 2. 給水&高圧ポンプも競争力 90%の資源管理市場の弱み Y(09, p.117-8) 1. 中国の上下水道への進出はゼロ 2. But ODAは総額6兆円(of 40兆円) 国家としての外交・ODA戦略の欠如? ハコモノ重視の政府開発援助 17 1. 中国へのODA: 6兆円 Y(09, p.118) 無償資金援助,技術協力,円借款 2. 円借款(有償資金援助): 3兆円(50%) 水関連の円借款: 5600億円 3. 日本が建設したのは,ハコモノだけ その浄水場・下水処理場は,仏が管理 日本のODAは水メジャーの露払い! 世界の水と衛生の4割を拠出 p.145 海水淡水化技術に秀でる日本企業 18 1. 海水淡水化 逆浸透膜(RO膜)の世界シェア7割 2. 下水の再生利用 膜式活性汚泥法(MBR)は20%成長 クボタ,日立プラント,東レ,三菱レイヨン,帝人,旭化成ケ ミカル 日本の上下水道は地方公営企業 19 1. <13> 日本の上水道・下水道 地方公営企業: 多数 but 総じて小規模の公営企業 2. 民間企業は,包括的な運営経験なし( 水道法) 海外入札資格なし ⇒ Y(09, p.131,143) 3. ∴巨大な資源管理市場に参入不可 ⇒ <13> 「チーム水・日本」の結成 Q3 日本の水企業・水政策 例題 20 1. そもそも日本企業は世界の水市場でのシェアを高めるべ きだと考える? その理由は? 2. アンタイド中心の日本のODA政策をどう評価する? 理由 は? アンタイド中心のODAは「中立的」なゆえ「望ましい」のだろ うか? サンデル(10) 変化する世界の経済力・外交のバランス BRICs版世界銀行構想 インフラ整備 政府開発援助ODAから民間中心のBOPビジネスへ 沈む日本のインフラ輸出 欧米だけでなく,韓国・中国に抜かれた日本 日本経済新聞 2012/4/5 1. 日韓中のインフラ輸出の増加 2006-10年 日本: 微減 $233億 $256億 韓国: 4.1倍 $645億 日本以下 中国: 4.5倍 $1300億 日本と同水準 2. 低迷する日本: 円高・EPAの遅れ・外交・縦割り行政 3. 2013年 アベノミクス・安倍外交による急速な変化? 本日の要点&次回の準備 22 1. 2. 3. 巨大な水市場: 管理運営が中核 仏英の水メジャーによる寡占 政府 + 経験豊富な巨大な民間企業 日本の水企業・水戦略 1. 水道事業の中心は,地方公営 企業 <13> 2. 民間企業は,海外の入札資格なし 3. 日本のODAには,戦略なし 次回: 日本の水道事業と今後の課題 例解 水ビジネスと水援助への判断力 23 教科書Y(09)の見解 と 反論例 Q3 1. 積極的賛成(全体) ライフラインを商売にすべきでない? バーロウ(08) 2. 黒船来襲(p.103) 他国と自国で違うのはおかしい? ミラー(10) 3. 欧米型へODA改革(p.144) むしろアンタイド比率は誇るべき? 従来の日本・外務省 アナタ自身の整合的な判断は? 少なくとも上記1&2を矛盾なく説明する必要性
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