東アジアにおけるHTLV

東アジアにおける
HTLV-1の起源と進化の解明
~ 八重山のHTLV-1株の系統学的位置づけ ~
履修番号:307127
氏名:本田徳鷹
所属教室:熱帯医学研究所
国際保健学分野
担当教員:江口克之、山本太郎
目的
?
• 南西諸島の西端に位置す
る八重山諸島から得られた
HTLV-1株について、系統学的
な位置づけを明らかにする。
• 先行のHTLV-1研究の中で
は、二つのことが知られていま
す。第一に、南西日本に分布
の偏りがあること。第二に、こ
のような分布の偏りは有史以
前からの人の移動を反映して
いる可能性があること。
• 主要な移動ルート:樺太→
北海道、朝鮮半島→西日本、
南西諸島→九州南部
(Hinuma et al. 1982)
背景
• ヒトのT細胞に感染するレトロウイルス
• 感染様式:大量の感染細胞の存在が必要
• 感染経路: 1.母子感染
•
•
•
•
2.性的接触による感染
3.輸血による感染
病原性:成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)
世界的流行地域:アフリカ、メラネシア、日本、中南米
日本国内における流行地域:南西日本
亜型:中央アフリカ亜型
メラネシア亜型
コスモポリタン亜型
(大陸横断亜群、日本亜群など3~5群)
具体的な研究目標
• 八重山のHTLV-1株の系統学的位置づけを
行う。
• 日本におけるHTLV-1の起源に対する考察を
試みる。
対象
検体:沖縄県八重山諸島から得られたHTLV-1株
解析領域:近縁なウイルス株の系統関係の解明
を目指しているため、進化速度が比較的速いと考
えられているLTR領域を解析対象とした。
方法(1)
1.DNA抽出
2.PCR法
(Primer BLASTを用いて設計したプライマー)
3.Exosap処理
4.サイクルシークエンス反応
(2~4を2~3回)
5.塩基配列決定
6.系統解析
方法(2)
国際保健学分野がすでに読み取った日本各地の
HTLV-1株のシークエンスを含めて、、、
1.ClustalWを用いてアラインメント
2.Phymlを用いて最尤法系統解析
3.Mega4を用いて解析結果を視覚化
4.西アフリカ亜型(HTLV-1d)に属するウイルス株
(L76310)を外群として有根樹とした
結果(1)
系統解析
85
大陸横断亜群
82
47011003沖縄
47011001沖縄
4701100沖縄
4701059沖縄
4701054沖縄
4701096沖縄
4701052沖縄
4701078沖縄
47011009沖縄
4701070沖縄
4701053沖縄
B株
47011002沖縄
4701073沖縄
4701066沖縄
3902037高知
01011056北海道
04080801加計呂麻島
43011017KM
0101024北海道
93
39021003高知
01011023北海道
92
97
日本亜群
47010040沖縄
3902028高知
3902025高知
E株 A株
3902014高知
14080803加計呂麻島
42030603長崎
07080804加計呂麻島
C株
85
01011055北海道
3902009高知
3902021高知
0
D株
03011004岩手
03011001岩手
85 03011005岩手
J02029
03011002岩手
08080802加計呂麻島
3902038高知
14080801加計呂麻島
16080802加計呂麻島
04080807加計呂麻島
08080801加計呂麻島
14080806加計呂麻島
結果(2)
分岐年代推定
47011003沖縄
47011001沖縄
4701100沖縄
4701059沖縄
4701054沖縄
4701096沖縄
4701052沖縄
85
4701078沖縄
47011009沖縄
4701070沖縄
4701053沖縄
82
47011002沖縄
4701073沖縄
4701066沖縄
3902037高知
01011056北海道
04080801加計呂麻島
43011017KM
0101024北海道
93 39021003高知
01011023北海道
92 14080801加計呂麻島
16080802加計呂麻島
97 04080807加計呂麻島
08080801加計呂麻島
14080806加計呂麻島
47010040沖縄
3902028高知
3902025高知
3902038高知
• A株と他4検体の間で塩基の違いの
あった場所の数を数えた。
B株:15/690(変異/塩基)
C株:3/576 (変異/塩基)
D株:4/643 (変異/塩基)
E株:4/611 (変異/塩基)
• 先行論文(Van Dooren et al 2001)
に従い、LTR領域の進化速度を
1.54×10⁻⁶変異/塩基/年と仮定した。
• 上記の変異に要した期間を計算した。
A株
B株
14116(年)
C株
3382
B株
E株A株
3902014高知
14080803加計呂麻島
42030603長崎
07080804加計呂麻島
85
01011055北海道
3902009高知
3902021高知
03011004岩手
0 03011001岩手
85 03011005岩手
J02029
03011002岩手
08080802加計呂麻島
C株
D株
0.005
D株
4040
E株
4251
結論(1)
八重山における大陸
横断亜群の比率は
20%(1/5)であった。
結論(2)
• 日本亜群(A株)と大陸横断亜群(B株)の分岐の時期は約
14000年前と推定され、後期旧石器時代から縄文時代初期
に相当する。
• 一方、日本亜群に属する、A株、C株、D株、E株が互いに分
岐した時期は約3300年から4200年前と推定され、縄文時代
後期から晩期に相当する。
結論(2)
謝辞
最後になりましたが、山本先生を始めとする
国際保健学教室の皆さん、そして特に熱心に
指導して下さった江口先生!
たくさんご迷惑をおかけしましたが、ありがとう
ございました!!