タイトル

PTLV-1の起源と進化
氏名:307102 塚田幸絵
所属:熱帯医学研究所 国際保健学分野
担当教員:江口克之、山本太郎
目的
STLV-1とヒトのHTLV-1の感染自然史を比較する
ための第一歩として、ニホンザルに感染して
いるSTLV-1株のPTLV-1内の系統学的位置づ
けの解明
背景
PTLV-1について
霊長類T細胞白血病ウイルス1型(PTLV-1)はアフリカ、ア
ジアに分布する真猿類のサル、類人猿、ヒトのT細胞
に感染するレトロウイルス。
サル、類人猿を自然宿主とするウイルスはサルT細胞白
血病ウイルス1型(STLV-1)
ヒトを宿主とするウイルスは成人T細胞白血病ウイルス
(HTLV-1)
と便宜的に分類されている。
PTLV-1の遺伝子構造
5’-LTR-ψ-gag-pol-env-LTR-3'
LTR(反復配列)
ψ (RNA ゲノムが粒子内に取り込まれるのに
必要なパッケージングシグナル)
STLV-1とHTLV-1はenv、pX、LTRの各遺伝子領域でほぼ
90%の相同性を示すほど非常に近縁である。
HTLV-1陽性者→ATL(白血病)
→HAM/TSP(神経疾患)
西南日本は中央・西アフリカ、ニューギニア・メ
ラネシア、カリブと並び世界的に見てもHTLV-1
陽性率の高い地域である。
最近の分子系統学的研究では・・・
①STLV-1にはいくつかの明瞭な系統群が存在し、
それぞれの系統群は、その流行地において、
種の壁を越えて感染していること、
②HTLV-1はアフリカにおいて、サルや類人猿を
自然宿主とするSTLV-1がヒトに偶発的に感染
する過程で多系統的に進化してきたこと
を示している。
⇒PTLV-1の系統分化において、水平感染が重
要な役割を果たしている!
他にも・・・
• ニホンザル(Macaca fuscata)ではSTLV-1陽性率
が群によっては50%を超える
• 青年期以降の水平感染が頻繁に起こっている
ことが示唆されている。
このことは、HTLV-1の主要な感染経路が授乳を介
した母子感染で、陽性率も数%程度であることと
異なっている。
サルの中で高い陽性率を示す種・地域個体群の
大部分はマカク属に属している
⇒STLV-1はもともとマカクのウイルスであった?
つ・ま・り
ニホンザルのSTLV-1とヒト
のHTLV-1の感染自然史を
比較する
⇒
ウイルスがヒトへ宿主転換
し、ヒト社会へ適応していく
プロセスを解明
対象と方法
• 本研究では、進化速度が比較的遅いと考えられているpol領
域の一部を解析対象とした。
1. 福井県内で捕獲されたSTLV-1陽性ニホンザル6個体
の末梢血からDNAを抽出。
2. それらのDNAについて、pol領域の一部1703塩基を
PCR法によって増幅。
3. Exosap処理したPCR 産物はサイクルシークエンス反
応に供し、塩基配列を読み取る。
4. 得られた配列をDNA Baserを用いて照合することに
より、1200~1500塩基長の配列を決定。
5.決定された配列をGenBankに登録されているPTLV-1
株の配列とともに、最尤法により系統解析した。
結果
AF139170
95 J02029
HTLV1China
84
AY563954
HTLV1
100
99 D13784
STLV01
22
100
AF074966
89 toyama1
87
toyama4
100
98
toyama226
L02534
Z46900
ニホンザルのSTLV-1はHTLV-1の
グループに属している。
100
69
99
100
HTLV4
HTLV04
99 HTLV002
HTLV2
STLV02
100
STLV2
STLV03
STLV3
100
HTLV3Pyl
89
99
HTLV3Lobak
79
STLV1
AY590142
0.1
AF139170(HTLV-1
95
from HTLV-1 /2 seroindeterminate patient)
J02029(HTLV-1 proviral DNA)
HTLV1China
84
AY563954 (HTLV-1 two Blazilian isolate)
HTLV1
100
99
D13784(HTLV-1
proviral Caribbian orizin)
STLV01
22
100
AF074966)STLV-1 isolate natural infected Tantalus Monkey Tan90 from
89
87
Central Africa
toyama1
toyama4
100
toyama226
L02534(HTLV-1 melanesian varient (mel5) proviral DNA)
Z46900(STLV-1 from exons(TE4) naturally infected celebes macaques (Macaca tankeana))
0.02
Toyama1と異なる塩基個数の割合
toyama1(1502基)との比較(%)
14
Z46900
L02534
toyama4
toyama226
AF074966
D13784
AY563954
HTLV1China
J02029
AF139170
12
10
8
6
4
2
0
HTLV-1よりSTLV-1との違いのほうが大きい
AF139170(HTLV-1
95
from HTLV-1 /2 seroindeterminate patient)
J02029(HTLV-1 proviral DNA)
HTLV1China
84
AY563954 (HTLV-1 two Blazilian isolate)
HTLV1
100
99
D13784(HTLV-1
proviral Caribbian orizin)
STLV01
22
87
100
約45万年前
AF074966)STLV-1 isolate natural infected Tantalus Monkey Tan90 from
89
Central Africa
toyama1
toyama4
100
約5万年前
toyama226
L02534(HTLV-1 melanesian varient (mel5) proviral DNA)
Z46900(STLV-1 from exons(TE4) naturally infected celebes macaques (Macaca tankeana))
0.02
この系統樹はアミノ酸配列の突然変異が一定速度で発生す
るという背景のもと 成り立っており、距離は時間に比例する
こととなる。
ディスカッション
サルとヒトの宿主の違いにより、
ウィルスの進化速度が違うのではないか
• Gene bank に保存されているデータ数が少な
いため結論を出すことはできないが、
原猿類と真猿類の進化においても進化速度の
違いが挙げられているので、この説は有力で
はないかと思われる。
今後はサルの集団中における水平感染の進化
速度への影響を検討していく必要性があると
思う。
謝辞
• この研究をするにあたり、研究する機会を頂
いた山本太郎先生、何から何まで御助言を
頂いた江口克之先生に深く御礼申し上げま
す。
打ち上げ楽しみです!!
96
U19949(HTLV-1 ATL-YS a prematurelly terminaited px open reading from Ⅱ)
J02029(HTLV-1 proviral DNA)
AB513134(HTLV-1 proviral DNA)
L03562(from rabbit cell lines with diverse in VIVO effect)
0
AF259264(HTLV-1 isolate WHP from China)
AB273635(HTLV-1 Eukarystic synthetic constract)
L03561(from rabbit cell lines with diverse in VIVO effect)
73
93
77
72
AF139170(HTLV-1 from HTLV-1 /2 seroindeterminate patient)
L36905(HTLV-1 proviral in post-transfusional spastic paraparesis from uncultured blood cell)
AF042071(HTLV-1 stain RKI3-Ger from Germony)
88 M86840(HTLV-1 tropical spatic paraparesisをもつ人から)
AY563953(HTLV-1 strain BRRP438 two Blazilian isolate)
99
77
AY563954(HTLV-1 two Blazilian isolate)
D13784(HTLV-1 proviral Caribbian orizin)
99 AF033817(HTLV-1 )
AF074966(STLV-1 isolate natural infected Tantalus Monkey Tan90 from Central Africa)
toyama226
85 toyama227
toyama4
100
toyama7
87
toyama92
87 toyama3
toyama1
0.02