名古屋港が愛知県にもた らす経済効果 コンテナ戦略とは? アジアに巨大港が完成するなか、国土交通省が20 09年12月、日本にも国際競争力のある拠点港(ハ ブポート)をつくろうと「国際コンテナ戦略港湾検討 委員会」を設置した。1、2港を選んで重点投資する 計画で、超大型船が寄港できるコンテナ岸壁の建 設や、港湾運営の民営化などを推し進める。阪神 港のほか、京浜(東京、横浜港など)、伊勢湾(名古 屋港など)、北部九州(博多、北九州港)の4港が応 募した。結果、2010年8月国際コンテナ戦略港湾 は阪神港(神戸港、大阪港)、京浜港(東京港、川 崎港、横浜港)に決定した。 ( 一部 2010-06-09 朝日新聞 朝刊 1経済 より ) なぜコンテナ戦略は必要なのか? コンテナ輸送のハブポートはアジアに集中している。 自動車や原料を除く殆どの荷物は合理的なコンテナ船で運 ばれる。 EX)テレビ、オートバイ、カメラ、パソコン、醤油、牛肉、オレ ンジ コンテナ輸送は航空会社の旅客輸送のようにハブポートを基 点としたトランジット輸送が一般的のため、各国が世界のハブ ボート(貿易中継港)を目指してコンテナ船の誘致にしのぎを 削っている。まさにコンテナ船の寄港回数はその港の活性度 をはかるバロメータとも言える。 日本はハブポートとしての地位が低くなっているのが現状で ある。製品輸送の大部分はコンテナ輸送に依存するため、輸 出を念頭に置いた家電やオートバイなどの製品設計やデザ インには船用コンテナへの効率的な収納も考慮されている。 アジアのハブポートの成功例 例)シンガポール シンガポール港の取扱コンテナ貨物取扱量 世界全体の約2割 123カ国の600の港&200の航路 ①立地条件 太平洋とインド洋を結ぶ貿易航路 海外輸送の中継基地としての役割 ②地理的優位性 地震や台風などの自然災害をほとんど受けることがない ③インセンティブ制度の導入 取扱量に応じて料金減免など 輸入品目別内訳~ ⇒日本 2001年 財輸入 2010年 財輸入 2% 6% 12% 24% 27% 9% 7% 9% 52% 41% 資本財 8% 3% 耐久消費財 工業用原料 非耐久消費財 食料及びその他の直接消費財 その他 ⇒名古屋 2001年 財輸入 2010年 財輸入 17% 6% 17% 7% 原料別製品 9% 8% 14% 9% 輸送用機器 8% 鉱物性燃料 19% 4% 6% 14% 7% 14% 6% 電気機器 化学製品 一般機械 23% 12% 食料品 原料品 その他 輸出品目別内訳 ⇒日本 2001年 財輸出 1% 1% 2010年 財輸出 4% 1% 0% 18% 25% 53% 58% 18% 資本財 15% 耐久消費財 工業用原料 食料及びその他の直接消費財 非耐久消費財 ⇒名古屋 2010年 財輸出 0% 0% 2001年 財輸出 0% 4% 0% 0% 2% 5% 11% 8% 12% 22% 輸送用機器 6% 一般機械 3% 0% 44% 13% 52% その他 24% 電気機器 原料別製品 鉱物性燃料 化学製品 原料品 食料品 その他 2.名古屋の貿易相手国(2010) 輸出 輸入 中南米 3.2% 大洋州 5.2% 北米 8.3% 中東 欧・ロ シア等 2.2% アフリ カ 1.4% 大洋州 4.2% 中東 欧・ロ シア等 3.9% 中南米 5.8% 中東 6.7% アジア 48.7% 西欧 8.9% 中東 22.0% アフリ カ 2.0% アジア 39.6% 西欧 13.7% 北米 24.1% 名古屋港の輸出入の推移 250 単位:100万トン 200 150 100 50 0 2001 2002 2003 2004 2005 外 国 貿 易輸 出 内 国 貿 易移 出 2006 2007 2008 2009 外 国 貿 易輸 入 内 国 貿 易移 入 2010 名古屋港 コンテナ貨物取引量推移 25 単位:100万トン 20 15 10 5 0 2001 2002 2003 2004 2005 輸出 2006 輸入 2007 2008 2009 2010 横浜港 外貿貨物推移 160 単位:100万トン 140 120 100 80 60 40 20 0 2001 2002 輸出 2003 輸入 2004 2005 2006 コンテナ貨物 輸出 2007 2008 2009 コンテナ貨物 輸入 2010 横浜港 内貿貨物推移 60 単位:100万トン 50 40 30 20 10 0 2001 2002 2003 移出 2004 移入 2005 2006 2007 コンテナ貨物 移出 2008 2009 コンテナ貨物 移入 2010 東京港 外貿貨物推移 100 単位:100万トン 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 2001 2002 輸出 2003 2004 輸入 2005 2006 2007 コンテナ貨物 輸出 2008 2009 コンテナ貨物 輸入 2010 東京港 内貿貨物推移 60 単位:100万トン 50 40 30 20 10 0 2001 2002 移出 2003 移入 2004 2005 2006 コンテナ貨物 移出 2007 2008 2009 コンテナ貨物 移入 2010 阪神港における輸出入の推移 250 単位: 100万トン 輸入(神戸港) 200 輸出(神戸港) 移入(神戸港) 150 移出(神戸港) 輸入(大阪港) 輸出(大阪港) 100 移入(大阪港) 移出(大阪港) 50 合計(神戸港) 合計(大坂港) 0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 阪神港におけるコンテナ取扱量推移 70 輸出(大阪港) 輸入(大阪港) 輸出(神戸港) 輸入(神戸港) 合計(大阪港) 合計(神戸港) 単位: 100万トン 60 50 40 30 20 10 0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 経済波及効果 名古屋港が愛知県の産業にどれだけの経 済波及効果があるのか、H22年のそれを 調べてみた。 経済波及効果とは ある商品に需要が発生したとき、経済における さまざまな 取引の連鎖によって他の商品の需 要が生み出され、それを製造するさまざまな産 業の生産が誘発されること。 経済波及効果=直接効果+第1次間接 効果+第2次間接効果 第1次間接効果とは ⇒1次波及による生産額の増加分 1次波及 経済波及効果のうち、直接の生産の増加(直接 効果)からの波及を1次波及と呼んでいる。 Ex.自動車一台を新たに輸出することになった 時、国内で新たな自動車部品が必要になりそ れらの生産が増える。 2次波及 所得の増加 (経済波及効果によって生産が増加 すると、そこで働く人の所得もその分増える。) 消費の増加 (増えた所得で、買い物をすることに より、様々な製品の購入額が増える。つまり新たな需 要が発生する。) 第2次間接効果とは 2次波及までの繰り返しである。 経済波及効果の算出 波及効果は産業連関表の逆行列係数表を使って、 「逆行列係数」×「最終需要額」で計算する。 縦(列)方向に見ると、財・サービスの生産 にあたって投入された原材料及び粗付加 価値の構成が示されている。 横(行)方向に見ると、生産された財・サー ビスの販売(産出)先の構成が示されてい る。 H22年の名古屋港の輸出による愛知県への 波及効果 使用データ 平成17年愛知県産業連関表 平成22年名古屋港コンテナ輸出台数 「平成20年全国輸出コンテナ台数貨物流動調査」によ り1トンを34.1万と換算した 生産誘発額内訳比率 10% 愛知県総生産額 79兆円 生産誘発額 生産誘発額内訳 自動車 その他 プラスチック製品 4% 3% 7% 46% 40% 自動車産業の総生産額と生産誘発額内訳 自動車産業生産誘発額 27% 愛知県総生産額 15兆円 73% 経済波及効果の例 ドラゴンズ日本一 (共立総合研究所試算) 219億(愛知、岐阜、三重、石川、富山のみ) ex)入場料、セール売り上げ、新聞の売り上げ増加 なでしこジャパン優勝(CM総合研究所試算) 1兆超 ex)入場料、セール売り上げ、海外による日本製品の需要増加 TPP参加 10年で 2.7兆 (政府試算) ex)関税撤廃による輸出増加、規制緩和による貿易の活性化 アメリカのリーマンショックに端を発した世界不況によって、トヨタ自 動車が2009年度の営業利益見通しを一兆円下方修正した。「トヨタ ショック」と言われる日本経済を引っ張ってきたトヨタのこの衝撃的な経 営判断による日本経済全体への負の波及効果が生じた。これにより、 トヨタの08年3月から9000人いた期間従業員の削減などを始めた。 自動車部品の種類は3万点におよぶといわれ、トヨタの経営判断が数多くの 関連産業に影響する。 名古屋港は自動車関 連の輸出が半数以上を 占めるので これにより、輸送量の激しい落ち込みが生じ、名古屋港の輸出量も大きく落ち 込んだ。 •まとめると… 2008年、リー マンショック 2009年、トヨ タショック 名古屋港の 輸出量が大き く落ち込み 次ページの表の通り、名古屋港からの輸出量は… ほぼ半分にまで落ち込む 名古屋港貿易額年次比較 20,000,000 15,000,000 輸入 10,000,000 輸出 5,000,000 0 平成20年 平成21年 平成22年 まとめ 名古屋港は愛知県の産業に大きなプラス の影響を与える。 これからの名古屋港は国際競争力を高め るためにコンテナ貿易に力を入れるべき である。 ハブポートとしての役割を果たせる港へと 変わる努力が必要である。
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