第13章 工具材料 - 小山工業高等専門学校

第13章
工具材料
工具材料:硬質合金(WC、TiC)、サーメ
ットおよびセラミック。
13.1
硬質合金の燒結機構
13.2
硬質合金の性質
13.3
サーメットおよびセラミック切削
工具材料
13.1
硬質合金の燒結機構
13.1.1
硬質金属の燒結
4つのケース:
1.
A、Bは互いに固溶し、焼結体は均一な組織を生ずる。
2.
互いに固溶せず2相よりなる焼結体を形成する。あるいは
、
互いに限界濃度を持つ場合も同様である。
3.
B成分は融点が低いため溶融してA成分の間隙を充填する
。
AはBを溶かすことなく、BはAを溶かしてその融点を降
下
する。冷却で再び析出されてA、Bの2相になる。
4.
B成分が溶けてAの間隙を満たすとともにA中に拡散して均
一な固溶体を作り、単相の焼結体となる。
13.1.2
硬質合金の拡散現象
固体状態における2結晶の合体過程:
Ⅰ、Ⅱ:低温融着、温度が低いため、拡散作用が進行
しない。
Ⅲ:表面拡散:温度の上昇とともに
Ⅳ:格子拡散:さらに温度が上昇すると
Ⅴ、Ⅵ:A結晶内にBが完全に溶け込んだ均質化の状態
になる。
拡散法則にしたがって状態図に準拠した組織:
Ⅰ.両成分が連続的に固溶体を形成し任意の割合で混合する
。
TiC-
したがって両者の境界には濃度範囲を生じない。(
TaC)
Ⅱ.AおよびB成分は互いに固溶するが、B中にA、およびA中
にBが互いに限界溶解度を持つ場合で両者の境界に濃度帯
が生ずる。その範囲は処理温度によって変化する。
(ZrC-VC、WSi2-TiSi2)
Ⅲ.各成分間に固溶体以外に中間相(化合物)ができる場合
にはそれらの間に多くの相が現れ、その温度に相当する相
が出現する。(MoSi2-TiSi2、WSi2-TiSi2)
硬質材料の生成過程
a.
金属:5個
Cなど:2個
b.
結晶の表面あるいは粒間の毛細管間隙に沿って拡散し、
温度の上昇とともに金属の格子中に浸透する。
c.
さらに温度が上昇すると逐次内部に進行し新しい結晶を
作る。しかし、表面と内部濃度差がある。
d.
温度が十分高い場合、均一に拡散し新しい結晶になる。
温度は十分ではないとき、粒界に沿って数種の相が現れる。
13.2
硬質合金の性質
硬質合金:WCを主体とする。TiCもある。
2種類:
1.
short
chipping
WC-Co
(鋳鉄、ガラスなどの加工に適するもの)
2.
Long
chipping
(鋼の切削)TiC、TaCを添加した
WC-TiC-Co、WC-TiC-TaC-Co
Cratering:切削耐久度の低下(TiC、TaCで改善)
TiCとTaC同時添加:short chippingとlong chipping併用合金
13.2.1
WC-Co系硬質合金
*切削工具として、鋳鉄、陶磁器のような脆く
て硬い材料に適し、また耐摩性に富むので伸
線用ダイスに利用される。
*性質の指標:
粒度、硬さ、抗折力、耐摩性、切削性など
Coの濃度が増加すると:
1. 密度:密度低下
2. 硬さ:低下
3. 抗折力:上昇
4. 抗圧力:低下
5. 衝撃値:燒結温度と関係ある
6. 引っ張り強さおよび伸び:脆いため、正確に測定しにく
い。
7. その他:熱伝導度、膨張係数、比熱、磁性、腐食性、酸
化性
8. 切削性:組成と組織に関係する
α1(Coわずかに固溶したもの)の組織に富む微粒組織
からなるものは耐久性良い。
9. 耐摩性:他の金属材料より優れている。
WC-Coの使用範囲(表11-13)
WC-TiC-Co系
*WC-CoにTiC添加、硬さ、耐酸化性、高温強度向上
long chippingに(鋼)
TiCの添加で、熱伝導度が下がり、融着性の改善
Crateringの減少によって切削耐久性がアップされる。
耐酸化性の向上で耐摩性が良くなる。
使用範囲:(表11-18)
WC-TaC(NbC)-Co系
結晶の微細化、炭化物成長の防止で硬さ向上
WC-TiC-TaC(NbC)-Co系
Short and long 併用
WC-TiC-Coの使用範囲(表11-18)
13.3 サーメットおよびセラミック切削工具材料
13.3.1サーメット
ceramicとmetalと結合した複合材料 TiC+結合相Ni
WCより硬く、耐熱性が優れている。
高速切削に適するが、脆い欠点がある。
製造法:
* TiC粉末にNi粉末
*無水で湿式混合(Mo添加、濡れ性改良のため)
*減圧で有機物を飛ばす。
*潤滑剤添加、1t/cm2の圧力で圧粉体を作成する。
* 800〜1500℃の水素あるいは真空下で予備燒結
*加工成形
* 1300〜1500℃で1時間真燒結で焼結体が得られる。
性質:Niの添加率によって変化する抗折力と硬さ
13.3.2セラミック切削工具材料
Al2O3:融点2000℃
製造法:

アルミナ粉をボールミルで粉砕する

1000℃で予備燒結(着色除去)

加工成形

本燒結
性質:
αAl2O3はTiCより軟質であるが、燒結したものはサーメットよ
り硬い。切削工具中最も硬いもの。
高温で強度低下しない。
抗折力が低いけど、1000℃以上は良い。