2008年以降デフレ脱却から一転長期戦へ

1節 マーシャル
・物価はなぜ下落するのか?
…当時のイギリスで多くの経済学者・実務家によって信じら
れていたのは貨幣数量説(Quantity Theory of Money)
・貨幣数量説とは…
…社会に流通している貨幣の総量が物価の水準を決定して
いるという経済学上の仮説。たとえば、「ある国の物価水準
は、その国に流通している貨幣の量に比例して決まる」と
いったもの。
・貨幣数量説を前提にすると…
…物価が下がり続けるのは、実体経済と比較して貨幣数量
が不足しているからである。したがって、デフレを止めるため
には貨幣数量を増やさなければならない
→解決策:金・銀複本位制度(bimetallism)
1節 マーシャル
・しかし、金・銀複本位制度は採用されず…
1886-87年の王立委員会におけるマーシャルの表明
「他の事情にして等しければ、価格は価格基準として用いられる貴金属
の増減に比例して上昇ないし下落する、という学説を私は受け入れるが、
『他の事情にして等しければ』という条件がきわめて重要であり、それこ
そを精査する必要がある(Marshall [1926;P.21])」
→つまりマーシャルは、貨幣数量説を受け入れるもデフレの原
因を貨幣数量の変動以外にも求めた。
・根拠:イギリスの物価指数の推移(図表3-3, P.85)
…銀の供給量は金の供給量をはるかに上回っているのに、対応
する物価の動きには大きな違いが見られなかった。
→ということは、物価の変動を生み出す主因は貴金属の供給
量とは異なるところにある…?
1節 マーシャル
・それでは、デフレの原因はどこにあるのだろうか?
→通貨供給量よりも「実物的」(real)な要因によって生み出される。
「通貨価値がどのような貴金属にその基礎を置くにせよ、信用の膨張と収
縮や価格の上昇と下落は、常に戦争や戦争のうわさ、豊作や不作、有望
な新しいビジネスの誕生、そしてそれに基づく希望の消滅によって生み出
される。こうした原因が、貴金属の供給量や相対価格の変動よりはるかに
大きな影響を価格の動きに与えてきたことは、図表3-3から明らかである」
(Marshall[1887;P.194])
・マーシャルはまず、1814-37年の価格の長期的下落を分析した
トゥック(1857)に言及。トゥックはナポレオン戦争後のデフレにつ
いて六つの要因を挙げたが、そのうち四つは当時の大不況にも
当てはまると指摘。