日本のFDAは 何をやっているのか? 混合診療問題における医薬品医療機器 綜合機構(PMDA)の果たす役割 今日のお話 • ”薬の認可”って何?:どこの誰が何を決め る? – 承認審査と薬価決定は別 – 承認審査の過程 – 混合診療は現在する • 高度先進医療,トクホ,適応外使用 • 日本の審査にまつわる虚構 – 遅れている,外国データを利用していない • 審査とリスクコミュニケーション 混合診療禁止を謳った法令は? • • • • • 社会保障審議会令 健康保険法 医療法 医師法 社会保険診療報酬支払基金法 混合診療問題議論の混乱の原因 • 法ではっきり定めていない – 料金体系なのか診療行為なのか – 各人が勝手に混合診療下の状況を想像する – 議論が噛みあわない • 様々な診療行為を一緒くたにして議論 – 評価が既に確立した診療 • 適応外使用,保険適応の有無(例:バイアグラ) – 高度先進医療 – 特定保健用食品 今日のお話 • ”薬の認可”って何?:どこの誰が何を決め る? – 承認審査と薬価決定は別 – 承認審査の過程 – 混合診療は現在する • 高度先進医療,トクホ,適応外使用 • 日本の審査にまつわる虚構 – 遅れている,外国データを利用していない • 審査とリスクコミュニケーション 議論整理の鍵 科学と銭勘定を混同しない Japan MHLW approval Universal health insurance coverage 国民皆保険 USA Health insurance system A FDA approval Health insurance system B Health insurance system C 重いいぼ痔手術せず治療 ー科学審査は銭勘定とは独立ー 沖縄のバイオベンチャー、レキオファーマは、2005年3 月をメドに痔(じ)疾患治療薬「ジオン」を発売する。国 内のバイオベンチャーでは初の医療用医薬品。開発 には約15億円を投じ、15年の歳月をかけた。中国の医 薬品をもとに沈殿物を取り除くなどの改良を加え、04 年7月に厚生労働省の承認を受けた。(PMDAの仕 事) 薬価については来年3月までに決める。レキオでは「バ イオベンチャーの開発意欲をそがないような適切な価 格」(奥社長)を希望するが、価格交渉を担当する三菱 ウェルが厚労省の提示価格が低すぎるとして現時点 ではまだ折り合っていない。 (保険局医療課の仕事) 科学的審査に合格でも, 保険適応になるとは限らない 薬 の 格 誰付 がけ や・ ベ るン ?チ マ ー ク 大切なものは第三者評価が必要 • 食べ物:レストラン:ミシュラン • お金:生命保険会社,銀行格付け • 命:病院評価,ランキング 薬は: 公平・中立な専門機関による治験データの評価 週刊誌や,みのもんたじゃダメ!! 非臨床試験と 臨床試験の 結果を提出 有効性と 安全性を 評価 審査・承認とは? 医薬品の承認 製薬企業 対象患者 ・・・ 効能・効果 使い方 ・・・・・ 用法・用量 注意事項 ・・・ 使用上の注意 医療環境 医療ニーズ 患者ニーズ 政治判断 添付文書 新薬の承認審査フロー (1997年7月~2004年3月) 医薬品機構 治験相談 申請者(企業) 申請前相談 医薬品機構 GCP/GLP 適合性調査 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 申請 審査センター 審査報告 科学的審査 答申 諮問 厚生労働本省 医薬品部会 承認 新薬の承認審査フロー ( 2004年4月以降) 申請者(企業) 治験相談/申請前相談 申請 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 GCP/GLP 適合性調査 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 審査結果通知 答申 諮問 科学的審査 厚生労働本省 厚生労働本省 HeadQuarters 医薬品部会 承認 各種治療の審査と保険適応 多くの薬 バイアグラ ニコチンパッチ 予防接種 医療機器 高度先進医療 特定保健用食品 科学審査 あり あり あり あり あり (なし) (なし) 保険適応 あり なし なし なし なし 部分的 なし 現行の公認混合診療・自由診療 と科学審査 高度先進医療 特定保健用食品 高度先進医療と特定保健用食品 科学審査を欠いた診療行為 RCT 科学審査 有効性 安全性 なし なし 不明 不明 特定保健用食品 なし なし 不明 不明 高度先進医療 高度先進医療 • 高度先進医療専門家会議委員(技術担当1 6名、保険担当3名)と分野別専門委員(医 学33名、歯学6名、薬学9名)が審査担当 – 平成13年52件(承認33件、不承認等19件) – 平成14年31件(承認10件、不承認等21件) – 平成15年79件(承認53件、不承認等26件) • 2004/12現在,97種類303件,105施設 高度先進医療の例 • • • • • • 重症肥満の外科治療法 活性化自己リンパ球移入療法 焦点式高エネルギー超音波療法 腹腔鏡下前立腺摘除術 骨髄細胞移植による血管新生療法 歯周組織再生誘導法 高度先進医療 ー国家公認の人体実験ー ー混合診療の実例ー • • • • 客観的な検証なし リスク・ベネフィット一切不明 誰も責任を持たない Quality Controlの仕組みがない 高度先進医療の費用負担 トクホ(特定保健用食品) ー国家公認みのもんたー 条件付トクホ?? エビデンスがないのなら トクホは何のため? • “健康食品”を“野放し”にしない? • “健康食品産業”の育成? – 公共事業? – 天下り法人?(財)日本健康・栄養食品協会 – 医薬品落ちこぼれ救済? • FDAの真似? • 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新 開発食品保健対策室:PMDAとは全く別!! トクホに見る規制と自由診療 役所の教育と指導の問題 • • • • “健康食品”は野放しでいいのか? 取り締まる?:基準は? まともなものは育成する?:基準は? 行政にそこまでやらせる?:税金で? やらないと尻を叩かれ, しくじったとまた尻を叩かれる これでは役所は 育たない!! 官か民か • • • • • 小さな政府 コスト削減? 民間で競争? 効率がいい? サービスの質は? • • • • • 大きな政府 コスト増大? 民業圧迫? 非効率的? サービスの質は? 健康食品はどうします? 規制緩和?自由化? 適応外使用 科学審査と銭勘定の谷間で Japan MHLW approval Universal health insurance coverage 国民皆保険 USA Health insurance system A FDA approval Health insurance system B Health insurance system C 適応薬剤数 100% 90% 80% 70% 62 60% 66 76 50% 86 86 88 87 87 3 3 1 2 2 40% 病 腫 白 血 肉 息 ヘ ア リ ー 細 胞 菌 状 候 群 症 形 成 白 胞 性 人 T細 成 多 発 性 血 病 病 慢 性 白 血 病 白 血 腫 急 性 パ リ ン 悪 性 髄 13 0% 髄 異 23 骨 27 10% 骨 20% 腫 30% 適応外薬剤 適応薬剤 適応外使用が多い領域 • 抗癌剤 • 小児科 • 稀少疾病 • 臓器移植 適応外使用のエビデンスが 臨床試験なしでも認められた例 • 脳梗塞に対するアスピリン • 抗がん剤併用療法 今日のお話 • ”薬の認可”って何?:どこの誰が何を決め る? – 承認審査と薬価決定は別 – 承認審査の過程 – 混合診療は現在する • 高度先進医療,トクホ,適応外使用 • 日本の審査にまつわる虚構 – 遅れている,外国データを利用していない • 審査とリスクコミュニケーション 日本の審査にまつわる虚構 • 日本の新薬審査は時間がかかる? – どのくらい時間がかかるの? – その原因は何なの? • • • • 海外で使える新薬が日本で使えない? 外国人のデータをどんどん使えばいいのに 厚労省は誰の味方?企業?国民? 新薬の運命は誰が決める? 世 神界 の標 声 準 ? ? 企 欧 業 米 の 崇 声 拝 ? ? 新薬審査はなぜ時間がかか る? ー承認は早いほどいい?ー • 時間がかかるのか,時間をかけるのか? – 拙速を避ける必要:特に安全性の判断 • 人員配置の問題 – 臨床医と同様,過労死のリスク 公開資料より 申 請 資 料 「 概 要申 請 」 の 者が 例 作成 申請資料「概要」の例 書庫 Reviewers in FDA (CDER/CBER) N=2,735 Statistical Reviewers (98) Data for CDER/CBER, 11/2000 FDA Office of Budget Admin (218) Chemistry Reviewers (323) Computer Specialist (112) Consumer Safety Officer (339) Project Manager Pharmacist (47) Pharmacology Medical Reviewers (336) Physiology Toxicology Pharmacology/Toxicology Reviewers (~204) General Health Science (185) 日本は、PMDA全体で約250人。Medical reviewerは9人。生物統計は3人。 医 言 者 っ てが も足 り : 日な 2い 米と 3は 海外で使える夢の薬が日本で使えな い? ー欧米崇拝主義の問題点ー • “海外で使える”というのは本当か? – 米国,欧州の承認状況はどうか? • FDAは神か?→BSE,COXー2阻害薬 • 日本の臨床試験を貧しいままで放置? • 日本での承認に時間をかけるべき理由 – 臨床試験環境 – 安全性における民族差 承認審査に関する国際的調和の進展 日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH) 厚生労働省, FDA, EU/EMEA, 製薬協, PhRMA, EFPIA (obs.) WHO,カナダ, EFTA 新薬申請資料の要求事項(ガイドライン) 現在 10年前 PhRMA 製薬協 FDA 厚生労働省 FDA MHLW ICH 進展 6者による共同 のイニシアチブ European Commission 共通の要求事項 EU EFPIA 成果 50以上のハーモナイズされたガイドライン(品質、安全性、有効性、 GCP と E5ガイドラインを含む) 抗痴呆薬 世界同時 開発? バカにつける 薬は 世界共通? カロリー摂取の国内外差 お酒に強い,弱い 人種差がある お酒に 強い 弱い 全くだめ ADH 活性型 部分欠損 欠損 日本人 56 40 4 白人 100 0 0 内外差で考慮すべきこと 内因 遺伝的要因 生理的・病態要因 性 年齢 人種 臓器 薬剤代謝 肝,腎,心 エタノール代謝 疾患 CYP450 受容体感受性 細胞内伝達系 遺伝疾患 身長・体重 外因 環境要因 社会経済 教育 言語 診療実務 診断基準 治療選択 服薬コンプライアンス 規制当局の方針 臨床試験方法 臨床試験エンドポイント その例 HIV HIV 保険制度 精神科疾患 降圧剤 DOT 今日のお話 • ”薬の認可”って何?:どこの誰が何を決め る? – 承認審査と薬価決定は別 – 承認審査の過程 – 混合診療は現在する • 高度先進医療,トクホ,適応外使用 • 日本の審査にまつわる虚構 – 遅れている,外国データを利用していない • 審査とリスクコミュニケーション 薬害の歴史 1956 1961 1964 1965 1975 1989 1993 1996 ペニシリンショック死 サリドマイド スモン アンプル入り風邪薬 クロロキン網膜症 血友病HIV訴訟 ソリブジン 硬膜CJD 私達の仕事 Risk Benefit 早ければいいのか? ロフェコシキブの教訓 • Cox2阻害薬(当初は):夢の鎮痛薬 – 効果は同じで副作用がない – 世界に先駆けて米国で承認 – 日本では承認されていない • 上市後に重大な副作用が明らかに – どこかで聞いたような・・・・ • スケープゴート探し? – 米国厚生省が悪い?企業が悪い? FDAがGold Standardではない • 日本人での安全性の問題 • FDAの問題点 – COX2阻害薬の問題 – FDAは用量設定がいい加減 • 日本が優れている点 – 被害救済システム 医薬品の被害救済:日本独自の優れた仕組み 非臨床試験 リスク 治験 ベネフイット 審査 市販 最高最新の知見を駆使しても リスクは零に出来ない 適正使用 社会的リスク 社会的救済システム 患者 救済給付 拠出金 製薬メーカー等 救済基金 ・医療費 ・障害年金等 *16年4月から感染被害救済も開始 白黒では決められない薬の価値 百薬の長か中毒か? 誤ったイメージ 正しい理解 デ ジ タ ル 理 解 の 問 題 点 対立構造を解く 市民 企業 メディア 行政 まとめ:混合診療と承認審査 • • • • • • 科学審査と保険適応は別 診療のエビデンスレベル別に考える 日本の審査は医療と同じく世界水準 行政の指導,教育 学習の継続 一般市民とのコミュニケーション 提出された資料から 有効性・安全性を 評価 1品目を8-10人の審査官 チームで担当 チーム構成 医学 2-3人 薬学 3-4人 獣医学 1-2人 生物統計学 1-2人 審査における臨床医の役割 • 下記を勘案した審査 – 臨床現場の要望把握:こんな薬が要るのか? – 薬剤の臨床的位置付け:存在意義はどこか? – 臨床試験方法の妥当性:臨床現場を反映? • こういう仕事も業務 – – – – 治験相談への助言 治験届のチェック ICHなどの国際会議での討議,海外GCP査察 副作用情報のチェック 外交官としても Reviewers in FDA (CDER/CBER) N=2,735 Statistical Reviewers (98) Data for CDER/CBER, 11/2000 FDA Office of Budget Admin (218) Chemistry Reviewers (323) Computer Specialist (112) Consumer Safety Officer (339) Project Manager Pharmacist (47) Pharmacology Medical Reviewers (336) Physiology Toxicology Pharmacology/Toxicology Reviewers (~204) General Health Science (185) 日本は、PMDA全体で約250人。Medical reviewerは9人。生物統計は3人。 医療過疎地霞ヶ関を救おう!! 池田正行:[email protected]
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