舗装材料小委員会 資料 2006.6.30 改質バインダの混合温度および 締固め温度 (出典) NCHRP REPORT 459 Characterization of Modified Asphalt Binders in Superpave Mix Design 2.10 Mixing and Compaction Temperatures of Modified Binders 編集:大有建設㈱ 大河内 宝 1 主な内容 改質バインダ使用混合物の締固め特性を検討し、 混合および締固め温度条件に関する新たな提案を している。主な検討内容は以下のとおり。 1. 2. 3. 4. 5. 改質バインダの粘度特性、特にせん断速度依存性 締固め過程におけるせん断速度の評価 ゼロせん断粘度(ZSV)による条件設定と締固め特性 ZSVの低せん断粘度への置き換えと粘度測定の簡略化 新たな温度条件による混合性の評価 2 1. 改質バインダの粘度特性、特にせん断速 度依存性(Report 2.10.1~2.10.2参照) (1)粘性特性 (Report 2.10.1 参照) ① AASHTO試験法に定められた現在の混合 および締固め時の粘度条件(0.28Pa・s、 20rpm)は、大多数の改質バインダについて、 バインダを165℃以上の温度に加熱しない と適用できない。 3 PG 82 22 PG Stea m 82 PG -2 2 Distil S 82 BS led ( B) PG -2 2 R 82 - SBS ad ial ( 2 B) P L PG G 82 2 SB ine a 82 - -2 2 R (L r (B MW ) 22 SB PG PE s R (H ) (B MW ) ta 82 2 2 b ilize ) (B d( ) PE P B PG G 82 stab i ) (A) l i zed 22 82 L 22 ( Gil ime ( B) PG 82 - son it WTX ) e( 22 W PG P G 76 - G 82 ilson TX) i PG 2 2 PE 2 2 E te (B 76 PG un s MA ( ) B )★ 76 - 2 2 O tab ili 22 x E th id ize zed ( B d( yle SR ) ne ) PG PG 7 Ter po (B) 6ly 70 PG -3 4 2 2 E (B) S M PG 7 B A P 0 70 - G 70 -3 4 S Ra (B ) d ia 22 -2 2 SB l (B D E S ) PG th yle B D ib loc k n i 64 e T b loc ( er p 34 k ( B) W o S PG BS L ly (W TX) PG 64 - ine a TX)★ r (W 34 64 S PG -3 4 P BS L TX)★ o i 6 PG 4 -3 4 lyam ne ar 64 Po in es (B ) ly 3 PG 4 Ox amin (WTX ) e i d 6 PG 4 -3 4 ize d s (B) 64 Ox (SR ★ PG 3 4 A id ize ) (B) ★ d 64 - mid om (BB ) 34 i ( n A B) es PG mi PG 58 - domin (WTX 4 ) es 0S 58 (B B 4 PG 0 SB S Ra )★ d ia S PG 5 58 - 8 -4 0 Line a l (B ) r (B SB 40 PG O )★ D ib 58 xid iz loc PG 58 - -4 0 O e d (S k (B ) 40 R) xid (B E iz PG th yle e d (B )★ ne B 58 PG -3 4 Ter p ) (B ) S 58 PG BR oly (B ( 58 - 3 4 SB LMW ) 34 R ) PG PE u (H M (B ) n st W) 52 PG a 52 - -4 0 S b iliz (B) ed 40 B SB S Ra (B) d ia D ib l( loc k ( B) WT X) Viscosity at 165℃ ,20 RPM (Pa・s) 0.80 0.70 0.60 0.28Pa・s :締固めの粘度条件 (PG 82、PG 76およびPG 70グレード 19 の内17で不適合) 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 改質アスファルトの粘度測定結果 165℃, 20 rpm 4 (図‐2.53) 4.00 最小値 平均値 最大値 3.50 Viscosity Ratio (粘度比) ② これまで、バインダにつ いては、せん断速度依 存性を無視できる ニュートン流体であると 仮定している。しかし改 質バインダでは、典型 的なせん断速度依存性 を示すため、最適な混 合および締固め温度の 決定に際して考慮する 必要がある。 粘度比はせん断速度依存性の指標 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 PG 82-22 PG 7X-XX PG 64-34 PG 58-XX Binder Grade (バイ ンダー等級) 補足:せん断速度依存性は温度の関数で、 高温下でより顕著となる。 バインダ等級別の粘度比 (5 rpm / 100 rpm ),165℃ (PG 7X-XXには,PG 76-XXと PG 70-XX を含む) (図‐2.54) 5 (2)混合物の空隙率における粘度レベルと改 質の影響 (Report 2.10.2 参照) ① 比較のBoscanアスファ Superpaveジャイレトリコンパクタ使用 ルトでは、対数粘度は設 計旋回数での空隙率に 空隙率 あまり影響しないが、他 のバインダでは一次関数 となる。 ② 空隙率が、推奨された せん断速度20rpm(6.8 Boscan 1/s)での粘度レベルにお いて同一にはならない。 粘度 → 締固め時にせん断 速度依存性の影響を受 粘度(対数)と空隙率の関係(図‐2.55) ける。 6 粘度測定条件(20rpm)が不適切か?→さらに詳細な検討 ③空隙率(NdesおよびNmax)は,改質バインダのせん断速度 依存性の影響を受け、低せん断速度での粘度を指標にした 方が締固め特性の精度が向上する。 → これは、直感に反している? 次に検討。 対数粘度と空隙率(Ndes)の相関係数の一例 (表‐2.14) 最適アスファルト量 % A.C. 低アスファルト量 Low % A.C. GRVL GRVL LS LS GRVL GRVL LS LS Fine Coarse Fine Coarse Fine Coarse Fine Coarse 砂利 砂利 石灰岩 石灰岩 砂利 砂利 石灰岩 石灰岩 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 0.006 0.862 0.594 0.915 0.888 0.837 0.724 0.767 0.802 0.6 0.816 0.546 0.911 0.848 0.793 0.661 0.715 0.751 6 0.762 0.517 0.91 0.822 0.763 0.612 0.681 0.72 30 0.739 0.493 0.91 0.801 0.744 0.568 0.635 0.696 300 0.702 0.456 0.91 0.749 0.715 0.49 0.612 0.661 せん断速度 (S-1) 相 関 が 高 い 7 2. 締固め過程におけるせん断速度の評価 (Report 2.10.3参照) 8 ①Superpaveジャイレ トリーコンパクタか らの変位曲線から、 0~130回の回転数 の内で、旋回数40 回までにひずみ速 度がほとんど0に 達している。 40回 130回 ジャイレトリーコンパクタでの垂直方向の ひずみの変化(図‐2.56) 砂利の粗骨材とPG 82-22 PEs改質バインダを 使用,最適アスファルト量 9 ②締固め温度の 決定のためには, 低いせん断速 度での粘度を使 用するとよい。 旋回数の内、54回/130回 でひずみ速度は0である。 締固め時に起こる垂直方向の せん断ひずみ発生度数(図‐2.57) 砂利の粗骨材とPG 82-22 PE改質バインダを使用 10 3. ゼロせん断粘度(ZSV)による条件設定と 締固め特性 (Report 2.10.4参照) 11 ①ゼロせん断粘度(ZSV)の考えを適用すると、締固め温度も 160℃未満の温度で可能である。 (ZSV での粘度条件:3.0 Pa・sで混合,6.0Pa・sで締固め) 締固め時の 粘度条件 各種バインダごとのゼロせん断粘度 (ZSV)に達する温度(表‐2.15) 温度Temp,℃ @ 温度Temp,℃ @ η0=6 Pa・s η0=3 Pa・s Binder バインダ DSR RV DSR RV Boscan PG 70-22 114 116 126 130 PG 82-22 SBR 150 152 164 166 PG 82-22 PE Stabilized 134 139 145 151 PG 82-22 SBS ‐ 151 ‐ 165 PG 76-22 Ethylene Terpoly ‐ 140 ‐ 153 PG 82-22 SBS Radial ‐ 142 ‐ 155 PG 82-22 SBR LMW ‐ 138 ‐ 152 PG 82-22 Steam Distilled ‐ 137 ‐ 150 PG 76-22 Oxidized ‐ 128 ‐ 139 混合時の 粘度条件 12 ②3.0 Pa・sのZSVで混合し,6.0Pa・sのZSVで締固めた場合、設計 回転数で4%の目標空隙率を達成できる。 また、改質タイプや骨材タイプによる偏りも少ない。 空隙率 4%±1%以内 Ndes とNmax での空隙率 (表‐2.16) 空隙率 %Air Voids at Ndes ‐ Optimum AC % Binder GRVL Coarse GRVL Fine LS Coarse LS Fine PG 70-22 Boscan 3.6 3.8 3.7 3.7 PG 82-22 PE Stabilized 3.8 4.6 4.0 4.6 PG 82-22 SBS 3.8 4.9 3.8 4.5 PG 76-22 Ethylene Terpoly 3.7 4.8 3.8 4.4 PG 82-22 SBR 3.8 4.6 3.8 4.5 PG 70-22 Boscan 空隙率 %Air Voids at Nmax ‐ Optimum AC % GRVL GRVL LS LS Coarse Fine Coarse Fine 2.7 3.4 1.9 3.4 PG 82-22 PE Stabilized 2.9 3.7 2.1 3.8 PG 82-22 SBS 2.7 4.1 2.0 3.9 PG 76-22 Ethylene Terpoly 2.7 4.0 2.1 3.8 PG 82-22 SBR 2.8 3.9 2.2 3.8 改質バインダで の空隙率は ±0.2~0.3% 以内 13 4. ZSVの低せん断粘度への置き換えと 粘度測定の簡略化 (Report 2.10.5 ~2.10.6参照) 14 (1) ZSVの低せん断粘度への置き換え(Report 2.10.5 参 照) ① ゼロせん断粘度(ZSV)の理解は難しい。複雑な方程式を 用いて予測する必要がある。ゼロせん断速度の代わりに 低せん断速度を使用することを検討した。その結果、0.001 1/sの低せん断速度でZSV相当とすることができる。 各種せん断速度において,粘度が6.0 Pa・s ゼロせん断 となる時の締固め温度の例(表‐2.17) 速度 0 1/s Comp. ℃ 0.0001 1/s Comp. ℃ 0.001 1/s Comp. ℃ 0.01 1/s Comp. ℃ 0.1 1/s Comp. ℃ PG 70-22 Boscan 121 121 121 119 109 PG 82-22 SBR 139 139 138 133 125 PG 82-22 PE Stabilized 152 150 148 142 136 PG 82-22 SBS 145 144 144 143 135 PG 76-22 Ethylene Terpoly 140 139 137 134 124 PG 82-22 SBS Radial 142 142 141 139 130 PG 82-22 SBR LMW 135 135 134 131 125 PG 82-22 Steam Distilled 137 136 135 133 126 PG 76-22 Oxidized 128 128 127 125 118 PG 64-34 SBS (1) 110 110 110 109 100 PG 64-34 SBS (2) 115 115 115 114 105 PG 64-34 EVA (1) 114 114 114 113 103 PG 64-34 EVA (2) 123 123 123 123 114 Minimum 110 110 110 109 100 Binder Maximum Average 平均 152 150 148 143 136 130.8 130.5 129.8 127.5 119.2 0.001 1/s の低せん 断速度 同程度 となる 15 (2) 粘度測定の単純化(Report 2.10.6 参照) ① ブルックフィールド粘度計を使用する場合には、1.4±0.1Pa・s の締固め粘度と0.75±0.05Pa・sの混合粘度を目標とすること が、よい近似になり、有望な単純化である。 ZSVでの締 固め温度 6.0 Pa・s ZSVでの締固め温度とCross–Williamson モデルによる6.8 1/sでの換算粘度(表‐2.19) 温度 @ZSV= 6.0 Pa・s 換算粘度 @6.8 1/s PG 70-22 Boscan 121 1446.2 122 PG 82-22 SBR 139 1349.6 142 PG 82-22 PE Stabilized 152 1366.5 152 PG 82-22 SBS 145 1464.8 146 PG 76-22 Ethylene Terpoly 140 1317.1 140 PG 82-22 SBS Radial 142 1425.2 144 PG 82-22 SBR LMW 135 1376.6 132 PG 82-22 Steam Distilled 137 1394.1 136 PG 76-22 Oxidized 128 1436.2 127 PG 64-34 SBS (1) 110 1328.1 * PG 64-34 SBS (2) 115 1396.8 * PG 64-34 EVA (1) 114 1403.6 * PG 64-34 EVA (2) 123 1283.5 * Minimum 110 1283.5 122 Maximum 152 1464.8 152 130.8 1383.7 137.9 Binder Average 温度 @粘度6.8 1/s =1.4Pa・s 換算粘度 @6.8 1/s 小差(最小値 の13%の範 囲内) 16 ②新しい提案の方法によれば、これまでの条件から決ま る温度と比較して約40℃の縮小となる。 混合および締固め温度について,現在と提 案された粘度レベルの比較(図‐2.58 ) × 測定は、 Brookfield @6.8 1/s 混合温度 (現) @0.17Pa・s 締固め温度(現) @0.28Pa・s 混合温度(新) @0.75Pa・s 締固め温度(新) @1.40Pa・s 17 5. 新たな温度条件による混合性の評価 (Report 2.10.7参照) 18 様々な骨材タイプでの被覆状況にどのように影響するかを評 価した結果、高い被覆率を示すことを確認した。 アスファルト種別ごとの被覆率 ZSVは3.0 Pa・s、ベーカリーお よびバケット・ミキサーを使用、混合時間は3分(表‐2.22) アスファルト 混合温度 (℃) 種別 (Source) 砂利 PG 70-22 Boscan 130 PG 82-22 SBS Linear 160 PG 76-22 Ethylene Terpoly 153 PG 82-22 PE Stabilized 151 PG 82-22 SBR HMW 160 石灰岩 砂利 石灰岩 砂利 石灰岩 砂利 石灰岩 砂利 石灰岩 混合温度は130 ~160℃の範囲 粒度 Gradation 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 粗粒度 細粒度 被覆率 ベーカリー・ミキサー バケット・ミキサー 98.9% 98.1% 99.1% 94.4% 96.0% 94.1% 96.2% 90.4% 98.6% 95.4% 97.8% 94.4% 98.3% 97.9% 92.1% 85.0% 97.8% 96.4% 96.0% 95.2% 99.0% 99.0% 91.9% 85.1% 97.6% 96.6% 98.8% 93.4% 97.5% 96.1% 98.0% 94.8% 98.2% 95.7% 97.4% 95.8% 98.8% 97.8% 96.7% 94.1% 被覆率は大多数 が95%以上 19 まとめ • 現在の混合および締固め温度条件は、改質バイン ダでは165℃を超える高温となる。 • 改質バインダは明らかに非ニュートン的挙動を示す。 • ジャイレトリーコンパクタでの締固めは、低いせん断 粘度によってコントロールされる。 • 所定のZSVの適用で、目標空隙率を達成でき、改質 タイプや骨材タイプによる偏りも少ない。 • ZSV の代わりに、0.001 1/sの低せん断速度でZSV 相当とすることができる。 • ブルックフィールド粘度計による場合は、締固めは 1.4±0.1Pa・s、混合は0.75±0.05Pa・sの粘度を目標 とするとよい。 20 参考資料 21 CONTENTS 2.10 改質バインダの混合温度および締固め温度 2.10.1 粘度特性, 75 2.10.2 混合物の空隙率における粘度レベルと改質の影 響, 75 2.10.3 締固め過程でのせん断速度の評価, 78 2.10.4 ゼロせん断粘度(ZSV)の目標値の選定, 79 2.10.5 ZSVの低せん断粘度への置換え, 79 2.10.6 粘度測定の単純化, 80 2.10.7 混合温度の評価, 82 2.10.8 混合および締固めの研究結果の概要, 84 22 新提案された粘度レベル 現在 新提案 @ZSV Brookfield @6.8 1/s Brookfield @6.8 1/s 締固め時の粘度 6.0 Pa・s 1.4Pa・s 0.28Pa・s 混合時の粘度 3.0 Pa・s 0.75Pa・s 0.17Pa・s ゼロせん断粘度(ZSV):著者らは、参考文献にそのモデル 等を説明。 CEN(Comite Europeen de Normalisation)では、DSRを 用いて測定され、せん断速度が0の時の粘度と定義さ れる。→ 「わだち掘れと性能保証について」参照。 23
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