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日本語を考える
Introduction to Japanese
Linguistics
語彙・形態・文法 (2)
日本語の語彙


語彙 (vocabulary): ある言語における、語/形態素の集
合
日本語にある語の数は?




日本語に関する調査: 9/12/15 歳時点で
10,000/26,000/40,000 語程度
1966 年の新聞に生起した語の数 (異なり語数): 38,395
日本語能力試験 1 級: 10,000+
英語は?



英語に関する調査: 高校卒業者の平均 60,000 語程度
英語能力検定試験1級: 10,000~15,000 語
Oxford English Dictionary: ~600,000 語
日本語の語彙

現代の日本語において、新語は、多くの場合:
名詞 (ex. 少子化, インターネット)
 サ変動詞 (ex. 初期化する, クリックする)
 形容動詞 (ex. 人道的な, ドライな)
の形をとる。

語種

語は、その起源に基づいて以下のように分類で
きる:




和語 (わご); 固有語 (こゆうご) native words
漢語 (かんご) Sino-Japanese words
洋語 (ようご); 外来語 (がいらいご) foreign words
漢語は外来語の一種だが、外来語として意識される
ことが少ない。
語種

混種語 (こんしゅご; hybrid words): 複合語の一
種:






和+漢: 大道具, みとめ印
漢+和: 鉛筆けずり, 台所
和+洋: 生ゴム, 板チョコ
洋+和: ペン先, ガラス窓
漢+洋: 海外ニュース, 石油ストーブ
洋+漢: ビール瓶, タオル地
語種

和製漢語




日本で造語された、あるいは新しい意味を割り当てら
れた漢語
-性, -制, -的 (類似性, 共和制, 文化的)
火事; 進化, 階級, 労働, 生産, 革命, 自由, 経済, 哲
学
和製漢語のうちの多くは、他の漢字圏地域で (逆) 借
用されている。
語種

和製洋語 (和製英語)



アフターサービス, オートバイ, ガードマン, ガソリンスタンド,
キャッチボール, ゲームセンター, コインランドリー, コンセント,
サラリーマン, テレビゲーム, トレーナー (sweat shirt), ナイター,
バスジャック, ハンドル (steering wheel), ペアルック, フリー
ター, フロントガラス, マイホーム, マグカップ, モーニングコール,
ライブハウス, ヤンキー (punk, delinquent)
デッドボール, フォアボール, ランニングホームラン
アニメ, テクノ
語種

1966 年に行われた雑誌に基づく調査 (異なり語
数):





和語: 36.7%
漢語: 47.5%
洋語: 9.8%
混種語: 6.0%
漢語の比率は、話し言葉では低くなる (13 ~
40% (?))
歴史的変遷
和語のみ
5 世紀以降: 漢語の流入
16-17 世紀: ポルトガル語、オランダ語、スペイ
ン語からの借用
1.
2.
3.



P: カステラ, パン, ビスケット, ボタン(釦) , タバコ (煙
草) , カルタ (歌留多)
D: コップ, ゴム, ピストル, ラッパ (喇叭), ペンキ,
ビール, コック
S: メリヤス, ポンチョ, カルデラ
歴史的変遷
19 世紀以降: 英語, ドイツ語, フランス語などか
らの借用
4.


アルバイト, ゼミ(ナール), テーマ, エネルギー, ゲレ
ンデ, カルテ, レントゲン, カプセル, デマ(ゴギー)
アンケート, パフェ, ルー, ピーマン, バカンス, ズボン,
シック, コンクール, プレタポルテ
語種と語感 (ニュアンス)

和語 < 漢語 < 洋語



いなか, 地方, ローカル
やどや, 旅館, ホテル
パン vs. ブレッド
音読み・訓読み


音読み: 漢語を表記するために用いられる漢字と結び
付けられた発音
訓読み: 和語を表記するために用いられる漢字と結び
付けられた発音



山: サン・やま
扱: ソウ・あつか(う)
胃: イ
音読み

呉音 (ごおん) (4-7c): 中国南部の発音を反映していると
言われる; 朝鮮半島を経由して日本に入る.


漢音 (かんおん) (8-9c): 当時の首都である長安地域の発
音を反映する; 使節や留学生の手によって日本に入る.




文書 (モンジョ)・変化 (ヘンゲ) ・ 利益 (リヤク)
文書 (ブンショ)・変化 (ヘンカ)・利益 (リエキ)
8 世紀以後、漢音が正当な発音として奨励されるようにな
るが、仏教関係の用語や古い借用語には、呉音も残る。
呉音 > 漢音の変化は、明治期まで漸次的に進む。
明治期以降の “新漢語” はほとんどが漢音。
音読み
(呉音 > 漢音) (より一般的)
 女性 (ニョショウ > ジョセイ)
 日没 (ニチモツ > ニチボツ)
 有罪 (ウザイ > ユウザイ)
 魅力 (ミリキ > ミリョク)
(漢音 > 呉音)
 温和 (オンカ > オンワ)
 人気 (ジンキ > ニンキ)
 音信 (インシン >オンシン)
 主客 (シュカク > シュキャク)
音読み

唐音 とうおん (唐宋音 とうそうおん) (12-16c):
比較的新しい借用語 (禅仏教関係の語を含む)
と結び付けられた発音



蒲団 (フトン), 饅頭 (マンジュウ), 椅子 (イス) , 豆腐
(トウフ), 饂飩 (ウドン), 喫茶 (キッサ), 明 (ミン)
看経 (カンキン), 行者 (アンジャ), 払子 (ホッス)
慣用音
茶 チャ (呉: ダ, 漢: タ, 唐: サ)
 洗 セン (< セイ)
etc.

訓読み
「訓読み」 は、日本以外の漢字圏地域では (ほとんど)
見られない







あつい
はやい
あかい
おす
き
しお
ふね
暑い, 熱い
早い, 速い
赤い, 紅い
押す, 推す
木, 樹
塩, 潮
舟, 船
訓読み






暑い
学ぶ
hot い (あつい)
study ぶ (まなぶ)
He 学s physics.
It’s too 暑 here.
訓読み

熟字訓









明日 今日 一日 梅雨 田舎 小豆 息子 大人
明日 ミョウニチ vs. あす, あした
今日 コンニチ vs. きょう
一日 イチニチ vs. ついたち
梅雨 バイウ vs. つゆ
田舎 いなか
小豆 あずき
息子 むすこ
大人 おとな
重箱読み & 湯桶読み

重箱読み & 湯桶読み


重箱 (ジュウばこ)
湯桶 (ゆトウ)
重箱読み & 湯桶読み


重箱読み: 台所 (だいどころ), 肉屋 (にくや), 役
場 (やくば), 両替 (りょうがえ), 毎朝 (まいあさ),
etc.
湯桶読み: 消印 (けしいん), 夏服 (なつふく), 荷
物 (にもつ), 見本 (みほん), 身分 (みぶん), etc.
和製漢字

和製漢字, 国字: 音読みの無いものが多い。
 鱈 たら ‘cod’, 鰯 いわし ‘sardine’
 腺 セン ‘gland’

常用漢字に含まれる和製漢字 (例):
 匁 もんめ
 込 こ(む)
 峠 とうげ
 畑 はたけ
 塀 へい
 搾 サク/しぼ(る)
 働 ドウ/はたら(く)
 枠 わく
熟語

ほとんどの漢語は、熟語 (複合語) としてのみ、用いら
れる。



自分, 読書, 登山, 不正
例外 (一部): 愛 (あい), 印 (いん), 運 (うん), 円 (えん), 金 (き
ん), 銀 (ぎん), 雁 (がん), 癌 (がん), 客 (きゃく), 会 (かい), 剣
(けん), 碁 (ご), 象 (ぞう), 詩 (し), 性 (せい), 茶 (ちゃ), 点 (て
ん), 蝶 (ちょう), 銅 (どう), 毒 (どく), 得 (とく), 肉 (にく), 法 (ほう),
番 (ばん), 服 (ふく), 文 (ぶん), 本 (ほん), 門 (もん), 椀 (わん)
つまり、読 (どく)、山 (さん)、などは …
拘束語基の一種とみなすことができる。
熟語




初版本 (しょはんぼん), 稀覯本 (きこうぼん); 古
本 (ふるほん), 写本 (しゃほん)
ご本
ごね得 (ごねどく)
お得 (おとく)
熟語
漢語熟語の意味に基づく分類:
 主述: A = 主語, B = 述語
 年長, 地震, 日没
 修飾: A が B を修飾する
 近所, 最古, 南極
 並列: A と B は並列の関係にある
 天地, 大小, 売買
 道路, 巨大, 選択
 補足: A = 述語, B = 主語/目的語
 読書, 失望, 求人
 絶命, 落雷, 立春
丁寧化接辞: お/ご


接頭辞: お & ご: 異形態?
お + 和語, *ご + 漢語:



*お + 漢語, ご + 漢語:





*お招待, ご招待
*お旅行, ご旅行
*お+ 洋語, *ご + 洋語


お招き, *ご招 き
おすし, *ごすし
*おパン, *ごパン
*おフィアンセ, ??ごフィアンセ
お食事, お電話, お約束 (ご食事, ご電話, ご約束)
おビール, おソース, おタバコ
丁寧化接辞: お/ご



お招き, ご招待
お招き, 御招待
御招き, 御招待
丁寧化接辞: お/ご
(1)


(2)


尊敬化接周辞の一部 (subject honorification)
お書きになる (書く; cf. 書かれる)
ご利用になる (利用する; cf. 利用される)
謙譲化接周辞の一部 (object honorification)
お招きする (招く)
ご招待する (招待する)




書かれる - お書きになる - φ
?食べられる - ?お食べになる - 召(め)し上がる
?行かれる - ??お行きになる - いらっしゃる
?*知っていられる - ??お知りになっていられる ご存知(ぞんじ)だ
(3) 尊敬化接頭辞
1. 行為者

2.
所有者

3.
お帰り, お手紙; ご結婚, ご挨拶
おからだ, お車; ご家族, ご自宅
行為の受け手

お手紙, お役(に立つ); ご挨拶, ご迷惑(をかける)
(4) 丁寧化接辞 (美化語)
1.
「お/ご」 無しでは、ぞんざいに聞こえるもの

2.
お祝い, お釣り, お茶, ご祝儀
一般に女性は 「お/ご」 をつけ、男性はつける場合もつ
けない場合もあるもの

お金, お米, お刺身, おすし, お風呂, おしり
3.
女性は 「お/ご」 をつける場合もつけない場合
もあり、男性はつけないことが多いもの

お花, お水, おしょうゆ, お箸, お財布, おなべ
男: 「先生、お財布を落とされましたよ」 (尊敬語)
男: ??「あっ、お財布が落ちてる」 (丁寧語)
女: 「先生、お財布を落とされましたよ」 (尊敬語)
女: 「あっ、お財布が落ちてる」 (丁寧語)
4.
男性も女性も一般的に 「お/ご」 をつけない

5.
おソース, お受験, おざる
「お/ご」 をつけることが不可能

*おラーメン, *おパン, *お道
(5) 化石化した接頭辞
1. 対応する「お/ご」 のつかない語が存在しない:

2.
お辞儀, おしゃま, おやつ, おむつ, ご飯
対応する「お/ご」 のつかない語が存在する:

おしゃれ, おかわり, おなか, お目玉, おたま, ご機嫌