「なんてん」銀河面サーベイによる渦状腕中の 分子雲の速度分散とSpitzerバブルとの比較 名古屋大学 天体物理学研究室(A研) 中島大智 早川貴敬、鳥居和史、山本宏昭、奥田武志、福井康雄(名大理)、水野亮(名大STE) 水野範和(国立天文台)、大西利和、小川英夫(大阪府大) Spitzer バブル • GLIMPSEのデータから同定された∼600個のバブル (Churchwell+06,07) • 大質量星・星団が付随 S7(RCW120) S57 S137 Green:8µm Red:24µm バブルに付随する分子雲 • COの観測によりSpitzerバブル52個のサンプル中30個 について速度の異なる2つの分子雲の付随を確認 (Fukui+ prep.) • 衝突確率を仮定するとバブルの個数密度を衝突により 説明できる →バブルは衝突により形成されたと提唱 • 大質量星形成率を考えると衝突が大質量星形成の主要 なモードになりうる 分子雲衝突による大質量星形成 • 分子雲衝突による大質量星、星団形成(Fukui+ prep.) • 速度、密度差を持つ分子雲同士が衝突 →圧縮、ガスの供給がスムーズに行われる →大質量星、星団形成のトリガー 分子雲同士の衝突による圧縮のシュミレーション結果 (Habe & Ohta 1992) A 360 350 B A 330 340 B 320 310 300 ©Jet Propulsion Labaratory modified by Nakashima • 衝突確率=個数密度×衝突断面積×速度 各領域での特徴を明らかにする なんてん銀河面サーベイ (NANTEN Galactic Plane Survey:NGPS) • 望遠鏡 『なんてん』4m電波望遠鏡 • HPBW 2.7’@115GHz • 観測輝線 12CO(J=1-0) 115.27GHz • 観測領域 L=200-60[deg],|B|<10[deg]+α • 観測グリッド 4[arcmin] (|b|<5[deg]) • ノイズレベル ~0.2K Method • 渦状腕に付随する分子雲をCPROPS (Rosolowsky&Leroy 2006)を用いて同定、速度分散 個数・質量密度を調べた。 • 渦状腕の分布はVallee(1995,2008)のモデルに従った。 • 各領域の距離はkinematic distanceを採用。分解能を合 わせて同定を行う。 • 速度分散に大きな影響を与えると考えられるSuper shell およびtangrntial pointが渦状腕の構造中に存在する領 域は対象から除外する ●Carina arm ●Crux arm (Vallee 2008) ●Norma-Cygnus arm ●Perseus arm Color:HI(LAB survey) Contour:12CO(J=1-0) Region B d=8-10[kpc] Region A Super shell (Matsunaga et al. 2001) d=1.5-2[kpc] d=5[kpc] Region D Region C ●Crux arm ●Carina arm d=3-5[kpc] d=1-2[kpc] ●Perseus arm Results & Discussion 同定された分子雲 603個の分子雲を同定 B A 197 B 174 C 99 D 133 A D C 領域ごと銀径に対する速度 変化を3次でfittingすること で渦状腕の速度分布を求め る。 ー 渦状腕の速度分布 2 0 -2 300 Galactic Longitude[deg] 295 Galactic Latitude[deg] C 0<Vlsr[km/s]<40 d=2[kpc] 2 0 -2 240 Galactic Longitude[deg] 235 B Galactic Latitude[deg] -60<Vlsr[km/s]<-13 d=2[kpc] D Galactic Latitude[deg] Galactic Latitude[deg] B 6<Vlsr[km/s]<40 d=8[kpc] 2 0 -2 295 Galactic Longitude[deg] 290 20<Vlsr[km/s]<35 d=3[kpc] 2 0 -2 215 Galactic Longitude[deg] 210 分子雲の物理量 質量 半径 A B A B C D C D バブルに付随する分子雲の物理量 距離 B C D A 上段:Fukui+ prep. 下段:This Work 半径 質量 分子雲の速度分散 C,Dに対しA,Bは有意に速度分散が大きい。 𝜎𝑉 =10[km/s] 𝜎𝑉 =7.5[km/s] 𝜎𝑉 =3.6[km/s] 𝜎𝑉 =5.0[km/s] 個数・質量密度の推定 • 渦状腕の厚さ(銀河円盤に垂直方向)と奥行きが同じと仮定。 • 厚さにはHIの積分(速度・銀径)強度を用い、ピークのexp(-1) を採用した。 • 各領域内で奥行きは平均し一定とした。 A 315<L[deg]<320 -58<Vlsr[km/s]<-37 Region 奥行き[pc] A 400 B 200 C 400 D 500 r>5[pc],M>4600M◉の分子雲のみを以下では考慮する 質量 半径 A B A B C D C D 個数・質量密度 個数密度[kpc-3] 質量密度[M◉/kpc3] r>5pc,M>4600M◉の分子雲のみ 個数・質量密度ともにC,Dに対してA,Bでは有意に大きい 衝突確率の推定 • Region A,Bでは分子雲の速度分散、個数・質量密度 がC,Dに比べ大きい。 • 衝突確率もC,Dに対し高くなることが予想される。 衝突確率 平均自由時間 𝑷~𝒏𝝈𝑽 𝒕𝐟𝐫𝐞𝐞 = 𝟏 𝑷 𝑛:個数密度 𝜎:衝突断面積 𝑉:速度分散 • 分子雲の衝突断面積はサイズの大きい分子雲の大き さに依存する →衝突断面積𝜎はr>15[pc]である分子雲の断面積の 平均値を採用する。 • 個数密度n、速度分散Vは先に求めた値を採用。 各パラメーターとr>15[pc]の分子雲の平均自由時間𝑡free Region n [10-7 pc-3] 𝝈 [103 pc2] V [km/s] tfree [Myr] A 30 3 20 5 B 50 1 15 8 C 8 2 7.2 100 D 2 2 10 200 分子雲の寿命:~107yr A,Bでは分子雲が一生のうち1回程度衝突が起こる。 バブルの多い領域(A,B)での衝突確率が20~40倍高い →衝突による構造はこの領域でのみ多くなる 銀河外縁部では観測されるバブルが少ないと予測 今後の展望 • 第1、第2象限の渦状腕が判別できる領域に対し同様 の解析を行い、サンプル数を増やす。 • 第4象限の渦状腕の判別ができない領域に関して 13COのデータを用い、同定を行う。 • さらに広い領域でバブルの同定がなされた場合、バ ブルが外縁部で少なくなるという予測の検証を行う。 summary • 第4象限の領域では渦状腕に付随する分子雲の速 度分散が大きくなる。 • 分子雲の個数、質量密度も同様の傾向がみられる。 →分子雲衝突の確率が他の領域より高い。 衝突確率の低い銀河系外縁部ではSpitzer バブルが少なくなることが予測される。
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