M51: パターン速度と星形成時間 東京大学理学系研究科 天文センター M2 江草 芙実 Spiral Galaxies きれいなspiral模様を作るには? 差動回転 →短時間(数回転程度)で形が崩れてしまう× 密度波理論:物質波ではなく、物質の粗 密が波となって伝わり、定常な形(パターン)を 作る。 パターン速度:ΩP [km/s/kpc] パターンの回転する角速度 Pattern Speed パターン速度がわかると? 1. 2. 銀河面でのcorotationやLindblad resonanceの位置が計算できる。 観測結果と比較する事で、resonanceにお いてどのような現象が起きているかを知る事 ができる。 しかし、パターン速度は実際に物質が運動 している速さではないので、観測から直接 は求められない。 Previous Method Tremaine-Weinberg method Tremaine & Weinberg 1984 連続の式を使い、パターン速度を求める。 Canzian test Canzian 1993 速度場の非軸対称成分を使い、corotationの位置を 求める。 その他 Armの形状からresonanceを決める。 星形成効率のarm/interarm比からcorotationを決め る。 Simulationとの比較を行う。 Arm-offset Method (0) 渦巻腕に付随する星形成領域と分子雲 の位置のずれを用いる。 仮定 純粋な円運動 剛体のパターン (ΩP=定数) Arm-offset Method (1) 分子雲の腕 VG×Δt VP×Δt t=0 星形成 領域 t=Δt VG=ガスの回転速度 [km/s] VP=パターンの回転速度 [km/s] Δt=星形成のタイムスケール [s] 観測されるずれ d=VG×Δt-VP×Δt [km] Arm-offset Method (2) ずれを角度で表すと、 θ=(ΩG-ΩP)×Δt Δt:一定と仮定すれば、 観測量:θ・ΩG 定数:Δt・ΩP →θはΩGの一次関数 →fittingによって、Δtと ΩPを同時に求められる。 Δt ΩP Arm-offset Method (3) 特徴 仮定がシンプルである。 モデルによらない。 パターン速度と星形成時間を同時に決定でき る。 誤差の評価が行える。 M51 (NGC5194) 分子雲データ:CO (Helfer et al. 2003) 星形成領域データ:DSSのB-band CO on DSS B-band パラメータ 距離 9.6 Mpc P.A.=22 deg inc.=20 deg Phase diagram θ-R relation Rotation Curve Sofue et al. (1999)より、 θ-ΩG relation Results パターン速度 ΩP=26+6-4 km/s/kpc 星形成時間 ΔtSF=4.1±0.6×106 年 Previous Results M51のパターン速度 ΩP= 38 Elmegreen et al. (1989) Armの形状・amplitudeによるcorotationの決定 ΩP= 40 Vogel et al. (1993) 速度場の非軸対称成分によるcorotationの決定 ΩP= 16 Oey et al. (2003) HII regionのモデル計算との比較によるcorotationの決定 ΩP= 38±7 Zimmer et al. (2004) COに対してTremaine-Weinberg法を適用 ΩP= 26+6-4 This work Corotation Radius This work Elmegreen et al. (1989) Other Galaxies: NGC4254 NMAによるCOとHα画像 にarm-offset法を適用 結果 ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc Δt=4.8±1.2 106年 Other Galaxies: NGC4321 BIMA SONGによるCOと dssのBバンドデータに arm-offset法を適用 結果 ΩP=37 +7 -6 km/s/kpc Δt=7.8±1.2 106年 Summary Arm-offset Method 3つの渦巻銀河について、それぞれのパター ン速度を精度良く決定できた。 星形成時間(分子雲から星ができてHαで光る までの時間)は、4~8×106年。 ↑ 今まで桁の見積もりしかされていなかった、 星形成時間を初めて観測的に決定した。 ALMAに向けて Arm-offset method Offsetの誤差の最大の原因は、分子雲データ(CO) の分解能(約6秒) ↓ ALMAにより高分解能が達成されれば、更に精度良く パターン速度・星形成時間を決定できる。 M51で分解能が1/10になったとすると、 ΩP=26+2-1 km/s/kpc ΔtSF=4.09±0.06×106 年 高分解能→データ点の増加 「パターン速度と星形成時間一定」の仮定について更 なる議論が可能に。 END これまでの結果 銀河名 パターン速度 方法 Kent (1987) NGC936 104 T-W Cepa & Beckman (1990) NGC3992 (M109) NGC628 (M74) 32 56 SFEのarminterarm比 60 ± 14 T-W Merrifield & Kuijken (1995) NGC936 Sempere et al. (1995) NGC4321 (M100) 20 Canzian + s Canzian et al. (1997) NGC4321 (M100) 31 Canzian Wada et al. (1998) NGC4321 (M100) 65 simulation Kranz et al. (2001) NGC4254 (M99) 20 simulation Debattista et al. (2002) Milky Way 59 ± 5 T-W 結果 NGC4321 Δt=9.7±1.9 106年 ΩP=39 +24 -16 km/s/kpc NGC5194 Δt=3.9±0.9 106年 ΩP=23 +35 -22 km/s/kpc NGC4254 Δt=4.8±1.2 106年 ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc まとめ θ‐ΩG relation 1. 2. 以前のNGC4254に加え、今回の2銀河(N GC4321とNGC5194)でも、直線状の分 布を確認できた。 Fittingにより、それぞれの銀河においてΔtと ΩPの値を同時に決定できた。 ↓ 結果として妥当な値が得られたので、 この方法の有用性が示された。 今後の課題 1. ずれの求め方 2. 客観的で、自動的に計算できる手法を確立する。 誤差の評価 ずれと回転速度の誤差を正しく評価したうえで、 fittingを行う。 ↓ 結果として得られるΔt、ΩPの値の 信頼性を高める。
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