再分配政策 公共経済学(財政学A ) 第7回 畑農鋭矢 1 再分配とは? 市場経済による資源配分 ┏━━━┻━━━┓ ↓ ↓ 所得の不平等 リスクの存在 ↓ ↓ 所得・消費・効用の分布が変わる。 貧しい人々 不幸な人々 ┗━━━┳━━━┛ ↓ 再分配による資源配分の変更 契約曲線と効用の分布 y 財 OB E4 E3 E2 E1 OA x財 再分配政策の手段 • 累進税 累進的所得税の根拠 • 社会保障支出 生活保護、社会福祉、社会保険、失業対策など • 世代間の再分配 公的年金、医療・介護保険などの社会保険 • 地域間の再分配 地方交付税、補助金など 累進税 • 累進(課)税:所得に応じて税率が高くなる制度 • より単純な累進税 T:税収、Y:所得、t:税率(一定) ①税額控除 A:税額控除(一定) T=tY-A 平均税率 T/Y=t-A/Y(累進的) ②所得控除 D:所得控除(一定) T=t(Y-D) 平均税率 T/Y=t-tD/Y(累進的) 再分配政策の基準 • 数値例 高所得者Hの所得50、低所得者Lの所得10 効用関数の数値例 所得 10 20 30 40 50 効用 10 40 60 75 85 限界効用 30 20 15 10 • ベンサム基準とロールズ基準 「最大多数の最大幸福」:社会厚生=Hの効用+Lの効用 or 「最貧者の最大幸福」:社会厚生=効用の最小値 再分配政策の帰結 再分配による社会厚生の変化 再分配 による 移転額 所得 H L H L ベンサム ロールズ 0 50 10 85 10 95 10 10 40 10 20 75 40 115 40 20 30 60 60 120 60 0 20 効用 30 社会厚生 平等政策の問題点 • 平均所得30以上は100%課税される。 ⇒平均所得以上の労働供給は阻害される。 ⇒高所得者Hは30しか働かない。 ⇒再分配の資金が不足する。 • 高い税率⇒格差は縮小 ⇒効率性低下 ⇒効率性と再分配のトレードオフ 契約曲線と効用の分布(再) y 財 OB E4 E3 E2 E1 OA x財 Bの効用 効用可能性曲線 契約曲線上の動き OA⇒OB AとBの効用の選択可能範囲は? 右下がり 原点に対して凹 限界効用逓減により OA 45° O OB Aの効用 社会厚生関数と社会的無差別曲線 Hの効用 社会厚生関数とは? W=W(u1,u2,…uN) 社会厚生関数の特徴? ●不平等回避 ⇒無差別曲線は 原点に対して凸 ●パレート原理 ●匿名性 u# W2 u* W1 45° O u* u# Lの効用 ベンサム型とロールズ型 Hの効用 ベンサム型 不平等回避なし ロールズ型 低効用の人に関心 WR W2 45° O WB Lの効用 Hの効用 最適な効用の分布 いずれのケースでも 平等(E)が最適 E 45° O Lの効用 再分配政策の弊害 • 労働供給への効果 失業保険⇒就労意欲を阻害 社会保障負担⇒勤労意欲を阻害 • 資本蓄積への効果 社会保障⇒私的貯蓄の減少⇒資本蓄積を阻害 • 医療・介護保険 ⇒病気や要介護のリスクに対する備えが減退 パレート効率性を阻害? Hの効用 再分配政策の費用 再分配による死荷重損失 E→M E M F Lに有利な再分配:HはLと同 じ所得しか稼がない(uH>uL) Hに有利な再分配(uH>uL) M→F(45°線を越えない) 本来の効用可能性曲線 45° O Lの効用 Hの効用 次善(セカンド・ベスト)解 ベンサム型(J)はHに有利 ロールズ型(M)はLに有利 Qは中間 E J Q M F 45° O Lの効用 自発的な再分配 • 利他主義(altruism) 低所得者の消費水準を憂慮⇒寄付行為 他人による救済でもOK 外部性により寄付行為は過小供給に • 与える喜び(joy of giving) 自分自身の寄付行為が重要 過小供給の程度を緩和 保険と効用 効用 U(YH) D U Y U 0.5YH 0.5YL * 0.5U YH 0.5U YL E U(YL) YL Y * 0.5YH 0.5YL YH 所得 保険としての再分配制度 • これから生まれる人の状態に関するリスク ⇒民間保険では対処できない • 無知のベール 誕生後の状態が確率的にしか分からない ⇒再分配制度が保険になる ⇒再分配制度による効用の増大(パレート改善) • 再分配制度の維持 誕生後→良好な状態の人ほど制度から離脱 ⇒政府による再分配制度の強制が必要
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