企業間情報の 電子化による効果算定

企業間情報の
電子化による効果算定
大成研究室
4498085 舩木 里恵
発表の流れ
問題
情報化の投資効果がわからない
中小企業の情報化が遅れている
研究目的
情報化投資効果を明確にする
解決策
情報化の効果を業務費用の削減度合
いで算定する方法を提案する
事例研究
「中小製造業N社の情報化の費用対効
果算定」
まとめ
研究の成果
大企業と中小企業の情報化における格差
親会社
(大企業)
業務の情報化を要求
情報化投資を躊躇
協力会社
(中小企業)
中小企業が情報化投資を阻むのは情報化投
資効果が不明確だからである。
情報化投資効果が不明確なのは、投資効果
算定が困難なため費用対効果がわからない
からである。
情報化投資効果算定が困難な原因
1. 経費・管理部門が情報システムにかかわ
る償却費まで含めた経費を把握していな
い場合が多い
2.情報化後にコンピュータに関する業務費
用が拡散して発生するため抽出が困難
である
3. 多数の情報システムが同時に稼動して
いる場合が多く,導入ごとの関係経費の
配賦が困難である
情報化投資効果算定の先行研究
研究テーマ
研究者
内容
今後の課題
情報化投資の費 木暮
用対効果に関す (2000)
る考察
経営者が費用 実際の情報化投資の費用
対効果の認識 対効果算定
すべき事項が
まとめてある
情報化投資の事 張
前評価に関する (2001)
研究
企業内の情報 情報化投資後の効果評価
化投資プロ
ジェクトによる
事前評価モデ
ルを構築した
情報技術と付加
価値生産性
- 成長会計を用
いた情報装備の
効果に関する定
量分析ー
情報化投資の 情報化によって増減した業
定量的評価を 務時間の評価
財務会計の観
点で観察した
廣松, 栗田,
小林, 大平,
坪根
(2000)
情報化投資効果算定方法の提案
現業務を細分化し業務費用を算定
業務費用がかかる業務抽出
情報化対象業務の選択
情報システムの開発・導入
導入効果の算定
情報システムの改善
業務の細分化方法
ABC手法を参考にした。
ABC(Activity Based Costing)
Johnson&Kaplan[1987]
現場社員にインタビューを行い,業務をプロセスとアクティビ
ティに分解し,コストを分析する方法
業務
納期確認
プロセス
納期商談
アクティビティー
親会社から概算数量表を受け取る
親会社と納期商談をする
資材会社用概算数量表の作成を指示
概算数量表原本をコピーする
資材会社用に概算数量表を作成する
資材会社に概算数量表をFAXする
アクティビ
ティの集合
体
人件費
時間
(分) 担当者
5
経営者
20
経営者
15
経営者
8 事務・経理
40 事務・経理
10 事務・経理
アクティビティ一覧表
作業者の作
業単位
設備費
分給 金額
使用機 金額
146 729.15
FAX
49.3
146 2916.6
電話
0
146 2187.5
31.3
250 コピー機 98.6
31.3
1250
31.3 312.5
FAX 98.6
業務費用の算定方法
費用項目
計算方法
計算式
人件費
福利厚生費,残業費を含めた担当社 担当社員の月給(円)÷月間労働時間(分)×
員の給料を分給換算して計算した。 アクティビティ時間(分)
設備費
設備の償却費,リース費をアク
ティビティに配賦した。
情報伝達
費
リース費
月リース費(円)÷月稼動時間
(分)÷月使用枚数×使用した紙
の枚数
償却費
購入価格÷耐用年数÷年間稼
動日数÷ 一日稼働時間(分)×
アクティビティ時間(分)
企業間で業務情報を授受するアク
通信費
ティビティにかかった費用を計算した。
通信費(円/分)×アクティビ
ティ時間(分)
郵送費
切手代,宅配費等
1枚当たりのトナー費(円)×
アクティビティに消費する紙
の枚数
消耗品費
設備使用にしようするトナー代をアク
ティビティに配賦した。
トナー
用紙費
アクティビティで消費した紙の費用を
枚数×紙の単価で計算した。
1枚当たりの紙の費用×消費した紙の枚数
情報化投資費用の算定方法
情報化投資費用
算出方法
計算式
作業者のコンピュータ 業務にかかる時間と人件 情報化前の各プロセスの人
学習にかかる人件費 費の削減度合いで測定す 件費ー情報化後の各プロセ
る
スの人件費
コンピュータ設備の償 設備費として業務費用に 1業務あたりの設備費(購入価格
÷年間受注回数÷償却年数)×
含めて配賦する(定率法)
却費
アクティビティ時間÷設備を使
用するアクティビティの業務時
間の合計
電 子 メ ー ル 開 通 ・ 送 プロバイダの月額費用を1
受信にかかる通信費 業務あたりに換算し,電話
代(1分10円)を加える
1業務あたりのプロバイダ費
用×文書送受信のアクティビ
ティ時間÷文書送受信の全
アクティビティ時間の合計+
電話代
N社の現業務を細分化
青字・・・・・・・情報化の対象業務
黒字・・・・・・・情報化を行わない業務
納期確認
数量表受取
価格交渉
納期商談
見積手配書受取
納期再確認
製作受注 資材仕入
注文書受取
見積書作成
製作書類受取
製作書類作成
製作
発注書類作成 部材製作
発注書類郵送
見積書受取
原料調達
請求書受取
入金
領収書受取
加工外注
外注書類作成
外注書類郵送
見積書受取
外注部材配達
加工部材受取
請求書受取
入金
領収書受取
部材納品
製作済部材配達
製作済部材納品
請求書類作成
請求書類郵送
入金
領収書作成
領収書郵送
納期確認
受注
仕入
加工外注
請求書類送信
領収書作成
領収書郵送
仕入
外注書類郵送
見積書受取
請求書受取
領収書受け取り
請求書書類作成
受注
発注書類送信
見積書受取
請求書受取
領収書受取
外注書類作成
納期確認
製作書類受取
製作書類作成
発注書類作成
注文書受取
見積書作成
納期確定
請求書類送信
領収書作成
領収書郵送
外注書類郵送
見積書受取
請求書受取
領収書受け取り
請求書書類作成
発注書類送信
見積書受取
請求書受取
領収書受取
外注書類作成
製作書類受取
製作書類作成
発注書類作成
注文書受取
見積書作成
納期確定
納期商談
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
納期商談
業務費用(円)
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
業務時間(分)
現業務の業務費用・時間の算定結果
加工外注
目的
情報化対象業務
の決定
方法
社員インタビュー
をもとにABC分
析法を用いて算
定
インタ 平成13年7月~
10月
ビュ
ー期
間
N社の情報化
3段階に分けて情報化を行い
段階ごとに導入効果を算定する。
第1段階
企業間業務情報を電子化し,送受信する
第2段階
伝票作成システムの導入
第3段階
納期管理システムの導入
納期確認
受注
仕入れ
仕入れ
製作
外注発注
納品
製作終了書類作成
送信
領収書作成
領収書送信
製作
外注書類送信
見積書受信
請求書受信
領収書受信
外注書類作成
受注
発注書類送信
見積書受信
請求書受信
領収書受信
製作書類作成
発注書類作成
納期確認
製作書類受信
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
納期確定
注文書受信
見積書作成
納期商談
業務時間(分)
外注発注
製作終了書類作成
送信
領収書作成
領収書送信
外注書類送信
見積書受信
請求書受信
領収書受信
外注書類作成
発注書類送信
見積書受信
請求書受信
領収書受信
製作書類作成
発注書類作成
製作書類受信
納期確定
注文書受信
見積書作成
納期商談
業務費用(円)
企業間業務情報電子化後の業務費用算定結果
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
納品
目的
業務に必要な書
類作成・企業間授
受する業務の費
用と時間を削減す
る
期間
平成13年11月6日
~12月30日
0受
③
電
1
注
子
1
化
/1
後
4受
④
電
注
11
子
/2
化
5受
後
電
⑤
注
子
1
化
2/
後
6受
電
⑥
注
子
12
化
/2
後
1受
⑦
注
導
12
入
/2
後
5受
⑧
注
12
/2
6受
注
/1
11
化
後
②
電
子
化
後
電
子
化
後
①
11
/6
導
受
入
注
前
7980 103404
92361
85105
78159
70829
64956
67937
62803
59346
1880
1658
1385
1547
1162
1244
1014
912
120000
100000
80000
60000
40000
20000
0
業務費用の合計(円)
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
電
子
業務時間の合計(分)
電子化前と後の業務費用と時間を比較
総業務時間(分)
総業務費用(円)
電子化前と比較すると業務費用は16.4%,
業務時間は88%削減された
伝票作成システムの導入
伝票作成システム導入前後の業務費用と時間を比較
書類作成し送受信する業務を簡易化し,業務費用と時間を削減する
期間
平成14年1月7日~1月10日
業務時間の合計(分)
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
7980 103404
92361
85105
78159
70829
64956
62803 67937
59346
1880
1547
1385 1658
49581
1244
1162
1014
912 540
前
注
後
注
注
注
注
注
注
入 受注
受
入
受
受
受
受
受
受
導 /6
/6 /21 /25 /26
導
10 /14
25
1
2
/
/
1
1
ム
2
1
1
2
2
1
1
① ②1
⑤ ⑥1 ⑦1 ⑧1
テ
1
④
後 後
後
ス
③
後
化
化 化後 化後 入後 シ
後
化
子 子化 化
子
導 作成
子
子
子
電 電
電
子
電
電
電
票
電
伝
120000
100000
80000
60000
40000
20000
0
業務費用の合計(円)
目的
総業務時間(分)
総業務費用(円)
導入前と比較すると業務費用は11.8%,
業務時間は40%削減された
納期管理システムの導入
納期確認業務にかかる費用と時間を削減する
期間
平成14年1月21日~1月25日
120000
100000
80000
60000
59346
1880
40000
1547 1385 1658
49581 48976
20000
1244
1014 1162
540
537
912
0
7980 103404
85105 78159 92361
70829
64956
62803 67937
11 入前
/
子
化 ②1 6受
注
1
電 後③ /1
0受
子
1
化
注
後 1/1
電
④ 4受
子
11
注
電 化後 /25
子
受
化 ⑤1
注
電 後 2/
子 ⑥ 6受
化 12
後 /2 注
導 ⑦ 1受
伝
入 12
注
票
後 /2
作
⑧ 5受
納 成
1
期 シ 2/2 注
管 ス
6
理 テ 受注
シ ム
ス 導
テ 入
ム 後
導
入
後
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
業務費用の合計(円)
目的
後
化
電
子
電
電
子
化
後
①
導
業務時間の合計(分)
納期管理システム導入前後の業務費用と時間を比較
総業務時間(分)
総業務費用(円)
導入前と比較すると業務費用は1.4%
業務時間は0.5%削減された
研究のまとめ
情報化投資効果がわからない
情報化投資効果算定が困難である
現業務費用
の数値把握
が困難
情報化後に新
たな業務が拡
散し発生
ABC分析で業務を細分化し,対
象業務にかかる費用を算定
情報システムに
関わる償却費の
配賦が困難
複数の情報システム
が同時稼動し関係経
費の配賦が困難
情報化後の業
務費用に配賦
3段階にわけて情報化し,
段階毎に効果測定
情報化の効果算定結果のまとめ
70000
業務費用(円)
60000
50000
40000
30000
導入前費用累積
伝票システム導入後費用累積
文書・通信電子化費用累積
納期システム導入後費用累積
20000
導入前費用
伝票システム導入後費用
文書通信電子化後費用
納期システム導入後費用
10000
納期確認
受注
仕入れ
製作
加工発注
納品
全体で業務費用は24.6%,業務時間は88%削減された
領収書作成
領収書送信
領収書受信
部材出荷準備
製作終了書類作成
送信
請求書受信
外注書類作成
外注書類送信
見積書受信
領収書受信
請求書受信
納期商談
納期確定
注文書受信
見積書作成
製作書類受信
製作書類作成
発注書類作成
発注書類送信
見積書受信
0
今後の課題
・情報化後に算定した業務費用を財務諸表
の費用項目と照合する。
・長期間での測定を行う。
参考文献
[1] 中小企業庁 “中小企業白書 2001年度版” 大蔵省印刷局 2001
[2] 木暮 仁 “情報化投資の費用対効果に関する考察” 東京経営短期大学紀要
8巻 2000.3
[3] 廣松毅, 栗田学, 小林稔, 大平号声, 坪根直毅 “情報技術と付加価値生産性
- 成長会計を用いた情報装備の効果に関する定量分析 –“,電子社会と市場経済
ディスカッションペーパー No.37,2000.
[4] 廣松毅,栗田学,坪根直毅,小林稔,大平号声 “情報装備の労働投入代替効
果に関する定量分析”電子社会と市場経済 ディスカッションペーパー No.4, 1998.
[5] 安本哲之助・真田英彦,“エンドユーザ環境における情報資源の有効性効果に関
する考察”(http://www2.osk.3web.ne.jp/~isanet/yasumoto/myact/yukosei.html)
[6] 力 利則 ,藤野 喜一,堀江 正之,“システム監査における情報システムの有効性
評価モデルの構築”経営情報学会誌7号,1998.9