非営利放送の可能性と諸問題 市民参加の機会を創る コミュニティ放送 龍谷大学 松浦さと子 [email protected] 非営利放送 Not-For-Profit Broadcasting 日本に根付いていない用語。 営利を求めない放送。 非営利組織(NPO)に担われた放送。 NHKは、1926年(大正15)に誕生した「社団法人日本 放送協会」が、1950年(昭和25)にGHQの命令で、放 送法に基づく特殊法人である「日本放送協会」に改組さ れて発足した。 国営放送ではなく受信料財源で行う非営利公共放送。 非営利放送に求められる 市場原理から遠い公共性を伴う目的、理念 比較的理解、資源得やすい ・災害救援 ・慈善救貧 ・障害者向け ・教育 ・宗教 など (公共放送NHKが積極的に取り組む) ◎多数の理解、資源調達に困難さが伴う ・少数言語 ・人権救済 ・NPOのアドボカシー ・前衛的新しい芸術 ・ (開発計画、基地、原発、に対する)政治的主張 (公共放送NHKが回避している) 非営利放送の意義 公共放送=非営利放送のアメリカでの研究 赤堀正宣より 商業放送と対置 英国 (J・プラムラー) 精神の高潔さ、総合的信託性、番組領域の均衡、 あまねく奉仕すること、編集の独立性、公共的責任 ・文化的多様性や商業主義の弊害の認識希薄 多言語放送 「NHKワールド・ラジオ日本」が22カ国語による 海外向けラジオ放送、および海外にいる日本人 のための日本語放送を行っている。 →海外の日本人向け、 海外への日本のプレゼンス コミュニティにおける多言語使用者向け放送 少数の担い手(FMわいわい)に委ねられている。 カナダの多文化主義 多言語放送の背景 カナダの歴史的背景に基づく多文化主義 先住民 少数言語のコミュニティ 移民 多国語のコミュニティ Multiculturalism Act,1988 多文化主義法 成立 民族文化維持、権利平等、政治・経済機会平等 カナダの非営利放送における多言語放送 Standing Committee on Canadian Heritage“Our Cultural Sovereignty : The Second Canadian Broadcasting”,2003 Chapter7 Non-Profit Broadcasting より CBC(政府交付金+広告費1/4) 全国放送、国際放送、地方教育放送 ケーブル放送局におけるコミュニティ放送の担い手 商業放送局の非営利放送 全国(公共、非営利)放送 Vision TV (宗教チャンネル)1987年~ Cable Public Affairs Channel [CPAC] (議会、政治討論中継)1991年~ Aboriginal Peoples TV Network [APTN] (多民族チャンネル)1999年~ APTN Aboriginal Peoples TV Network [APTN]1999年~ 英仏2公用語のほか25言語(に字幕) ◆82人のうち75%がアボリジナル出身 ◆放送されてこなかったイヌイットコミュニティをはじめ、 当事者が当事者を取材し、描く。 ◆Sharing Stories ◆6000世帯以上加入のケーブル局は放送義務(ケーブル 契約料の一部が財源) カナダ放送の3部門 Public Private Community(日本で確立していない部門) 地域社会、市民参加、パブリックアクセス 少数民族向け 245の商業ケーブル事業者によって担われている コミュニティチャンネルの 運営主体としてのNPO 1997年規制緩和でコミュニティチャンネルの形骸化 市民の商業ケーブルへの批判と放送への参加要請 2002年CRTC(Canadian Radio–Television and Telecommunications Commission)から 新規則---コミュニティチャンネルの運営をNPOに 委託可能に。 ・2003年から6割ローカルコンテンツ(地元制作番組) 5割市民制作、確保をチェック ・住民の多様性を反映することができる(多文化主義) コミュニティ放送への政策、基金 意見、ものの見方、表現の多様性保証のための 市民アクセスの施設を放送事業者に提供させる。 デジタル化、多チャンネル化時代における放送 資源の公平な分配を定めた放送制度を設計。 Local Broadcasting Initiative Program=LBIP 基金 (地域放送促進プログラム) 商業放送局における非営利放送 Cross-Subsidize 非採算部門の活動を維持するために 採算部門の利益で他部門を助成する 営利放送局が採算の取れる人気番組の収益を 用い、多言語番組を非営利放送。 商業放送局の非営利多言語公共放送への貢献は、 カナダの多文化放送に不可欠。 日本の多言語放送 FM CO・CO・LO(大阪) 関西インターメディア株式会社 4億7000万円 inter FM(東京) エフエムインターウェーブ株式会社 10億7500万円 Love FM(福岡) 株式会社九州国際エフエム 4億9900万円 Radio-i(名古屋) 愛知国際放送株式会社 9億6000万円 FM わいわい(コミュニティFM多言語放送局・神戸市長田) 市場性希少(エリア、聴取者少ない)にも関わらず 株式会社で運営。 2003年3月31日現在 13,619,892円 助成を受けるNPOの放送局はコミュニティFM 2局のみ 営利的多言語放送を基準とする日本 大都市圏とコミュニティの多言語放送は 市場性において差異がある。 収益目的放送←→地域公益目的放送 少数言語(アイヌ、琉球などの諸言語や方言)の 保護放送は、コミュニティFMなど地方の弱小商 業局に委ねられている。 例、FMピパウシ(ミニFM)(webラジオ)、 御万人ラジオ(パーフェクTV) 少数者の言論の自由の意義 正しいかもしれない 間違っていてもかつての一般的な意見の正しさ を 議論を喚起する 多言語コミュニティ放送への課題 デジタル時代の放送資源を市民へ分配。 多言語放送を含むコミュニティ放送番組制作へ の基金創設。 非営利放送局への助成、補助の対象。 受信料の一部提供。 2003年 カナダの市民とメディア調査から 少数者のコミュニティへの参加のために カナダについて カナダの概要 人口-日本の1/4 国土面積-日本の27倍 公用語 - 英語(59%)フランス語(23%) そのほかの少数多言語(15%) 人種のモザイク アボリジナルピープル(ファーストネイションズ、 メティス)、15世紀に欧州から上陸、移民、 第二次大戦後、アジア、南米、カリブ諸国から移民 調査の狙い メディアリテラシー教育が進み、パブ リックアクセス発祥の地とされる カナダで、市民のメディアへの参加と、 多民族国家における放送の在り様が 如何なるものかを探る。 バンクーバー(アジアの移民放送) Channel M 高水準のエスニック放送を目指す Fairchild TV、Talent Vision 中国からの移民への放送チャンネル運営 ICAS 環太平洋文化交流協会 在留邦人の放送、日本からの番組放送 ウィニペグ(少数民族の放送拠点) Aboriginal Communications Inc. 49言語のラジオ放送 Aboriginal Peoples TV Network 25言語のテレビ放送 1999年設立の公共放送(NPO) 従業員の多数が少数民族出身 トロント(経済都市、世界の移民) Omni TV 多文化放送のための商業放送局 Regent Park Focus NPOの映像制作支援団体 公営住宅における青少年育成 モントリオール(フランス語圏) National Film Board of Canada 民族、ジェンダーの少数への制作支援 ドキュメンタリー『ヒバクシャ』監督の 鎌仲ひとみさんを輩出 Group Intervention 女性の映像制作団体 制作と流通 オタワ(首都、放送政策) Canadian Radio-Television and Telecommunication Commission 多言語放送についての放送基準 エスニックポリシー コミュニティチャンネルの運営規則 市民団体の抗議投書などアドボカシー活動 (参考資料) 日本で進むケーブルテレビの コミュニティチャンネル 地上波放送への市民参加が放送法上不可能 (編集権は事業者に) ケーブル加入者が33.6パーセントに (アメリカ67.5、ドイツ53.3パーセント) 地域への関心、地域社会への参加 (熊本の住民ディレクター 事例ビデオ) 住民と行政が協働で番組制作 ドイツ、オランダの オープンチャンネル調査2001.2004 2001年調査 NHKでの報告VTR 2004年調査 松浦のビデオ報告(未完成)
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