筋ジストロフィー児の支援

筋ジストロフィー児の支援
鹿児島県立加治木養護学校
1 筋ジストロフィーとは?
2 学習上・生活上の支援
3 子どもの心のケア
4 保護者に対する配慮
5 卒園後の生活
1 筋ジストロフィーとは?

筋肉細胞が壊れていく病気で,細胞の数が減って
全身の筋肉が萎縮し,筋力が低下する病気。

病気の原因は主に遺伝子の変化によるものだと考
えられている。

進行する病気で,四肢だけでなく,全身の筋肉に
影響が及ぶため,いろいろな内臓障害(心筋,呼
吸筋など)を伴う。

根本的な治療は研究中。症状に応じて,体調を整
えていく方法が開発されている。
具体的な症状
〈運動障害〉
・2~4歳 走れない,転びやすい,
階段の昇降に手すりがいるなど
(登はん性起立,動揺歩行)
・6~10歳 歩くことに危険が
伴い始めると車いすを使用。
さらに運動機能の低下が進むと
電動車いすを使用。
登はん性起立
腰の筋力低下があるため、
床から起立する時、
まず床に手をついて、
お尻を高くあげる(a)
次にひざに手をあてて、
手の力を借りて立ち上がる(b)
動揺歩行
お腹をつき出し,体を左右に揺するようにして歩く。
〈呼吸障害〉
・呼吸筋の筋力低下,脊柱変形に
伴う胸郭変形により,呼吸障害
が起こり,疲れやすくなる,食欲
不振,頭痛などがある。
〈心機能障害〉
・心筋の筋力低下により,不整脈が
起きることがある。心不全になると,
体のだるさや胸の痛み,苦しさなどがある。
〈摂食・嚥下障害〉
・かみくだく力や飲み込む力が弱く
なり,食べ物が飲み込みにくく
なる。
〈消化管障害〉
・やせの進行と脊柱変形や消化管
機能の低下に伴い,胃部拡張,
嘔吐,食欲不振や便秘になり
やすくなる。

筋ジストロフィー(デュシャンヌ型)は,出生男
児2000~3000人に1人の発生率。
10万人当たりでは約3~5人(全国で約3000人)
の頻度。

全国の小・中学校,高等学校などでも約2500
人弱の子どもがいると言われているが,全数把握
は困難。
平成22年度 学校基本調査より(速報値)
小学校の児童数は約699万3千人
中学校の生徒数は約355万8千人
高等学校(全日制・定時制)の生徒数は約336
万9千人
中等教育学校の生徒数は約2万4千人
特別支援学校の幼児児童生徒数は約12万2千人
(前年度より5千人増加)で過去最高。

2 学習上・生活上の支援
3~5歳の三年間 デュシャンヌ型の幼児
筋ジストロフィー児の一生で最も活発な運動機能を発揮する時期
活発に動く活動を十分に経験
共感する心
人間関係の基礎として重要
具体的には・・・

環境を整え,バリアフリーな空間にする。
・段差や手すり ・トイレ

・靴箱
歩くときや階段の昇降には事故防止の支援を行
う。
・必要に応じてヘッドガード

体温調節がうまくできないことがある。
・室温を一定に保ち,季節に応じた配慮

活動量を配慮する。
・次の日に痛みが残らないような活動量を設定
健康や安全に配慮しつつ,
内容を工夫しながら,できる限り
みんなといっしょに行動できるように。
筋力低下が進むと・・・

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

学習用具の使い方
学習内容への配慮
車いすでの移動介助
コミュニケーション支援
体を動かす活動への配慮
行事への参加の仕方
等についての配慮,支援が必要になってくる。
介助をするときには・・・

介助されるだけでは主体的に行動すること
が少なくなる場合がある。自分でできるこ
とは自分で行い,難しいことは自分で依頼
できるようにする。自分で考え,工夫する
体験をすることで,その成功経験をもとに,
次の活動への意欲付けにもなる。
3 子どもの心のケア
年齢,病気の進み具合
告知を受けているか
病気の理解
うなずきながら
聞く姿勢
「なんでなおらないの?」
「どうしてあるけなくなっの?」
〔病気やケガと同じように捉える〕
告知
「なんでわたしが・・・。」
「この先どうなる?」
喪失の体験
「できるわけがない。」
「どうすればできるだろう。」
こどもの能力,興味関心をいかにひきだし,
外へ向かう意欲,たくましさをいかに育てるか。
体を動かす活動
はいつも見学。
友だちとうまく
あそべない。
さぼっている。
みんなとちがう。
いっしょに行動
できない
欠席や遅刻が
多い。
つかれやすい。
どうしてなの?
まわりの子への配慮が必要。
プライバシー尊重の原則
・子どもの病気のことは保護者が
(できれば本人が)コントロールする。
・病名の扱いについては,
責任をもって管理する。
・クラスの友だちやその保護者への
病気の説明(病状説明・公開)を
どのようにするか,本人と保護者と
慎重に話し合って決める。
4 保護者に対する配慮
先天奇形をもつ子どもの誕生に対する正常な親の反応を継起を
示す仮説的な図
(DROTAR,D,BASKIEWICZ,A.,IRVIN,N.,KENNELL,J.H.,
and KLAUS,M.H.:Pediatrics56:710-717,1975)
クラウス・ケルン「親と子のきずな」1985.医学書院
筋ジストロフィーの子どもをもつ保護者
遺伝子がもとで
起きることが多い。
不安
不安
悩み
自責の念
専門医のカウンセリング
保護者の話も聞いて,気持ちを落ち着かせることで,
子どもの心の安定にもつながる。
5 卒園後の進路
卒園
・地域の小学校(通常学級・特別支援学級)
・特別支援学校 小学部
・地域の中学校(通常学級・特別支援学級)
・特別支援学校 中学部
・地域の高等学校
・特別支援学校 高等部
なにをしたいのか?
子教
ど育
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。
大学等への進学,就労(一般・福祉)
自宅療養・病院療養
(病状,介助者,環境も考慮する)
「病気の子どもの理解のために」
全国特別支援学校病弱教育校長会
独立行政法人
国立特別支援教育総合研究所
「全病連」HPより無料ダウンロード
「筋疾患児の子育てQ&A」
社団法人
日本筋ジストロフィー協会