セブンイレブン研究 ~ その比類なき競争力の源泉 ~ 千葉大学 法経学部 経済学科 内山ゼミナール “社長と愉快な仲間達”班 序章 財務比較 担当 山口 純 はじめに • 今の日本は高度経済成長を経て、世界でも 有数の経済大国となった • それに伴い世の中はますます便利になってき ている • その便利さの象徴がコンビニエンスストアだと 言っても過言ではあるまい 3 ねらい • コンビニエンスストア業界の中で、業績及び店 • 舗数においてトップにたつセブンイレブンに焦点を 当てる ローソン及びファミリーマートと業績を比較し、その 結果を経営戦略並びに経営システムの点から、出 店戦略、商品戦略、情報システムについて検討して いこうと思う 4 営業総収入 600,000 単位:百万円 • 平成12年度、13年度、14 ファミリーマート ローソン セブンイレブン 400,000 200,000 0 12年度 13年度 14年度 • 年度の3期間において営業 総収入を比較してみると、 セブンイレブンが飛び抜け て良いことがわかる 年度が進むほどに差は開 き、14年度にはセブンイレ ブンの営業総収入はローソ ンの1.5倍、ファミリーマー トの2倍以上に至っている 5 営業総利益 400,000 300,000 200,000 100,000 0 単位:百万円 • 営業総利益についても、 ファミリーマート ローソン セブンイレブン ローソンが3期間にわ たってほぼ横ばい、ファ ミリーマートも微増なの に対して、セブンイレブ ンは順調にその額を伸 ばしている 12年度 13年度 14年度 6 営業利益 200,000 150,000 100,000 50,000 0 単位:百万円 • 営業利益では、その差 • ファミリーマート ローソン セブンイレブン は一目瞭然である セブンイレブンの営業 利益は3期間ともに、 ローソンの3倍以上、 ファミリーマートの6倍 弱の額を上げている 12年度 13年度 14年度 7 経常利益 200,000 単位:百万円 150,000 • 経常利益も営業利益と ファミリーマート ローソン セブンイレブン 100,000 50,000 同じくセブンイレブンが 他の2社を圧倒してい る 0 12年度 13年度 14年度 8 税引前当期純利益 200,000 150,000 100,000 50,000 0 単位:百万円 • 税引前当期純利益に ファミリーマート ローソン セブンイレブン おいても前の2つと変 わるところはない 12年度 13年度 14年度 9 税引後当期純利益 100,000 単位:百万円 • この税引後当期純利益 ファミリーマート ローソン セブンイレブン 50,000 0 も期が進むほどにセブ ンイレブンと他の2社と の差が開いている 12年度 13年度 14年度 10 当期未処分利益 150,000 単位:百万円 • ファミリーマ-トがほぼ横ば ファミリーマート ローソン セブンイレブン 100,000 50,000 0 い、ローソンが順調に伸び ている中、セブンイレブンは 平成13年度に急落してい るが、これは自社株買い付 けを行ったためであり、むし ろこれからの経営構造を見 込んでより良い経営体制を 整えるためのものである 12年度 13年度 14年度 11 流動比率 250 200 150 100 50 0 12年度 単位:% ファミリー マート ローソン • 安全性分析の指標でも • セブンイ レブン 13年度 14年度 ある流動比率は、目安 として200%以上ある と良い ローソンやファミリー マートは100%前後で あるが、セブンイレブン は200%に近い値であ る 12 負債比率 • 負債比率は一般に10 150 単位:% ファミリー • マート ローソン 100 50 0 12年度 セブンイ • レブン 13年度 14年度 0%以下であれば良い ローソンは慢性的に10 0%を超えてしまってい るが、ファミリーマートと セブンイレブンは数値 的には何も問題はない その中でもセブンイレブ ンの負債比率の低さは 圧倒的である 13 自己資本比率 100 ファミリー • マート ローソン • 単位:% 50 0 12年度 セブンイ レブン 13年度 14年度 自己資本比率は、5 0%以上あれば良い ローソンは50%弱、 ファミリーマートは60% 程度、セブンイレブンは 借入金がないため、7 0%以上というとても高 い比率を保っている 14 総資産経常利益率[ROA] 20 ファミリー • マート ローソン 10 • 30 0 12年度 単位:% セブンイ レブン 13年度 14年度 総資産経常利益率は 収益性分析の指標であ り、小売業においては 2%前後が普通である このたび採り上げた3 社は、ともに高い水準 にあるが、ここでもやは りセブンイレブンの指標 は飛び抜けている 15 自己資本税引前当期純利益率 [ROE] 30 単位:% ファミリー マート ローソン 20 • • 10 0 12年度 • 自己資本当期純利益率は、 セブンイ レブン 13年度 14年度 自己資金による投資の収 益性を表す指標である ローソン、ファミリーマート、 セブンイレブンの3社とも高 い比率である セブンイレブンは資本構成 の割に資本金が多く、その 上で20%を超える利益率 を上げているのは驚異的で ある 16 自己資本税引後当期純利益率 [ROE] 15 単位:% ファミリー • マート ローソン 10 5 0 12年度 前出の自己資本税引 前当期純利益率とほと んど変わらず、セブンイ レブンの強さが表れて いる セブンイ レブン 13年度 14年度 17 財務諸表分析では セブンイレブンが圧勝 • 以上、14個の指標を見てきたが、コンビニエ ンスストアの中でも3本の指に入るローソン、 ファミリーマートに対して、セブンイレブンは財 務の面で圧倒的な強さを誇っている • その強さの源をこれ以降、複数の観点から検 証していく 18 これ以降の流れ • セブンイレブンの出店戦略 • セブンイレブンの食品戦略 • セブンイレブンの情報物流システム • まとめ 19 第1章 セブンイレブンの出店戦略 担当 君島 美葵子 第1節 セブンイレブンの出店戦略 • ドミナント戦略 →特定の地域に集中出店をする 合理的な商品・物流システム作りに必要 一定の配送地域にまとまった数の店舗を迅速に 展開することで全国展開への力をつける • 出店数の増加 →セブンイレブン店舗ごとの成長や発展の追求 21 セブンイレブンの出店状況 年 月 1974 5 1号店出店(東京都江東区豊洲店) 1975 5 24時間営業開始(郡山市虎丸店) 1976 6 100店舗達成 1980 11 1000店舗達成 1993 2 5000店舗達成 2003 8 1万店舗達成 22 セブンイレブンの個店対応 • セブンイレブンが他チェーンより強い理由 →個店対応の徹底 ※個店対応・・・出店場所によって商品の売れ方・ ピークが異なる。これにあわせて店舗ごとに商品や 店内レイアウトを作り出すこと。 「店舗が1万店あれば、1万店のバリエーション がある」 → 一店ごとに特色のある店作りの重要性を示す 23 事例セブンイレブン カレッタ汐留店 客層 男 女 計 ① 9 1 10 ② 10 10 20 ③ 14 3 17 ④ 7 14 21 計 40 28 68 客層 ①ビジネススーツ ②制服・ユニホ-ム ③スーツ・カバン・コー ト ④カジュアル・コート 24 カレッタ汐留店の特徴 • セブンイレブン初の地下出店の店 • 使用できるセルフレンジが店内のレンジ9台中 5台ある → 昼食時の混雑に対応するため • 観光目的の客数が多い → カレッタ汐留が観光地であるため 25 オフィス立地の商品構成 • オフィス立地(カレッタ汐留店) → デスクワーク・パソコン関連商品だけではなく 携帯サイズ商品も揃えている 理由: デスクワーク・パソコン関連商品・・・職場や仕事環境 を意識 携帯サイズ商品・・・家庭消費よりも職場や出先での 消費を対象 26 第2節 ローソンの出店戦略 年 1976 1982 月 8 関東出店開始 10 西日本ローソン、東日本ローソン設立 1985 4 1000店舗達成 1995 12 6000店舗達成 2001 7 ヘルシーコンビニ「ナチュラルローソン」1号店 2003 7 ポスタルローソン1号店出店 27 事例 ポスタルローソン ローソン・・・「○○ローソン」事業を展開中 ポスタルローソン第1号店 代々木郵便局内に出店 特徴:郵便局内にあるスペースを利用した小規模店舗 品揃えが厳選されている ↓ 事業の効果:郵便局利用者をローソンの顧客として 迎えることが可能となる 28 第3節 事例の出店戦略の比較 • セブンイレブン・・・個店対応 →地域に合った商品、消費者が必要とする 商品の品揃えに重点(顧客が欲しているもの は必ず手に入ることを目指す) • ローソン・・・利便性の追求に基づいた出店 →顧客の利便性・ローソンと郵便局の利便性 29 コンビニエンスストアの目標 目標:顧客が欲している商品の品揃えの充実 ↓ どのチェーンも掲げている目標 ↓ 目標を達成するための手段で差別化を図る 手段:セブンイレブン・・・個店対応 ローソン・・・他業種との連携による出店 30 店舗の商品構成 • 顧客は自宅や会社から近所のコンビニエンススト アを利用し、その滞在時間は極めて短い • コンビニエンスストア同士の近隣出店の増加 ↓ これから顧客は利用する店舗の選択に迫られる ↓ 店舗側:顧客が、一目見て印象に残り、購入したいと 感じる魅力ある商品を置くことが重要 31 消費者ニーズを満たすためには • 情報(顧客情報・出店地域を取り巻く環境)の 収集 効果:店舗のコンセプト作りに役立てる ※店舗コンセプト・・・価格、健康重視といった商品 品揃えや陳列に関わる ↓ 消費者ニーズを満たす商品構成へ 32 第4節 出店から見る セブンイレブンの将来 • セブンイレブンに行けば欲しい商品が必ず 揃うイメージの維持に努める ↓ 店舗が主体的に考え売場を作り出すという 各店舗の企画力と運営力を育てる施策を 進めていく必要性 33 第2章 セブンイレブンの商品戦略 担当 原田 彰 第1節 はじめに • セブンイレブンの売上構成の75%が食品部門 • 他のコンビニエンスストアに先駆けて食品部門の基 礎を固めたのがセブンイレブン 35 第2節 日配品のシステム 1.日本デリカフーズ協同組合(1979年) • 弁当・惣菜は中・小メーカーの分野で、生産設備や • 技術、品質管理、どれをとっても満足のいく状況で はなかった ↓ 大手米飯メーカーを中心に、1979年10月「日本デリ カフーズ協同組合」の結成 品質向上・生産手段の改善・原材料の共同購買 • ↓ 各工場間の連帯意識が芽生え、セブンイレブンを軸 とした、運命共同体が出来上がった 36 2.ナショナル・ブランド(NB)メーカー (1984年~) • 大手食品メーカーによるセブンイレブン専用工場作 り → 中・小の分野であった日配品の工場を作ってもらい、 豊富な資金力や商品開発力を活用し、さらにネットワー ク全体のレベルを向上しようというもの • 当初は大手メーカーの猛反対を招いたが、セブンイ レブンの店舗数の増大、惣菜・弁当の市場の拡大、 ネットワークビジネスの将来性が認められ、専用工 場作りが開始 37 第3節 商品開発 • 商品よりも情 • 報が先に動く のがセブンイ レブンの商品 開発の特徴 POSの導入、 単品管理の徹 底により店頭 からメーカー の研究開発ま で情報で結ぶ ことが可能に セブンイレブンの商品が店頭に並ぶまで POSデータ、市場情報による 商品コンセプトの検討 取引先との商品開発会議 マーケットリサーチ 商品企画、製造工程の検討・決定 チーム内の試食、モニター評価 専門家・料理家による研修 テスト販売、役員試食 生産体制の確立 製造、配送 陳列、販売 38 第4節 製販一致 • 市場の変化に敏速に対応できる開発体制を構築し • たセブンイレブンは、製販一致の体制をバックに 1988年から商品の絞込みを実施→機会ロスを限り なくゼロに NBメーカーにとっての利点 情報の共有により、売れる商品が開発可能 共同開発商品は最初からセブンイレブンで販売できるため 販促の資金が軽減できる • セブンイレブンにとっての利点 共同開発の場合、メーカーと契約した一定期間は独占販売 可能 39 第5節 まとめ • セブンイレブン成功の要因 1、セブンイレブンを軸として各ベンダーが協同 ↓ 生産側はセブンイレブンの商品に力をいれることに、 セブンイレブン側は高い品質の商品を提供 2、セブンイレブンの情報網の充実 ↓ 詳細なデータに基づき上から下の生産体制ができた結 果、ロスが減り、品質が向上 40 第3章 セブンイレブンの情報物流システム 担当 由良 和人 第1節 はじめに 1970年代はじめ 本格的なコンビニエンスストアシステムが導入 され始めた。 それまでの小売業と異なり、個人の価値観やラ イフスタイルに適応した「便利さ」を競争力を源泉 とした独自の小売形態を確立した。 → 日本独自のコンビニエンスストアの形態を実現 させる情報・物流システムを、常にその最先端を いったセブンイレブンを例に解説する。 42 第2節 歴史 1.集約化・共同化 (図1)(1976~) 従来の特約問屋制度のもとでは、問屋ごとの配送 車が納品することになるため、品揃えを充実させよ うとすればその分だけ車両台数が増加し、管理も難 しくなった。 そこで実施されたのが物流の集約化・ 共同化である。 ・ 集約化 ・・・ 窓口問屋を通して配送 ・ 共同化 ・・・ 共同配送センターを設立し、日配 品を中心に実施 →この後も段階的に効率化が進められていった 43 2.POSシステム (1982~) 販売商品・金額・日時などの販売情報(POSデー タ)を収集・分析するためのもの。 共同配送の推進・発注精度の向上・商品開発へ の利用など、様々な点で活用される、もっとも基礎 的な情報システム → 商品の販売動向が合理的に予測できるようになっ た。 44 3.単品管理 (1980年代半ば~) 消費者のニーズの個性化・多様化に対応するため、 単品管理にむけた物流の効率化が行われた。 ・ 多頻度小口配送 ・ 売れ筋、死に筋商品の把握 ・ 共同配送体制の推進 →物流費の減少、在庫の減少、日配品売上の増加、 粗利益の上昇、店舗への配送台数の減少などが実 現した。 45 第3節 完成 1.情報ネットワーク (1990年代~) 店舗数の増加と、分析メニューの拡張に伴い、膨 大になった情報量をいかに処理するのかという問題 が浮かび上がってきた。 そのためセブンイレブンでは、店舗・ベンダー・本部 間でやり取りされる大量のデータをリアルタイムで 伝達できる情報ネットワークの構築を行った 。 → 各間の繋がりは強化され、今日のセブンイレブン を中心とする巨大ネットワークの基礎がつくられた 46 2.店舗システム (図2) ・ ストア・コンピューター 店舗に必要な大量の情報を収集・蓄積・分析し、店 内のあらゆる設備等をコントロールする ・ グラフィック・オーダー・ターミナル(GOT) A4サイズのパソコンで発注と情報活用を同時にこな せる発注端末機 → 情報を発注に役立てやすくすることや、作業自体 の負担の軽減や簡略化が進められた 47 3.総合情報システム (1997~) 第5次総合情報システム (図3) 店舗・メーカー・配送センター・本部などの間を衛星 通信とISDNで結び情報ネットワークを強化し、情報 の共有を推進。 物流・商品開発・店舗への指導体制など、あらゆる 面でより迅速で適切な対応をとることが可能になっ た。 →これによってコンビニエンスストアの物流・情報シ ステムは1つの完成を成し遂げたといえる 48 第4節 まとめ セブンイレブンは創業当時から一貫して小売業の 組織能力の基礎になる物流・情報システムの構築 に取り組んできた。 その結果セブンイレブンは、消費者の動向を仕入・ 販売のみならず、商品開発やマーケティングにまで 組み込むシステムを確立し、コンビニの競争力の源 泉となる「便利さ」を実現をさせたのである。 49 終章 まとめ ~ ゆるぎなき信念とそのあくなき追求 ~ 以上述べてきたセブンイレブンの長所として、食品 部門の充実、地域密着型の経営、情報力の三点を 挙げてきた。 これらはセブンイレブンの「お客様第一」の経営理 念に基づいた結果であり、その常にお客のニーズ の変化に対応することを徹底した体制が、セブンイ レブンの圧倒的な競争力の源泉となっている。 50
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