~不正を抑止するために~ 中京大学 風神ゼミナール 1 1.はじめに 2.動機 3.生活保護とは 4.不正受給問題 5.不正受給増加の対策 6.囚人のジレンマ 7.実証 8.まとめ 2 研究の目的:生活保護不正受給の抑制 その手段:不正受給者の検挙率を上げる 実証:「囚人のジレンマ」を用いる 3 改正独占禁止法(2006年改正 日本) これにより、「リニエンシー(措置減 免)」いわゆる自首制度が導入された。「リ ニエンシー(措置減免)」とは、カルテルや 談合に対して課せられる課徴金を従来の売上 高6%から10%に引き上げ、且つ再犯を5 割増しにし、当事者が公正取引委員会に通報 した場合には、状況や通報順位によって課徴 金が減免されるという制度である。 「リニエンシー(措置減免)制度」は、米 欧で既に実施され、効果を挙げている。 4 生活保護制度について悪いイメージが ある。 その一方で、セーフティネットとして 社会に必要不可欠な制度でもある。 もらうべき人が適切にもらえるために はどうすればいいのか考えたい。 5 保護の要件 生活保護は世帯単位で行い、世帯員全 員が、その利用し得る資産、能力、そ の他あらゆるものを、その最低限度の 生活の維持のために活用することが前 提でありまた、扶養義務者の扶養は、 生活保護法による保護に優先する。 7 保護費支給額 最低生活費 収入認定額 8 生活保護は、貯蓄が全く無く、生活して いくだけの収入も無い人が受け取ることが できるもの。 しかし、貯蓄や収入を隠して不正に生活 保護を受給する者がいる。 9 生活保護・及びその不正受給は、今まで さほど認知度が高くはなかった。 だが最近、とある芸能人が生活保護を不 正受給していたことが発覚。 ↓ 一気に国民の注目を集める。 10 不正受給件数、金額等の推移 年度 不正受給件数 平成 年 15 16 17 18 19 20 21 件 9,264 10,911 12,535 14,669 15,979 18,623 19,726 25,355 金額 千円 5,853,929 6,203,506 7,192,788 8,978,492 9,182,944 10,617,982 10,214,704 12,874,256 1件あたり金 額 千円 632 569 574 612 575 570 518 508 年々増 加して いる 出典:「社会・援護局関係主管課長会議資料」厚生労働省 11 不正内容【平成21年度】 内訳 実数 構成比 件 % 稼動収入の無申告 稼動収入の過少申告 各種年金等の無申告 保険金等の無申告 預貯金等の無申告 交通事故に係る収入の無申告 その他 9,891 1,983 4,022 742 483 292 2,313 50.1 10.1 20.4 3.8 2.4 1.5 11.7 計 19,726 100.0 出典:「生活保護制度の現状等について」厚生労働省 12 原則として、不正に受給した金額を全て返 済しなくてはならない。 それ以外には不正受給そのものに対する罰 則はなく、詐欺罪等で立件していくことと なる。 現在、厚生労働省では生活保護法に「3年 以下の懲役、30万円以下の罰金」という 罰則を取り入れることを検討中。 13 香川県で、パートの収入を隠していた女性が 356万円をだまし取ったとして逮捕。 東京都町田市内で、約3400万円の預金を隠し ていた男が、総額205万円の生活保護を不正 に受給していたとして逮捕。 熊本県では78歳の男性が211万円を不正受給 して逮捕。投資業で年間約1億4900万円もの 利益を得ていた。 巨額の収入・貯蓄があるにもかかわ らず、不正受給している 14 「生活保護ビジネス」 暴力団による斡旋 病院による保護費の横領 個人だけでなく、組織ぐるみの不正も 15 不正受給をしている人がいると・・・ ・ 公平性が担保できなくなる。 ・ 就労意欲を減少させる。 ・ 反社会団体への資金流出 ・ 犯罪に利用される など… そして何よりも、 生活保護受給者全体のイメージが悪くなる。 16 これまでは、不正受給の原因を探り、それ に対する対策を立てることが多く行われて きた。 しかし、不正受給の原因は多種多様であり、 景気や制度面といった対策しづらい問題も 多いように感じた →検挙率を上げて抑止するのはどうか 17 審査及び取り締まりを厳しくするのが最も 効果的 しかし、隠された収入・貯蓄等をより詳し く調べようとすると、多くの人員・時間が 必要となり、人件費もかかる 18 現時点で、近隣住民の密告による不正受給 の発覚は多く報告されている また、生活保護の受給者による密告もある。 さらには他の不正受給者による密告も。 19 この「他の不正受給者の密告」という点に 注目した。 これを利用し、不正受給者同士が互いを監 視・密告し合う状況を作れないだろうか? 20 囚人のジレンマを用いて 解析できるのでは? ↓ 囚人のジレンマとは 21 ゲーム理論における概念 全員で協調すれば皆に取ってよい結果にな るにも関わらず、皆が自身の利得を優先し てしまうと、互いに裏切りあって逆に損を してしまうこと。 22 プレイヤ-:意思決定をする主体 戦略:プレイヤーの選択肢 利得:プレイヤーが受け取る価値。マイナ スとなることもある。 23 支配戦略:相手がどの戦略を選んでも、常 に他の戦略よりも利得が大きくなる戦略 支配戦略均衡:各プレイヤーの支配戦略の 組み合わせ 標準型:そのゲームにおけるプレイヤー・ 戦略・利得を表にまとめたもの 24 共犯者である2人の囚人(囚人A、囚人Bと する)が、別々の部屋で警察の取り調べを 受けている。 プレイヤー・戦略・利得を標準型で表す 25 プレイヤー:囚人A・囚人B 戦略:自白する・自白しない 利得: 2人とも自白→それぞれ禁固8年 2人とも自白しない→それぞれ禁固1年 1人が自白、他方はしない→自白した方は釈放、 他方は禁固10年 26 囚人B 囚 人 A 自白する 自白する -8 自白しない -10、 自白しない 、-8 0 0、-10 -1、 -1 囚人Aの支配戦略=「自白する」 囚人Bの支配戦略=「自白する」 支配戦略均衡=(自白する、自白する) つまり、囚人Aと囚人Bは共に「自白する」とい う戦略を取ることが最善になる。 27 では、実際に囚人のジレンマを 不正受給者の密告に当てはめてみる 28 不正受給を抑制するために、取締・監視の 強化が有効ではないか? 不正受給者同士で互いに監視・密告させる ことはできないか? →これを囚人のジレンマを用いて実証 29 2人の生活保護受給者が、不正受給を行っ たとして逮捕された その2人が『他の不正受給者に関する密告 を行ったか』『他の不正受給者によって密 告されたか』によって量刑を変化 30 簡略化するため、不正受給者はAとBの2 人のみが存在すると仮定する 密告が無かった場合は、警察・役所等の調 査によって逮捕されたものとする 逮捕した時点で、他の不正受給者について の密告が無いかどうか尋ねる 31 各人が得られる利得を平等にするために、 先程の「3年以下の懲役または30万円以 下の罰金」という厚生省の検討案を採用。 今回得られる利得は懲役に関するものとす る。 32 プレイヤー:不正受給者A・不正受給者B 戦略:密告する・密告しない 利得: 2人とも密告→それぞれ懲役2年 2人とも密告しない→それぞれ懲役1年 1人が密告、他方はしない→密告した方は釈放、 他方は懲役3年 33 不 正 受 給 者 A 不正受給者B 密告する 密告する -2、-2 密告しない -3、 0 密告しない 0、-3 -1、-1 不正受給者Aの支配戦略=密告する 不正受給者Bの支配戦略=密告する 支配戦略均衡=(密告する、密告する) AとBは、共に「密告する」という選択肢を取ることが 最善ということになる。 34 不正受給者は、「密告する」という戦略を 取れるようにするために、他の受給者の動 向を探るようになると予想される。 不正受給者同士が互いに監視し合う環境が 完成し、不正受給増加の抑止力にもなる。 35 生活保護不正受給の抑制という当初の目的 は達成できることが証明。 また、実例の所で組織による不正受給を問 題として挙げたが、多くの人間が関わって いるほど密告の効果は出やすいはずなので、 その問題も解決できる。 36
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