4 IT革命と現代世界経済 グローバリゼーションの進展

4 IT革命と現代世界経済
グローバリゼーションの進展
4.1 IT革命とは何か
4.2 IT生産の国際分業
4.3 多国籍IT企業と世界経済
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4.1 IT革命とは何か
a IT革命とは
• 電子商取引の拡大(企業対企業,企業対消
費者),教育活動,医療活動,社会的活動
• 技術的定義:インターネットを基礎にした情報
技術+通信技術+放送技術+ユビキタス(家電
製品)
• コンピュータ技術革新が基軸
• インターネット:冷戦終結→軍事技術の民間
転用
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4.1 IT革命とは何か
b IT革命と「ニューエコノミー」
• アメリカ経済の構造的変化:①アメリカ経済におけう
IT産業の比重増大,②IT製品の価格低下→インフレ抑制,
③設備投資に占めるIT投資の割合の増大.
• ニューエコノミー論:
構造変化,生産性上昇,インフレなき経済成長
• クリントン政権の情報スーパー・ハイウェイ構想:
官民協調,通信産業の自由化
• IT革命促進の通商協定:ハイテク貿易自由化,電気
通信サービス,金融サービス,知的所有権保護
• ベンチャー・キャピタルや株式の新規公開
→IT株式ブーム1999-2000
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4.1 IT革命とは何か
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「ニューエコノミー」の破綻とIT革命
• ITバブル:IT産業の過剰な設備投資やM&A
• ワールドコムの破産申請2002/07
• 新自由主義的な規制緩和と市場主義の破綻,
景気循環から逃れられない
• Not IT革命の破綻,but IT企業の経営破綻
• インターネットの普及速度:どの技術よりも速
い
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4.2 IT生産の国際分業
a IT産業の構造的特質
• IT革命は,IT産業の構造的特質と企業の競争構造
をグローバルに変えた
• 1980年代までは汎用多国籍コンピュータ企業
• 80年代以降,オープン・アーキテクチャ(設計思
想の公開→基幹部品の高性能化:MPU,DRAM,
OS
①パソコン製品を構成する基幹技術,周辺装置を標
準化(規格化)→専業企業による供給,②ソフトウェ
アの専業企業,③IBM互換機→技術的,資金的参
入の容易化→価格競争
• IT産業では,専業企業群がネットワークを構成
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4.2 IT生産の国際分業
b IT生産のグローバリゼーション
• アジア諸国のIT生産基地化:①巨額資本を必
要としない,②外資誘致による輸出工業化
• 生産構成:①コンピュータ機器,②同部品,③
電機通信機器
• 販売先:完成品は米日欧,中間部品アジア.
最大輸出地域アメリカのIT需要動向に左右さ
れる
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4.2 IT生産の国際分業
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ソフトウェア生産のグローバリゼーション
• ソフトウェア生産:
コンピュータ・プログラムの
設計・開発・生産.
• 特徴:①自宅のパソコン.参入容易,
②関連する部品産業,支援産業を必要としない,
③製品と技術の寿命の短期化→スピードが勝負,
④低賃金で働く外国人IT技術者の受入れ
• インド,インド人:①エンジニア系大学・大学院1900,
②英語が準公用語,③シリコンバレーとの時差,
④ソフト輸出大国.バンガロール
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4.3 多国籍IT企業と世界経済
a 世界のIT貿易と多国籍企業
• アメリカのIT貿易と投資の拡大
• 輸出(対GDP)・輸入の増大
• IT資本財貿易の割合の増大:IT財収支赤字,
ITサービス収支は黒字
• IT企業による相互投資:製品とサービスの研
究開発・製造・販売・マーケティング・保守
• 企業内分業
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4.3 多国籍IT企業と世界経済
b 多国籍IT企業とアジア専業企業の国際分業
• アジア IT製品や部品の製造拠点→在米企
業や子会社への輸出
• 「工程間分業」:技術集約的工程を先進国で,労働集約
的な工程をアジアで.「製品別分業」:サーバーは米国
で,低価格帯製品はアジアで.OEM(相手先ブランド
生産) original equipment manufacture.
• 分業:アメリカ多国籍IT企業はPCやWSの組立専業企業,
受け手の台湾専業企業はPC部品や周辺装置の生産に特
化.インドの専業企業はソフトウェアに競争優位.
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4.3 多国籍IT企業と世界経済
c アジアへの技術移転と国際労働力移動
• アジア専業企業の参入と比較優位の要因
台湾のシリコンバレー化:①低賃金・良質労働者の豊富な存
在,②政府のIT産業振興策,③産業構造,競争構造の変化
• 技術開発力:技術者や企業家,ベンチャー・キャピタリスト
という人材のネットワーク形成と持続的なコミュニケーション
の維持.留学や移住者.頭脳流出と頭脳還流.
• IT革命とグローバリゼーションが国際労働力移動に新
時代を開く.ただし多くは非正規雇用.
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