地域通貨にみる価値の流通について

地域通貨における価値の流通
について
永田研究室 250030
澤浦文章
はじめに
• 本報告では、世界各地で行われている地
域通貨の動きから、貨幣の本質を捉えな
おし、貨幣が本来有する「価値の流通媒
体」としての機能を検証したい。
• その手がかりとしてデイヴィッド・ボイル著
『マネーの正体 ~地域通貨は冒険する
~』を参照した。
問題の背景
• グローバル化によるマネーの暴走
Ex 中南米、東南アジアの金融危機
• 貧富の拡大(国別のレベルでも、国内のレ
ベルでも)
• 環境破壊
問題の背景 続き
• 地域コミュニティの解体
貨幣とは?
• 貨幣とは・・・「交換の手段」「価値の基準」
「価値を貯蔵するもの」etc
• 「マネーとは、私たちが人間的な努力を繰
り広げる、情報のシステムである」(マイケ
ル・リントン)
⇒我々が貨幣を受け入れるということは、それが
運ぶ情報のコンテンツに信をおいていることにほ
かならない。
おさつについて(日銀の説明よ
り)
• 兌換<だかん>紙幣:金属との交換券
• 不換紙幣
• 信用貨幣
– 発行者の財務の健全性
– おかねの価値の安定
– 強制通用力
信用のもろさ
• そもそも銀行の融資からマネーは生み出さ
れている。
• 赤字国債の発行
• 負債を返済してくれるという各国政府・中
央銀行の保証を信じているというただ1点
に基づいている。
利子について
• 利子で元手を自己増殖させることができる
⇒お金の循環が滞る。
• 低所得者ほど利子の支払いで困り、高所
得者ほど利子の収入で潤っているという現
実
– イスラム原理主義では利子の支払いは許さない
– 中世キリスト教会が金利の徴収を頑なに反対しつづ
けた。
交換のメディアとしての貨幣
• 現行の金融メカニズムが、大企業に資本が集積
するようになっている。
:一般市民や環境の犠牲の上で成り立っている
もの
• 地域には潜在的なモノ・サービスへの需要もリ
ソースもある。しかしなぜ使われないのか?
⇒相互信用による新しい「交換システム」としての地
域通貨
地域通貨の起こり
• 19世紀末、シルビオ・ゲゼルによって「スタ
ンプ付貨幣」が提唱される
• 1930年代前半の世界恐慌下、欧米各地に
地域通貨が導入される
• しかし、ほとんどプロジェクトは政府、中央
銀行の介入により頓挫することに(例外的
としてスイス・チューリッヒのWIR)
地域通貨の基本的特徴
• 限定された地域のみで利用される
⇔グローバリゼーション
• 利子がつかないor減少する
⇔複利
• 信用の裏付けが労働・コミュニティそのも
のである
地域通貨の例
• アワー型(集中的発行方式)
:管理者や委員会が独自の紙幣を発行す るタ
イプ
Ex.イサカ・アワー、WIR
• LETS型(分散的発行方式 相互信用方式)
:管理者が売り手、買い手双方の口座に黒字・赤
字・を記帳。買い手が自発的に紙幣を発行する
Ex.LETS、タイムダラー
地域通貨の仕組み その1
LETS
1)自分名義の口座を開設する
2)自分が提供できるモノ・サービスをリストに載せ
る
3)リストをみて、希望するモノ・サービスがあったら
相手と連絡をとり、価格等の交渉
4)交渉成立後、「登記人」に連絡し、自分の勘定に、
金額のプラスを、相手の勘定に金額のマイナス
をつける。
Aさん
(+2000Gドル)
引越しの手伝い
PCの修理
3000Gドル
1000Gドル
10000Gドル
Cさん
(-9000Gドル)
Bさん
(+7000Gドル)
中古車
地域通貨の仕組み その2
イサカ・アワー
1)モノ・サービスをイサカアワーで提供する、
受け取ることをリストに掲載
2)新規登録者には4アワーが参加特典(プ
レミアム)として進呈される
3)後は交換をはじめるだけ。
※1イサカアワー=労働1時間=10ドル
地域通貨における問題点
• 集中的発行方式(タイムダラー)などは、紙
幣発行量の問題
• 労働時間とリンクしている地域通貨におけ
る“等価意識”の問題
• 参加者同士のトラブルへの対処
Ex.デフォルト
最後に
• 価格が「みえざる手」としての役割を終え、
「みえる手」をつなぎあわせる、情報交換の
信号にかわる
• 地域通貨は、単に互酬的共同性を回復す
るだけでなく、社会を交換的関係形式のな
かに埋め込むことで、資本・国家をともに
超えるためのカウンター・メディアとなる。
参考文献
• デイヴィッド・ボイル(2002)『マネーの正体 地域通貨は
冒険する』集英社
• 中村尚司(1998)『地域自立の経済学 第二版』日本評論
社
• トーマス・グレコ(2000)『地域通貨ルネサンス』 本の泉
社
• 青木周平(2000)『決済の原理 -決済についての入門
講義』日本銀行
• 西部忠(2002)「LETS論」批評空間Ⅲ-1 27-52p