電気回路学Ⅱ エネルギーインテリジェンスコース 5セメ 山田 博仁 連絡事項 1. 講義担当教員 山田 博仁 ‥ 前半(過渡現象、ラプラス変換、時間域、周波数域解析)担当 大寺 康夫 ‥ 後半(フーリエ変換、信号波解析、歪波交流)担当 2. 教科書および参考書 1) 電気回路 - 三相、過渡現象、線路 - 喜安 善市、斉藤 伸自 著、朝倉書店 2) フーリエ解析 大石 著 岩波書店 3. 成績評価 ・ 講義点と定期試験の両方を勘案して行う ・ 講義点は、出席状況、演習、レポートなどで評価する 4. オフィスアワー 随時、場所: 2号館203号室 (事前に電話またはE-mailにより予約のこと) E-mail: [email protected]、電話(内線): 7101 5. 連絡および講義資料のダウンロード: http://www5a.biglobe.ne.jp/~babe/ 講義日程と内容 日程 (回目) 山 田 大 寺 先 生 講義内容 教科書の章との対応 1) 2) 4/8 (第1回) RL, RC回路の過渡現象 2.1, 2.2 4/15 (第2回) RLC回路の過渡現象 2.3, 2.4 4/22 (第3回) ラプラス変換 5.1, 5.2 5/9(土)(第4回)過渡現象とラプラス変換 6.1~6.2 5/13 (第5回) 過渡現象とラプラス変換の続きと演習 6.3 5/20 (第6回) 過渡関数波、周期波、時間域・周波数域解析 5.3~5.5, 7.1 5/27 (第7回) 微分、積分回路、二次系の伝達特性 7.2 ~7.4 6/3 (第8回) RLC回路、インパルス・ステップ・任意波形応答 7.5, 7.7~7.9 6/10 (第9回) 前半のまとめ 6/17 (第10回) フーリエ変換 4.1, 4.2 6/24 (第11回) フーリエ変換、信号波解析 4.3 7/1 (第12回) フーリエ変換と演習 4.5 7/8 (第13回) 歪波交流 3.1, 3.2 7/15 (第14回) 歪波交流回路の計算と演習 3.4 7/22 (第15回) まとめと演習 定期試験 過渡現象とは? スイッチを入れて、回路が定常状態に移行するまでの現象、あるいは 定常状態にあった回路のスイッチを切った後の現象を扱う 過渡現象 ス ピ ー ド 0 定常状態 時刻: t アクセルペダルを踏む 回路素子が、電源と抵抗のみからなる電気回路では、 時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じる S E t=0 i(t) t < 0 において回路を流れる電流 i(t)は、 i(t) = 0 E t > 0 において回路を流れる電流 i(t)は、 i t R i(t) R 定常状態 E R 0 t 0 この場合、過渡現象は現れない(スイッチを入れた瞬間に定常状態になる) 過渡現象とは? i(t) 定常状態 E R 0 t = 0 において回路を流れる電流 i(t)は ? 0 t t = 0 における扱いに関しては、 t = 0 でスイッチを閉じる直前および直後の時刻を t = – 0 , + 0 で表すと、 E i 0 i(– 0) = 0 である。 R このように、「スイッチを閉じる」といったようなある事象の直前および直後の時刻に おいて取り得る初期値の値が異なる場合、直前の初期値を第1種初期値、直後を第 2種初期値と呼んで区別することがある。 回路素子を流れる電流と両端の電圧との関係 覚えよう ! 1) 抵抗 R を流れる電流 i と両端の電圧 v との関係、 v Ri i 1 v R i v 2) コイル L を流れる電流 i と両端の電圧 v との関係、 vL di dt i 1 t vdt i0 0 L R i v L ただし i0 は、t = 0 の時にコイルに流れていた電流 3) キャパシタ C を流れる電流 i と両端の電圧 v との関係、 v 1 t idt v0 0 C iC dv dt ただし v0 は、t = 0 の時のキャパシタの両端の電圧 i v C 回路素子を流れる電流と両端の電圧との関係 車は急には止まれない ! コイルを流れる電流は、瞬時には変化できない ! 何故なら、瞬時に変化するということは、 i v L vL di dt di を意味し、 dt その場合、左式の関係より、コイル L の両端には ±∞の電圧 が生じることになる。 子供の頃、こんな回路のびっくり箱 を作ったことがありませんか? キャパシタの両端の電圧は、瞬時には変化できない ! 何故なら、瞬時に変化するということは、 i v C iC dv dt 高電圧 ブザー dv を意味し、 dt その場合、左式の関係より、キャパシタ C には ±∞の電流が 流れることになる。 RC直列回路の過渡現象 S t=0 R 時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じる。 t > 0 において回路を流れる電流 i(t)は、 E i(t) C 積分方程式 E Ri (t ) 1 i (t )dt を解いて求められる。 C なお積分範囲は、 – ∞ から現在の時刻 t までである。 電荷 q(t) と電流 i(t) との関係 i (t ) ER dq (t ) を用いて書き直し、 dt dq (t ) q(t ) , t 0 (1) dt C まず、E = 0 とした同次方程式の特解は、 q e (s は定数)を代入した特性方程式 t 1 1 Rs 0 の根 s を用いて、 q e RC と得られるから、A を任意の定数 RC C t st として、E = 0 の時の一般解は、 q f (t ) Ae RC によって与えられる。 dq (t ) 0 (定常状態)とした時の式(1)の解は、 q(t ) EC であるから、 次に、 dt q p EC が E ≠ 0 時の特解であることは明らかである。 RC直列回路の過渡現象 従って、式(1)の解として、 q(t ) q p q f EC Ae t RC を得る。 上式で、任意定数 A は初期条件によって定められる。つまり、 t=0 スイッチ S を閉じる時刻 t = 0 以前に、キャパシタ C が S R 電荷 q0 を蓄えていたとすれば、上式より、 q(0) q0 EC A E i(t) C の関係が成り立つ。従って、 A q0 EC と定まり、 q(t ) q p q f EC q0 ECe 従って電流は、 i (t ) t RC , t 0 (2) となる。 dq (t ) より、 dt dq 1 E q0 RC RC q0 ECe e , t 0 (3) i(t ) dt RC R RC t t と得られる。もちろん t < 0 では、i(t) = 0, q(t) = q0 である。 スイッチ S を閉じる直前および直後の時刻を t = – 0, + 0で表わすと、 t 0 t t i(t )dt idt idt q(0) idt であり、t = – 0, + 0の初期値を各々、 0 0 第1種初期値、第2種初期値と呼ぶ。 RC直列回路の自由振動 S t=0 R i(t) C R + q0 - r t=0 or S i(t) C E +q 0 - 上の回路で、時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じる。 t > 0 において、キャパシタ C に蓄えられていた電荷 q0 が、抵抗 R を通じて放電される 場合を考える。式(3)に E = 0 を代入すると、 t q i(t ) 0 e RC , t 0 (4) によって自由振動電流が与えられる。 RC また、電荷 q(t) は、 t 0 t t 0 0 q (t ) i (t )dt i (t )dt i (t )dt q0 i (t )dt q0 e t t t RC , t 0 (5) となる。 q ここで、τ = RC と置くと、i (t ) 0 e , q(t ) q0e と表わされ、τ を時定数と呼ぶ。 RC 過渡現象の時定数 時定数(time constant) τ の意味 1.0 τ は、初期値の 1/e になる時刻 0.8 e t t = 0 において関数 e に引いた接 線が横軸と交わる点が t = τ に相当 0.6 1 e 0.4 0.2 0 t 1 2 t 3 4 5 消費エネルギー 抵抗 R で消費されるエネルギー W は、先に求めた t q i(t ) 0 e RC , t 0 RC W 0 q 2 (0) Ri dt R RC2 2 と、τ = RC の定義を用いて、 0 e 2 t dt R q 2 (0) 2 0 e 2 t dt t q (0) 2 q 2 (0) q 2 (0) R (6) となる。 e R 2 2 2 C 0 2 ただし、時刻 t = 0 にキャパシタ C に蓄えられている電荷を q(0)とした。 これは、キャパシタ C に初めに蓄えられていた静電エネルギーに等しい。それが全て 抵抗 R で消費されて熱となる。 確認) キャパシタ C に蓄えられる静電エネルギー W は、キャパシタ両端の電圧を V、 キャパシタに蓄えられている電荷を Q とすると、Q = CV より、 1 1 1 Q2 2 W QV CV 2 2 2 C RC直列回路の過渡現象 RC直列回路に直流電圧 E を突如印加した時の電流 i(t) は、キャパシタの初期電荷 q0 が 0 であるとすると式(3)より、 t E i(t ) e RC R (7) であり、 t RC 同様に電荷 q(t) については式(2)より、 q(t ) EC1 e (8) である。 この様に、RC直列回路においては、スイッチを入れた直後は E/R の電流が流れる が、キャパシタ C が充電されていくに従って電流が減少して行き、十分に時間が経 てば(t → ∞)、q(t) は EC に近づき、電流は 0 に近づく。 十分に時間が経過した後の状態を定常状態(steady state)と呼び、その状態を表わす 項を定常項と呼ぶ。上のケースでは、i(t) および q(t) の定常項は各々 0 および EC で ある。また、定常状態になるまでの間を過渡状態(transient)と呼び、この状態を表わ す項を過渡項と呼ぶ。上のケースでは、i(t) および q(t) の過渡項は各々 t t E RC e および ECe RC である。過渡項は t → ∞ において消滅する。 R 上のケースで時定数 τ = RC は、充電される速さ、あるいは過渡項消滅の早さの目安 と考えられる。 RL直列回路の過渡現象 S t=0 R 時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じる。 t > 0 において回路を流れる電流 i(t)は、 E i(t) L 微分方程式 E Ri (t ) L di (t ) (9) dt を解いて求められる。 まず、E = 0 とした同次方程式の一般解を求めるために、A を任意の定数として、 R i i f Aest を代入すると、 R Ls 0 の関係より、 s となる。従って、 L t L i f Ae , である。この if は、過渡項であり、t → ∞ で 0 に収束する。 R di 0 としてよい。 次に、E ≠ 0 の時の特解を求めるが、これは定常項を求めるもので、 dt t E E 即ち、 i is である。従って、求める電流は、 i(t ) is i f Ae となる。 R R ここで、A は積分定数で、初期条件によって定まる。 RL直列回路の過渡現象 S E t=0 R i(t) 図の回路において、t < 0 ではスイッチが開いている から電流は流れない。 L スイッチ を閉じた瞬間の時刻 t = 0 においても、 di (t ) が有限である限り、電流は 0 である。 dt 従って、初期条件としては、t = 0 において i = 0 即ち、 i(0) = 0である。 t E E この初期条件から、 A であり、電流は、i(t ) is i f 1 e R R 第一項が定常解、第二項が過渡解である。また、τ は時定数である。 , t 0 (10) となる。 RL直列回路の自由振動 (例 2.2.1) R0 R0 R R t=0 E S i0 E L S i(t) L t=0 t < 0 での回路 t > 0 での回路 左の回路において、当初はスイッチ S が開いており、コイル L には電流 i0 E R R0 が流れていた。時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じると、右のような回路となり、 di (t ) (11) で与えられる。 回路の動作を表わす微分方程式は、0 Ri (t ) L dt t E L この解は、 i (t ) i f Ae , であり、初期条件としての i0 を用いると、 R R R0 t E E L i(0) A i0 e , が t > 0 での が得られ、従って、 i(t ) R R0 R R0 R 自由振動電流を与える。 消費エネルギー 抵抗 R で消費されるエネルギー W は、先に求めた E L i(t ) e , R R0 R t W 0 E Ri2 dt R R R 0 と i0 2 0 e 2 t E R R0 dt R i02 0 より、 2t 1 2 e dt R i0 e Li02 (12) 2 0 2 となる。 2 t これは、コイル L に初めに蓄えられていた電磁エネルギーに等しい。それが全て 抵抗 R で消費されて熱となる。 確認) コイル L に蓄えられる電磁エネルギー W は、コイルに流れる電流を I、コイル 内の磁束を ϕ とすると、ϕ = LI より、 1 1 2 1 2 W I LI 2 2 2 L (復習)線形常微分方程式の標準的解法 線形集中定数回路の問題は、実定係数の線形微分方程式を解く問題に帰着する。 定係数の線形常微分方程式の一般形として、 a0 y ( n) a1 y ( n1) an1 y' an y f (t ) を考える。ただし、 y (m) また、 a0 0, ai (i 0, 1, , n) は定数とする。 dmy m dt この方程式が t = t0 における初期条件、 y(t0), y’(t0), ‥‥, y(n-1)(t0) を定めれば、 ただ一つの解を持つこと(解の存在定理)は、数学的に証明されている。 この方程式の解法は、まず右辺の f(t) を 0 と置いた同次(斉次)方程式の解を求める。 (a) 同次方程式の解 ( n) ( n1) an1 y' an y 0 f(t) = 0 と置いた同次(斉次)方程式 a0 y a1 y の解は、指数関数以外にない。それを、y = est , (s は定数) としてとして代入すると、 n n1 特性方程式 a0 s a1s an1s an 0 を得る。 この特性方程式の n 個の根、s1, s2, ‥‥, sn の間に等根が無ければ、 y es1t , y es2t , , y esnt が、互いに一次独立な n 個の特解である。 (復習)線形常微分方程式の標準的解法 従って一般解は、任意の定数 ki (i = 1, 2, ‥‥, n)による一次結合 y(t ) k1es1t k2es2t knesnt によって与えられる。 ここで、任意定数 ki は初期条件によって定まる。またもし、特性方程式が重根を有し、 s1 = s2 =‥‥= sm ならば、それらに対する m 個の特解を es1t , tes1t , , t m1es1t とすればよい。 (b) 非同次の場合 f(t) ≠ 0 の場合、上の微分方程式は非同次(非斉次)形という。この場合は、補関数 yc(t) (同次方程式の一般解に同じ)と、特解 yp(t) を求め、一般解 y(t) は、 y(t ) yc (t ) y p (t ) によって与えられる。 多項式や指数関数、正弦関数などの簡単な関数形の f(t) に対しては、簡単に解が 求まるが、それ以外のf(t) に対しては、簡単に解が求まるとは限らず、未定係数法、 定数変化法、演算子法などを用いなければならない。 一般に、受動回路網についての補関数は、t → ∞ で 0 に収束する。十分に時間が 経つと yc は小さくなり、yp のみが残る。このような状態が定常状態であり、 yc の値 が無視できない場合を過渡状態である。また、yc は励振がなくても存在するので、 自由振動項、 yp は励振に関わるので、強制振動項と呼ばれる。
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