第八回 シンプレックス表の経済的解釈 2003.5.15 山梨大学 1 内容と目標 内容: 1.双対問題と双対問題の例 2.シンプレックス表の経済的解釈 3.シャドウ・プライスの意味を学ぶ 目標: 1.双対問題を復習する 2.自分で双対問題を作る 3.シンプレックス表の経済的意味を理解する 2003.5.15 山梨大学 2 双対問題ー原問題Ⅰ 目的関数 Max. f = c1x1+c2x2+…+cnxn (1) 制約条件 a11x1+ a12x2+…+a1nxn ≦ b1 a21x1+a22x2+…+a2nxn ≦ b2 (2) ……………………………. am1x1+am2x2+…+amnxn≦bm x1, x2, …, xn≧0 2003.5.15 山梨大学 3 双対問題Ⅱ 目標関数 Min. z = b1y1+b2y2+…+bmym (3) 制約条件 a11y1+a21y2+…+am1ym ≧ c1 a12y1+a22y2+…+am2ym ≧ c2 (4) ……………………………. a1ny1+a2ny2+…+amnym≧ cn y1, y2, …, ym≧0 2003.5.15 山梨大学 4 原問題Ⅰー>双対問題Ⅱ 問題IIの条件式の係数は、問題Iの 条件式の係数を縦に用い、問題IIの条 件式の定数は、問題Iの目的関数の係 数である。また、問題IIの目的関数の 係数は、問題Iの条件式の定数である。 これらの関係は、次のように書いて示 す。 2003.5.15 山梨大学 5 原問題ー>双対問題 y1 y2 . . . ym x1 x2 ... xn a11 a12 ... a1n a21 a22 ... a2 n . . . . . . . . . a a ... a m2 mn m1 [c1 2003.5.15 c2 … 山梨大学 b1 b 2 . . . bm cn] 6 原問題と双対問題の関係 1)問題IIは問題Iの双対問題とよばれ、 双対問題に対して元の問題Iを原問題と いう。 2)原問題と双対問題の関係は逆も成り 立つ。問題IIを原問題と考えれば、問題 Iは、その双対問題になる。 2003.5.15 山梨大学 7 双対問題の例 例:原料A1 , A2, A3を用いて、2種類 の製品B1 , B2を作る工場があり、原料の 使用量、制限および製品から得られる利 益は、以下の表に示したとおりである。 利益を最大にする生産計画を立てよ。 2003.5.15 山梨大学 8 A1 A2 A3 利 益 B1 B2 4 3 7 3 2 2 2 1 制 限 39 18 56 この問題を数式の形にすれば、B1 , B2の生 産量をx1 , x2としたとき、以下のような線形 計画問題になる。 2003.5.15 山梨大学 9 例の原問題 目的関数 Max. f = 2x1+x2 (5) 制約条件 4x1+3x2 ≦ 39 3x1+2x2 ≦ 18 (6) 7x1+2x2 ≦ 56 x1, x2≧0 2003.5.15 山梨大学 10 例の双対問題 ある会社が、原料A1 , A2, A3をすべて買い 取りたい。このとき、買取会社が工場に対し て申し出る価格を、どのように考えて決めれ ばよいであろうか。A1 , A2, A3の各1単位分 の申し出価格をy1 , y2, y3とすると、買取会社 としては、全体の買取価格をなるべく安くし たいと考えるであろう。 2003.5.15 山梨大学 11 双対問題の解釈 製品B1の1単位分に相当する買取価格は 4y1+3y2+7y3になるが、これがB1の1単位分の 利益を下回っては、工場側は売る気にならない であろう。したがって4y1+3y2+7y3は2以上の値 にならないと、商談は成立しない。B2について も同様である。結局、y1 , y2, y3に対しては, つ ぎのような線形計画問題になる。 2003.5.15 山梨大学 12 目的関数 Min. z = 39y1+18y2+56y3 (7) 制約条件 4y1+3y2 +7y3 ≧ 2 (8) 3y1+2y2+2y3 ≧ 1 y1, y2, y3 ≧0 条件(8)のもとで(7)を最小にするというのが、 買取会社の問題で、これは(5)、(6)の問題の双対 問題になっている。 2003.5.15 山梨大学 13 シンプレックス表の経済的解釈 原問題として、ステップ2で最適解が得られ ている。このステップ2から、次のことがわかる。 1) 基底変数はλ1、x1 、λ3で、非基底変数はx2、 λ2である。最適基底解における各変数の値は x1 =6, x2 =0, λ1 =15, λ2 =0, λ3=14 2) f行によれば、非基底変数のx2 が1単位増加すれ ば、fの値は1/3だけ減少し、同じくλ2 が1単位 増加すれば、fの値は2/3だけ減少する。 2003.5.15 山梨大学 14 原料A1、A2 、A3の使い残りをλ1、λ2 、λ3で表した が、(1)によりλ2=0,λ1 >0,λ3>0であるから、A2 は 使い切ってしまい、A1、A3は残りがあることにな る。ここでλ2 を0から1にするということは、使 い切ることになっていたA2 を1単位使い残すこと で、これはA2 の制限量を18から17に減らした状 態と同じことであるが、(2)によると、このとき利 益が2/3だけ減少したことになる。 2003.5.15 山梨大学 15 これに反して、使い残りのあるA1、A3は 制限量を減らしても利益に影響はない。言 い換えると、この時点ではA2 の1単位は 2/3の価値があり、A1、A3の価値は0である と考えることができる。この意味の価値を シャドウ・プライスまたは帰属価格と呼ん でいる。 2003.5.15 山梨大学 16 表の太ワクbの部分がそのシャドウ・プライス で、これをv1、v2 、v3で示すことにすれば v1=0, v2 =2/3, v3=0 である。もし、この時点で原料の制限を緩和して、 B1を1単位作ることを考えると、それに要する原 料はA1, A2, A3がそれぞれ4, 3, 7単位で、その原 料の価値をシャドウ・プライスで測ると 4v1+3v2+7v3 = 4×0+3×2/3+7×0 = 2 2003.5.15 山梨大学 17 これはB11単位から得られる利益の2に等しい。 すなわち、2の価値を持つ原料を使用して、2の 利益を得る製品を作ることになり、損失を考える なら0である。実は表の太ワクa内の0がこのこ とを示している。同様に、B2 を1単位作るとすれ ば、原料のシャドウ・プライスは、 3v1+2v2+2v3 = 3×0+2×2/3+2×0 = 4/3 であるから、B11単位から得られる利益は1で、 差し引き1/3の損失と考えることができ、そのこと を太ワクa内の1/3が示している。 2003.5.15 山梨大学 18 以上述べた、原料のシャドウ・プライスと製 品の利益の大小関係を式にすれば 4v1+3v2+7v3 = 2 3v1+2v2+2v3 > 1 である。また、v1, v2, v3 は最終ステップのf行 の数であるから非負である。したがって、v1, v2, v3は双対問題の条件式(8)の解である。 2003.5.15 山梨大学 19 目的関数の(7)にこの解を代入すれば Min. z= 39v1+18v2+56v3 であるが、これは最初に与えられた原料全体の 価値をシャドウ・プライスで測ったものといえ よう。いまの場合、その価値は z = 39×0+18×2/3+56×0 = 12 で、これは原問題のfの最大値に一致する。 2003.5.15 山梨大学 20 課 題 4種類の食品F1, F2, F3, F4がある。それぞれの1単位中に含まれるビタミン A, Bの量および各食品1単位の価格が、以下の表のとおりである。 F1 F2 F3 F4 必要量 A 2 3 1 1 20 B 1 0 1 2 18 価格 5 4 6 7 ある主婦が、この4種類の食品を用いて、ビタミンAが少なくとも20単 位、ビタミンBが少なくとも18単位含まれている料理を、なるべく安い価 格で作りたいと考えた。各食品の使用量を決定せよ。 この問題について、元の線形計画問題とその双対問題を作れ。原問題と双 対問題をそれぞれシンプレックス法で解け。原問題の変数・スラック変数と 双対問題の変数・スラック変数を比較する。例に参考して、シャドウ・プラ イスを説明せよ。 2003.5.15 山梨大学 21
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