個人情報保護法への対応

個人情報保護法への対応
いずみの病院 診療情報管理室
本日の講義内容
・個人情報保護法とは
・医療機関が講ずべき措置とは
・ケーススタディー
本日の課題(職員個々人にとって)
・患者さまの個人情報取扱いに関する感覚(マイ
ンド)を磨くこと
・患者さまが持っている「自己情報コントロール権」
について理解すること
・その他の重要な概念について理解すること
(利用制限、第三者提供、黙示の同意、開示etc.)
・データの不適切な第三者提供や漏えい、盗難、
紛失、散逸防止およびデータの信頼性向上につ
いて、意識を高めること
Ⅰ.個人情報保護法とは
Ⅰ.個人情報保護法とは
法律および指針
・個人情報の保護に関する関連5法
個人情報保護法/行政機関個人情報保護法
独立行政法人等個人情報保護法
整備法 その他
・医療・介護事業者用ガイドライン(厚労省)
・冊子「医療機関における個人情報の保護」
(日本医師会)
Ⅰ.個人情報保護法とは
個人情報保護法とは
個人の権利と利益を保護する為に、個人情報を取得
し取り扱っている事業者に対し、様々な義務と対応を
定めた法律
本人である個人の権利を定める法律ではなく、企業
が守らなければならない義務を定めたもの
事業者は、この法律により、種々の義務を果たさなけ
ればならない
※違反すると行政処分を下され、さらに主務大臣の命令に反し
た場合には罰則が科せられる
Ⅰ.個人情報保護法とは
簡単に説明すると
ユーザーから見ると、自分に関係する情報を自分が意
図としない状態では利用させないための権利を定めた
法律
例
ネットで買い物。住所などを記入すると後から変な広
告が来ないか心配 ー> ホームページに個人情報
の利用目的が書いてあるはずなので、それ以外に
使用されたら法律違反を訴えることが可能になる
例:ダイレクトメールが来たけど心当たりがない。
ー> 「自分の情報を取り消せ」 が可能になる。
Ⅰ.個人情報保護法とは
背景……OECD 8原則
①収集制限の原則
⑤安全保護の原則
②データ内容の原則
⑥公開の原則
③目的明確化の原則
⑦個人参加の原則
④利用制限の原則
⑧責任の原則
Ⅰ.個人情報保護法とは
OECD 8原則とは
・個人情報を収集する際には、情報の利用目的を特
定して、それを本人にわかりやすく説明し、不正の
ない方法で収集しなくてはならないこと
・収集した情報は、安全に保管すべきこと
・情報の主体である本人には、自分の情報がどのよう
に集められ、利用されているのか、その内容が正確
であるかを自ら確認する機会が与えられていること
・もし内容に間違いがあれば訂正を、また本人が望ま
ない方法で利用されている場合にはそれをやめさ
せるよう要求できること
など
Ⅰ.個人情報保護法とは
「患者の権利」の変化
BC
ヒポクラテスの誓い ・守秘義務
4-5世紀
1981年 リスボン宣言
・情報を得る権利
・機密保持を得る権利
2005年 個人情報保護法
・自己情報コントロール権
Ⅰ.個人情報保護法とは
厚労省ガイドラインについて
正式名称:「医療・介護関係事業者における個人情報
の適切な取扱いのためのガイドライン」
事業者等が行う個人情報の適正な取扱いの確保に
関する活動を支援するためのガイドライン
厚生労働大臣が法を執行する際の基準となるもの
Ⅰ.個人情報保護法とは
個人情報とは
医療機関等における個人情報の例
・氏名、生年月日、住所、電話番号、診療録、処方せん、
手術記録、助産録、看護記録、検査所見記録、エッ
クス線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間
中の診療経過の要約、調剤録 等
※映像、音声による情報も含まれる
※たとえ氏名、生年月日等の個人識別情報を取り除い
ても、他の情報から「ああ、あの人のことね」と類推が
成り立てば個人情報
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
医療・介護関係事業者の義務 (1)
1.利用目的の特定等(法第15条、第16条)
2.利用目的の通知等(法第18条)
3.個人情報の適正な取得、個人データ内容の正確性
の確保(法第17条、第19条)
4.安全管理措置、従業者の監督及び委託先の監督
(法第20条~第22条)
5.個人データの第三者提供(法第23条)
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
医療・介護関係事業者の義務 (2)
6.保有個人データに関する事項の公表等(法第24
条)
7.本人からの求めによる保有個人データの開示(法
第25条)
8.訂正及び利用停止(法第26条、第27条)
9.開示等の求めに応じる手続及び手数料(法第29条、
第30条)
10.理由の説明、苦情対応(法第28条、第31条)
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
利用目的の特定と通知 (1)
*医療・介護関係事業者は、個人情報を取得するに当
たって、あらかじめその利用目的を公表しておくか、
個人情報を取得した場合、速やかに、その利用目的
を、本人に通知し、又は公表しなければならない
※医療機関において通常想定される利用目的
→ 別表2
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
利用目的の特定と通知 (2)
*利用目的の公表方法としては、院内や事業所内等
に掲示するとともに、可能な場合にはホームページ
への掲載等の方法により、なるべく広く公表する必
要がある
*受付で患者に保険証を提出してもらう場合や問診票
の記入を求める場合など、本人から直接書面に記
載された当該本人の個人情報を取得する場合は、
あらかじめ、本人に対し、その利用目的を院内掲示
等により明示しなければならない
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
個人情報の適正な取得
*医療・介護関係事業者は、偽りその他の不正
の手段により個人情報を取得してはならない
具体的ケース → ケーススタディー
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
安全管理措置
①個人情報保護に関する規程の整備、公表
②個人情報保護推進のための組織体制等の整備
③個人データの漏えい等の問題が発生した場合等に
おける報告連絡体制の整備
④雇用契約時における個人情報保護に関する規程の
整備
⑤従業者に対する教育研修の実施
⑥物理的安全管理措置
⑦技術的安全管理措置
等
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
規程の整備、公表
*医療・介護関係事業者は、保有個人データの開示手
順を定めた規程その他個人情報保護に関する規程を
整備し、苦情への対応を行う体制も含めて、院内や事
業所内等への掲示やホームページへの掲載を行うな
ど、患者・利用者等に対して周知徹底を図る
*また、個人データを取り扱う情報システムの安全管理
措置に関する規程等についても同様に整備を行うこと
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
組織体制等の整備
*医療における個人情報保護に関し十分な知
識を有する管理者、監督者等を定めたり、個
人情報保護の推進を図るための委員会等を
設置する
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
雇用契約時における取り決め
*雇用契約や就業規則において、就業期間中
はもとより離職後も含めた守秘義務を課すな
ど従業者の個人情報保護に関する規程を整
備し、徹底を図る
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
物理的・技術的安全管理措置
*物理的安全管理措置
個人データの盗難・紛失等を防止するため、以下のような物
理的安全管理措置を行う
入退館(室)管理の実施/盗難等に対する予防対策
の実施/機器、装置等の固定など物理的な保護
*技術的安全管理措置
個人データの盗難・紛失等を防止するため、個人データを取
り扱う情報システムについて以下のような技術的安全管理措
置を行う
アクセス管理/アクセス記録の保存
ファイアウォール設置
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
物理的・技術的安全管理措置の具体例 (1)
個人情報管理方法の例(病院全体)
*病院内の出入りを厳重にする
*監視カメラの運用の再検討
*人手が全くいなくなる部屋には原則鍵を掛ける
(施錠場所・時刻の再検討等)
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
物理的・技術的安全管理措置の具体例 (2)
個人情報管理方法の例(各部署編)
*各部署で扱っている個人情報一覧を作成する
*個人情報の保管方法のチェック
(デスク上のファイル、引き出し、施錠、パソコン、ロッカーetc.)
*個人情報の保有期限を設ける
*適切な廃棄方法を検討する
(シュレッダー、ゴミ出しルール、裏紙の使用、ミスコピーetc.)
*整理整頓
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
物理的・技術的安全管理措置の具体例 (3)
情報セキュリティ対策の例
*個人のノートコンピューターは一番危険!
・患者の個人情報(紙・メディア)を持ちかえってはいけない
・インターネットのメールによる個人情報送信はダメ
・USBメモリー等には個人情報を入れない
*医局のPC(ハードディスク)に患者の個人データは入
れず、サーバーに保管する
*PCが万一盗難にあったときも大丈夫なようなデータ
保持方法にする
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは……安全管理措置
物理的・技術的安全管理措置の具体例 (4)
関連:適切な診療録管理
*カルテの散逸防止
(貸出-返却ルール遵守、帳票毎のID付番etc.)
*カルテ記載および訂正ルールの遵守
(含.綴り順、読める文字での記載、署名の徹底etc.)
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
個人データの第三者提供
*医療・介護関係事業者においては、あらかじめ本人の
同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはな
らない
※ただし、次のような例外あり(cf.ケーススタディー)
・家族等への情報提供
・法令に基づく場合等、本人同意不要のケース
・包括的同意(黙示の同意)
・「第三者」にはあたらないケース
Ⅱ.医療機関が講ずべき措置とは
保有個人データの開示
*開示の原則
・保有個人データの開示を求められたときは、本人に対し、
書面の交付による方法等により、遅滞なく、当該保有個人
データを開示しなければならない
・ただし、例外あり (→ ケーススタディー)
*開示手続き
・開示等の求めの方法は書面によることが望ましいが、
患者・利用者等の自由な求めを阻害しないため、開示等を
求める理由を要求することは不適切である
Ⅲ.ケーススタディー
・匿名化
・個人情報の適正な取得
・利用制限および第三者提供
・個人データの開示
・その他
Ⅲ.ケーススタディー ……匿名化
学会発表などの場合における留意点
*顔写真については、一般的には目の部分にマスキングすること
で特定の個人を識別できないと考えられる
*特定の患者・利用者の症例や事例を学会で発表したり、学会誌
で報告したりする場合等は、氏名、生年月日、住所等を消去す
ることで匿名化されると考えられるが、症例や事例により十分な
匿名化が困難な場合は、本人の同意を得なければならない
(cf.第三者提供の同意)
Ⅲ.ケーススタディー ……匿名化
医療事故が発生した時
*医療事故等に関する情報提供に当たっては、患者・利用者及び
家族等の意思を踏まえ、報告において氏名等が必要とされる場
合を除き匿名化を行う
*医療事故発生直後にマスコミへの公表を行う場合等については、
匿名化する場合であっても本人又は家族等の同意を得るよう努
める
(cf.第三者提供の同意)
Ⅲ.ケーススタディー ……匿名化
MR等への情報提供
(適切ではない例)
医師及び薬剤師が製薬企業のMR(医薬品情報担当
者)、医薬品卸業者のMS(医薬品販売担当者)等との間
で医薬品の投薬効果などについて情報交換を行う場合
に、必要でない氏名等の情報を削除せずに提供すること
Ⅲ.ケーススタディー ……個人情報の適正な取得
個人情報の適正な取得
*過去の受診歴等については、真に必要な範囲につい
て、本人から直接取得するほか、第三者提供について
本人の同意を得た者から取得することを原則とする
(黙示の同意が得られていると考えられる者を含む)
*親の同意なく、十分な判断能力を有していない子ども
から家族の個人情報を取得してはならない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
民間保険会社からの照会
*生命保険会社から患者の健康状態等について照会が
あった場合、患者の同意を得ずに患者の現在の健康
状態や既往歴等を回答してはならない
*交通事故によるけがの治療を行っている患者に関して、
保険会社から症状に関する照会があった場合、患者
の同意を得ずに回答してはならない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
民間保険会社からの照会
……同意書があればOK?
次の場合には注意(本人の意思確認etc.)が必要
①本人による具体的意思を把握できない包括的な委任
に基づく請求(白紙委任状)
②(照会等の)請求が行われる相当以前に行われた委
任に基づく請求
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
職場からの照会
*職場の上司等から、社員の病状に関する問い合わせ
があったり、休職中の社員の職場復帰の見込みに関
する問い合わせがあった場合、患者の同意を得ずに
患者の病状や回復の見込み等を回答してはならない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
学校からの照会
*学校の教職員等から、児童・生徒の健康状態に関す
る問い合わせがあったり、休学中の児童・生徒の復学
の見込みに関する問い合わせがあった場合、患者の
同意を得ずに患者の健康状態や回復の見込み等を
回答してはならない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
マーケティング等を目的とする会社等からの照会
*健康食品の販売を目的とする会社から、高血圧の患
者の存在の有無について照会された場合や要件に該
当する患者を紹介して欲しい旨の依頼があった場合、
患者の同意を得ずに患者の有無や該当する患者の氏
名・住所等を回答してはならない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
家族等への情報提供 (1)
*個人データを第三者提供する場合には、あらかじめ本
人の同意を得ることを原則としている
*一方、家族等への病状説明については、「患者への医
療の提供に必要な利用目的」と考えられ、院内掲示等
により「当院における個人情報の利用目的」としてすで
に明記されている(=黙示の同意)
*が、本人以外の者に病状説明を行う場合は、本人に
対し、あらかじめ病状説明を行う家族等の対象者を確
認し、同意を得ることが望ましい
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
家族等への情報提供 (2)
*本人から申出がある場合には、現実に患者の世話をしている親
族およびこれに準ずる者を説明を行う対象に加えたり、家族の特
定の人を限定するなどの取扱いとすることができる
*意識不明の患者の病状や重度の痴呆性の高齢者の状況を家族
等に説明する場合は、本人の同意を得ずに第三者提供できる
*本人の意識が回復した際には、速やかに、提供・取得した個人情
報の内容とその相手について本人に説明するとともに、本人から
の申出があった場合、取得した個人情報の内容の訂正等、病状
の説明を行う家族等の対象者の変更等を行う
*患者の判断能力に疑義がある場合は、意識不明の患者と同様
の対応を行う
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
遺族に対する情報提供 (1)
*遺族から照会が行われた場合、医療・介護関係事業
者は、患者・利用者本人の生前の意思、名誉等を十
分に尊重しつつ、特段の配慮が求められる
*遺族に対する診療情報の提供については、「診療情
報の提供等に関する指針」の9 (→ 次のスライド)に
おいて定められている取扱いに従って、診療情報・介
護関係の記録の提供を行うものとする
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
遺族に対する情報提供 (2)
診療情報の提供等に関する指針(H15.9.12)より
*医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対し
て、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療
情報を提供しなければならない。
*診療記録の開示を求め得る者の範囲は、患者の配偶者、子、
父母およびこれに準ずる者(これらの者に法定代理人がいる場
合の法定代理人を含む)とする。
*遺族に対する診療情報の提供にあたっては、患者本人の生前
の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である。
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
未成年者の場合の同意
*患者が未成年者等の場合、一定の判断能力を有する
未成年者等については、法定代理人等の同意にあわ
せて本人の同意を得る
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
法令に基づく場合 (1)
*医療法に基づく立入検査、介護保険法に基づく不正
受給者に係る市町村への通知、児童虐待の防止等に
関する法律に基づく児童虐待に係る通告等の場合(別
表3参照)は、本人の同意を得る必要はない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
法令に基づく場合 (2)
*刑事訴訟法第218条(令状による捜査)、地方税法第
72条の63 (個人の事業税に係る質問検査権、各種
税法に類似の規定あり)等は強制力を伴って回答が
義務づけられるため、医療・介護関係事業者は捜査
等が行われた場合、回答する義務が生じる
cf.刑事訴訟法第197条第2項(捜査に必要な取調べ)
→ 次のスライド
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
法令に基づく場合 (3)
*刑事訴訟法第197条第2項(捜査に必要な取調べ)等
については、個人情報保護法の例外規定の対象であ
るが、当該法令において任意協力とされており、この
場合、本人の同意を得ずに個人情報の提供を行った
としても、個人情報保護法第16条違反とはならないが、
場合によっては、当該本人からの民法に基づく損害賠
償請求等を求められるおそれがある
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
同意困難事例 (1)
*人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある
場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
(例)
・意識不明で身元不明の患者について、関係機関へ
照会する場合
・意識不明の患者の病状や重度の痴呆性の高齢者
の状況を家族等に説明する場合
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
同意困難事例 (2)
*公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必
要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
(例)
・健康増進法に基づく地域がん登録事業による国又は地方公共
団体への情報提供
・がん検診の精度管理のための地方公共団体又は地方公共団体
から委託を受けた検診機関に対する精密検査結果の情報提供
・児童虐待事例についての関係機関との情報交換
・医療安全の向上のため、院内で発生した医療事故等に関する国、
地方公共団体又は第三者機関等への情報提供のうち、氏名等
の情報が含まれる場合
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
国の統計調査等
*国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令
の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合
であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を
及ぼすおそれがあるとき
(例)
・国等が実施する、統計報告調整法の規定に基づく統計報告の
徴集(いわゆる承認統計調査)及び統計法第8 条の規定に基づ
く指定統計以外の統計調査(いわゆる届出統計調査)に協力す
る場合
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※ 利用制限および第三者提供の例外
目的外利用の例外
・本人の同意を得るために個人情報を利用すること(同意
を得るために患者・利用者の連絡先を利用して電話をか
ける場合など)、
・個人情報を匿名化するために個人情報に加工を行うこと
は差し支えない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
黙示の同意
*第三者への情報提供のうち、患者の傷病の回復等を含めた患
者への医療の提供に必要であり、かつ、個人情報の利用目的
として院内掲示等により明示されている場合は、原則として黙
示による同意が得られているものと考えられる
*なお、傷病の内容によっては、患者の傷病の回復等を目的とし
た場合であっても、個人データを第三者提供する場合は、あら
かじめ本人の明確な同意を得るよう求めがある場合も考えら
れる
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
院内掲示等により包括的同意が得られるケース
*患者への医療の提供のために通常必要な範囲の利用目的につ
いて、院内掲示等で公表しておくことによりあらかじめ包括的な
同意を得る場合
(ア) 他の医療機関等との連携を図ること
(イ) 外部の医師等の意見・助言を求めること
(ウ) 他の医療機関等からの照会があった場合にこれに応じること
(エ) 家族等への病状の説明を行うこと
等が利用目的として特定されている場合は、これらについても
患者の同意があったものと考えられる
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
紹介状を本人に渡す場合
*医療機関等において他の医療機関等への紹介状、処
方せん等を発行し、当該書面を本人が他の医療機関
等に持参した場合、当該第三者提供については、本人
の同意があったものと考えられ、当該書面の内容に関
し、医療機関等との間での情報交換を行うことについ
て同意が得られたものと考えられる
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
他医からの照会に回答する場合
*診療所Aを過去に受診したことのある患者が、病院B
において現に受診中の場合で、病院Bから診療所Aに
対し過去の診察結果等について照会があった場合、
病院Bの担当医師等が受診中の患者から同意を得て
いることが確認できれば(診療所Aが当該患者本人か
ら直接確認しなくても)、診療所Aは自らが保有する診
療情報の病院Bへの提供について、患者の同意が得
られたものと考えられる
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
家族立ち会いの病状説明
*本人と家族等に対し同時に説明を行う場合には、明示
的に本人の同意を得なくても、本人の同意が得られた
ものと考えられる
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
健診結果の事業所への送付等
*医療機関等が、労働安全衛生法第66条、健康保険法第150条、
国民健康保険法第82条又は老人保健法第20条により、事業
者、保険者又は市町村が行う健康診断等を受託した場合、その
結果である労働者等の個人データを委託元である当該事業者、
保険者又は市町村に対して提供することについて、本人の同意
が得られていると考えられる
cf.法定外健診(追加項目を含む)についてはこの限りではない
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
※黙示の同意
介護サービスの場合
*介護関係事業者については、介護保険法に基づく指定基準に
おいて、サービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる
場合には利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる
場合には家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなけれ
ばならないとされていることを踏まえ、事業所内への掲示による
のではなく、サービス利用開始時に適切に利用者から文書によ
り同意を得ておくことが必要である
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
「第三者」に該当しない場合 (1)
*他の事業者等への情報提供であるが、「第三者」に該当しない
場合
・検査等の業務を委託する場合
・外部監査機関への情報提供(病院機能評価等)
・個人データを特定の者との間で共同して利用するとして、
あらかじめ本人に通知等している場合
Ⅲ.ケーススタディー ……利用制限および第三者提供
「第三者」に該当しない場合 (2)
同一事業者内における情報提供であり、第三者に該当しない場合
・病院内の他の診療科との連携など当該医療・介護関係
事業者内部における情報の交換
・同一事業者が開設する複数の施設間における情報の交換
・当該事業者の職員を対象とした研修での利用
・当該事業者内で経営分析を行うための情報の交換
ただし、
医療・介護関係事業者内部の研修で診療録や介護関係記録等を
利用する場合には、具体的な利用方法を含め、あらためて本人の
同意を得るか、個人が特定されないよう匿名化する(cf.匿名化)
Ⅲ.ケーススタディー ……個人データの開示
開示の原則
*保有個人データの開示を求められたときは、本
人に対し、書面の交付による方法等により、遅
滞なく、当該保有個人データを開示しなければ
ならない
Ⅲ.ケーススタディー ……個人データの開示
開示の例外
*開示することで、法第25条第1項の各号のいずれかに該当
する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる
(例)
・患者・利用者の状況等について、家族や患者・利用者の関係者
が医療・介護サービス従事者に情報提供を行っている場合に、こ
れらの者の同意を得ずに患者・利用者自身に当該情報を提供す
ることにより、患者・利用者と家族や患者・利用者の関係者との
人間関係が悪化するなど、これらの者の利益を害するおそれが
ある場合
・症状や予後、治療経過等について患者に対して十分な説明をし
たとしても、患者本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療
効果等に悪影響を及ぼす場合
Ⅲ.ケーススタディー ……その他
受付での呼び出しや名札掲示は?
*受付での呼び出しや、病室における患者の名
札の掲示などについては、患者の取り違え防止
など業務を適切に実施する上で必要と考えられ
るが、医療におけるプライバシー保護の重要性
にかんがみ、患者の希望に応じて一定の配慮
をすることが望ましい
まとめ
インフォメーション・マネジメント
*医療における個人情報は、センシティブ情報
(機微情報)の固まり
「持つことのリスク」という発想が必要
まとめ
インフォメーション・マネジメント
取得
管理
何のために取得するのか
―― 必要性と方法の適正性
何のために利用し、誰と利用するのか
―― 目的と情報共有の範囲
どのような安全管理をするのか
破棄
保管条件、期限および破棄ルール
利用
まとめ
インフォメーション・マネジメント
*善意は合法性を担保しない !!
「患者のために」と思ってしたことが、患者の自
己決定を侵害するケースがあり得る
まとめ
インフォメーション・マネジメント
*立ち止まって考える勇気とルールが必要 !!
・患者の医療情報を、当該診療に携わる者以外に
伝達するとき
・それを診療以外に用いる場合
第三者使用や目的外使用にあたるかもしれ
ないと考え、立ち止まるセンスが必要
※「もしかすると個人情報保護法によって許されない
のではないか?」と、立ち止まる勇気とセンス
最後に
*医療情報に関して言うと…
「医療の主人公は患者」
この命題がすでに法的に実現したということ
*いずみの病院の理念=患者本位
理念実現のためにも
「個人情報の適切な取扱い」を徹底すること
が極めて重要である !!
再び、本日の課題(職員個々人にとって)
・患者さまの個人情報取扱いに関する感覚(マイ
ンド)を磨くこと
・患者さまが持っている「自己情報コントロール権」
について理解すること
・その他の重要な概念について理解すること
(利用制限、第三者提供、黙示の同意、開示etc.)
・データの不適切な第三者提供や漏えい、盗難、
紛失、散逸防止およびデータの信頼性向上につ
いて、意識を高めること
最後までのお付き合い、
ありがとうございました