ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第7回) 第4章 戦略形ゲームの応用 2014年5月23日 担当 古川徹也 2014/05/23 1 今日の講義 • 教科書第4章「戦略形ゲームの応用」 4.3 4.4 2014/05/23 【応用】オークション 【実践】インターネットオークション 2 4.3.1 オークションとゲーム理論 • オークションは,卸売市場やサザビーズなど の限られた場所だけでなく,ネットオーク ションなど,我々の生活に深く浸透している。 • 公的機関のオークション,入札,温室効果ガ ス排出権取引など。 • オークションの理論は,ゲーム理論の応用分 野として成功をおさめているものの1つ。 • ミルグロム・ウィルソンによる周波数オーク ションの設計など,オークションの理論が実 際にも応用されている。 2014/05/23 3 4.3.2 オークションの経済学的意義 • 経済学では,社会的総余剰が最大化され た配分が,「効率的な資源配分」と呼ば れれる。 • 端的に言うと,「ある財をもっとも高く 評価する人の手に渡るのが望ましい」と いうこと。 • 逆に言えば,それほど欲しくない人の手 元にわたってしまう配分をもたらすよう なメカニズムは望ましくないと言える。 • オークションは,もっとも高く評価する 人の手に渡るようなメカニズムである。 2014/05/23 4 モデル15 1200円 売り手 買い手1 評価額 500円 評価額 買い手の余剰 300円 売り手の余剰 700円 財 2014/05/23 1500円 社会的総余剰 1000円 5 社会的総余剰と財の配分 • 「交換は社会の幸せを高める」:交換に より評価の高い人に財を移動させること で,余剰が生まれる。 • 適当な価格を設定することで,交換が双 方に利益を生み出し,社会の幸せを高め ることを促進する。 • 価格水準は,社会的総余剰の配分を決め るものであって大きさを決めるものでは ない(交換が成立する範囲であれば)。 2014/05/23 6 モデル16 社会的総余剰 2000円 買い手1 評価額 財 売り手 評価額 1500円 500円 売り手の余剰 1100円 買い手2 1600円 評価額 2500円 買い手の余剰 900円 2014/05/23 7 効率的資源配分 • 売買と余剰の大きさとの関係 (1) 交換が起きない:余剰0円 (2) 買い手1が買う:余剰1000円 (3) 買い手2が買う:余剰2000円 • 「買い手2が買う」という状態が,効率 的資源配分の状態。 • 効率的資源配分を達成するメカニズム (ここでは(1)(2)が起こらないようにする メカニズム)の1つがオークション 2014/05/23 8 4.3.3 様々なオークション • 単一財オークションと複数財オークショ ン:ここでは単一財のケースを考える。 • 公開オークションと封印オークション • 公開オークションの代表例:イングリッ シュオークションとダッチオークション • 封印オークション:参加者が入札価格を 紙に封印して競り人に渡し,開封して一 番高い値段をつけた参加者が落札 2014/05/23 9 4.3.3 ファースト&セカンド プライスオークション • ファーストプライスオークション:封印 オークションで落札者の書いた価格が落 札価格(落札者が払う価格)となるオー クション。 • セカンドプライスオークション:一番高 い値をつけたものが落札者となるが,落 札価格(支払額)は2番目に高い入札額。 • セカンドプライスオークションは,ネッ トオークションの一部で使われているに 過ぎないが,理論的には重要。 2014/05/23 10 4.3.4 セカンドプライスオークション • 入札者は2人という場合を考える。 (1) 入札額の最少単位:500円 (2) 最低入札額:500円 (3) 同点のとき:くじびき。50%の確率で手 に入れることができる。 • 先ほどと同様買い手1の評価額は1500円, 買い手2の評価額は2500円とする。 2014/05/23 11 セカンドプライスオークションの利得行列 買い手2 500 1000 1500 2000 2500 3000 500 (5, 10) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) 1000 (10, 0) (2.5, 7.5) (0, 15) (0, 15) (0, 15) (0, 15) 1500 (10, 0) (5, 0) (0, 5) (0, 10) (0, 10) (0, 10) 2000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-2.5, 2.5) (0, 5) (0, 5) 2500 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-5, 0) (0, 0) 3000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-10, 0) (-7.5, -2.5) 買い手1 2014/05/23 12 ナッシュ均衡は?:全部で20個! 買い手2 500 1000 1500 2000 2500 3000 500 (5, 10) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) 1000 (10, 0) (2.5, 7.5) (0, 15) (0, 15) (0, 15) (0, 15) 1500 (10, 0) (5, 0) (0, 5) (0, 10) (0, 10) (0, 10) 2000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-2.5, 2.5) (0, 5) (0, 5) 2500 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-5, 0) (0, 0) 3000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-10, 0) (-7.5, -2.5) 買い手1 2014/05/23 13 自分の評価額を入札することが弱支配戦略 買い手2 500 1000 1500 2000 2500 3000 500 (5, 10) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) (0, 20) 1000 (10, 0) (2.5, 7.5) (0, 15) (0, 15) (0, 15) (0, 15) 1500 (10, 0) (5, 0) (0, 5) (0, 10) (0, 10) (0, 10) 2000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-2.5, 2.5) (0, 5) (0, 5) 2500 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-5, 0) (0, 0) 3000 (10, 0) (5, 0) (0, 0) (-5, 0) (-10, 0) (-7.5, -2.5) 買い手1 2014/05/23 14 2ndの場合の入札額と利得 Y≦L L<Y≦X X<Y≦H Y>H Xより小さい Lを入札 X-Y>0 O 0 0 Xを入札 X-Y>0 X-Y≧0 0 0 XをこえるH を入札 X-Y>0 X-Y≧0 X-Y<0 0 HやLを入札する戦略を,Xを入札する戦略が 弱支配する。→真の評価額を入札することが各 プレイヤーにとって弱支配戦略。したがって, 財は最も高い評価額をもつプレイヤーの手元に 行き,支払額は2番目に高い評価額となる。 2014/05/23 15 メカニズムデザイン ポイント28(メカニズムデザイン)入札方 法,税の徴収方法,契約方法など,ルール が決まれば人の行動は変化する。これを読 み込んで新しい制度を設計する方法が,メ カニズムデザインである。 2014/05/23 16 4.3.5 ファーストプライスオークション • 入札者は2人という場合を考える。 (1) 入札額の最少単位:500円 (2) 最低入札額:500円 (3) 同点のとき:くじびき。50%の確率で手 に入れることができる。 • 先ほどと同様買い手1の評価額は1500円, 買い手2の評価額は2500円とする。 2014/05/23 17 ファーストプライスオークションの利得行列 買い手2 500 1000 1500 2000 2500 3000 500 (5, 10) (0, 15) (0, 10) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 1000 (5, 0) (2.5, 7.5) (0, 10) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 1500 (0, 0) (0, 0) (0, 5) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 2000 (-5, 0) (-5, 0) (-5, 0) (-2.5, 2.5) (0, 0) (0, -5) 2500 (-10, 0) (-10, 0) (-10, 0) (-10, 0) (-5, 0) (0, -5) 3000 (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-7.5, -2.5) 買い手1 2014/05/23 18 ナッシュ均衡:3つ 買い手2 500 1000 1500 2000 2500 3000 500 (5, 10) (0, 15) (0, 10) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 1000 (5, 0) (2.5, 7.5) (0, 10) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 1500 (0, 0) (0, 0) (0, 5) (0, 5) (0, 0) (0, -5) 2000 (-5, 0) (-5, 0) (-5, 0) (-2.5, 2.5) (0, 0) (0, -5) 2500 (-10, 0) (-10, 0) (-10, 0) (-10, 0) (-5, 0) (0, -5) 3000 (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-15, 0) (-7.5, -2.5) 買い手1 2014/05/23 19 弱支配される戦略の繰り返し削除 • 順序に依存する解を避けるため,「弱支配さ れた戦略は両プレイヤー同時に削除する」と いう方法をとる。 • 両プレイヤーの特徴 (1) 買い手1:1500円以上の入札は,1000円の入 札に弱支配される。また500円の入札も, 1000円の入札に弱支配される。 (2) 買い手2:2500円以上の入札は,2000円の入 札に支配または弱支配される。500円の入札 も,1000円の入札に弱支配される。 2014/05/23 20 ファーストプライスオークションの利得行列 (削除済み) 買い手2 買い手1 1000 1000 1500 2000 (2.5, 7.5) (0, 10) (0, 5) ・評価額がもっとも高い買い手以外は,自分の評価額 より1単位低い入札額だけが残る。ここでは買い手1 の「1000円」 ・このとき,買い手2にとっては2番目に高い評価額が 他の入札額を弱支配。→1500円を入札 2014/05/23 21 ファーストプライスオークション • 支配された戦略の繰り返し削除で解くと,評 価額の一番高い買い手が2番目に高い評価額 を入札し,その他の買い手は評価額より1単 位低い価格を入札することがゲームの解とな る。このとき評価額の一番高い買い手が2番 目に高い評価額で落札する結果となる。 • これは,相手の評価額が分かっているケース の結論だが,不確実な場合でも同等の結果を 得られる(収入等価定理)。 • ある仮定のもとで,広いクラスのオークショ ンに収入等価定理が成立する(!) 2014/05/23 22 演習4.4 1の評価は2,2の評価5 ファーストプライス 0 1 2 3 4 5 6 0 1 2,0 2 2,0 3 2, 4 5 6 2014/05/23 23 演習4.4 1の評価は2,2の評価5 セカンドプライス 0 1 2 3 4 5 6 0 1,2.5 0,5 0,5 0,5 0,5 0,5 0,5 1 2,0 0.5,2 0,4 0,4 0,4 0,4 0,4 2 2,0 1,0 0,1.5 0,3 0,3 0,3 0,3 3 2,0 1,0 0,0 -0.5,1 0,2 0,2 0,2 4 2,0 1,0 0,0 -1,0 -1,0.5 0,1 0,1 5 2,0 1,0 0,0 -1,0 -2,0 -1.5,0 0,0 6 2,0 1,0 0,0 -1,0 -2,0 -3,0 -2,-0.5 2014/05/23 24
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