科学技術大国中国の台頭」

「躍進する中国科学技術力」
有馬 朗人
財団法人日本科学技術振興財団会長
元科学技術庁長官
元文部大臣
1
目次
・研究開発費及び研究者数の推移について
・教育状況について
・高等教育の状況について
・高校生国際科学オリンピックでの成績について
・研究者の留学歴について
・研究論文について
・論文発表数シェアについて
・論文関連の国際比較における位置づけ
・論文共著関係について
・青少年の夢と希望について
・アジアにおける科学技術協力について
2
中国の研究開発費及び研究者数の
推移について
3
中国の研究開発費の総額は経済の発展と並行して急激に増加し、米国、
日本及びEU全体には及ばないものの、韓国、フランス、ドイツなどより多くな
り、 2006年では、 8600億ドルを超えている。
図1 主要国等の研究開発費の推移(購買力平価換算)
350000
米国:343,748
米国
EU25
EU15
300000
日本
中国
ドイツ
250000
EU25:241,369
EU15:230,596
フランス
百万ドル(PPP)
イギリス
200000
韓国
カナダ
150000
日本:138,782
100000
中国:86,758
ドイツ:66,689
50000
フランス:41,436
韓国:35,886
イギリス:35,591
カナダ:23,306
0
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
年
4
出典:JST研究開発戦略センター
中国の研究開発費対GDP比率も同じ増加する傾向にあり、さらに、中国政府
は2010年までに現在の対GDP比1.4前後から2.0以上に、2020年には2.5以上
に上昇させることを計画している。
図2 主要国等の研究開発費の対G D P 比の推移
(%)
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
日本
米国
ドイツ
フランス
英国
EU-15
EU-27
中国
韓国
ロシア
インド
日本 3.61
韓国 3.23
米国 2.62
ド イツ 2.51
2.5
フランス 2.12
EU-15 1.91
EU-27 1.84
英国 1.78
2.0
1.5
中 国 1.43
ロ シ ア 1.08
1.0
イ ン ド 0.61
0.5
0.0
1981 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 ( 年 度)
注:
1.国際比較を行うため、各国とも人文・
社会科学を含めている(
韓国を除く)
。
2.日本は、1996年度及び2001年度に調査対象産業が追加されている。
3.米国の2005年度以降は暫定値である。フランスの2006年度は暫定値である。ドイツの2006年度は暫定値である。EU -27は、O EC D の推計値である。
4.EU -15 (15か国;
ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、デンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、オーストリア、フィンランド、スウェーデン)
5.EU -27 (EU -15に加えて以下の12か国;
キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、 リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア)
6.中国の1999年以前の値は、過小評価されたか、または過小評価されたデータに基づいている。2000年の値は前年のデータとは継続性がない。
出典:
文部科学省「
科学技術白書」
(
平成20年版)
5
1990年代の中国の研究者数は日本と同規模であったが、2007年では米国
や欧州全体と同規模にあり、日本の2倍近くなり、122.4万人になっている。
図3 主要国等の研究者数の推移
(万 人)
160.0
日本
米国
米国 139.5
EU-27 130.1
中 国 122.4
EU-15 108.7
ドイツ
140.0
フランス
英国
120.0
韓国
中国
EU-15
100.0
EU-27
80.0
日本 71.0
60.0
40.0
ドイ ツ 28.0
フ ラン ス 20.4
韓国 20.0
英国 18.0
20.0
0.0
1981
83
85
87
89
91
93
95
97
99
2001
03
05
07(年 )
出典:
文部科学省「
科学技術白書」
(
平成20年版)
6
40代から50代前半の若手の活躍が際立っている。例えば、中国科学院の研究所所
長の年齢構成について、約7割近くは40代に集中していることが分かる。
図4 中国科学院各研究所所長の年齢構成(
2008年8月現在)
60歳以上
3%
40歳以下
2%
50~54歳
27%
40~44歳
32%
45~49歳
36%
出典:
中国科学技術力研究会「
中国の科学技術力について」
7
また、211プロジェクト各認定大学学長の年齢構成についても、約6割近く
は40代後半から50代前半に集中していることが分かる。
図5 211プロジェクト各認定大学学長の年齢構成(
2008年8月現在)
40~44歳
1%
60歳以上
24%
55~59歳
17%
45~49歳
18%
50~54歳
40%
注:211プロジェクトは21世紀に向けて、中国の大学の中で世界トップレベルの大学を育成することを目的
とした計画であり、1993年に開始された。21世紀に約100の大学を重点的に育成するということから、
211プロジェクトと略称されている。2005年時点で107の大学が認定されている。
出典:
中国科学技術力研究会「
中国の科学技術力について」
8
中国の教育状況について
9
中国の科学・工学系の博士号を取得した人材数が大幅に増えている
(2000ー2004年まで約1.9倍)。2003年には中国は既に日本や欧州主要国
を抜いて米国に次いで世界第二位となった。
図6 主要国等の科学工学系博士号取得者数の推移
(千人)
30.0
日本
米国 28.0
米国
ドイツ
英国
25.0
中国
韓国
20.0
中国 14.9(2004)
15.0
ドイツ 12.2
10.0
英国 9.4
日本 7.7
5.0
韓国 3.5(2004)
資料: NSF 「Science and Engineering Indicators 2008」 Appendix table 2-42、2-43をもとに作成
0.0
1985
87
89
91
93
95
97
99
2000
01
02
03
04
出典:
文部科学省「
科学技術白書」
(
平成20年版)
05
(年)
10
中国の大学院への進学者数は急増している(2000~2007年まで約4倍) 。
2007年では119.5万人になり、日本(26.2万人)の約4.5倍となっている。
図7 日中の大学院における在学者数の推移
(万人)
140
119.5
120
100
中国
日本
80
60
40
30.1
20
20.5
26.2
0
1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 (年)
出典:「中国統計年鑑(2008年)」及び「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
11
また、2007年の大学院在学者の専攻内訳を見ると、中国では、理・工学を専
攻している学生の数は約5割になっていることが分かる。
図8 中国の大学院在学者の専攻内訳(
2007年)
軍事学
0.1%
管理学
11.3%
哲学
1.2% 経済学
4.7%
法学
6.7%
教育学
3.4%
医学
10.8%
文学
7.9%
農学
3.8%
歴史学
1.4%
理学
12.2%
工学
36.5%
12
出典:
「
中国統計年鑑(2008年)
」
により作成
一方、日本の大学院在学者の専攻内訳を見ると、社会科学全般と理・工学を
専攻している学生はそれぞれ3割位となっていることが分かる。
図9 日本の大学院在学者の専攻内訳(
2007年)
芸 術
1.6%
教 育
4.5%
その他
8.6%
人文科学
6.6%
保 健
11.6%
社会科学
31.3%
農 学
4.2%
工 学
25.2%
理 学
6.3%
13
出典:
「
文部科学統計要覧・
文部統計要覧」
(平成20年度版)により作成
中国は高等教育が普及し、大学及び大学院など高等教育機関における入学者数は
急増し(2000~2007までは約2.6倍)、2007年では、607.8万人になっている。一方、日
本は90年代後半から高等教育機関への入学者数は逓減する傾向があり、2007年では、
81.3万人となり、中国の約1/7の数となっている。
図10 日中の高等教育機関における入学者数の推移
(万人)
700
607.8
600
500
中国
日本
400
300
233.4
200
83.9
100
81.3
0
1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 (年)
注1:中国の場合は、大学及び高等職業学校(専科)を含む普通高等教育機関、大学院修士課程・博士課程の入学者数の合計である。
注2:日本の場合は、短期大学、大学、大学院修士課程・博士課程・専門職学位課程、国立養護教諭養成所、国立工業教員養成所の入学者及び高等
専門学校4年生の合計である。
出典:「中国統計年鑑(2008年)」及び「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
14
また、高等教育機関における在学者数についても、中国は急増し
(2000~2007年までは約3.4倍)、2007年では2004.4万人になり、日本の6.6倍
となっている。
図11 日中の高等教育機関における在学者数の推移
(万人)
2500
2004.4
2000
中国
日本
1500
1000
586.2
500
309
304
0
1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 (年)
注1:中国の場合は、大学及び高等職業学校(専科)を含む普通高等教育機関、大学院修士課程・博士課程の在学者数の合計である。
注2:日本の場合は、短期大学、大学、大学院修士課程・博士課程・専門職学位課程、国立養護教諭養成所、国立工業教員養成所の在学者及び高等
専門 学校4年生の合計である。
出典:「中国統計年鑑(2008年)」及び「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
15
4年制大学における入学者数について、中国は1990年代半ばから急増し
(2000~2007年までは約2.4倍)、2007では282.1万人になり、日本の約4.6倍と
なっている。
図12 日中の4年制大学における入学者数の推移
(万人)
300
282.1
250
200
日本
中国
150
116
100
61.4
50
60
0
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007 (年)
注:中国の場合は、高等職業学校(専科)を除く普通高等教育機関の入学者数である。
出典:中華人民共和国教育部教育統計及び「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
16
4年制大学における入学者数の人口比について、中国は増加する傾向にある
ものの( 2000~2007年までは約2.3倍)、2007年では0.21%になり、日本の約1/2
となっている。
図13 日中の4年制大学における入学者数の人口比の推移
0.6%
0.48%
0.47%
0.5%
0.4%
日本
中国
0.3%
0.21%
0.2%
0.09%
0.1%
0.0%
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
(年)
出典:中華人民共和国教育部教育統計、「中国統計年鑑(2008年)」、及び総務省「総合統計データ 月報」、
「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
17
4年制大学における在学者数について、中国は1990年代半ばから急増し
(2000~2007年までは約3倍)、2007では1024.3万人になり、日本の約3.6倍と
なっている。
図14 日中の4年制大学における在学者数の推移
(
万人)
1200
1024.3
1000
800
日本
中国
600
340
400
282.9
274
200
0
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
年)
2007 (
注:
中国の場合は、高等職業学校(
専科)
を除く普通高等教育機関の在学者数である。
出典:
中華人民共和国教育部教育統計及び「
文部科学統計要覧・
文部統計要覧」
(平成20年度版)により作成
18
4年制大学における在学者数の人口比について、中国は増加する傾向にある
ものの( 2000~2007年までは約3倍)、2007年では0.78%になり、日本の約1/3と
なっている。
図15 日中の4年制大学における在学者数の人口比の推移
2.5%
2.21%
2.16%
2.0%
1.5%
日本
中国
1.0%
0.78%
0.5%
0.27%
0.0%
1990
1995
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
(年)
出典:中華人民共和国教育部教育統計、「中国統計年鑑(2008年)」、及び総務省「総合統計データ 月報」、
「文部科学統計要覧・文部統計要覧」(平成20年度版)により作成
19
また、中国は高校生の各種科学オリンピックで世界を圧倒している。数学、物
理、化学、生物学、情報学のいずれの学科においても、中国の参加者は多くの
金メダルを取っている。
表1 2003-2007年国際科学オリンピックにおける中国のメダル獲得者数(
名)
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
学科 参加者数
金 銀 銅 金 銀 銅 金 銀 銅 金 銀 銅 金 銀 銅
数学
6
5 1
6
5 1
6
4 2
不参加
物理
5
5
5
5
4 1
不参加
化学
4
4
4
4
4
生物
4
3 1
2 2
4
4
4
情報学
4
1 2 1 4
4
4
4
出典:
中国科学技術力研究会「
中国の科学技術力について」
20
中国の科学オリンピックでの金メダル獲得総数は近年、日本、米国、ロシアな
どより多く、首位をキープしている。
図16 2003-2007年中・日・米・ロ国際科学オリンピック金メダル獲得数(枚)
25
23
21
20
20
18
15
15
枚
13
10
9
15
12
9
9
5
5
3
0
13
10
中国
日本
アメリカ
ロシア
5
3
1
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
出典:中国科学技術力研究会「中国の科学技術力について」
21
中国の主要研究機関や大学のトップには、海外留学経験者が就任している場合が多
い。例えば、中国科学院研究所所長の75%は留学歴があり、特に米国へ留学経験者が
最も多い21%となっている。
図17 中国科学院各研究所所長の留学歴について(
2008年8月現在)
オーストラリ
ア(5人)5%
その他(9人)
9%
フランス(5人)
5%
なし(24人)
25%
日本(7人)7%
ドイツ (12人)
12%
アメリカ(21人)
21%
イギリス(16
人)16%
出典:
中国科学技術力研究会「
中国の科学技術力について」
により作成
22
また、211プロジェクト各認定大学の学長 も約7割は留学経験者であり、米
国への留学経験者は最も多い23%になっている。因みに、日本の国立大学の
学長について、留学経験者の割合は約32%になっている。
図18 211プロジェクト各認定大学学長の留学歴について(2008年8月現在)
オーストラリア
( 2人)2%
その他(9人)8%
フランス(2人)
2%
カナダ(4人)
4%
ドイツ(10人)
9%
なし(31人)30%
日本(12人)11%
アメリカ( 24人)
23%
イギリス(12人)
11%
注:211プロジェクトは21世紀に向けて、中国の大学の中で世界トップレベルの大学を育成することを目的
とした計画であり、1993年に開始された。21世紀に約100の大学を重点的に育成するということから、
211プロジェクトと略称されている。2005年時点で107の大学が認定されている。
出典:中国科学技術力研究会「中国の科学技術力について」により作成
23
中国の研究論文について
24
中国の研究論文発表数は飛躍的に増大している。論文発表数シェアについ
て、2000年には3.6%であったが、2006年には8.2%となり約2.3倍の急速な伸
びを示し、日本、イギリス、ドイツと同水準になっている。
図19 中国など主要国の論文発表数シェアの推移(自然科学・工学)
%
45
40
EU-25
35
論
文
発
表
件
数
シ
ェ
ア
米国
30
カナダ
25
イタリア
20
イギリス
15
ドイツ
フランス
日本
10
中国
5
0
1981
年
2006
韓国
83
日本
8.5
85
87
89
米 国 イギリス
31.1
8.1
91
93
95
97
99
01
ドイツ フランス カナダ イタリア
8.4
6.0
4.8
4.6
03
中国
8.2
注: 複数の国の間の共著論文は、それぞれの国に重複計上した。
出典:科学技術政策研究所 調査資料-155 科学技術指標
05 2006年
韓国
2.7
EU-25
37.7
25
全科学分野の論文シェアなどの国際比較について、中国の位置は着実に上
昇している。全論文シェアでは、中国は14位(91~95年)から6位(01~05年)に
なっている。
表2 全科学分野の論文シェアにおける中国等主要6カ国の位置づけ
(上段:シェア%、下段:順位)
1991-1995年
1996-2000年
2001-2005年
アメリカ
36.1
イギリス
9.4
日本
8.5
ドイツ
7.8
フランス
6.1
中国
1.7
韓国
0.5
1位
2位
3位
4位
5位
14位
26位
33.2
9.6
9.4
8.7
6.5
3.1
1.4
1位
2位
3位
4位
5位
9位
16位
31.6
8.8
9.2
8.6
6.1
5.9
2.5
1位
3位
2位
4位
5位
6位
14位
出典:科学技術政策研究所 調査資料-158 世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国
の科学研究のベンチマーキングにより作成
注:科学技術政策研の分野分析について: Essential Science Indicators(ESI)の22分野分類(ジャーナル単位である。
http://www.in-cites.com/journal-list/index.html参照のこと。)を用いて、WoSデータベース収録論文を再分類し、集計した。
26
「トップ10%論文シェア」について、中国は18位(91~95年)から8位(01~05
年)に上昇している。
表3 全科学分野のTop10%論文シェアにおける中国等主要6カ国の位置づけ
(上段:
シェア%、下段:
順位)
1991-1995年
1996-2000年
2001-2005年
アメリカ
54.0
イギリス
10.3
日本
6.9
ドイツ
7.9
フランス
6.1
中国
0.8
韓国
0.4
1位
2位
4位
3位
5位
18位
25位
50.1
11.3
7.7
10.1
7.0
1.7
1.0
1位
2位
4位
3位
5位
13位
19位
48.2
11.4
7.8
11.0
7.1
4.1
1.8
1位
2位
4位
3位
5位
8位
15位
注:
トップ10%論文とは、各分野において被引用回数が上位10%以内に入るインパクトの高い論文のことである。
出典:
科学技術政策研究所 調査資料-158 世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国
の科学研究のベンチマーキングにより作成
27
論文被引用数シェアについても、中国は19位(91~95年)から9位(01~05年)
に上昇している。
表4 全科学分野の論文被引用数シェアにおける中国等主要6カ国の位置づけ
(上段:
シェア%、下段:
順位)
1991-1995年
1996-2000年
2001-2005年
アメリカ
52.2
イギリス
10.4
日本
7.4
ドイツ
7.9
フランス
6.1
中国
0.8
韓国
0.3
1位
2位
4位
3位
5位
19位
25位
48.8
11.2
8.3
9.6
6.9
1.5
0.9
1位
2位
4位
3位
5位
13位
21位
46.8
11.3
8.6
10.4
6.8
3.4
1.7
1位
2位
4位
3位
5位
9位
15位
出典:科学技術政策研究所 調査資料-158 世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国
の科学研究のベンチマーキングにより作成
28
論文の共著関係について中国と日本の関係は増強されており、両国の研究での協力
関係が深まっている。 「91-95年」と、「01-05年」を比較すると、中国から見た共著相手
国としての日本の位置が相対的に上昇しているのが分かる。とりわけ材料科学ではアメ
リカとの共著関係を追い越して、日本との共著関係がトップとなっている。
表5 中国の主要な論文の国際共著相手国及び地域について
(A) 1991-1995 年
1位
アメリカ
37.7
アメリカ
化学
27.2
アメリカ
材料科学
23.6
アメリカ
物理学&
宇宙科学
39.8
計算機科学 アメリカ
&数学
40.5
アメリカ
工学
36.7
環境/生態学 アメリカ
& 地球科学
38.2
臨床医学& 精神 アメリカ
医学/心理学
47.9
アメリカ
基礎生物学
37.8
全分野
2位
日本
13.2
日本
20.6
日本
17.0
ドイツ
18.3
カナダ
18.8
イギリス
15.2
カナダ
13.0
イギリス
17.2
日本
17.9
3位
イギリス
12.5
ドイツ
9.8
イギリス
16.0
イタリア
13.5
イギリス
9.9
カナダ
13.2
イギリス
12.1
日本
10.7
イギリス
11.7
4位
ドイツ
10.7
イギリス
9.2
ドイツ
10.0
日本
11.1
ドイツ
8.3
日本
10.6
日本
10.5
豪州
8.4
カナダ
8.5
5位
カナダ
3位
イギリス
10.1
ドイツ
9.4
ドイツ
10.1
ドイツ
17.6
イギリス
7.7
イギリス
13.8
ドイツ
10.0
イギリス
12.3
イギリス
10.1
4位
ドイツ
5位
豪州
6位
フランス
9.2
カナダ
7位
イタリア
6.1
台湾
8.7
カナダ
4.5
9.8
5.2
5.6
5.0
4.6
3.1
7.3
6.9
8.3
2.6
ロシア
ドイツ
豪州
2.7
イタリア
フランス
8.4
7.1
5.1
イタリア
フランス
豪州
2.8
カナダ
日本
豪州
3.1
3.6
2.9
カナダ
5.6
フランス
6.4
5.5
スウェーデン
4.7
10位
3.0
豪州
豪州
ロシア
フランス
5.1
3.4
6.6
フランス
9位
スウェーデン オランダ
イタリア
フランス
スウェーデン フランス
ドイツ
5.5
フランス
イタリア
9.6
イギリス
10.9
豪州
7.4
ドイツ
8.7
ドイツ
8.5
8位
豪州
2.7
2.7
シンガポール
3.0
オランダ
2.8
オランダ
5.0
台湾
1.6
オランダ
2.1
スイス
2.9
スイス
2.8
イタリア
2.6
2.5
シンガポール
1.9
スペイン
4.9
シンガポール
1.6
シンガポール
1.9
オランダ
2.4
イタリア
2.5
オランダ
2.3
(B) 2001-2005 年
1位
アメリカ
全分野
36.2
アメリカ
化学
25.7
日本
材料科学
23.4
アメリカ
物理学&
宇宙科学
38.4
計算機科学 アメリカ
&数学
38.0
アメリカ
工学
32.3
環境/生態学 アメリカ
& 地球科学
40.0
臨床医学& 精神 アメリカ
医学/心理学
48.8
アメリカ
基礎生物学
40.7
2位
日本
16.3
日本
20.2
アメリカ
18.5
日本
18.0
カナダ
10.7
日本
13.9
日本
15.1
日本
13.7
日本
17.1
6位
カナダ
6.7
6.7
マレーシア フランス
8.1
6.4
4.9
イギリス
豪州
韓国
7.7
7.6
6.9
イギリス
ロシア
フランス
10.2
8.7
8.6
シンガポール 豪州
日本
7.7
7.7
7.2
シンガポール
豪州
カナダ
9.1
8.7
8.7
イギリス
豪州
カナダ
9.9
9.6
7.9
豪州
ドイツ
カナダ
8.7
7.1
6.3
ドイツ
カナダ
豪州
7.8
5.9
5.1
7位
フランス
9.8
イギリス
8位
9位
シンガポール 韓国
5.1
4.6
シンガポール 台湾
4.4
4.4
シンガポール フランス
5.5
イタリア
5.0
7.2
7.0
6.7
4.2
5.9
4.0
フランス
3.4
韓国
6.1
フランス
6.7
韓国
韓国
フランス
4.1
韓国
フランス
ドイツ
4.2
カナダ
カナダ
ドイツ
4.1
カナダ
2.5
台湾
2.7
2.6
スウェーデン シンガポール
3.8
フランス
3.5
韓国
4.3
3.2
10位
台湾
3.3
韓国
3.5
インド
2.6
台湾
6.2
台湾
3.0
台湾
2.3
オランダ
2.3
台湾
2.7
スウェーデン シンガポール
3.0
2.8
2.4
出典:
科学技術政策研究所 調査資料-158 世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国の科学研究のベンチマーキング
29
一方、同様の国際共著関係を日本から見ると、全分野で6位(91~95年)
だった中国が2位(01~05年)まで上昇していることが分かる。中国でも日本
は1位になっている材料科学の分野は、日本から見ても中国は1位となって
いる。
表6 日本の主要な論文の国際共著相手国及び地域について
(A) 1991-1995 年
1位
アメリカ
49.0
アメリカ
化学
36.4
アメリカ
材料科学
39.4
アメリカ
物理学&
宇宙科学
43.2
計算機科学 アメリカ
& 数学
41.0
アメリカ
工学
48.3
環境/生態学 アメリカ
& 地球科学
41.8
臨床医学& 精神 アメリカ
医学/心理学
62.3
アメリカ
基礎生物学
52.0
全分野
2位
ドイツ
3位
イギリス
9.2
中国
4位
カナダ
8.6
ドイツ
9.1
イギリス
10.9
ドイツ
13.4
ドイツ
9.0
ドイツ
11.1
フランス
10.3
イギリス
8.2
イギリス
8.3
6.3
イギリス
9.3
中国
5位
フランス
5.7
カナダ
7.0
韓国
8.2
イギリス
11.2
フランス
8.6
カナダ
9.0
カナダ
9.3
ドイツ
6.4
ドイツ
7.6
6位
中国
6.0
7.8
8.3
6.2
8.3
韓国
5.3
7.4
5.2
7.2
3.5
5.4
3.8
ドイツ
フランス
フランス
4.9
フランス
イギリス
中国
カナダ
5.5
6.7
8.1
5.9
韓国
イギリス
豪州
カナダ
6.2
8.2
7.5
中国
4.1
イタリア
中国
中国
4.4
6.0
5.2
スウェーデン
3.4
中国
4.7
3.3
豪州
4.0
9位
豪州
3.4
インド
フランス
ロシア
イギリス
3.5
4.8
7.3
8位
韓国
フランス
カナダ
カナダ
カナダ
5.3
韓国
ドイツ
フランス
7位
イタリア
3.2
2.7
イタリア
3.0
ポーランド
2.2
中国
4.8
イタリア
3.8
オランダ
3.1
ロシア
4.1
豪州
3.1
オランダ
2.5
3.0
台湾
2.1
韓国
10位
オランダ
2.7
ロシア
2.4
ロシア
2.0
スイス
3.6
インド
3.0
イタリア
2.6
3.9
オランダ
3.4
ロシア
2.9
ニュージーランド
インド
3.8
3.7
イタリア
オランダ
3.0
2.8
スウェーデン イタリア
2.4
2.3
(B) 2001-2005 年
1位
アメリカ
39.5
アメリカ
化学
25.1
中国
材料科学
22.5
アメリカ
物理学&
宇宙科学
35.9
計算機科学 アメリカ
& 数学
30.0
アメリカ
工学
31.7
環境/生態学 アメリカ
& 地球科学
37.9
臨床医学& 精神 アメリカ
医学/心理学
58.0
アメリカ
基礎生物学
44.6
全分野
2位
中国
11.6
中国
18.3
アメリカ
20.4
ドイツ
16.3
中国
13.9
中国
14.8
中国
15.6
イギリス
9.0
イギリス
8.9
3位
ドイツ
4位
イギリス
9.6
ドイツ
8.5
韓国
8.0
韓国
6.9
12.2
10.9
韓国
8.9
7.0
韓国
10.1
イギリス
豪州
8.5
ドイツ
中国
7.5
中国
ドイツ
8.0
8.7
7.5
6.7
7.3
7位
カナダ
6.0
フランス
6.3
イギリス
中国
ドイツ
6.9
7.8
14.0
6位
フランス
イギリス
ドイツ
ロシア
ドイツ
5位
韓国
6.3
イギリス
10.6
フランス
6.9
イギリス
6.8
ドイツ
6.9
カナダ
5.4
韓国
5.6
8位
ロシア
5.0
インド
5.0
インド
4.7
4.7
6.3
4.0
4.9
韓国
3.9
豪州
5.0
3.2
韓国
フランス
フランス
5.2
4.8
6.5
4.1
3.3
豪州
フランス
イタリア
カナダ
3.7
6.0
6.5
5.2
豪州
カナダ
ロシア
豪州
7.0
5.0
6.2
3.2
スイス
イタリア
フランス
カナダ
3.4
8.6
5.9
3.1
カナダ
イタリア
イギリス
ロシア
3.6
3.8
9.3
3.8
ロシア
ロシア
韓国
カナダ
4.6
カナダ
フランス
フランス
9位
豪州
スウェーデン
3.6
タイ
3.8
10位
イタリア
3.6
豪州
2.9
豪州
2.1
カナダ
5.0
台湾
2.9
インド
2.9
インド
3.9
3.5
スウェーデン
2.9
2.2
出典:
科学技術政策研究所 調査資料-158 世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国の科学研究のベンチマーキング
30
青少年の夢と希望について
31
日本青年研究所で行った国際比較調査の結果によると、人類にとって21世紀
は希望のある社会になると思う」と答えた高校生の割合を見ると、中国の89%
に対して、日本の方は僅かに35%であった。
と答えた高校生の割合
人類にとって21世紀は希望のある社会になると思う」
図20 「
89%
中国
米国
63.5%
韓国
63%
35%
日本
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1999年、財団法人日本青年研究所が行った国際比較調査の結果による
注:
経済の夢」
科学技術者のみた 日本・
北澤宏一、「
出典:
32
また、筑波大学留学センターが行った国際比較によると、「自分の将来に大き
な希望を持っている」中国の中学生は91%であることに対して、日本の方は
29%であった。
表7 「あなたは自分の将来に希望を持っていますか」に関する中学生の回答
日本
中国
韓国
大き な希望を 持っ ている
29%
91%
46%
なんと かなる だろ う と
思っ ている
35%
7%
35%
ど う なる か分から ない
29%
2%
18%
全く も っ ていない
5%
0%
1%
無回答
2%
0%
0%
注:2001年、つくば大学留学生センターが行った日中韓3カ国中学3年生比較調査による
出典: 北澤宏一、「科学技術者のみた 日本・経済の夢」
33
アジアにおける科学技術協力について
34
東アジア諸国を中心とした緩やかな科学技術
連合体の結成が必要。
► 先端科学技術の研究には、多額の資金と豊かな人
的な資源が必要とする分野は多くなっており、そのよ
うな膨大な資源は一カ国ではカバーできない時代に
なりつつある。
► このような状況を受け、EUにおいて科学技術におけ
る諸国の協力が進行し、世界における科学技術の一
極となっている。北米も米国を中心とした科学技術の
一極を形成している。
► アジアにおいても東アジア諸国を中心とした科学技
術協力を発展させ、一カ国のみでは設立が困難な研
究開発拠点を形成していくことが必要ではないか。
35
例えば、以下のような分野における研究開発拠
点の共同設置が考えられる。
► 環境科学技術(新エネルギー開発、環境対策)
► 高エネルギー(大型加速器
等)
► 熱核融合
► 天文学(大型望遠鏡
等)
► 宇宙開発
等
36
Thank You !
37